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まちづくりチョビット推進室
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まちづくりチョビット推進室

京都府地域力再生活動
京都三条ラジオ・カフェ(79.7MHz) にて、
『まちづくりチョビット推進室』という番組を下記の予定で放送中です。
放送日時は第3、第4土曜日(15:30~16:00)
(詳細はラジオカフェのページでご確認下さい)
『まちづくりチョビット推進室』は、
「京都市景観・まちづくりセンター」と、平成25年、26年度の間、共同企画で行っておりました。
   
  過去のアーカイブ(第1回~116回)はこちら をご覧下さい。(過去の記事のリンクについては切れている場合があります。ご了承下さい。)
 

最新記事

第195回 ・カードゲームをラジオで解説?そもそもムリ難題です~Kyoto Dig Home Projectって何?

ラジオを開く

戸: 戸倉 理恵 氏(京都市都市計画局住宅室住宅政策課担当係長)
堀: 浦井 陽向 氏(京都市都市計画局住宅室住宅政策課)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
       (左:戸倉 理恵 氏  右:渡邊 春菜 氏)
投稿日:2024/04/09

第194回 ・住まう 働く まざる~団地を中心とした共生のまちづくりって何?

ラジオを開く

池: 池田 英郎 氏(社会福祉法人 京都福祉サービス協会 児童福祉部 / 地域共生社会推進センター事務局長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
         (左:池田 英郎 氏  右:絹川)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。最近の出会いなのですが、お迎えしておりますのは、社会福祉法人 京都福祉サービス協会からお越しいただきました。池田英郎さんです。
池: よろしくお願いいたします。
絹: 池田英郎さんは、地域共生社会推進センター事務局長という二つ目の顔もお持ちで、どちらにしても長くてカタいのでおいおい説明していただくことにしまして、私と出会ったのは、たぶん西野山市営団地が初めてでしたか。
京都市には市営団地がたくさんあります。西野山市営団地は土地勘のない方もおられるかもしれませんが、住所は山科区勧修寺堂田というところです。そこで時々面白い、変わった現象が起きていることを、この絹川くんのあまり利かない鼻が嗅ぎつけまして、ちょくちょくお邪魔していたところに、この赤いタコの被り物をしておられた人が池田さんでした(笑)。そこで「この人だ!」とばかり無理やりゲストに来ていただいたわけです。
さて、本日の大事な番組タイトルを申し上げねばなりません。先ほど池田さんと打ち合わせをして決めました。本日のタイトル、「住まう 働く まざる~団地を中心とした共生のまちづくりって何?」と題してお送りいたします。
さあ、池田さん、このタイトルを時系列に沿って読み解いていただきます。よろしくお願いします。
池: なんのこっちゃわからないですよね、この流れは(笑)。なるべく分かりやすく経緯を説明したいと思います。
絹: リスナーの皆さん、是非ご期待ください!本当に不思議なというか、おもろいというか、すごい挑戦が山科の西野山で起こりつつあります。あるいはもう既に起こっています。どうぞ!
 

■エピソード1 地域共生社会推進センターの立ち上げ、そもそもの思い

●京都福祉サービス協会は、京都市内で事業を展開する社会福祉法人です
池: カタい肩書ばかりなので、まずは社会福祉法人 京都福祉サービス協会を説明しないといけないですね。
絹: 私は門外漢ではありますが、理解しているところだけ申し上げますと、もともと京都市の外郭団体であった歴史が長い福祉法人さんだと聞いています。市内に27拠点、事業所という呼び方が正確なのか、特別養護老人ホームを始め、比較的大型の施設を展開されておられまして、元々はホームヘルプ、訪問介護からスタートされています。私も個人的にですが、小川にある施設と言えばいいのでしょうか…。
池: そうですね。特別養護老人ホーム小川がありますし、そこから居宅のサービスも行っています。
絹: そこから私の齢90歳のお袋様も、訪問介護のお世話にずっとなっております。ありがとうございます。
池: ありがとうございます。
絹: というので、その福祉サービス協会さんの何たるかは、ざっとした紹介になりますけれども、あと詳しいご紹介を池田さんからお願いします。
池: 社会福祉法人京都福祉サービス協会は、大きな社会福祉法人で、京都市内で事業を展開しております。その中でもう1つ、地域共生社会推進センターというのを立ち上げたというところです。法人そのものは特養とか訪問介護などの事業所で、児童館も4つ運営していまして、私自身は児童館の職員として二十数年間働いていました。
 

●児童館って、どんなところ?

池: そういう意味では私自身、高齢福祉専門ではもちろんなく、児童福祉の専門ではあるかもしれませんが、流れの中で児童館で働いていたという経緯があります。
児童館というのは、まちの中に子どもなら誰でも来れるという場所ですので…。
絹: うちの近所でしたら、上京ですので、室町小学校の所に児童館がありますけど、あれも…。
池: そうですね。児童館ですと市内に130か所あって、色んな法人が運営しているのですが、対象が0~18歳と幅広くて、赤ちゃんから高校生、高校中退の子なども来れるという場所なんです。
絹: 私個人的に言うと、児童館というのは入った事がないので、自分の子どもが小さい時もお世話になってなかったので、どういうところなのか実はよく知らない、そういう人も結構おられますか?
池: その辺がすごく課題で、子育て中のお母さんたちも気軽に来られるよう、もっとピーアールしないといけないと思っています。放課後児童クラブという学童クラブは誰が聞いてもわかるような、子どもを預かっている場所というイメージがあると思うのですが、児童館はそうではなくて、まちの中にあって、第三の居場所のように、誰でも来れる。その児童館の要素ももっと出したいなと思いながら、ずっと仕事をしてきていました。
 

●児童館とサードプレイス

絹: 今、さらっと第三の居場所というキーワードをお使いになりましたけれども、それに僕は激しく反応するタイプでして、私自身京都にあるサードプレイスを訪ね歩いていた時期がありました。
池: すごい、何でも興味があるんですね!
絹: “まちの縁側”という言葉を、日本でごく早い時期に使われて、名古屋と京都にご自宅を住み開いて“まちの縁側クニハウス”“まちの学び舎ハルハウス”という二つを展開していらっしゃる80超えのおばあちゃん、佛教大学の退官教授の丹羽國子先生です。私の師匠筋と言いますか、このラジオの番組にも数回、ゲストでお呼びしております。
私はそのサードプレイス、誰でも来れる場所、居場所というのが、今ものすごく必要だなと思っている者の1人でして、とにかくあの居心地の良さが大好きなんです(笑)。
池: そうなんですよね。何をしてもいいし、何もしなくてもいいみたいな。これを伝えるのが難しかったりするし、色んな人が本当に集えるためには、どんな工夫がいるかなということを考えていかないと、そういう場所になりえないし、ただ単に管理する場所になってしまう可能性もあるわけです。
絹: もともと長く勤めておられた児童館は、「本来そういう場所なんですよ」とおっしゃったわけですよね。でも僕らはあまり知らない…。
 

●まち全体で子どもを育てるまちづくり

池: そこがすごく課題で、児童館をやりはじめたと言いますか、勤めはじめたのも、そういう経緯でした。児童福祉がやりたいとかでは実はなくて、子どもが好きでとかでもなくて、どちらかというとまちづくりと言うか、人が出会う環境に興味があったのかなと思っています。
絹: 今日、ゲスト出演されている番組の名前が、まちづくりチョビット推進室で(笑)。
池: たぶん元々関心のある領域なんです。児童福祉の専門家のみが子どもに関わって、子育てを支えるのではなくて、本来、まちの色んな人たちが関わりながら、子どもが育つという、そういう意味では児童館だけではなく、児童館が拠点となって、まち全体で子どもが遊んだり、育ったりする。そんな発信をする野望も持ちながら、法人内でやってきました。
 

●福祉全般同じ発想でと、地域共生社会推進センターを立ち上げました

池: そういう発想って、福祉全般に言えることだと思うんです。高齢福祉の中でも特養に入居されたら見えない世界なのかというと、全然そんなことはない。元々まちで暮らしていた人が施設で暮らしているわけです。そこは地域の関りと言うか、地域の方が関わって当たり前だし、施設も地域と関わるのが当たり前だし、そういった活動をもっともっと拡げようよというコンセプトで、地域共生社会推進センターを立ちあげました。ちょっと大きな法人の中で皆、私も児童館をやりながら兼職でやり、代表は河本代表が特養の施設長を兼任しながら、副代表も特養の施設長の森副代表で、事務局も訪問介護をやっている兼任職になります。センターと言っても建物があるわけではなく、私たちが一部署を兼職しながら、そういうチームを作られたという感じです。
絹: その河本歩美代表兼紫野施設長さんもユニークな方で、本当にお話が通じるというか、私みたいな素人が議論をふっかけに行っても、ちゃんと聞いてくださって、池田さんとか宮路理事長に繋いでくださった、本当に珍しいタイプの方です。NPOなんかもなさっていて、「認知症とともに生きるまち大賞」を受賞されました。本業から少しかすっているかな、かすってないかな。お年寄りがまな板を磨くお仕事をされて、そのまな板を無目的カフェで販売されて、その活動がすごく評価されたという経歴の持ち主が、地域共生社会推進センターの代表であられる。
 

●「働く」というキーワード

池: たぶん代表のお話は、それはそれで1つ番組ができてしまうんですが…。児童館をやっている私から見て、「一緒やな」と思ったのは、単にご利用者さんのためにサービスをやる場所ではなくて、来ているお年寄り自身も役割を持つというか、誰かのために働くということ。そのまな板を磨くのもそうですし、男性の方は洗車をしていると、最近おっしゃっていましたが、とにかく何かをしてもらうだけの対象ではないということです。福祉って、上からしてあげるという支援ではなくて、利用者の持っている力をちゃんと引き出しながら、その人の主体性を大事にしながらやっていく。これは児童館の支援も一緒だなと思いました。子どもも何かをしてもらうだけの存在ではなくて、しっかり意見を言ったり、子どもたちのやりたいこと、例えばお店屋さんを自分たちでつくったり、祭りの参加者で行くのも楽しいけど、祭りを一緒につくっている実行員会の中の方が、もっと楽しいみたいな、そういう実践を私もやっていたので、「お年寄りでもそこは一緒やん」という思いはありました。そういう意味で「働く」というキーワードも出てきているので…。
絹: 「住まう、働く、まざる」ですね。社会実験的な要素も見え隠れするのですが、西野山市営団地で本当に何かすごいことを、素人の目から見るとすごい挑戦が起こっているように見えるのですが、その辺り紐解いていただけますか。
 

■エピソード2 西野山市営団地での挑戦―実践の場として

●地域ともっと関われる事業をやっていきたい
池: 地域共生社会推進センターは、児童館も含め、特養や訪問介護など色んなサービスを展開しているなか、福祉、ケアの仕事に携わるたくさんの従業員が、地域と関わりながら、地域の人たちと利用者も含めて一緒に楽しく価値をつくっていける後押しをする事業を、ずっと展開してきました。具体的には法人内の職員が集っておしゃべりできるカフェとか、ちょっと勉強できる、横糸を繋ぐカフェ、外に発信するフォーラムや、色んな人を繋ぐファシリテーションの技術を学ぶ研修など、いわば法人内の働きかけをセンターとしてずっと行ってきたのですが、もう少しわかりやすい地域との関わりの事業をやった方がいいのではないかという話になりました。
ただ地域と言っても京都市中となると広すぎるので、市営住宅を拠点としてグループホームをやったり、その地域の課題に入ってそこで実践できる可能性があるのではないかと、法人の中で話をするようになりました。そこで京都市の住宅管理課に、市営住宅で空き部屋を使いながらまちづくり実践ができるような所はないだろうかと相談したところ、西野山市営団地を紹介してもらったのがスタートでした。
絹: 不思議な偶然ですね。なぜか私も時期を同じくして、都市計画局住宅室住宅管理の(今は異動されましたけど)菱崎課長の耳元でぶつぶつ呟いておりました。「空いてるでしょう、公営住宅」と。
池: 私たちも事業拠点を共生推進センターとして持っているわけでもないので、拠点が欲しかったわけでもないのですが、課題は絶対あるだろうし、そこに福祉をやっている我々がまず入っていくと面白いんじゃないかと
 

●公営住宅にケアワーカーが「住む」ということ“まちソリデール”

絹: 私は菱崎さんにふっかけていた議論は、「財政非常事態宣言だと、市長さんが青い顔したはるのに、空き室がいっぱいあるのを、なんで放っているのですか」と。「例えば保母さん、高齢者介護施設の職員さん、看護師さん、安くで入れなはれ」とずっとふっかけてました。
池: それ、考えてます!
絹: そしたらそれを聞く耳を持つ人が出てきまして、今、動きつつあります。そこへ池田さんが「空いてるでしょ?使わして」と言ってこられたのと、たぶんタイミング的にピタッと合っているはずです(笑)。
池: そうなんです。京都で卒業した若いワーカーが安く住めて、その近所にお年寄りもいたりすると…。
絹: 「いわゆるケアワーカー、エッセンシャルワーカーと目される方々が“住まう”というところでサポートされるのであれば、地域に残ってもらえるでしょう」と。「元々ケアマインドが高い方なのだから、そういう人が高齢化率68%という西野山市営団地で活動されたら、きっと何か起こりまっせ」と、菱崎さんとかにガンガンふっかけていました(笑)。
池: でも本当に空想ではないですけど、団地を拠点にしたらどんなことができるだろうみたいなことを言いながら、たまたま紹介いただいたのが西野山市営団地だったんです。本当に職員が住むというのも面白いんじゃないかと。
“ソリデール”のように、学生とおじいちゃんおばあちゃんが一緒に住むなら、一軒家でなくても、まち中でそれをやればいい、“まちソリデール”でいいんじゃないかと言っていました。そんなことをワーワー言いながら、まずは団地の現状がどんなことになっているのか私たちも知らなかったので、菱崎さんにご紹介いただいたわけです。
たぶん会長さんの強い思いも感じたので、ここをご紹介いただいたのだと思うのですが…。
 

●まずはタウンミーティングをやろう!

絹: 松尾自治連合会長ですね。熱心な会長さんですよね。
池: 団地に行ってお話をお聞きすると、本当に篤い思いで語っていただいて、「このままでは大変だ。京都市にいっぱい要望しているけど、難しい。ただ、ここに住んでいるお年寄りに温かい物を食べさせてあげたいんや」とおっしゃっていたんですね。温かい物というのは、単純にあついご飯だけでなく、人の温もりもあるんじゃないかと、勝手に私たちも思いながら…。
絹: ひょっとしてその思いが“たこ焼きタウンミーティング”に繋がるのでしょうか。
池: そうなんです。そんな思いの会長さんもいらっしゃるので、ここで何かできるんじゃないかなと感じました。ですから僕らがこの場所を使ってグループホームにというような事業だけじゃない、何か住民さんの気持ちを聞きながら、まちづくりにつなげる活動ができたらと考えました。そこでまずは住民さんの意見を聴くためのタウンミーティングをやろうということになりました。
タウンミーティングとは言うものの、ただ単に最初は焼き芋をみんなで焼いて、食べて、住民さんの困りごとを聞き取るというのをやったんですね。
絹: 本当に地道な活動ですね。
池: そうなんです。焼き芋の芋はうちの職員の「畑の芋をあげるよ」と言ってもらったので、みんなで掘りに行ってみたいなことで(笑)。今もちょいちょい掘らしてもらってるんですけど。
 

●移動販売車が来るようになりました

池: 焼き芋で話をしていると、先ほど団地の高齢者率68%ということでしたが、調べると68.8%だったんですね。市内でも23%とかですので、非常に高いわけです。本当にお年寄りが多いというところで、買い物なども近所にあるにはあるけれども、やはり重たい物を買いに行くのが困るという話だったので、移動販売車を呼ぼうということになって、これに社協さんとか、京都市さんにももちろん協力をいただいて、イオンの移動販売車が週二回来るような手配が整ったという感じです。
絹: イオンの店長さんとも話をしました。いやあ、篤い人でしたね。
池: そうなんです。そういう連合体で関わる人がどんどん増えて行って、包括支援センターなどもそうですけど、移動販売車を呼んで毎週来てもらえるようになりました。
 

●団地カフェもはじめました

池: 見に行くと、おばあちゃんたちがブロックとかに腰かけて来るのを待っておられたりしたので、集会所があるので、そこでお茶を飲むようにしましょうかと。僕らは火曜日なら行けるかなと、火曜と金曜、移動販売車が来ているのですが、火曜日行って、一緒にお茶を飲もうよと。
絹: ああ、それが団地カフェになったんですか。
池: そうです。で、お茶でいいかなと思っていたら、「コーヒー、飲みたい」と。「ほんなら淹れましょか」と言って、何の気なしにコーヒーを淹れだしたら、それがやがて毎週のカフェに(笑)。そしたら会長も何か温かい物を作りだしたりして、今は週一回、団地の集会所でカフェをやりながら移動販売して、“タウンミーティング”をやっています。
 

●夏祭りは、周辺の子どもたちも来られるイベントにしています

池: 夏は夏祭りっぽくして、近所の児童館とか保育園にも協力いただいて、子どもたちはほとんど住んでいないのですが、周辺の子どもたちも来られるようなイベントにしていきました。
絹: “たこ焼きタウンミーティング”略して“TTM”。そこでたこ焼きだからタコの被り物をしておられた池田さんと初めて出くわしたのが、絹川くんでしたと。
池: はい。そういう流れなんです。
絹: いやあ、僕、京都市さんが中心になって引っ張っていかれたのかと思ったら、実は池田さんたちが京都市に議論をふっかけてはったわけですね。
池: 連携してという感じですね。やりだすともちろん京都市の動きがないと一緒にできないですけど、本当に色んな団体と大学とかも連携していって…。これ、おさまらないですね(笑)。
 

●京都芸大の学生さんも住んでくれるようになって

池: また会長が、「芸大が京都駅の近くに移転するけれども、バスで20分ほどで来られるんや」と。「住んでくれへんか」と。
絹: 稲荷山トンネルをバスで通ると20分で芸大まで来れるやんかと。
池: 京都市も一緒に動いて、目的外使用で芸大の学生に安く住んでいただける。今6名住んでいただけるようになって、急に進んでいったんです。
絹: リスナーの皆さん、去年の10月28日の6人の学生さんを迎えるイベント、私も出席したんです。無茶苦茶感激しました。
池: 住んでくれないと思っていたんですけどね。
絹: 「よう来てくれた!」と大拍手でみんなが迎えてね。
池: 50年くらい経っている団地なので、なかなか見た目は古さを感じてしまうところですけど、学生は楽しく住んでいただいているようで。
絹: 京都市も本当に太っ腹というか、安い月額を設定したみたいですね。
池: そうですね。それに声楽科の人が集会所を使って歌の練習をさせてもらっているとか。
絹: 「全然かまへんでえ」と、地元の人たちが。
 

●空き部屋をお借りして新たな拠点、サードプレイスをつくります!

池: そんな感じで発展していって、今、ボランティアで関わる学生もいますし、今度は空き部屋をお借りして新しい拠点をつくろうと考えています。最初におっしゃっていた“サードプレイス”で(笑)。
絹: その計画の京都女子大学の是永研究室の人たちが図面をひいてデザインした模型、その画像は貼り付けておきますので、是非リスナーの皆さん、また見て頂けたらと思います。
池: 盛りだくさんでしたが、新しい拠点もまたつくっていくので、どうなっていくかはわからなくて、色んな人が色んな意見を出しながら、一緒にまちをつくっていくみたいな実験になりつつあるかなと思っています。
絹: リスナーの皆さん、是非西野山市営団地の“たこ焼きタウンミーティング”から拠点づくり、福祉サービス協会の皆さんの挑戦をご記憶ください。これが標準装備されると、京都市の色んな問題が1つずつ消えていく可能性があります。期待を込めてフォローしていきたいと思います。
この番組は心を建てる公成建設の協力でお送りいたしました。池田さん、ありがとうございました。
池: ありがとうございました。
投稿日:2024/02/28

第193回 ・京都祭コインcomoって何?~お金のフリをした何か…

ラジオを開く

中: 中田 俊 氏(株式会社 夢びと 代表取締役)
堀: 浦井 陽向 氏(京都女子大学)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
      (左:浦井 陽向 氏  右:中田 俊 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。そしてこんばんはかもしれません。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。飛び入りで、なんと妙齢のお嬢さんが来て下さりまして、ちょっともたついております(笑)。ではメインゲストです。株式会社 夢びとの代表取締役社長の中田俊さんであります。中田さん、よろしくお願いします。
中: よろしくお願いします。
絹: そして「さっきまで一緒にいたから連れてきた」というセカンドゲスト、浦井陽向さん、どうぞ。
浦: はい、よろしくお願いします。
絹: 浦井さんは、京都女子大学、女坂を上がったところにある、いうわゆる京女の三回生であります。なぜ中田社長に引っ張って来られたかは追々語られると思います。
さて、今日の番組タイトルですが、先ほどお二人と相談して決めました。「京都祭コインCOMOって何?~お金のフリをした何か…」と題してお送りいたします。
さて、ではゲストの中田俊さん、エピソード1「そもそもなんでんねん、これ」というところからお願いいたします。
 

■エピソード1 そもそもなんでんねん、京都祭コインCOMOって…

●祭コイン、3つの特徴
中: 地域通貨をイメージしてもらえると、若干わかりやすいかなと思うのですが、2023年の2月から京都のまちで使えるまちづくり通貨というので、“京都祭コイン”という地域限定の通貨を始めました。
普通皆さん使うお金だと“円”とか“なんとかpay”だとかイメージがわくかと思うのですが、この“祭コイン”は、特徴として大きく3つあって、1つは三ヶ月で期限が切れてなくなってしまう。
絹: はい、三ヶ月で腐るとおっしゃっていますし、通貨っぽい言い方をすると利子が付かない、マイナスの利子。
中: 利子どころか、本体そのものが三ヶ月で消えてなくなりますので…(笑)。
もう1つの特徴が、普通例えばお店で商品を買われた時は、商品とお金を交換して商品を受取ると思うのですが、この通貨の場合は、ギフトを載せられる機能がついていて、本体価格、定価以上にこの店を応援したいと思ったら、ギフトを載せて払える機能がついています。
絹: はい、太っ腹機能とも言いますね。
中: 海外とかに行くと払うチップをイメージしてもらえるとよいかと思います。
そして3つ目の特徴が、先ほど三ヶ月で期限が切れて腐るという話をしましたが、期限が切れた後どうなるかというと、個人のお財布からは消えてなくなりますが、それらのみんなの消えたお金が、一旦運営元であるうちの会社に入ってきて、それが自動でもう一度ユーザーに再配布される機能がついています。普通今の資本主義の世の中では、銀行の通帳にたくさんお金が入っている人ほど、利息がつくのですが、“祭コイン”では、持っている人ほどたくさん再配布があるわけではなくて、幸せ度高く応援好きな人にたくさん再配布が回ってくる機能がついています。
 

●京都のまちが良くなる使途で使える通過

絹: ほう、ユーザーにということですね。去年の2月から始められたとおっしゃっていました。今、“祭コインCOMO”の関連ページを覗きに行きますと、何人ユーザーがいるとか、600人台でしたっけ?そういうのも見られるわけですね。
中: そうですね。今、だいたい600何十人かいたと思います。
絹: ここで言うユーザーというと、学び場とびらに集まっている企業群は、出資をする人、応援する人であって、ユーザーじゃないんですね。
中: そうですね。企業さんは今20社くらいでして、皆さん地域企業の方なのですが、お金を出していただいた円を“祭コイン”に変換して、まち中で配っているんです。それは円やpaypayのようにどこでも使えるわけではありません。使途を限定できるので、それを地域のユニークな企業に繋がる場面でしか使えないとか、自分たちでどういうお金が社会にあったら、京都のまちがよくなるかを考えて使途を今順番につくっていっているようなところです。
絹: 地域通貨という呼び方を先ほどされましたし、今の「使途をみんなでつくっている」というコメントから、ひょっとしたらこれは実験通貨とも呼べるかもしれないという気がしました。
中: やってみてから思ったのですが、地域企業の皆さんでお金を出し合って、“祭コイン”にして配ったものの、使い道がなかったんですよ(笑)。配るのはいいけど、三ヶ月でなくなるのに、使い道がないって、まあまあ危ない通貨やと思ったんですけど(笑)。それでどういう使い方なら、まちが良くなるのかというのをみんなで考えました。色んな業種の企業さんも参加して下さっていたので、使いやすい業種、使いにくい業種はもちろんありますし、もっとまちの中で人が繋がって、面白い反応が起こるようなことに使えたらいいよねというので、最初の方は繋がる機会の方に“祭コイン”を使えるようにしていました。
 

●顔の見える関係性の中で循環するお金

絹: インタビュアー絹川からの質問です。まず20社ほどの企業群は、地元の企業ですよね。この“祭コイン”を面白がって出資しているというか、いくばくかのお金を払って、「まち中で配って」と頼んでおられるわけですよね。どんな人たちなんですか?
中: 最初は僕も「ちょっと怪しいお金やな」と半分くらい断られるのではと思っていたのですが…。特に今、世の中にあるお金って、どこでも使えるじゃないですか。地域の外に出てようが、顔の見えない所で課題を生んでいようがわからないみたいなお金の使い方ではなくて、地域の中で顔の見える関係性の中で、お金がぐるぐる循環するみたいなことができたら、地域の活性になるのではないですかみたいな話をさせてもらいました。
絹: リスナーの皆さん、実は私、中田さんという人に出会って、ここのところにビビッときたんです。というのは私、20年かもっと前かもしれません。地域通貨に興味を持っていた時期があるんです。というのは、京都のリーディングカンパニーの、例えば京セラさんなど、経営者協会に入っている有名どころの経営者が自分の所の企業の給料の5%を地域通貨で払うというようなことが起きたら、しかもその地域通貨は京都でしか使えないとなったら、どんな世の中が来るだろうと妄想していたわけです。ところがその当時、“eumo”のような電子マネー的な土台がなかったので、それはただの妄想で終わって、私のパソコンの中で朽ち果てていったのですが(笑)、「それをさらに進化させておもろい事をしている人がいる!え!何!この人!」みたいな感じでびっくりしたんです。
中: いえいえ、初めて絹川さんが来ていただいた時は、こちらもびっくりしたんですけど。「20年前、考えてたんや!」と言われて来られたので(笑)。
 

●祭コインの趣旨に共感してくれる人は多いです

絹: 考えていただけだったのですがね、専門分野でもないし。でも京都の中でぐるぐる動くと、変な所に飛んで行って、お金も良い使い道もあれば、しょうもない使い道もあるわけです。しょうもない方だと、人に迷惑をかけたり、例えば京都のためにならない使い方をされたら、たまらんやんかみたいな思いがちょっとあった。でも今やそれが本当に形になろうとしていて、20社の人たちは僕と似たようなことを言っている人はいませんか?
中: 絹川さんの考えておられることに共感する方はめちゃくちゃ多いのではないかと思います。お金って、世の中に当たり前にあり過ぎるので、誰もお金の機能を変えたり、ルールを変えようとはなかなか思わないものです。でもそれが現れた時に、「ああ、こういう使い方なら世の中良くなるかもね」と共感して下さっている方は多いのではないかとは思います。
絹: 中田さんから聞いてびっくりしたのは、「応援したいお店でしか使えないと、使い道を限定しようと思うんです」ということです。「この店はあんまり知っている人はいないけど、こういうことをやっている人が京都からいなくなったら悲しいですわ」みたいな説明を、陽向さんは聞いた?
浦: いや、私はまだあんまり“祭コイン”について詳しくなくて…。
 

●祭コインのフリースクール、やってます

絹: “祭コイン”を使ったフリースクールについて、少しコメントいただけますでしょうか。先ほど「お金の使い道、決まってなかったんですわ」とおっしゃっていたところに絡みますか?
中: 今のところ、日本のお金の教育って、資産運用などはありますが、お金の本質的なことを考える教育は、皆無と言ってもいいと思います。実際“祭コイン”で使い道がない状態になった時に、結構みんな考えるんですよね。「配られたけど、三ヶ月で腐っちゃうからどう使うねん」みたいな。色んな業種の方が集まっていたので、「この業種にはいける!この業種にはどうやねん?」と色んなことを考える、すごく良いきっかけになっていると思っていて、これをできれば学校教育のなかなどでやれないかと思ったわけです。小さいうちからお金の使い方として、円もあるしpaypayもあるけど、“祭コイン”もあるよねと、色んな選択肢の中で使いたい使い方をしていくみたいなことを学べたらいいかなというので、今、高校や大学で“祭コイン”のことを話す機会もあります。
絹: 「高校や大学で“祭コイン”の事を話しする機会がある」と、今サラッとおっしゃいましたが、ということは、例えば橘大学だとか、洛西高校とかで、硬い言い方をすれば、教鞭をとっておられると。
中: ちょっと先生っぽくはないですけど(笑)、一応学生のみんなと一緒に、新しいお金を使って、使い道を作ったり、どんな使い方ができたら自分たちにとってもいいだろうみたいなことを考える機会づくりみたいなことをさせてもらっています。
絹: だからゼミと言うか、講義枠をちゃんと持っている人なんですよ。リスナーの皆さん、「アヤしい」と初め思われたかもしれませんが(笑)、そういう教育者の一面もあります。
 

■エピソード2 祭コイン、実例をご紹介しましょう

●例えば、京都の文化的な未来に残していきたい仕事に対して
絹: とは言え、初めて“祭コイン”、地域通貨COMO、お金のフリをした何かを聞かれた方にとっては、なかなかちょっとハードルが高いテーマではありますので、実例をご紹介いただけますでしょうか。
中: 最初に申し上げたように、面白い人や会社と繋がるために使うというのが、まず1つ。あと今の経済のルールでは、アマゾンでポチっとしたら何でも届くわけですが、便利で人が使いやすいところにお金が集まりやすくなっていたりします。
でも京都だったら色んな文化的な未来に残して行きたいお仕事をされている方がいて、そういうところが今の経済のルールに乗っかりにくいから、例えば後継者が見つからないなどの色んな問題を抱えているわけです。それならば極端な話、そこしか使えなくしたら、“祭コイン”のユーザーはみんなそこに払いに行くみたいな感じで、今のお金のルールだけでは解決できないようなところに流れるようなお金であったらいいなというので、例えば大正時代に廃れてしまった京藍を復活させている藍染の工房で使えるようになっていたり…。
絹: ああ、洛西で出会った、あのお兄さんだ!
 

●例えば、若い起業家に対して

中: そうです!そうです!あの方は使えるお店の1つです!
まだこれはオフレコで言っていいのかどうかわからないですけど、例えば陽向ちゃんみたいな、若い人たちが新しいチャレンジをする時に、“祭コイン”ユーザーが使えるお店として登録をしたら(実は今登録準備中なんですけど)、「こういう子がこういう思いで自分でこんな仕事を立ち上げたんだ」と、一気に“祭コイン”ユーザーの目に入るので、そういう若い人たちのチャレンジの応援もできるかなと考えています。
絹: “祭コイン”の動きに賛同して出資をしている地元のユニークな企業群、今のところ20社ですが、そのそれぞれの経営トップが「この人なら応援したい」というふうなところに、“祭コイン”をギフトとして持っていける。応援したい若い人を見付ける機能が、“祭コイン”にくっついてくるかもしれないよという話でした。
中: そんなにたくさんお金を出し合って、経済の循環をめちゃくちゃ大きくするというのは、今のところはあまり目的としていなくて、これで経済活動もできるのですが、“祭コイン”で繋がった後に、円でファン同士応援し合うみたいな形が作れたら別に経済的には問題ないと思っています。経済が回りにくいけど、ここは応援したいよねとか、今始めたばっかりで、ここはみんなで応援しましょうみたいなところが、“祭コイン”きっかけで色々繋がったらいいかなと思います。
 

●市の職員とのブレインストーミングでは、色んなアイデアが出ていました

絹: この間、中田社長と京都市のふるさと納税の担当者さんとか、京都市全体の都市経営企画を考える行政マンたちと、ブレインストーミングをやっていたのですが、その時にちらっと聞いたお話です。
例えば洛西ニュータウンの中に、起業したい人など、若い人ばかりのシェアハウスと言うか、住める場所をつくって、“祭コイン”を使って相場よりも安く住めるような、そんなサービスに繋げられないかみたいなアイデアが出ていましたよね。
さらには、なぜかそこにふるさと納税の担当者が座っていて、京都に来る学生さんの御実家の方から“祭コイン”に対して、ふるさと納税で何か応援ができないかなど、そんな計画すら出ていました。ブレインストーミングですから、いっぱい色んなアイデアが出ていましたね。
私は本職が建設ですから、住居系のことにすごく興味があって、公営住宅、市営住宅、洛西ニュータウン、向島ニュータウンなんかで、いっぱい空き室がある。その活用などに “祭コイン”の持つ性質がどこか影響が与えられるのではないかと勝手に思い込んでいます。
 

■エピソード3 洛西ニュータウンの再生に関わらせてもらっています

●“ACWA BACE”さんのこと
中: 今、洛西ニュータウンの活性化と言うか、再生みたいなところに関わらせてもらっています。その大きな枠として2つあって、今いる人たちとどう関係性をつくっていくのかということ、もう1つは若い人たちが住みたくなるとか、チャレンジしたくなるまちにどうシフトしていくのかだと思っています。
“ACWA BASE”さんは、地域循環ワークシェアリングとして、クリーニングしたものをたたむお仕事をされている会社です。誰がいつ来てもどれだけ仕事をしても、仕事をせずにコーヒーを飲んでいるだけでもいい職場という、かなり新しい働き方をする場所を、実験的に久御山の方で展開されています。これだけ人口が減って、労働力不足のなか、広告も何も出さずに、地域の人が勝手に来たい時に来て働くので、こんなに仕事が回るの?みたいなことをされているので…。
絹: リスナーの皆さん、ものすごい実験的な企業が“ACWA BASE(あくわべ~す)”さんというクリーニングを生業とされる方です。僕は現地には行ってないですけれども、洛西ニュータウンの中にある集会所でその実験を、陽向さんも目の当たりにした?
 

●“ACWA BACE”さんとミニカフェと

浦: はい、今日まさに行ってきたところです。今日はその“ACWA”さんがやっておられる、同じ室内に、小さな屋台を出して、ミニカフェをやっていたんです。「終わった後に、ちょっと休憩がてら、お茶でも飲んで、私たちとお話しませんか」みたいなことです。「好きな曲とかありますか?」とお聞きしたら、古い歌をたくさんリクエストされて、なんやかんや言っているうちにカラオケが始まって、すごい盛り上がったんです(笑)。
絹: フェイスブックで、「お仕事の後はカラオケ大会になっちゃった」と書いてあったのはあれか(笑)。
浦: そうです、そうです(笑)。
絹: 洛西ニュータウンの東竹の里集会所でクリーニングを生業とされる“ACWA BASE(あくわべ~す)”さんが「誰が来てもいいよ、洗ってきれいにした洗濯物をたたむのを手伝って」と。そうすると地域のお年寄りが来て手伝ってくださる、そして別に手伝わなくてもいい、喋っていてもいい、カラオケを歌っていてもいいと。要はサードプレイスと言うか居場所で、浦井陽向さんみたいな若い人たちもいる。高齢者にとっては「若い人と話せる、すごいうれしい」と、別に“祭コイン”もらわなくてもうれしいかも(笑)。
中: “祭コイン”の参加企業に“ACWA BASE”さんも入ってもらっていて、陽向ちゃんも陽向ちゃんで今、洛西の中でやろうとしていることがあるので、ちょっと紹介を(笑)。
 

●コミュニティスペースをつくって、「みんなでやろう」を実践したい

浦: コミュニティスペースを作って、いつ、だれが来てもおしゃべりができたり、みんなでご飯を食べようとか、そういう思いついたことがすぐ「みんなでやろう」とできる場所をつくりたいと思っています。
絹: 私はまちの縁側とか、地域の居場所とか、サードプレイスなど、民設民営の場所をずっと追跡していた時期があるんです。大好き!そういうの(笑)。
居場所ができると、特に私みたいな男性は、仕事場と居酒屋くらいしか居場所がなくて、嫁に追い出されたらどこに行ったらええねんみたいな(笑)、そんな人でもパソコンを持ち込んで原稿を書いていても怒られないし、おしゃべりしててもいいし、コーヒーを屋台で飲んでいてもいいしね。そんなんやりたいの?
浦: そんなのをやりたいなと思ってます。
絹: 洛西でできるのとちゃいますのん?
中: そうなんです。なので今、それの実験的なもので、集会所で色んなものを混ぜながら、どんな反応が起こるかなみたいな実験を3月までやっていて、それが本格的にもうちょっとしたら動き出すかなという感じです。
 

●洛西ニュータウンの今後に向けて、大きな実験が進んでいます

絹: 今、京都市が全庁を挙げて、「洛西“SAIKO”(さあ、いこう)プロジェクト」というものに取り組んでおられます。洛西ニュータウン、さあいこう、最高、再考(もう一回考えよう)と色んな意味を掛けていますが、空き巣が増えたり、高齢化したり、コミュニティの元気がなくなったりするところ、行政さんですから色んな硬い仕組みを用いてやろうとしていますけど、実はその水面下で京女三回浦井陽向さんとか、祭コインを追い求めるアヤしい(笑)、夢びとの中田社長みたいな人が、ソフトウェアの部分で裏から支えに入っていると、私は勝手に仮説を立てております。ですから京都市の人たちになり代わりまして、洛西ニュータウンの今後に向けての大きな実験が進んでいると。その結果、東竹の里の集会所で今日、えらいことが起こっていたという、そこにまさに居合わせたお二人に来ていただきました。お2人、何か言い残したことがありましたら、どうぞ!
中: 洛西だけじゃなくて、京都も人口が減って行ったりと色んな問題がありますが、それをみんなで知恵を出し合って、みんなでつくるみたいなことを、“祭コイン”でも洛西ニュータウンでも京都のどこでもできたらいいなと思っているので、アヤしがらずに声を掛けてください(笑)。
浦: コミュニティスペースをつくるのにクラウドファンディングを始めようとしているので、ご支援をお願いします!まだできていないのですが、頑張ってつくっていますので、よろしくお願いします!
絹: リスナーの皆さん、すごくアヤしく見えるけど、すごくまともな試みが動こうとしています。“京都祭コインCOMO”、是非意識してください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
投稿日:2024/02/01

第192回 ・だんだんテラスってご存じですか?~気軽に集まれる地域の居場所がある団地…

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藤: 藤本 恭輔 氏(一般社団法人カンデ 男山地域コーディネーター)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
        (藤本 恭輔 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。ごくごく最近の出会い、11月の17日でしたか、始めてお会いしました。お若い方です。一般社団法人カンデ 男山地域コーディネーターという名刺を頂戴しました。藤本恭輔さんです。藤本さん、よろしくお願いします。
藤: よろしくお願いいたします。
絹: 藤本さんは八幡市の男山団地、URですね。今はURになっていますけど、昔は住都公団、住宅都市整備公団と言っていました。
この間、初めてお会いして、意気投合して「ゲストに来て下さい」と無茶ぶりをして来ていただきました。
僕が知っている限りの藤本恭輔さんの情報をちょっとだけ紹介します。関西大学の建築系の学生さんで、ごく最近大学院卒業したて?
藤: したてですね。
絹: 俗にいうM2の卒業で、その後一般社団法人カンデというところの男山コーディネーターという職を選ばれました。後々これを紐解いていだだきますが、まずは番組タイトルとまいりましょう。今日の番組タイトル、先ほど二人で相談しました。「だんだんテラスってご存知ですか?~気軽に集まれる地域の居場所がある団地…」と題してお送りいたします。
この“だんだんテラス”、平仮名で「だんだん」と書きます。実はすごく注目している人(多くはないかもしれませんが)、特に都市計画系だとか、まちづくりだとか、地域を元気にしようという研究者の間ではよく知られた場所です。
そこへ私は2023年11月の17日、初めて視察におじゃましまして、藤本恭輔さんと出会いました。ではマイクを藤本さんにお渡しして、そもそも“だんだんテラス”って、あるいは男山団地って何?というところからお願いいたします。
 

■エピソード1 そもそも、“だんだんテラス”ってなに?

●男山団地のこと
藤: 男山団地は大阪府と京都府の府境に位置する団地でして、URの賃貸が約4600戸、分譲が約1400戸の合計6000戸の大規模団地です。そこを舞台に今、まちづくりをおこなっております。男山団地の商店街の空き店舗をお借りして、“だんだんテラス”というコミュニティ拠点でありながら、緊急拠点であるものを設けております。
絹: この間、チラッと教えていただいたのですが、やはり関西大学の江川研究室がメインになっている感じですか?
藤: そこが発端で始まって来たという感じで、今は別の方にバトンタッチしている段階です。
 

●なぜ“だんだんテラス”?

絹: 平仮名で“だんだんテラス”、このネーミングの由来ってありましたか?
藤: これは『団地で談話する』とか、『だんだん変わって行く』という意味を込めて、“だんだんテラス”ということです。
絹: これは掛詞ということですね。「だんだん」って、どこかの方言で「おおきに」みたいな意味、なかったっけ?
藤: それは知りませんが、他に視察に来られた方に「男山やから、男のだんだん。すごい男男しいね」と勘違いされたエピソードはあります。
絹: だんだん変わって行く、団地で談話する、そういう場所ということですね。
藤: 「まちについて考え、話す」ということです。
 

●“だんだんテラス”、イメージしてみてください

絹: これはラジオですので、残念ながら映像は付いてこないのですが、リスナーの皆さんに画が浮かぶような状況説明って、できますか。
藤: 1つは開口がガラス戸3枚ありまして、外からでも中が見やすいように、中からでも外が見えるような設えになっています。
絹: 商店街の空き店舗とおっしゃっていました。だから一階にあるんですよね。グラウンドレベルと言うか、本当に「何やってるの?」と、すっと覗ける感じ。この間も私が行った時、「すみません、トイレ貸してください」と、パッと入れましたし(笑)、二部屋あったのかな?
藤: そうです。今、二部屋お借りして、コミュニティ拠点と地域工房でやらせてもらっています。
絹: 靴を脱いで上がり込む場所と、靴のまま入れる場所があって、ピカピカというのじゃない。なにか手作り感満載で、ペンキを塗ってある所もわざと下手に塗ってあるみたいな(笑)。
藤: 当時の学生がDIYで赤色の壁を塗ったとは聞いていますね(笑)。
絹: それから木の棚があって、何か色んな大工道具っぽいものとか、役に立ちそうな物が置いてあったり、色んなチラシがいっぱい置いてあって…。
藤: そうですね。地域で行われる情報発信の場になっています。
 
           (“だんだんテラス”内装写真)
 

●毎朝10時にラジオ体操やってます

絹: 打ち合わせなんかもすぐできる…。それから視察に行った時、すでに何人かの住民さんがおられて、「ここで毎日ラジオ体操やっているの!」というおばさんがおられました。
藤: 毎朝10時からラジオ体操をやっています。
絹: 「“だんだんテラス”大好き!」みたいな空気を出している比較的高齢の住民さんが、わらわらとおられましたね。
藤: だいたいラジオ体操にも、平均で20人前後は毎朝来ていただいて、「毎日の健康のきっかけにもなっている」との声も聞いています。
 

●地元産の野菜の販売もやっています

絹: それだけじゃなくて、だんだんテラスの説明で、「学生が中心となって、年中無休で運営しています」と。そして「週三回、火・木・日と、地元産の野菜販売を行い…」
藤: ちょっと今は火曜日と木曜日の週二回でやっているのですが、地域の農家さんを三軒回って、お野菜を預かり、だんだんテラスで販売しているということも行っています。
絹: さらに「まちづくりに関するグループの会合にも利用できます」と。だから本当に予約もなしに、朝、開けておられるのは何時ですか?」
 

●365日、10時から18時まで開いています

藤: 朝10時です。ラジオ体操とともに“だんだんテラス”も開くという感じです。
絹: 10時から18時。(お昼休憩を取っていることもあります)と。
藤: そうですね(笑)。会議に出ていたりもするので。営業時間というよりは、「だいたい10時から18時に誰かいますよ」みたいなイメージでやっています。
 

●“だんだんテラス”とわたし、そして学生たち

絹: 藤本恭輔さんご自身は現役学生時代から関わっていらっしゃったんですよね。
藤: そうです。学生の時から関わらせてもらっています。
絹: 四年生から常駐を始めたとのことですが、結構大変じゃないですか?
藤: 大学からだと1時間から1時間半くらいかかるので、朝8時半に出て、帰ったら19時半、20時とかになる感じです。
絹: 噂によると、関西大学のゼミ学生や院生だとかが中心になって運営されていると。“だんだんテラス”の運営サポートスタッフと言いますか、大学側は何人くらいの人がおられたんですか?
藤: 今年度は大学院二年生の人がだいたい4人いますね。その方は有志という形で男山団地に関わってもらっています。
絹: 学生さんがこうやってお当番みたいな形でいてくれるわけですよね。あ、スマートフォンのエピソードを思い出した!「スマートフォンの設定がわからへんの。と行くと、この子らはちょっちょっとやってくれるのよ」と言っていたおばさんがいました。
藤: そうですね(笑)。ちょくちょく聞きますね。最近ならコロナの予防接種もネット予約しか無理みたいで、その話を聞いたりしますね。
 

●“だんだんテラス”は出来て10年が経ちました

絹: その辺が“だんだんテラス”が機能しているのがよくわかるエピソードですよね。“だんだんテラス”て、できて何年でした?
藤: 今年の11月16日で10年になります。
絹: 10年やっていらっしゃる地域の居場所、6000戸ある巨大UR団地の中で、予約なしに10時から18時まで大抵開いている。しかもお当番の学生さんたち、顔の見える関係の人たちがいてくれたりする。お話相手にもなる。あるいは相談事にも乗れるし、大工道具なども置いてある。
藤: そうですね。工房もあるので。
 

■エピソード2 まちの人にとっての“だんだんテラス”

●まちの居場所として
絹: リスナーの皆さんにさらに理解してもらえるように、「ある日のだんだんテラスでこんな事が起こりました」みたいなの、ありますか?
藤: 日常で言いますと、朝、ラジオ体操をした後は、住民さんでコーヒーを淹れて、30分から1時間くらい4~5人でコーヒーを飲みながら話して解散されるというのが、日常ですね。
絹: 常連さんはどれくらいなんでしょう。“だんだんテラス”をよく利用する人、たまに利用する人、それからほとんど利用しない人みたいな形で、層別ができるとしたら、時々でも来て、“だんだんテラス”に優しいまなざしを向けている住人というのは、どれくらいおられるんでしょうねえ。
藤: どれくらいいるんですかねえ…。
絹: 「あってよかった!」とか、「“だんだんテラス”やっててくれて、ありがとね」みたいな、時々「これ、差し入れのみかん」とかって持ってきそうな感じの人もいる?
 

●まちの灯りとして

藤: いただきますねえ、差し入れとか…。あと、18時までなんですけど、ちょっと作業していて19時くらいまでなった時、ガラス戸なのでまちから見えるんです。そうなるとおっちゃんが来て、「ようがんばってるなあ、元気もらえるわ」とかって、思わぬところに影響を与えているというか。
それから“だんだんテラス”は、真ん中に和紙照明があるのですが、常時点灯していて、それは「まちの灯り」というコンセプトで常に点けているのですが、やっぱり夜になると商店街のシャッターが閉まってしまうので、お仕事から帰って来た時に、「“だんだんテラス”の柔らかい灯を見て安心する」という声もあります。
絹: ということは、夜暗くなっても、18時を超えても消さないという不文律が、「まちの灯り」としてあるんですね。
藤: そうです。それも10年間続けてきたというのを聞いています。本当に思わぬところに影響が出ています。
 

●先輩方から学ぶこと

絹: 藤本さん自身は大学四年生の時から常駐を始めたとのことですが、その前の先輩方から10年間やられていたわけですよね。「こういうこと、気を付けてやれよ」みたいな、先輩方からの申し送りみたいなものはありますか?
藤: 住民さんによって特色があるので、こういう方はこういう対応をした方がいいといったことをお聞きしたりします。それから住民さんも仲良くなると、おうちでご飯を頂く時とかあるんです。例えば「お昼ご飯うちで食べる?」みたいな。「おいでよ」と言っていただけるのですが、極力住民と学生が1対1にならないようにとか、その辺の分別は色々学びました。
 

●学生が入るということ

絹: これは私の経験ですが、京都市営住宅で山科区に西野山市営団地という所があります。市立芸大が京都駅の近所に引っ越してきたわけですが、その市立芸大の6名の学生が西野山団地に入居するそうです。というのも稲荷山トンネル、新十条トンネルを超えれば、大学までバスで20分くらいしかかからない。そこで10月28日に「ようこそ、西野山市営団地へ」と、自治連合会の方々や福祉サービス協会の方々が中心になってイベントをされたんです。
やっぱり高齢化率68%という団地に若い人が入居しただけで、みんな目がキラキラしてね。みんなで焼き芋を作って、焼き芋をかじりながら「集会所で声楽の練習してもかまへんで!」とかって言ってましたね(笑)。
藤: “だんだんテラス”でも「若い子と話すと元気をもらえる」とか、「自分の孫と同じくらいだから、かわいい」とか、そういう声もいただきますね。
 

●ラジオ体操は健康維持のための装置として機能しているんです

藤: 先ほど毎朝10時からラジオ体操をやっているというお話をしましたが、一時コロナでどこも外出が自粛されて、なかなか運動できる機会がない時期があったと思うのですが、そのなかでも“だんだんテラス”では継続して行っていました。その時に平均40人くらいコロナ禍でも来ていまして、やはりそういう意味でも体を動かす日常的なきっかけになっているんだなとは思いますね。
絹: 保健と言うか、健康維持のための装置としても機能している“だんだんテラス”と。
藤: 病院でリハビリをするくらいなら、毎朝ラジオ体操に行くみたいな選択をされる方や、ラジオ体操をして、毎朝住民さんとお話をするだけで持病が軽くなったみたいな、そういうお声もお聞きします。本当に色んなところに影響されているのかなと実感しています。
絹: 6000戸もある団地だったら、歩いてくるのに遠い人もいるでしょうしね。
藤: 遠い人もいますし、隣のまちの樟葉というところから3キロかけて歩いてラジオ体操に来られる方もいます。
絹: ほう、団地外の人も来ていると。
藤: “だんだんテラス”は団地にあるだけであって、団地に制限されているわけではないんです。
 

●365日開けていると、思わぬ出会いが次々と

藤: それから365日開けていると、思わぬ出会いと言いますか、関東の大学院生がまちづくりに興味をもって突然やって来たり、大学の客員研究員の方が「まちづくりを研究しているから話を聞かせてくれないか」とか。
絹: この間の11月17日に、私がURの人に案内されて行ったのと、似たような人が時々来るんですね。
藤: それも先にアポなどなしに、ちょっとフラッと立ち寄ってみたということもあるんです。そういう人たちも拾えるというのは、365日開けているからなのかなと思います。
絹: 私の知り合いのまちの縁側で“ハルハウス”というのが千本北大路下がるにあるのですが、そこの縁側主人は80歳の元佛教大学の退官教授でいらっしゃるのですが、海外からも視察が来ますよ。
藤: すごいですね(笑)。
絹: やっぱりそういう所は、人を呼ぶのかもしれませんね。
藤: 前に来ていただいた客員研究員の方もイタリアの建築家の方で、英語での対応でしたので、グーグル翻訳を駆使しながらお話していました。
 

■エピソード3 リノベプロジェクト「ダンチ de コソダテ in 男山団地」のこと

●リノベーションの特徴 ~ 実験的住戸とプロトタイプと
絹: 17日に視察に行った時にいただいた「ダンチdeコソダテin男山団地 住戸リノベーション だんだんテラスだんだんラボ設計 研究活動成果集」という図面と写真を組み合わせたような冊子が、今、手元にあります。リノベーションについて、元々建築系の学生で研究されていたので、そっちの話もお願いします。
藤: このリノベーションは、関大がURさんと一緒に毎年2~3戸設計提案しているというプロジェクトで、男山団地の全住戸タイプ、間取りタイプの設計が終了したということで、今年は実際に設計して供給した住戸の居住者にヒアリング調査、住まい方調査を同時に行っていました。
このリノベーションの特徴としましては、教授の方と意見交換するだけではなく、教授の専門家の方にもお話をして仕上げていっています。
毎年住戸リノベーションをやっているのですが、昨年度の反省を活かして、今年度はどういうコストダウンができるのか。そういうプロトタイプと、実験的な住戸と、2つに分かれて、毎年提案していったというのが特徴なのかなと思います。
絹: 今、実験的住戸と言われましたが、例えば2つ隣り合ったおうちを繋げてしまうという実験もあったそうですね。
藤: そうですね。2戸1と言いまして、そのベランダの障壁を取ったり、最近ですと住戸の半分を土間にするような提案とかもあったりします。
絹: 「2戸セットで借りる暮らしの広がり」というタイトルで写真を見ていますけれども、お隣とのベランダ、非常時に蹴破って抜ける隔壁がないだけで、住戸というのは繋がるんだという発想ですね。
藤: これも子育て世帯向けで50㎡と50㎡、併せて100㎡で住むみたいな、そういう提案だと聞いています。
 

●できることから徐々にやってきた10年間

絹: こういう取組、URって、すごい地道にやっていますね。
藤: そうですね。やはりダイナミックには環境面でも経済面でもなかなかできないなか、できることから徐々にやってきたというのが、この10年間ですね。
でも“だんだんテラス”も365日開けるというのもすごい地道だし、毎年2~3部屋リノベーションを供給するというのも、できるところからということです。
絹: リスナーの皆さん、URの地道さの一面を感じていただけたらと思うのですが、この関西大学の江川研究室さんとの連係プレーだけではなくて、私が存じ上げているのは、京都女子大学の井上えり子研究室との連携「京女 X UR」です。京都にあるURさんの空き家空き室を10年間で10分の1に減らしたという実績を、井上えり子研究室はたたき出しているとのことです。それにしても関西大学の皆さんもすごいですね、よう10年、続きましたね。
藤: ほんとうに(笑)。今、URさんと八幡市さんと京都府さん、関西大学の四者連携でずっとプロジェクトをやってきて、各主体の努力があったのではないかと、勝手に想像しています。
絹: 実は私、本職は建設屋でしょ?京都府の出入り業者でもあるわけです。その発注者の京都府の建設交通部の浜田さんという部長さんがおられるんです。その浜田部長と住宅課の内藤課長が“だんだんテラス”に出入りしているらしいですね。
藤: なんか一度来ていただいたりしていますね(笑)。
絹: 「たこ焼きミーティングなんかで話を聞きに行ったんや」と。
藤: 「来るタイミングを窺っている」とお聞きしています。
絹: 京都府と八幡市とURと関西大学の四者が本当に地道なことをやってらっしゃいます。この事がたぶん地元のお住まいになる方の元気を引っ張り出している要素になっているんじゃないかなと思います。
 

●どうか是非、足を運んでみてください

藤: 僕も男山団地に住みながら研究させてもらっているのですが、やっぱり本などで見るよりも、実際にまちに行って体感しないとわからないなという部分はありますよね。それこそ地道な、足を運んでというところは大事だなと思いました。
絹: 私も11月17日に初めてお邪魔して、本当に短時間の滞在でしたが、肌で感じる、実際に来られている住民の方と短いですけどおしゃべりをする、住民の方々が本当に藤本さんたち学生さんを信頼されている、あるいはその存在を頼りにしている。ああいう居場所があることで、自分たちの健康がある部分担保されている。なんか「コイツら、いいよねえ」みたいなことを本当に態度で示してらっしゃる。
藤: そうなんです。身振り手振りでおっしゃっていただいています。
絹: 「ほんとにこれ、ラジオにするの?ちゃんと言ってよ!」みたいなこと、おじさん言っておられましたよね。非常にそれはこちらに伝わりまして…。ですからリスナーの皆さん、男山団地、直近の駅はどこでしたっけ?
藤: 京阪の樟葉駅です。
絹: “だんだんテラス”、10時から18時まで基本、オープンフリーにされています。わがまちにもこういう“だんだんテラス”ナンバー2、3、4、5みたいなのが、生まれてくるためにはどうすればいいのかを感じとるためにも、ノーアポでかまいません。差し入れなくてもいいです(笑)。是非訪れてくださいませ。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府の地域力再生プロジェクト、我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
“だんだんテラス”増えるといいですね。色んな所に。
藤: ああいう本当に気軽に立ち寄れる場所があったらいいなと思います。ありがとうございました。
投稿日:2023/12/06

第191回 ・地域と元気で楽しくする~地域のおしごと博物館ってご存じですか?

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鈴: 鈴木 千鶴 氏(一般社団法人未来コンシェルジュ 代表理事)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
         (右:鈴木 千鶴 氏  左:絹川)

 

絹: 皆様こんにちは。そしてこんばんはかもしれません。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。一般社団法人未来コンシェルジュという団体を率いていらっしゃる代表理事鈴木千鶴さんをお迎えしております。鈴木さん、よろしくお願いいたします。
鈴: よろしくお願いします。
絹: 鈴木さんは、ご本職は有限会社鈴木モータースさんの代表取締役でいらっしゃるとともに、色んな肩書をたくさんお持ちです。たくさん過ぎて覚えられないのですが、確か中小企業家同友会の女性部会長をなさっているのと…。
鈴: 三年目になります。
絹: それから男女共同参画市民公募委員。
鈴: そうです。女性経営者としてやはり女性が生き生きと輝ける社会の実現に市民の立場で参加させていただいています。
絹: ですからね、ネットで調べると色んな所でお名前を発見しちゃうんですよ。
鈴: 本人はあまり検索してないもので、わかってないですけど(笑)。
絹: そして西京区で地域活動を本当に地道になさっています。鈴木さんと私の出会いはごくごく最近でしたね。あれはなんという勉強会でしたっけ?“未来力会議”?
鈴: 京都市には中小企業を応援する部署がありまして、そこが2017年頃から“未来力会議”をやっていたのですが、去年からもっともっと経済的なお祭りを中小企業自らがやっていこうということで、“未来の祭典”が始まりました。今年が2年目なのですが、そのお勉強会で絹川さんにお会いしたと思います。
絹: 内緒でこそっと真面目な勉強会にも時々出ているんです(笑)。
鈴: そうですね、とっても難しいお話でした(笑)。
絹: さて、本日の番組タイトルですが、「地域を元気で楽しくする~地域のおしごと博物館ってご存知ですか?」と題してお送りいたします。
“地域のおしごと博物館”というイベントが最近あったんです。西京区の桂駅エリアで、10月7日土曜日に開催されたこのイベントをそっと覗きに、申し込みもしないで、突然現れてしまいました。
鈴: びっくりいたしました。
絹: 私もそこで起こっている出来事にびっくりしてしまいました。すごいんです。ではエピソード1、地域のおしごと博物館、西京区桂駅エリアで行われた10月7日のイベントについて、それからなぜこういうことをお始めになったのですかということを、ゲストの鈴木千鶴代表理事からお話しいただきます。
 

■エピソード1 “地域のおしごと博物館”って、そもそもなに?

●子どもたちがおしごと体験をします
鈴: この地域のおしごと博物館の一番の大きな特徴は、本当にある地域のお店に小学生がやってきて、おしごと体験をすることです。今、日本中でおしごと体験ブームです。商業施設のおしごと体験もあれば、大きな〇〇プラザというような所で、何百人を収容するようなおしごと体験もありますが、やっぱり嘘ものと言うか、作り物でしかありません。一方で、地域にはずっとそこでお仕事をされている地域企業が様々ありますので、半径500m、これは学区的な考え方もありますし、子どもの足で歩いて7~10分で移動できる小さな範囲で、本当のお店で子どもたちがおしごとを体験しにやってくるというものです。
絹: 「なぜ500mなんですか?」と、先ほどお聞きしたところ、即答されました。「子どもの足で7分なのよ」と。実際に10月7日に現地、桂駅の西側の辺に集合場所があったので、始めにそこに集まられて、A.B.C.D.E.Fと6つのお店にそれぞれのチームに分かれて歩いて行かれました。ショットガンフォーメーションのように、散って行かれました。
鈴: 拍手で見送ります。
 

●ほんまもんを体験するということ

絹: 私はいったいどのチームに付いて行ったらいいんやろうと、きょろきょろしておりましたが、そういうことです。地域のおしごと博物館って、最初にお聞きになると、内容をご存知ない方は、皆さん“キッザニア”を想像されるのではないでしょうか。それを鈴木さんの言葉で言うと、「あれすごく素敵で、お金もかけて企画もよく練れているけれども、ちょっと本物とは遠いわね」と。そういう感じもお持ちになっているのでしょうか。
鈴: そうですね。DJブースがありますが、今この三条寺町にラジオ局があって、ここに子どもたちが来てほんまもんを体験する方が、より地域の、京都市の子どもさんたちには良いことだと思います。
絹: リアルとバーチャルとは違いますよと。バーチャル体験よりも、もうちょっとリアルに寄った方の地域版がやりたいわねというところから始められたんですか。
 

●地元への愛着づくり ― 次世代を育てるために

鈴: はい。半径500mの学区、地元の地域を知るということが、保護者さん、小学生にとっても大事でして、小学生の時の想い出がやはり一生に宝物の始まりだと思っています。そこから地元を知って、地元に愛着を覚える、故郷の愛着づくりにもつながっている。そこがないと大学生になってから地域を勉強しても遅いと考えています。
絹: ここがどうやらキモです。半径500m限定のこころ、それから先ほどすごいキーワードを頂きました。「次世代を育てる要素が入ってないとまちづくりじゃない」ということと、それから地域への愛着。
鈴: はい、ふるさとづくり。
絹: それが基本でしょうと。
話は飛んでしまうかもしれませんが、自分自身はもう還暦を超えていますけれども、昭和の育ちで、小学生以降の教育、小、中、高、大とその中でやっぱり欠けていたなと思うのは、やはり地元に対する愛着です。僕らの時代は「愛国心」だとか、「地域好きやねん」とか、「日本て大好き」とかって言うと、「お前、右翼か!」と。
鈴: ダメでしたものねえ(笑)。
絹: 「ちゃうやろ!真ん中や、それが」と、今なら言い返せるんですが、当時幼い時は何か言い出しにくかった記憶が蘇ってまいりました。
で、我々が中小企業を経営して、社員さんたちと一緒に働いていく者の基本として、やはり「地域が好きでないとだめじゃない」という思いが、どうやら鈴木代表の胸には色濃くあるようですね。
鈴: そうですね。帰国子女とか、お父さんが全国転勤がある等、様々な事情がありますけれども、たまたま転勤で住んでいる地域であっても、そこに思い出とか、愛着とか、お友達関係とか、そういった思いや経験がその子どもの一生をつくっていくと思っています。ですから住めば都ではないですが、その地域を知ることは大事だと思っています。
 

■エピソード2 “地域のおしごと博物館”、ちょっと覗いてみましょう

●引率し、説明するのは、地域の高校生や大学生です
絹: 鈴木さん、10月7日のプログラム、少し具体的にリスナーの皆さんに想像していただくためのヒントをいただけませんか?最初にまず何が起こりましたか?
鈴: 保護者さんが必ず連れてきてくださいとお願いしています。小学生さんを一人ずつ大切にお預かりするのですが、もう1つ最初にお伝えしておかねばならないことがあります。引率して歩くとか、60分間の凝縮した体験内容になっているのですが、それを運行するのは地域の高校生と大学生なのです。ここが一番大きな関りをつくっているところなのです。
絹: それを目撃して、実はすっごい驚いたんです。集合場所はジェイネットハウジングさんという桂駅の西側近くの不動産屋さんで、そこに入りきれないくらいだったので、2か所に分けて集合をかけておられました。まず最初にきれいなガムテープ
に、ニックネーム(今日呼んでほしい名前)を太いマジックで書いて、記録のための写真を撮ります。「その写真に自分が写ってもいいという子は緑のガムテープ、顔出しNGの子はピンクのガムテープに書いてね」と最初にそのルールを説明されます。その説明をしているのも高校生です。
そしてもう1つ驚いたのは、そのリーダー、小学生を集めてそういう説明をしながら、アイスブレイクをやっているわけです。初めて会った子で、お互いに友達同士ではないかもしれないし、高校生と数時間でも一緒になる子たちの緊張を溶きほぐすためのアイスブレイキングです。このプロセスを、未来コンシェルジュの皆さんが宿題として出されたんですよね。「アイスブレイキング、自分で考えておいで」と。上手でしたねえ。
鈴: そうですね。様々、ネットで検索したらしいですけれども、やはり初めての小学生と仲良くなるということは、コミュニケーション能力を試すというか、チャレンジだと思っています。なかなか入れない小学生もいますし、1人の子ばかりが前に出てやるような小学生もいます。その子どもたちをどういうふうに順番を変えたりしながら、入り込めるようにするかというようなところから、高校生の体験、チャレンジが始まっています。
 

●行き先は、不動産屋さんや工務店、整骨院に花屋さん、ケーキ屋さんも…

絹: 小学生のチームがだいたい6~7人?
鈴: 一企業4名から引き受けられたら参加できるというルールがあるんです。ですから小さなお店でも店主と奥さまが2人ずつお引き受けになって、4名引き受けられるとなったら、参加資格があるので…。
絹: そして当日の10月7日は“ジェイネットハウジング”さんは不動産屋さん、“松本工務店”さんは大工さん…。
鈴: はい、6名でした。
絹: それから“りん整骨院”さんも行かれたし、“佳花園”というお花屋さんも行かれたし、“ポーラエステシラン”、“アランシア”というケーキ屋さん…。
鈴: いつも一番人気がケーキ屋さんになります。
絹: それぞれに分かれて行く前に、アイスブレイクをやって…。
鈴: 場を馴染ませるという。
絹: お互いに自己紹介をしあいっこもありましたね。それで分散して、先ほどの半径500mのこころです。小学生が7分くらいで行きつく範囲内にあるお店に散って行かれました。
 

●例えば工務店のプログラムは…

絹: そして私は松本工務店さんに。ご存知のように私は本職は建設屋ですので、どうしても工務店に寄ってしまいます。
ここでのプログラムをご紹介したいのですが、まず代表理事は松本工務店さんのプログラム、ご存知ですよね。ざっと松本さんとこの社長さんと大工さんたちがどんなに丁寧にプログラムの準備をされていたか、お伝えいただけたらうれしいです。
鈴: 二人組になって取り組むとのことで、材料もちゃんと全部刻んでおられて、印もついている所に、子どもたちが小さな家を完成させる。大きな金づちを持ってトントンと入れていく、そういった工程を体験されたと思っています。
絹: 私はそれを見て、本当に感心したのですが、犬小屋と言うにはもっと大きいサイズの、10センチ角くらいの柱で構造材(梁や柱や棟)それぞれに接合部が、ちゃんと専門用語で名前がついてあって、それを「順番はこうやで」と。掛矢という木の小槌の大型のものでこんこんこんと入れて、棟上げまでやらせるわけですよね。
「指叩いたら、大変やで」と言いながら、解体まで体験させる。僕はそれを見ていて教科書にかかれた絵で「これは柱、これは棟、これは梁と言うのよ」と説明するのと、一本一本コンコンと組み上げるのとでは全然違って、頭の中にスッと入るわと思いました。
で、小学生たちがもう楽しくてたまらないという顔をしていて、それをお母さんが後ろからじっと見ていらっしゃる。なんかいい雰囲気のワークショップでした。
 

●地元の企業の応援にも、社員教育にも、愛社精神にも…

鈴: おしごと体験は小学生だけを育てているのではなくて、中小企業の応援も大きな要素として入っているんです。ですから松本工務店さんを応援するという要素が入っておりますので、保護者さんに見て頂いて、また家を建てる時、是非地域の松本工務店さんにオーダーが入ればいいなというふうに思っていますし、松本工務店さんもこうした体験をするに当たって、社員さんと普段とは違う会話や時間をお過ごしいただいたと思っています。それが社員教育でもあります。で、社員さんにとっても、自分の勤めている会社が、「小学生に対してこんなことをする会社なんだ」というのは、働き甲斐にも繋がっているし、愛社精神にも繋がると思っています。
絹: 桂駅エリアにある松本工務店さんの会社まで歩いていきました。そしたら入り口の所に“地域のおしごと博物館”という旗がかかっています。いいデザインの、いいロゴの。そして作業場に入って行きますと、木工機械が何台か置いてあって、材料が置いてあって、長机が子どもたちを迎えるためにセットしてあって、保護者の人が座る観覧席みたいなパイプ椅子も用意してあって、きれいに掃き清められてあってと。わあ、歓迎されているんだなと、工務店さんの作業場って、こんなんかという感じで子どもたちが入ります。
今、社員教育の一環でもあると代表理事が言われましたけど、子どもたちにどんな出迎え方して、「大工のおしごとってこんなんよ」と伝えようと、一生懸命打ち合わせして、丁寧に準備しておられたんだろうなと思いましたね。
鈴: 1つ面白いエピソードがあります。これも工務店系だったのですが、「社員はいつも仏頂面で仕事をしているのに、子どもにはこんなええ笑顔で接しられるんや」と。とっても大きな社員の財産ができたというアンケート結果を頂いたことがありました。
 

●事業継承のきっかけに

鈴: それと鈴木モータースも参加したことがあるのですが、息子さんに手伝わせるきっかけになるので、事業継承の今日は初日になったというような、うれしいご意見もいただきました。
絹: なんかちょっと背中がゾクッとしませんか?多くの企業経営者が後継者について悩んでいます。色んな職人さんの後継者がいなくて、あるいは中小企業の後継者がいなくて、M&Aで企業が売りに出されるような現象が、ひょっとしたら日本全体の体力を奪うことにならないか。私もそういう心配をする者の1人ですけれども、どうやら鈴木代表理事率いる一般社団法人未来コンシェルジュの皆さんはその辺にもターゲットを当てていらっしゃるようです。
さあ、リスナーの皆さん、もう一度この地道なイベントについて、知っていただきたいなと思って、今日はゲストに来ていただいたのですが、10月28日に北区エリアでなさるもう一度こういうイベントがございます。このことについて軽く解説をお願いできませんでしょうか。
 

■エピソード3 地域を育てて地域に生きる「地育地生」のために

●10月28日、“地域のおしごと博物館”開催します!
鈴: もう来週になりますが、来週の土曜日に開催いたします。今度は10企業が集いまして、様々な企業がまた体験をいたします。これもまたとっても良い内容をご用意いただいています。今現在、4つが満席となっているのですが、残りまだ残席受付中ですので、ホームページの方でご紹介もさせていただいています。ぜひぜひご覧いただきたいと思います。
絹: ホームページで検索掛ける時は、“地域のおしごと博物館”と検索するのがいいんですね。
鈴: はい。ホームページがございまして、ご紹介しています。
絹: 実は10月28日の北区エリアの“地域のおしごと博物館”に参画される企業に、私の尊敬している企業があります。吉田創一社長率いる“フラットエージェンシー”さん。「ほんとに不動産屋さんか?」というくらい不動産の枠を超えて、地域づくり企業と言うべき企業です。その方がいったいどういう形で小学生を受け入れるプロブラムを社員さんと組まれるか、知りたくて知りたくて仕方がないのですが、僕、当日別の用事があって行けないんですよ。また後日談、是非聞かせて下さいませ。
鈴: 吉田社長ともその未来力会議で最初の頃からお出会いしておりまして、今回初めて“TAMARIBA(たまりば)”カフェさんを拠点に、60名の定員を引き受けます。保護者には必ずお1人ついてきてもらっていますので、120人は確実に“TAMARIBA(たまりば)”カフェさんに集合いたします。やっとここまで開催できたかと私にとっても記念の開催となります。
今回12回目になりまして、これを達成しますと、京都市で開催していないのが東山区、右京区、上京区の残る3つとなりますので、もしこれを聞いていただいて、「やりたいわ」という所がありましたら、是非手を挙げていただきたいと思っております。
 

●地蔵盆のようにすっと継続して、そして京都中に広げたい

絹: 小学生に地元の企業やお店の仕事をバーチャルではなく、リアルに体験していただくという、本当に珍しい企画です。それを率いるのが高校生であったり、大学生であったりすると。そういう体験の場を支える、丁寧に準備する大人がその背景で静かに見守っていらっしゃる。これはすごいという気がいたします。そしてこれが広がって行くといいですよねえ。
鈴: そうです。本当に地蔵盆のごとく、そこにずっとこのイベントが継続していくことを願っております。そして暖簾の形になっているこのフラッグが、京都中にかかるといいなと思っているところです。
絹: 私がキーワードとしてアンダーラインを引いているのは、「半径500m限定のこころとは」、「次世代を育てる要素が入っていないとまちづくりではないと思います」という鈴木代表のお言葉、それから「これから小さく多発がキーワードだと思います」とおっしゃったこと。「大きなイベントではなくて、こじんまりしたものを同時多発的にやっていくのがアフターコロナの我々の在り方かもしれませんね」ともおっしゃっていましたね。
 

●こじんまりしたものを同時多発的に

鈴: 売上、社屋の大きさ、借金の大きさが値打ちだみたいな時代から、コロナを経て、やっぱり「地域に根差した」とか、「小さく、その中で楽しく」というようなことがキーワードになっていくと思っていますので、地域を育てて地域に生きる、「地育地生」という四文字熟語を作っているところです。
絹: 「地産地消」じゃなくて、「地育地生」、なるほど。
鈴: 全てのことにおいて皆さんが「地域を育てるのは自分たちだよ」と。文部科学省ではないし、国でもない。やはり中小企業家ができる地域活動だと思います。
絹: 「地域を大切にして、地元を愛さずして、どこが中小企業経営者やねん!」と。
鈴: 決して興味のないことでされる必要もないと思うんです。いっぱい課題はありますので、地域資産、地域課題を元に、地域活動を是非小さな中小企業家が小さく起こしてもらいたいと思います。
絹: リスナーの皆さん、いかがでしたか。本当に地元に対する思いが強い中小企業家同友会の女性部会長さん、鈴木千鶴さんをお迎えしました。
この番組は心を建てる公成建設の協力と我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
投稿日:2023/10/26

第190回 ・延べ15人の子どもが参加!~町家改修・誰でも左官workshp…

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河: 河井 杏子 氏(京都市都市計画局まち再生・創造推進室)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
           (河井 杏子 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。そしてこんばんはかもしれません。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。河井杏子さん。まだ知り合って…、ふた月前ですかね?
河: そうですね。
絹: 河井杏子さんは京都市都市計画局の中のちょっとかわった部署、まち再生・創造推進室という部署があります。その中でも洛西SAIKO Projectの事務局をなさっています。確か技術系の?
河: はい、建築職です。
絹: 一級建築士?
河: ではありません(笑)。目指しています。
絹: 旦那さんは一級建築士事務所ということで、元々は建築事務所にお勤めで、京都市には中途採用ということで来られました。私とは役所の中のコミュニティナースのブレインストーミングミーティングみたいな勉強会で、初めてお会いした方です。河井杏子さん、よろしくお願いします。
河: はい、よろしくお願いします。
絹: さて、今日の番組タイトルなのですが、「延べ15人の子どもが参加!~町家改修・誰でも左官workshop…」と題してお送りいたします。
さて、リスナーの皆さん、河井杏子さんのゲスト出演、実は急に決まったんです(笑)。昨日、申し込みに行って、それもスマートフォンでフェイスブックを覗いていたら河井杏子さんの書き込み「町家左官workshopその3」という形で、ご自宅の町家を改修している写真が5~6枚出てきました。それも子どもたちがプロの左官屋さんと壁塗りをやっているところが出てきて、『なにこれ!』とピンと来て、「河井さん、これからちょっと時間15分いいですか?」と市役所のまち再生・創造推進室におじゃましたわけです。
私は感覚人間なので、理屈ではなく、なんかピンときた。なんかすごいことが京都の我々の周りで起きているみたいな直感からお呼びしたゲストです。ということで、河井杏子さん、よろしくお願いします。
 

■エピソード1 そもそも何が起こったんですか?

●なぜ町家に住むのか
絹: ではエピソード1から入ります。そもそも何が起こったのですかというところからお願いします。
河: なんで町家に住むのかということですかね。私たち家族4人暮らしなのですが、ずっと京都市内の賃貸マンションに暮らしていまして、子どもの成長と共にだんだん手狭になってきているので、将来も見据えて、どこかに引っ越したいな、できれば一軒家を持ちたいなというところで、2~3年かけて探していたのですが…。
絹: フェイスブックの書き込みで気が付いたのですが、河井杏子さんはお子さんたちのことを、そこでは1号2号と表現されていて(笑)。
河: 我が家の1号2号です(笑)。長男と長女で、今は中学校1年生と小学校5年生です。
絹: 1号2号というのが、お子さんたちのことだと気が付いて笑いました。その1号2号を引き連れて、「どんな所に住もうかね」と新居探しも一緒に連れて歩かれたそうですね。
河: そうですね。全部一緒に連れて歩きまして、たどり着いたのが明治36年築の今の三軒長屋の町家です。
 

●築120年の京町家に出会って

絹: さっき2人で計算したのですが、明治36年と言うと今から120年前と、結構古いですよね。
河: そうです。ただ、どんどん焼けというのが昔ありまして、そのどんどん焼けで一度焼けている地域になるので、京都の中で言うと割合若い町家になるそうです。先斗町など、どんどん焼けで焼けてない地域は、それこそ江戸時代からの町家が今も大先輩でシャキッと建っているので、町家から見たら、まだちょっと若いらしいです(笑)。
絹: ほう、「120歳と言うても、まだ若造でっせ」という古い町家がまだ元気なのが京都。先ほど二人で前打ち合わせで話していたのですが、やっぱりさすがご夫妻で建築の仕事をされているだけあって、「町家って、京都の財産だよね」みたいな共通認識をお持ちなんですよね。
でも120年経っていると、結構ガタが来ていませんでしたか?
河: でも前にお住いの方が、ちゃんと大切に使われていたという形跡があって、適切にメンテナンスをされているので、構造的に大事な部分というのは、すごく元気で大丈夫でした。
絹: 柱などの構造体の建ち直しとか、傾いていたものを大工さんに直してもらったりといったプロセスはありました?
河: ありました。
絹: 僕らの世界で垂直に戻すのを、「建ち直し」と言ったりするんです。私もちょっとだけ現場にいましたので(笑)。そういう柱の傾きを直したりするところ、お子さんは傍で見ることはできたんですか?
 

●古い町家に不安がいっぱいだった子どもたちは…

河: 直接見ることはできなかったのですが、一部ダメになった柱を入れ替えてくださった時、束石と言う柱を支えている石(有機的な形をしている)、ピタッと新しい柱の底の面をその有機的な石の形に削りながら、合わせて載せてびしっと柱を建てるというところは見せていただいたので、「神業だ」と言っていました(笑)。
絹: 1号2号のお子さんたち、長男さん長女さんが「すご!」て、言ってはったらしいですね。
選ぶ時から1号2号さんをお連れになった。買う前からずっとどこに住むのか、見ていらしたお子さんたち、御年120歳の京都の中では比較的若い町家、「ほんとに住めるの?」と言われたそうですね(笑)。
河: 「こんなん住めるの?」から「ほんまに買うん?」という(笑)、「今のままでも狭いけど、いいで」みたいな(笑)。かなり不安になっていましたね。
絹: そのお子さんたちが徐々に変化されていくのは、どういうルートを辿っていったのでしょう。不安でいっぱいだったお子さんたちがだんだん目の色が変わって行くのは、最初はどの辺からだったのでしょう。
河: 古い部分で再利用できないところを、一部解体して、実際に工事が始まった頃から、興味津々の目に変ってきて、何が起きるのか、次は何が起きるのかという興味に変っていきましたね。
絹: 今のそういうお話を聞いておりますと、お父さんお母さんの目論見はまっているんじゃないですか(笑)?
 

●子どもたちに建築の世界を体感してほしかった

河: そうですねえ(笑)。傍から見るとボロボロで、「どうするの?」というような町家を敢えて買った理由としては、自分たちが関わって来た建築という世界が、どんな世界なのかというのを、子どもたちに体感して欲しかったというのが、一番なので…。
絹: リスナーの皆さん、このご夫婦は自分たちの仕事をお子さんたちに伝えたい、どういう仕事をしているのか見せたいという強烈な思いに支えられて、子育てをされているようです。幸せなお子さんだなあと、今すごく思います。我々のように子育てをしてきた、あるいは現在子育てしていらっしゃる親御さんたちはどのように感じられますか。僕の子ども時代もそうでしたけど、『自分のお父さんは何しているんだろう』と。一応建設会社ですけど、いつもいないし、何しているのかわからない。家業ですので、大人になって会社に入って、上司として仕えて初めてなんとなくわかるとか…。
例えば河井さんは今、行政マンですので、役所には無茶苦茶種類がありますよね、行政の仕事って。そうするとお子さんたちが、まち再生・創造推進室など、想像できないですよね。そんななかで、ほんとにものすごく丁寧に関わっていらっしゃった建築という分野のあるべき姿だけではなく、職人さんたちのお仕事も今回しっかりと体感させられたわけです。左官屋さんは何とおっしゃいましたっけ。
 

■エピソード2 “誰でも左官ワークショップ”のこと

●子どもたち、やってみるか?
河: 宮部さんですね。
絹: 宮部さんという、この人もたぶん珍しいタイプの左官屋さんなんですよね。子どもたちが現場に入ってきて、「じゃまや!」とは言わない。「やってみるか?」と。動画もフェイスブックで見ました。
河: そうなんです(笑)。すごく丁寧に…。
絹: お若い社長さんみたいですね。左官業界も後継者と言うか、なかなか職人のなり手がなく、さらに左官屋さんが活躍できる工事現場が減ってきて大変な思いをされている中で、よく付き合って下さいましたよね。その左官屋さん宮部さんについて、少しエピソード追加でいただけますか?
河: 今回丸一日かけて、土壁を補修するということをやりました。土壁の下地になる「木舞(こまい)」と言う竹で編む下地もあるのですが、それも含めてみんなでやりたいと、宮部さんに相談したところ、「もちろんやってあげるよ」と、ご快諾いただいたわけです。どうしても日曜日に開催するしかなくて、本来ならば宮部さんはお休みの日なのですが、朝の8時頃から夕方の6時頃まで、ずっと現場に張り付いていただいて…。
 

●「木舞(こまい)」ご存じですか?

絹: リスナーの皆さん、「木舞(こまい)」というちょっとだけ専門用語っぽい言葉が出ましたが、ご存知でしょうか。竹を細く割いた棒と縄ひもで作りますので、「竹木舞」とも言います。私自身も建築の教科書で学生時代にチラッと見た程度で、自分でそれを編んだ経験はありません。ただ私の祖父母の家にはありまして、土壁が壊される時に中からそれが現れたとか、地震等の災害現場に入った時に、昔の伝統建築が壊れて現れたとか…。「でも思ったより耐震性能は高いんだよなあ」と、一緒に研究している人から教わりました。「木が舞う」と書いて、「木舞」。土壁の下地となるものです。それを子どもたちが編ませてもらったと。
河: はい、全部やりました。
絹: それを聞いて、ちょっとびっくりしましたね。
河: 私も宮部さんも主人も、ちょっと子どもたちには難しいかなと思って、当初は木舞は大人でやって、土壁の補修を子どもたちでやってもらおうかと話していたのですが、下は3歳から最年長は中学一年生13歳までの子どもたちでやってしまったんです。
絹: 1号ですね?
河: そうです(笑)。竹をそのサイズ(横幅・縦の長さの決まった細い竹)に切り出すところから全部子どもたちでやって、宮部さんに教わりながら編んでと、全部子どもたちでやっちゃいましたね(笑)。
 

●延べ15人の子どもたちで全部やっちゃいました!

絹: タイトルにもありましたが、延15人の子どもが参加と。これ、1号2号だけなら2人ですよね。あと13人はどこからわいて出てきたんですか(笑)?
河: 2つありまして、1つはプライベートの1号2号の保育園のお友達で、今は違う学校になってしまっている子たちです。もう1つは京都市役所の仲間で、同じまち再生の職員さん、それから庁内でイノベーションを起こす取組をされている“京都イノベーションスタジオ”という部署があるのですが、その取組の一環で形成されている庁内のワーキンググループのメンバーに声を掛けて、お子さんを連れて、もしくは単独で大人だけでという形で参加して下さいました。
絹: 私がついつい反応してしまいそうなのが、分野横断ワーキンググループ、名称は京都イノベーションスタジオ。それの主人公が葉山和則さんという人物なのですが、今、総合企画局で都市経営戦略室におられます。この方も2年前のこの番組、まちづくりチョビット推進室のゲストだった方で、色々ご縁を感じますが、まあ、葉山和則さんも面白い人物なんですよ。
で、それぞれの親御さんが「子どもたちに行かせる!」とばかりに、くっついて行ったわけですよね。さあ当日、宮部左官さんの休日にも関わらず、8時から夕方までみっちり子どもたちの左官ワークショップが成立いたしました。
 

●「絶対また来るから!」と帰って行きました

絹: 子どもたちの感想はどうでした?
河: もう楽しくて仕方がなくって、お1人の子はその日帰って、小学校の宿題の絵日記に、「今日は土壁やってきた!」というふうに書いてくださったようです。
絹: 絵日記ということは、夏休み?
河: いや、ではなくて絵日記が宿題として出ているらしいんです。だいたいみんな子どもたち、帰る時には「帰りたくない」と言ってくれて、「絶対また来るから!」と言って帰って行きました。
絹: 「また来るから…」それをいかに解釈するのか。タイトルでも申し上げました“誰でもワークショップ”、今回は宮部さんのご協力で、竹木舞を編むこと、土壁を塗ることだったのですが、まだ完成していない?
河: そうですね、まだ先は長いです。
絹: ということは、第二弾の“誰でもワークショップ”がありうるかもしれない。
河: しれません(笑)。
絹: さあ、どんな現地体験ワークショップになるでしょうか。また仕上げの段階に入っていくと、色んな事があるかもしれませんねえ。さあ、その河井ご夫妻の子育てに対するワルダクミが、着々と進行しているという臨場感を、リスナーの皆さん、お感じいただけたでしょうか。
先ほど、お聞きしておりますと、着々と子どもたちに色んな体験をしてもらいながら、住まいを完成させていくというプロジェクトの企て以外に、完成した後も何やらワルダクミをご夫妻は胸の内に秘めていらっしゃるという聞き込みがございました。完成予定が10月?
河: 目標は10月ですが、11月になるかなあみたいな。
絹: 職人さんだけに任せていたらある程度読めるけれども、そこに子どもが介入するとしたら延びる要素しかないじゃないですか(笑)。
河: まあ、こうなったら、体験を増やしていきたいと思います。
 

■エピソード3 まちに、地域に開く家にしていきたい

●「見世の間」を住み開く
絹: その完成した後の河井邸に関するタクラミについて、お話いただけますでしょうか。
河: 京都の町家には前の通りに面したお部屋に「見世の間」という場所があるのですが、私たちはその「見世の間」を地域に開けて、コミュニティの場づくりになるような場所にしたいと思っています。その「見世の間」でイベントをやるということだけではなく、我が家の「見世の間」に来られる、集われる方が、うちの町内や学区などの方々との新しい繋がりができたり、何か地域貢献・社会貢献ができるようなきっかけづくりの場になるような仕込みができればと考えています。
絹: これをお聞きした時に、壮大なタクラミやなあと思いました。「住み開き」という言葉を大切にしている人たちが、私の友達には多いのですが、実は大変なことです。昔から町家にお住まいになっている方は、自然と奥の間(家族のプライベート空間)と、見世の間、縁側のようにまちに対して住み開いていく(ここからは内、ここからは外みたいなのがちょっと緩む)ところがあったと聞いております。「見世の間」をまちに住み開くことで、ひょっとしたら町内会の寄り合いがそこで行われるかもしれませんし、極端な例ですけど、「子ども食堂をやりたいので、そこを使えませんか」とか、何か色んな人たちがやってきそうですよね。もう延べ15人、左官ワークショップで、年若いファンがついちゃったので(笑)。
河: そうですね。「また来るで!」と言われたので(笑)。
 

●住み開く活動のなかで、人との繋がりを学んでほしい

絹: こういうことが実際に起こっているんです。これはどうやら河井ご夫妻が設計事務所を営んでいらっしゃるという特殊事情とは言い切れないかもしれない…。
河: そうですね。建築って難しく考えられがちなのですが、結局は人と関わりながらでないと成り立たない職業でして、それって建築だけじゃなくて、私が今いる行政もそうなのですが、どんな仕事をしていても人と繋がりながら自分が生活していく、子どもを育てていくことなので、うちの1号2号にも見世の間を住み開いていく活動のなかで、人との繋がりを学んでほしいなというのも、1つの教育方針としてあります。
絹: リスナーの皆さん、これ本当に河井家の教育という通奏低音でありますけれども、自分のところだけではなくて、こういうお家ができると、そのエリアが少し変わるはずです。風通しが少しよくなって、居心地が少しよくなって、そしてある意味機械警備に頼らない、セキュリティ度もアップする、おせっかい指数が少しそのエリアで上がる。そんな気がします。
私の夢はコレクティブハウジングと申しまして、賃貸ベースですけれども、何軒かの家が関わりあって住まう暮らし方です。共同リビングなんかを介して助け合いが起こる、その結果第二子第三子が生まれやすくなるという実例が、日本でも関東圏で2000年初頭から1ダースほど出来ています。そういう実験がしたいなと言っておりましたけれども、まさにそれとこの河井さんたちの「どこでも誰でも左官ワークショップ」は似通っているというか、たぶん同じ通奏低音の上にある兄弟プロジェクトのような気がしてまいりました。
河: ありがとうございます。
絹: こういうプロジェクトは同時多発的にいくつもなんとなく発生して、それぞれのプロジェクトの主人公たちが何となく知り合いで、「あのプロジェクト、いいことやってるからちょっと真似しよう」とか「手伝いに行こう」なんてことが、今後起こってきたら素敵だなと思います。
この番組は心を建てる公成建設の協力と我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。皆さん、注目してくださいね。
投稿日:2023/09/19

第189回 ・京都に若者子育て世帯が住む!まずは洛西から一気呵成に~「洛西SAIKO Project」

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前: 前田 史浩 氏(京都市都市計画局住宅室長)
堀: 堀崎 真一 氏(京都市都市計画局まち再生・創造推進室都市の未来創造担当部長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
      (左:堀崎 真一 氏  右:前田 史浩 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。そしてこんばんはかもしれません。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。このスタジオの本当にご近所さんからお二方お招きいたしました。京都市都市計画局まち再生・創造推進室、そして肩書がもう1つあって、都市の未来創造担当部長であられる堀崎真一さんです。堀崎部長、よろしくお願いします。
堀: よろしくお願いします。
絹: 堀崎さんとの出会いは本当に最近で、この4月の1日に東京からと言いますか、国交省から京都市にご着任されたと聞いております。ネットで堀崎真一さんという名前を見ますと、住宅局が長いようで、あっちこっちで講演をしまくっておられるようです(笑)。ですから皆さん、期待していてください!
それからお二方目のセカンドゲスト、同じく京都市の都市計画局からお越しいただきました。住宅室長の前田史浩さんでございます。
前: よろしくお願いいたします。
絹: 非常に熱い行政マンでいらっしゃって、私のような素人が議論をふっかけに行っても、ちゃんと聞いてくださるという懐の深いお方です。よろしくお願いします。
そして先ほどお二方と相談して決めた今日の番組タイトルを申し上げます。「京都に若者子育て世帯が住む!まずは洛西から一気呵成に~“洛西SAKO Project”」と題してお送りいたします。
リスナーの皆さん、“洛西SAKO Project”って、聞いたことがありますか?洛西ニュータウンで何かこれからすごいことが起こりそうで、ワクワクしております。そのことについて聞いた事のない人のために“洛西SAKO Project”について、まずは堀崎さんにまずはマイクをお渡ししますので、教えて下さい。じゃ、行きましょう!
 

■エピソード1 そもそも“洛西SAKO Project”って、なに?

●都市の未来創造担当は、こんなことを進める部署です
堀: まずは僕のポストについてお話したいと思います。都市の未来創造担当なのですが、この4月にできて、京都市の都市の成長戦略を実現していくという目標のためには何でもやるというポストになります。例えば、この4月に15年ぶりに都市計画の大幅な見直しをしたのですが、これをとにかく実現するため、ディベロッパー等に働きかけて、働く場所や住まいなどを生み出していくといったこと。さらに洛南新都でも産業の集積を進めるため、今、都市計画の見直しを進めています。その他、まちづくりのDXを進めるなど、色んなことをやるポストではあるのですが、その仕事の中の1つが、今回の洛西ニュータウンを始めとした洛西地域のまちづくりとなっています。
絹: なんでもやれとは、京都市さんもエラい注文を出しますなあ。
堀: 逆に自由を与えられているので…。
絹: 好きにやれみたいな部分もあるのですか?
堀: そういうことです。
 

●洛西地域のポテンシャル

堀: さて、“洛西SAIKO Project”の概要なのですが、洛西地域にまだ行かれたことのない方がいらっしゃるかもしれないので、簡単にご説明します。西京区にありまして、非常に自然が豊かな地域で本当にたくさんの樹木がある地域です。公園も非常に多くて、住環境が非常に良い、子育て施設も非常に充実した、洛西ニュータウンを中心としたエリアが対象になっています。
絹: 確かあの一角に日文研?
堀: あります。京都大学もありますし、学術機関は揃っていますね。
 

●洛西のまちづくりを次のステップへ進めるために

堀: この周りで近年、開発が進んでおりまして、京都の縦貫道も開通しましたし、阪急の洛西口もできましたし、JRの桂川駅も開業するなど、最近は非常に利便性も高まっているというエリアです。バス事業者も4事業者が走っていて、京阪、京都交通、阪急バス、ヤサカバス、そして市バスとすごい頻度で運行されています。非常にポテンシャルを秘めた地域ではあるのですが、例えばニュータウンで言うと、まち開きからもう40年が経過をしており、更新のタイミングを迎えているのです。ですからまちづくりをこれまでから次のステップへと進めて行く必要があるということです。
今回の“洛西SAIKO Project”は、この洛西地域の魅力をもっともっと高めるために、前提条件なく、あらゆる壁を突破して、一気呵成に施策を推進していこうと、全庁一丸となった取組になります。4月に本部会議を立ち上げて、これまで検討してきたのですが、7月27日に中間の取りまとめを公表しています。
具体的な中身について、詳しくはホームページを見て頂ければと思うのですが…。
絹: リスナーの皆さん、本当にぎっしり書いてあるので、その情報量を平仮名化して短くまとめるって、本当に難しいんですよね。本部長が“洛西SAKO Project”の坂越さんという副市長さんで、実はこのスタジオにも少し前に座っていただきました。
「どんどんやるからね!期待してよ!」と帰って行かれましたけれども(笑)。それを具体的に今日教えていただきます。さあ、どうでしょう。
 

●便利で賑わいのあるくらしのために

― タウンセンターリニューアル、サブセンターブラッシュアップ、建築ルールの見直し…

堀: まずニュータウンのタウンセンターにラクセーヌ専門店街という商店街があるのですが、そこを全面リニューアルします。
絹: 高島屋さんとかがある所ですか?
堀: そうです。そこが12月にリニューアルオープンします。それからニュータウンの中にサブセンターがあるのですが、サブセンターのあり方についても住民の方と議論していくということを開始します。
さらにニュータウン自体の都市計画を見直して、今まで住宅地には基本的に住宅ばかりだったのですが、そこに店舗や事務所が立地できるように、都市計画の見直しをして、住むだけではなく、働く場所や店舗などもうまくミックスさせて、暮らしやすいまちづくりをしていこうということで、団地の一階をリノベーションして、カフェや食堂にしたり、テレワークができるようなコ・ワーキングスペースを設けたりとか、そういったことができるように見直しを進めて行くというのが、例えば1つの取組の例です。
絹: やはり賑わい創出、まちに人がいる、お家から出てくるということは、一階部分に人が行きたくなるような、サードプレイスと言いますか、居場所と言いますか、「おいで!」「僕ら、行ってもいいのね」みたいな所、そういう所をたくさんつくろうという感じが含まれていますね。
 

●若者を呼び込む住まいづくりのために

  住みたい人はいるのに、住宅が足りない…

堀: さらに住まいづくりにも取り組んでいきたいと思っています。洛西地区の最大の課題は、住みたい方はたくさんいらっしゃるのですが、住めるような住宅があまり多くない、供給されていないということが課題としてありますので。
絹: 具体的に言うと、高いということですか。
堀: 高いし、空き家も実際にあまり多くないところはあるのです。公営住宅はあるのですが、それ以外の住宅ではあまり空きがないということです。
絹: 府営住宅もあるし市営住宅もあるし、それからURもあるんですよね。その辺り、だいたいどれくらい空いているんでしょうか。勝手なイメージですけど、10%や20%、ひょっとしたらもっと空いていて、割合お年寄りが住んでいる所が増えて、若い人が少なくなっているような、勝手な素人のイメージですけど、合ってます?
堀: 洛西で言うと、市営住宅・府営住宅はだいたい2割程度の空きがあります。おっしゃったように市営住宅で言うと、階段でエレベーターのない住戸では、上の方が人気がなくて、下の方にしかも高齢者がたくさんおられるという状況です。
絹:それを何とかリノベーションして、若い人に入ってもらおうという作戦が“洛西SAKO Project”の中には1つの柱としてあるんですよね。
 

●市営住宅を民間事業者がリノベーション

堀: そうです。市営住宅の空き住戸を民間事業者に貸し出して、民間事業者がリノベーションして、子育て世帯に貸し出すというような取組も1つありますし…。
絹: その時の大事な眼目として、若い人、子育て世代が入れるように安くしてよと。確か市長は、記者発表や取材の時に、「京都市は市営住宅の空き室で儲けようとは思わない。安く出すから、安くしてよ」と詰め寄られたという噂を聞くのですが(笑)、事実ですか?
堀: そこのところは詳しくは承知していませんが(笑)、やっぱり安く住んでもらうのは大事だと思っています。
それからもう1つは、市営住宅の間取りは割合昔の間取りで、部屋が多いというところがあるので、今回事業者さんで所謂3DKを2LDKに変えたり、もっと大胆に1LDKに変えたりとか、部屋を大きくして若者・子育て世代に入っていただこうという工夫をされています。
 

●“京女×UR”の成功事例から

絹: 堀崎部長は東京におられたので、京都女子大学の井上えり子研究室のことを、あまりお聞きになったことがないかもしれませんが、京女×URって、結構有名ではなかったですか?
堀: 東京でも有名ですよ。
絹: その結果なのか、洛西のURさんが管理している所は空きがかなり市営住宅・府営住宅に比べて少ないと。これは10年間かけて、京都女子大の学生さんたちがリノベーションの絵を描いたものが若い人に受けてという話を井上先生から聞いたことがあります。
堀: その通りで、90㎡くらいの部屋を1LDKで出したり、やっぱり人気なんですね。そこを見に来た人が、普通のURの住宅を見て、環境を気に入って、URの普通の住宅にも住むようになって、入居率が上がっているということで、相乗効果になっているようです。
絹: それを聞いてびっくりしまして、京都市、URに負けてなるものかですよね。今度の“洛西SAKO Project”は期待できるところですね。
 

●タウンセンターに 賑わい×マンションを誘導

堀: 市営住宅のリノベーションもやるのですが、それと併せてタウンセンターについても取り組んでいきます。一般的なタウンセンターは現状ではマンションは建てられないのですが、低層部に商業施設を入れればマンションもタウンセンターに建てられるようにしようと、都市計画の見直しもこれからしていきたいと考えています。
絹: 低層部に賑わい施設、人が寄って来るようなものをつけてくれたら上は人が住むようにできるよと、ニンジンをぶら下げたわけですね。
堀: いやいや(笑)、タウンセンターは賑わいも大事なので。
絹: タウンセンターは確か洛西ニュータウンは4学区あって、それぞれの学区に1つずつありましたっけ?
堀: それはサブセンターですね。タウンセンターは一番真ん中の高島屋がある所に1つです。
絹: 商業施設集積のタウンセンターで、高島屋さん、エミナースなどがある所ですね。
堀: エミナース、ラクセーヌ、高島屋さん、ニトリと、なんでもあります。
絹: おさらいしますと、タウンセンターにはラクセーヌさん、ニトリさん、高島屋さん、エミナースさんなどがある所で、サブセンターは学区のそれぞれの拠点となる公民館的なものという位置づけですね。
 

●ニュータウン内の住宅を買取販売

堀: 住まいづくりの面では、市の住宅供給公社が既存の空き家を買い取って、リフォームして売るという買取販売に乗り出したりとか…。
絹: 戸建て住宅なんかも、京都市の住宅供給公社さんが買うよと。そして流通するようにリフォームして、背中を押すよと。
堀: その他、今は戸建て住宅街は規制があって、あまり敷地を分割できない都市計画になっています。しかし今の若い世代はあまり広いお家は買えないし、そもそもそこまでの広さを求めてないので、必要であれば敷地も分割できるように規制も見直す必要があるかどうかを、住民の皆さんとこれから相談していきたいと考えています。
絹: なにか本当に、若者・子育て世代が住むんだというのが打ち出されていますね。
 

●公園の魅力アップ ― 遊具やトイレのリニューアル、公園の使い方もみんなで考えよう

堀: さらに公園が使いやすいと子育て世代が来てくれるということで、これまでも遊具を充実したりなど、進めてきたのですが、さらに遊具の更新をどんどん進めたり、トイレが古くなっているので、トイレのリニューアルも進めたり、公園にキッチンカーが出店したりなど、今まで公園でできなかった事もできるように、新しい使い方を、これも地元の人たちと相談しながらつくっていこうというのも今回の取組です。
絹: ソフト部分ですね。これ、建設局のみどり政策推進の連中が社会実験を少し前に仕掛けて、「公園で焚火したらあかんのか」みたいな挑戦をしたり、キッチンカーが来たりしていました。その社会実験が洛西に繋がるのかあ!なるほど。
 

●芸大跡地の活用へ

堀: それから芸大跡地がありますので、ここに新しい賑わいを創出すべく、あるいは雇用を創出すべく、早ければ9月に事業者の公募をおこなっていこうというのも、このプロジェクトの1つになります。
絹: リスナーの皆さん、今まで堀崎さんのお話を聞かれていかがですか?本当に一気呵成にできることをどんどんやっていこうぜという京都市の気概が伝わってきます。実はもっともっと細かいのがいっぱい下敷きとして手元資料のなかにもあるのですが、気になられた方は京都市のホームページ、“洛西SAKO Project”のところをお読みいただいて、できれば何かの形で関わって、あるいはタウンミーティング(僕もこの間、行ってきましたが)など、市民と行政との、あるいは地元の方との相談事がプラスアルファで進んでいくはずです。
 

■エピソード2 市営住宅の空き住戸を有効に活用したい

●市営住宅の目的外使用にチャレンジしています
絹: さあ、ではエピソード2ということで、今度は前田さんにマイクをお渡ししたいと思います。前田さんは何を語っていただけるのでしょう。
前: 私は市営住宅で空き住戸を有効に活用したいということで、少しお話をさせていただきたいと思います。
市営住宅は市内に23,000戸あります。もちろん住宅に困った方の住宅支援のためのセイフティネットの住宅ですので、その役割をしっかり果たすというのが、まず第一義です。
絹: もともと福祉目的住宅ですので、そこが一丁目一番地だと。だけどだいぶ空いてきたと。23,000戸のうち空きはどれくらいですか?
前: まず使えるのが1,000戸から2,000戸ぐらいあります。それを使っていきたいということです。この間、その空き住戸を使って、市営住宅以外の使い方、これを目的外使用と行政用語で言うのですが…。
絹: リスナーの皆さん、専門用語です。施設の目的外使用という言葉です。一般市民は別に覚えなくてもいいのですが、真面目な行政の方にとっては、施設の目的外使用というハードルは、実は高いもののようです。で、今回京都市さん、京都府さんは、そのハードルを越えられ始めました。覚悟を決められたと思います。それは国交省の後押しもあるんですよね。
前: その通りで、この間、子ども食堂とか、障がい者さんのグループホームといった使い方もさせていただいて…。
絹: 藤の木子どもキッチンだったかな。
前: よくご存じで(笑)。そのほかにも学生さんにも入居頂いているという状況です。
 

●3LAPARTMENT、覚えておられますか? ― 龍谷大学との連携

絹: このチョビット推進室の我が番組でも、3LAPARTMENTプロジェクトという、非常に勇気のある田中宮市営住宅での取組を取り上げました。龍谷大学の学生さんを7人だったか、月額2万7千円の低い家賃で入ってもらって、「君ら公共政策の学生なら、キャンパスだけが学びの場とは違うで。フィールドに入れ」と、田中宮で一緒に生活された素晴らしい実験についてお聞きしました。でもそれは初めてじゃないよと。もっと前にあるんだよと前田さんはおっしゃっていました。
前: まず田中宮で言うと、今もう始めて5年になります。学生も入れ替わって、実は京都に就職してくれている学生さんもいて、京都に愛着を持ってくれていることは、非常にうれしい成果かなと思っています。
 

●醍醐中山市営団地での取組 ― 京都橘大学との連携

前: それからその前に醍醐中山市営団地での取組もあります。醍醐駅の少し山手に行った所にある団地で、これも古い団地なのですが、距離的には自転車で20分の所に(区は変わって山科区になるのですが)京都橘大学があります。そこで大学と連携して、橘大学の留学生も含めた学生さんに住んでいただいて、一緒に地域の活動に参加するというのを、3LAPARTMENTの3~4年前から始めています。
絹: 結構古いですね、すごいなあ。それで団地のコミュニティを元気に持って行こうという実験が始まったわけですね。
前: この8月の終わりにも、橘大学の学生さんが中心となって、地元でお祭りをされると聞いています。これも非常にうれしい取組かなと思います。
絹: それで3LAPARTMENTのプロジェクトに繋がって、また西野山市営団地でも何かやらかそうとしておられますね。
 

●西野山市営住宅は京都市立芸術大学と連携します!

前: よくご存じで(笑)。西野山市営住宅では、団地の自治会の高齢化問題を解決したいと、これまで京都福祉サービス協会という所と連携をしてきたのですが、直近では京都市立芸術大学が京都駅の方に10月に移転してきますので、市立芸大と一緒になって学生さんに住んでいただこうという取組を始めようとしています。
絹: 漏れ聞く所によりますと、西野山の松尾自治連会長さんという方がすごく熱心な方でこの人のアイデアで「市立芸大来るやろ、西野山市営団地とバスで20分ほどしかかからへん。西野山に住んでもらえへんかな」とつぶやかれたそうです。それを拾われたのは前田さんですか?
前: 私らも全然知らなかったのですが、西野山市営団地にバス停があって、そこから十条トンネルを通って、十条を出て、ちょっと北の方に上がると、すぐに京都駅ということで、20分で繋がると。
絹: 十条トンネル、別名稲荷山トンネルですね。公成建設がメンテナンスのお仕事を頂戴しております(笑)。
その西野山で、福祉サービス協会の方々に2つの部屋をなんとかしてと京都市さんが注文を出されて、そこをボランティアの拠点やデイサービス拠点など、何かいい形にしそうなプロジェクトも動くそうですね。
前: そうです。地域交流拠点として使っていただけることになって、できればそこでも学生さんとの交流も深めて行きたいと考えています。
絹: ここまで背景をお聞きして、色々な実験的なプロジェクト、最初は醍醐中山、次が田中宮市営団地、西野山市営団地と、そこで培ったノウハウなんかのソフトを“洛西SAKO Project”につぎ込もうとしておられるように、素人からは見えてしょうがないのですが、その辺りはどうですか?
堀: そういうことだと思います。
絹: 僕、“洛西SAKO Project”のホームページや資料を読ませていただいて、割合ハードなところはパンと分かりやすくどんと出ているけれども、それを裏打ちするソフトウェアの部分の説明が少し薄いかなと思っていたら、そんなことはない、水面下でいっぱい隠してはりますやん(笑)。とまあ、そんな風に素人ですけど読めてしまいます。京都市さん、やるべきことはちゃんとやっておられますので、深掘りして調べてみると、「あんたらそんなことまでやってたん…」、と目が点になることが起こりそうです。
前田さん、続きはどうです?
 

●エッセンシャルワーカーの方たちを市営住宅に

前: 先ほど申し上げたのは今までやってきた事なのですが、元々市営住宅はやはり地域課題とか、社会課題の解決をしていきたいということで、実は今、エッセンシャルワーカーと呼ばれるような方々、保育士さんであったり、介護士さんであったり、そういった方々も市営住宅に入居できないのかということで、既に(水面下ではありますが)ニーズ調査も始めているところです。
絹:
私の議論相手である京都市の保育園連盟の会長さんである嶋本弘文先生の所に、前田室長と竹中係長が乗り込まれて、「どうしたら現実化できるかね」という相談を既に始めておられるそうです。
リスナーの皆さん、今までお聞きになっていかがでしょうか。先ほど図らずも私の口から出たように、ホームページで読み取れる以外に京都市さんは地道に色んな実験を何年にも渡って積み重ねていらっしゃいます。是非ご期待ください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。

 

投稿日:2023/08/22

第188回 ・路地の∞の可能性~新たなmain streamとして

ラジオを開く

森: 森重 幸子 氏(京都美術工芸大学 博士(工学)・一級建築士 建築学部建築学科教授)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
         (森重 幸子 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。妙齢のご婦人をお呼びいたしました。京都美術工芸大学の建築学部の教授であらせられる森重幸子先生をお呼びいたしました。森重先生、よろしくお願いいたします。
森: はい、よろしくお願いいたします。
絹: 手元の資料で、先生の軽いプロフィール紹介をさせていただきます。京都大学工学部建築学科のご卒業です。そして同大学院の工学研究科を終了されて、設計組織アモルフという設計事務所で5年いらっしゃいました。たぶんこの5年間、思いっきりキツイ5年間だと思いますが、図面に埋もれていたという時期を過ごされた後に、もう一度大学に戻っていらっしゃいます。
先ほどの打ち合わせで、「そこで初めて路地の研究に接したのよ」とおっしゃっていました。先生の研究テーマのキーワードですけれども、「居住空間」「町家細街路」「歴史的市街地」「子育て住環境」「建築関連法規制度」等々であります。森重先生、この番組はゲスト使いが荒いと言ってませんでしたね(笑)。
森: 今、聞きました(笑)。
絹: こういう番組です(笑)。今日の番組タイトルとテーマをゲストの森重先生に言わせてしまおうと、今思いつきました。では先生、よろしくお願いします。
森: 先ほどちょっとご相談しながら決めたのですが、今日のテーマ、「路地の再生の∞の可能性~新たなmainstreamとして」というふうにしたいと思います。よろしくお願いします。
絹: ありがとうございます。「路地って、メインストリームになるで」という含意でございます。
それでは森重先生、エピソード1として、先生の研究テーマとか、自己紹介をさらに膨らませて頂きたいと思います。さあ、リスナーの皆さん、どういうお話が聞けますか、ご期待ください。
 

■エピソード1 路地の再発見とその魅力

●歴史的なまちの奥深さに惹かれて
森: ではちょっと自己紹介をさせてもらえたらと思います。私自身、今ご紹介いただいたように、路地や町家の研究を、ここ最近はずっとしているのですが、もともとは北摂の郊外のニュータウンで生まれ育ちまして、ニュータウンですので道と言えば4mはあるような…。
絹: 北摂?
森: 高槻市の北の方です。そこに成型の区画がずっと並んでいて、戸建てのお家や団地が建っているような所で生まれ育っていまして…。
絹: 京都で言えば洛西ニュータウンの戸建ての所を想像すれば近いですか?
森: そうだと思います。遊ぶと言えば公園か、家の前の道みたいな環境でずっと過ごしてきました。ですので路地に生まれ育ったわけではありませんが、研究しながら改めて、こんな面白いというか、こんな魅力的な場所があるのか、歴史的なまちというのは、本当に奥深いなと思って、惹きつけられたところがあります。
 

●まち歩きを大切にしています

絹: 先生の大学の学生さん向けの研究室紹介でも、僕の好きな言葉が躍っておりまして、「まち歩き」。僕の年代の、まちづくりというキーワードに引っぱられて仲良くなった人たちは、「まち歩き」がすごく好きな人が多いんです。まちを歩くことで得られる気づきというのでしょうか、我がまちの事を歩いてみるまでわからなかったことが、最近でもありました。だから森重研究室は学生さんとともに、実際にフィールドワークと言うか、まちを歩くことから大切にされているようなフシがありますね。
森: そうですね。私自身も振り返ってみると、大学生の時、まだ路地の研究はしてなかったので、京都で大学生活を過ごしていたのに、あんまりまちを歩いていなかったなというのは自分の反省なのです。今、私の研究室に来てもらう学生さんは、住宅に興味のある学生さんが多くて、しかも今私のおります大学は本当にまちなかにキャンパスがあるので、少し歩くと本当にまちの様子が見られるようなまち歩きができるのです。
絹: 京都美術工芸大学は川端七条上がるですね。
森: 川端沿いにあります。でも京阪の駅がすぐ近くですし、京都駅も近いので、電車に乗ってすぐ帰ってしまう学生さんは、本当に周りのことを知らない事もあります。でも特に私のゼミに来る学生さんには、京都のまちがどんな風になっているのか、実態として見られるので、一緒に歩いて回ることをよくやっています。自己紹介のはずが横道に逸れてしまいましたね(笑)。
 

●路地はワンダーに溢れた世界

森: そういう郊外ニュータウンで生まれ育ったのですが、大学で建築を勉強して、設計が好きだったので、設計の実務を覚えたいと思い、5年ほど設計事務所で、本当に先ほどおっしゃっていただいたように、ものすごく充実した、密度の濃い、楽しい5年間を過ごして、その後もう一度大学に戻りました。大学に戻ってから、ずっとお世話になっている高田光雄先生の研究室で、学生さんと一緒に路地の研究をするようになりました。そこでこんなワンダーに溢れた世界があるんだなというのを、改めて気づいたという感じですね。
絹: 改めて気づいたと今、おっしゃいましたが、京都の住人と言うか、長いこと京都に住んでいる人間も実はそのことに気が付いていない人が、一定数どころか、結構たくさんいるかもしれませんね。なんか、ワンダーという言葉が出ましたね。
森: 実際、調査をしていますと、やはり歴史が深いというのもあるので、実際お住まいになっている方自身も、良い面と課題を抱えている面と両方あるんだなということも思っております。
研究としては、まずはそもそもどのエリアにどんな路地があるのかというところ、例えば西陣や田の字地区に袋地が多いと。また西陣や朱雀エリアなどには通り抜けが多いという風な、場所によって少しずつ路地の性質が違うわけです。そういう路地に対して、建築基準法上、元々制限がありましたので、手を入れられずに空き家になったり、老朽化してしまうことも、これまでは問題としてありました。
 

●京都には様々な路地があります

絹: ちょっと復習させてください。袋地が多いのはどこですか?
森: 田の字地区はやはり袋地が多いですね。碁盤の目に入っていくような短いものが。
絹: 路地と言っても色々パターンがあるよと。袋地が多い所、それから通り抜けできる路地。
森: 大正や昭和のあたりに京都のまちが拡大していきますけれども、いわゆる御土居から少し外側に拡がっていくエリアに、通り抜けられる道が多かったりしますね。
絹: 路地にもいろいろあるよということですね。
そしてまちなかを歩くなかで、路地を歩いてみて、ワンダーというか、「わあ、すご!」と感じられたと。例えばどんなワンダーをお感じになったか、教えていただけますか。
 

●路地に入ってみると、思いもよらない景色が広がって

森: あの狭い道を歩いていると、急に風景が変ったりとか、急に大きな木が突然あったりとか、植木鉢とかそういったものが色々出ているというところや、お地蔵さんはもちろん、お稲荷さんだったり、「あ、こんなところにこんな」というものがあって、そこに普段から人の息づかいがある。入ってみないと気づかないというか、表の道を歩いていたら通り過ぎてしまうような所も、入ってみると思いもよらない景色があるというのが、本当に…。
絹: そうですねえ。市内でも車で移動して通り過ぎているだけだと、細街路の中、空気は肌ではわかりませんよね。入り込んでみて、「えらいここ居心地がいい、こんな道通るの初めて」みたいなことありますものね。
 

●生活空間だからこその魅力

森: かと言って、外からの人がどんどん入って行っていいわけでもない。やはり生活空間としてある所なので、お住まいの方がいらっしゃって、そういう場所が使われているという状態がまちとして魅力的なところだと思うので、特に今、観光客の方々がたくさんいらっしゃる時に…。
絹: 「ズカズカと入っていい場所ではないのをわかってる?」みたいな空気感と、かつてオーバーツーリズムが危惧された時には、路地の入口に、観光客向けに「ここで写真を撮らないで」というメッセージを出されている所もありました。だから「すみません、こそっと通るので、静かに通るので、通らせてください」みたいな姿勢が要るのかもしれませんね。
森: ちょうど都市空間から繋がっている場所ということで、都市に奥行きを与えてくれる魅力的な場所なのです。一方でパブリックとプライベートの境目と言うか、中間的な場所で、生活空間であることがやはり魅力的なところかなと思うので、そういうのを大事にしながらというのは重要だと思います。
絹: 自己紹介のはずが、私が不規則な質問を発するものですから、横道に逸れてしまいましたが(笑)。手元の資料の膏薬の辻子、私も好きな場所なんですが、ここについて何かコメントありますでしょうか。
 

■エピソード2 路地空間を守るためのルールづくり

●膏薬の辻子をご存知ですか?
森: 研究しながら、実際に路地再生の改修のプロジェクトに関わっております。今言っていただいた膏薬の辻子のような路地というか、狭い道、辻子のまちのまちづくり活動にも関わらせていただいて、長く、もう10年以上通っているような所です。
絹: リスナーの皆さん、膏薬の辻子って土地勘ありますか?何て説明しましょう?
森: 四条烏丸の少し西側でして、新町と西洞院の間、四条通に直接つながっている、四条から綾小路にかける通りです。狭い道の中でも、特に古い歴史のある平安時代の終わりくらいからあると言われる道です。そこが四条通に直接面しているので、元々高さ制限が31mの区画にすっぽりと含まれている状態だったんです。ただその狭い道に面しては、町家、長屋が軒を連ねて、すごく素敵な町並みが残っている場所だったんです。そこが31mの高さ制限ですと、外側の道と一体になって、31mいっぱいの建物が建ってしまう。元々45mが31mに下がったのですが、それでも31m、10階建てが建てられる区域になっていまして、なんとか二階建の町家が並んでいる所には、それに合わせたまちのルールがなんとかできないかということに取り組んでいまして…。
絹: それが地区計画と呼ばれる手法なのですね?
森: そうです。
絹: こういう都市計画の用語をご存じないリスナーのために、あえてこの地区計画というものを説明すると、どうなりますでしょう。
 

●地区計画とは、その地域だけのルールづくりです

森: 建築基準法上は都市計画と連動して高さが決まっているのですが、地区計画のエリアを決め、その地区だけ特別に高さ制限なり建物の形態の制限を変えるということができるのです。
絹: その用件で必要なのは、地域の人たちの合意。
森: 色んな手法があるのですが、京都の場合は地権者の方皆さんに納得いただいてということが必要です。そのうえで京都市が条例を設けて、都市計画審議会で審議をした結果、OKが出ると拘束力がある形でそこだけのルールができるというものです。
絹: それが10年かけてできてきたおかげで大変素敵な膏薬の辻子空間が残っていますし、一般の人たちが入れるような色んなお店もできてきているようです。
森: 31mだったのが、今は12mまで高さ制限が下がったということと、道が前までは4mに広げないといけない状態だったのが、2.7mで3項道路に指定されています。
絹: 3項道路、ちょっと専門的になってしまいますが、押さえておきたいところです。4mに広げなければいけなかったのが、2.7mでオーケーにしようと。
それで私、道路建設業協会の会員の立場から言いますと、膏薬の辻子の舗装について提案をいたしまして、御影石風(タイトルがあまりよくないのですが)、保水性舗装で、アスファルトでつくるのだけれども、セメントミルクを注入して保水材を入れているがために、石畳にちょっと見えるけれども、石ほど高くなくて、保水材が入っているので、打ち水をした水が浸み込んで、それが気化熱を奪って、夏の間少し涼しくなるみたいな、そういう機能の舗装を施した場所なんですよね。
森: そうです、そうです!
絹: それに我が道路建設業協会の技術積算委員会がタッチしています。門川市長、好きそうですものね、打ち水(笑)。
森: 舗装記念事業の時も市長が来て下さって、歩き初めをしていただきました。
絹: そういう色んな路地の研究に関わってらっしゃる森重先生ですが、無限の可能性のあたりをお話しいただけますでしょうか。
 

■エピソード3 路地の再生による無限の可能性

●路地の再生とは ― 繋げたり、隣に抜けたり
森: 元々町家は、通り庭があって、部屋が並んでいて、それによってすごくフレキシブルに使えるようになっています。路地再生というのは、路地に沿って複数のお宅を一体的に計画して新しく使うことをそう呼んでいて、そうすると路地を介して複数のおうちを一体的に繋いだり、隣に抜けられるようにしてみたり、本当に色んな使い方の可能性がでてくるわけです。実際にそういったことをされている事例が、このところ増えていて、最近も記事に書いたりしております。本当にどんどん路地や町家がなくなっていくのですが、是非そうしないで、無限の可能性のある資産として、うまく使っていくことができるんじゃないかと思っています。
絹: 色んな可能性を秘めた路地再生の事例、パターンがたくさんあるよと。その中でも代表的なものをご紹介していただけませんか。
 

●“五条坂なかにわ路地”の事例

森: 私自身が関わってさせていただいたのが、“五条坂なかにわ路地”です。こちらは本当に袋地なのですが、元々環境条件の良い所で、それをうまく使って子育て世帯が新たに住んで、路地の良さを活かしながら子どもが遊んでいてというふうな、世代を超えて繋がっていくという事例ですね。
絹: なかなか言葉で表現しにくい部分があるのですが、かつては袋地の奥や路地の奥は再生はムリ、潰して駐車場にしたらとか、あるいは新しく建て替えるしかないよというのが、我々建設屋の常識だった時代があります。
これ触れるとややこしいのですが、細街路条例という2012年以降の条例が色々整備されていくことで、今先生がおっしゃったような路地の再生に色んな可能性が出てきたよと。それが先生の研究テーマの中心の1つでもある。ですから路地に注目して!というところですよね。
もうちょっとこの辺の無限の可能性について、ご説明いただけますか。路地を伸ばす、繋げるとか。
 

●“もみじの小路”の事例

森: 例えば『京都だより』でもご紹介させていただいている“もみじの小路”、これは京町家再生研究会の皆さんがされている事例なのですが、単に袋地を繋ぐだけではなく、袋地と町家の通り庭を使って、さらに庭部分も繋げることで、それまで行き止まりだったところが、通り抜けられるようになるというすごい事例があります。
絹: オリンピックの体操競技で言うと、ウルトラCとか、ウルトラDとかそんな感じじゃないですか。
森: やはり行き止まりの不安を色んなやり方で抜けられるようにということです。特に緊急時だけでも抜けられるようにとか、建築計画的に色んな可能性があるなと思います。
絹: 路地には再生の無限の可能性があるよと。そして京都は日本全国どこにも路地はあるけれども、周辺地区に路地があるのが普通で、京都のように政令都市クラスの都市で、その中心部に路地がデーンと大きな顔をして、でも大切な機能を持ったまま現在に至るようなところは他にないというのが、森重先生の御主張の1つかもしれません。
 

●路地サミットを10月7日(土)8日(日)、京都で開催します!

絹: ここで告知です。「京都路地サミット」。
森: “全国路地のまち連絡協議会”さんが、これまで各地で路地サミットを開催されてきましたが、今年は「路地サミットin京都 2023」と題して京都でやりましょうということになりました。10月の7日(土)8日(日)に開催されます。7日(土)にシンポジウム、8日(日)に関連のまち歩きなどを企画しようとしております。そこでは今、お話したようなことも少しお話できたら、また色んな方が関わっている京都のまちの路地の面白さや多様性が見られたらいいかなと思っています。
絹: ちょっと時間が足りなくなってしまいましたが、また森重先生には再度ご登場願うこともあるかもしれません。路地サミットの報告なんていうのもね(笑)。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
投稿日:2023/07/24

第187回 ・住みたくなる京都の町へ「ヒタすら、ヒタむき」に応援します~竹内局長に聴く!

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竹: 竹内 重貴 氏(京都市都市計画局長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
            (竹内 重貴 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介ですが、前回の坂越副市長さんに引き続き、京都市の都市計画局長であらせられる竹内重貴さんがご登場です。竹内局長、よろしくお願いいたします。
竹: どうぞ、よろしくお願いいたします。竹内です。
絹: ちょっと茶目っ気を出し過ぎまして、竹内さんや坂越副市長に、「コミュニティFMの番組をやっているんです。もしよろしければ」とオーケーされるはずないと思って言ってみたら、えらいことになって、本日の御出演を迎えております。リスナーの皆さん、ご期待ください。
竹内重貴さん、2022年の7月に京都市にご着任されています。もともとは2000年ぴったりに国交省に入省、その後は海外に飛ばれていて、2004年から2006年ニューヨークのコロンビア大学とシカゴのノースウェスタン大学にそれぞれ留学されています。その後、中部地方建設局に2007年から2008年おられて、その次が山形県に出向されています。2010年から2013年、山形県では交通や企画分野の御担当、中部地方建設局ではまちづくりの御担当ということです。
この間番組の準備も兼ねてお部屋にご挨拶に行ったら、時間を取って色々議論に付き合ってくださって、非常に気楽におしゃべりしてくださる局長さんです。びっくりしています。ということで、ゲスト紹介はこれにて切り上げて、さあ、まずは大切な今日の番組タイトルです。この番組はゲスト使いが荒いって、知ってました(笑)?
竹: いやあ、そうかなあと薄々感づいてはいたのですけど(笑)。
絹: ではゲストの竹内局長に今日のタイトルコール、まずお願いできますか?
竹: はい。では今日のタイトルは「住みたくなる京都の町へ「ヒタすら、ヒタむき」に応援します~竹内局長に聴く!」と、こんな感じでよろしいですか(笑)?
絹: ありがとうございます。僕は感心しております。令和5年4月の市長の記者発表を参考データとして持っておりまして、『若者・子育て世帯の「京都に住むっ!」を、「ヒタすら、ヒタむき」に応援します!』という資料です。まあ珍しい記者発表資料だと思いますが、この「ヒタすら、ヒタむき」というキーワードを考えられた方を、じょうずやなあと思っています。
        (京都市HP【広報資料】より)
 

■エピソード1 若者・子育て世代への「ヒタすら、ヒタむき」応援メニューとは

●若者・子育て世代に住んでほしいから
絹: さて、竹内さんにマイクをお渡しして、まずエピソード1から入っていただきます。このメニュー、京都市さんは全国初の作戦を次々打つぞ、期待してねと坂越副市長が前回おっしゃいました。そのことの概要説明をざっと竹内さんの口からもお願いできませんでしょうか。
竹: 京都市は、大学に進学してこられる若い方、市の人口の約1割が大学生です。ただ、その若い方、あるいは子育てしようとしている方、就職する時、あるいは結婚する時、あるいは子育てする時に、せっかく京都に住みたいと思っていても、京都以外の所に住むという方がかなりの数いらっしゃるのが現状です。そうした若い方、子育てしたい方の「京都に住みたい」という思いに京都市でも応えられるように、全国初となる取組を始め、色んな住まいの取組を全面的に展開していきたいというのが、若者・子育て世代への「ヒタすら、ヒタむき」な応援メニューなのです。
皆さん、色んな住まいの選択肢があると思います。新築に住みたいという人もいれば、新築よりももう少しお手頃な既存の住宅(中古住宅)、それからなかには最近はおしゃれなリノベーション物件なども出てきています。そうした皆さんの住みたいニーズごとに、京都市として応援するメニューというのを、この4月に打ち出させていただきました。
 
        (京都市HP【広報資料】より)
 

●今回の住宅政策、その画期的な内容とは

竹: ポイントとなりますのが、まず全国初の取組になるのですが、京都市の市営住宅が全部で23,000戸あって、その中で活用可能な住宅が1,000戸あります。その1,000戸の中からお勧めの市営住宅の空き住戸を若い方、あるいは子育て世代向けの住宅として使うということを、全国初めての取組としてこれから始めようとしています。
それから京都と言えば路地ですが、京町家や路地奥の住宅も住まいやすく、あるいは空き家の利活用、それからマンションも管理をしっかりして、安心して住み続けられるような取組、さらにマンションをライフステージに応じて売るという場合も、きちんと管理してその価値が保たれるようにする取組をしていこうと思います。
それから新築の住宅もお住まいになりたいと思っておられる方もいらっしゃると思います。そうした方にたくさんの住宅をお届けできるように、都市計画を見直したり、建築の特例などもリニューアルして、景観は堅持しながらも、特に市の駅に近い人気エリアを中心に見直しを今進めてきたところです。
絹: ありがとうございます。ざっと概要説明を竹内局長にしていただきました。そこで絹川くんは勝手にこの中から自分に響くところを少し聞かせていただきたいのですが…。
竹: 全部響きませんでしたか(笑)?
 

●身近な若者世代がどんどん流出していく…

絹: 中でも特に響くのが市営住宅の空き住戸というところ、さらに空き家、路地奥、既存マンションも結構響きますよね。で、市営住宅の空き住戸を若者・子育て向け住宅に活用というのは、この中でも「全国初」と色も変わっていますし、1,000戸ということですよね。
ここで悲しい実体験を少しお話しますと、うちは、お仕事で保育園を結構建てさせていただいているんです。門川市長の待機児童ゼロ政策に協力して、私のお得意様である保育園の園長さんも園を増強したり、増築したりして、協力をしていらっしゃったのですが、ある時ご挨拶に行ったら、「絹川さん、聞いて!うちは人気のある園なんだよ。でも中京区や下京区や南区の園から期の途中で若い夫婦が市外に引っ越していかれるのよ」と。つまり園をやめて行かれるわけなんです。理由を聞くと、「土地が値上がりしたり、マンションが値上がりしたり、賃貸が値上がりしたりして、若い人が住みにくくなっているから、門川さんに言って!」とおっしゃったものだから、「私は門川市長の友達でもなければ、知り合いでもないので、勘弁してくださいよお」と言ったのですが、事程左様に中心市街地からの若年層の流出というのはあるようです。
これも実体験です。私は研究者ではありませんので、統計データは持ちませんが、不肖絹川くんの息子も、先般めでたく、悔しいことですけど、亀岡市民になってしまいました。「なんで初孫に会いに行くのに、亀岡くんだりまで行かなあかんねん!」と言って、自分で膝を叩いて悔しがっていますけど、やっぱり京都近隣の都市、滋賀県もあるいは亀岡市も向日市も色んな所が若者の誘導政策を工夫して競い合っているところがあります。京都市民としては悔しい思いでいっぱいです。ですからこの空き住戸、今まで市営住宅ってなかなか施設の目的外使用というハードルがあって、こういう風に使えなかった事を「1000戸使うぜ!」と宣言されたことに対して、大拍手でございます。
竹: ありがとうございます。
 

■エピソード2 応援メニューの進捗状況をご紹介しましょう

●水まわりを中心にピカピカに改装して、お手頃価格で提供します
絹: 今、メニューの概要をざっとご説明いただきましたけれども、現在の進行状況を、象徴的なエピソードとか、いくつかありましたら、お話いただけたらと思います。今年度は初段がもう募集が始まっていたりするんですよね。
竹: そうなんです。実際の市営住宅の空き住戸を民間の不動産会社の人にリフォームしていただいて、他の市場の家賃よりもお手頃な家賃で提供します。リフォームする時も若い方、あるいは子育てする方にとってポイントになるのは、キッチン、お手洗い、バスといった水まわりですので、水まわりを中心に新築みたいにピカピカに改装して、手ごろな家賃で住んでいただくということを考えています。
絹: リスナーの皆さん、今「手頃」とおっしゃいました。要は市価よりも割安に、そういう設定にしてねと。そしてもっと大胆に言えば(京都市に成り代わり、勝手に想像してしゃべりますので、もし僕が誇張しすぎていたら修正をお願いしたいのですが)、「どうせ空き家なんや。そこからは家賃は空いたままなら取れへんねん。京都市はここで儲けようとは思てない。だから市価よりも安いところで、民間の人たち、それだけは頼むで!活用してよ!」という感じの勢いを感じますが、ちょっと超翻訳しすぎましたか(笑)?
竹: いやいや、そんなことないです。京都市としては、京都市の儲けは度返しで、民間の不動産会社の方にそれぞれ素敵にリフォームしてもらって、そのリフォーム代は家賃で頂くのですが、ただやはり元々市営住宅は既にあるものなので、他と比べて少し安めに、お手頃な家賃で提供できるという仕掛けなんです。
 
          (京都市HP【広報資料】より)
 

●京都市が全国を引っ張る気概で

絹: これ本当に、実は官の側からしたら、ある種勇気の要った一歩ではなかったかなと想像するのですが、大変ではなかったですか?国との交渉とか。
竹: そうですね。やはり若者・子育て世代、特に少子化対策というのは国にとっても最重要課題なんです。ただ一方でどうしても我々市役所の人間からすると、前例がないというのが不安になってしまうんですね。ただそこは京都市が全国で初めてやる、そして京都市が全国を引っ張っていく、そうした気概で国とも交渉しましたし、今回新しくこうやって全国初のものとして打ち出す。やはりそれだけ京都として熱意を持っているんだというところを、皆さんに受け止めていただきたいなと思っています。
絹: ここは本当にパンチラインだと思います。真面目な行政の官の方ほど、施設の目的外使用、許可というのがハードルになられたと聞きました。実際に数年前ですけれども、京都府の建設交通部の住宅課の皆さんと空いている府営住宅、七百数十室を利活用してくださいというお願いをしに行ったことがあります。「いきなり言われても…。超えていかなければいけないハードルがあるんです」とその当時はためらわれておられました。それを京都市はこの度ためらいを捨てられたということで、大拍手を送りたいと思います。
 

●市営住宅の空き住戸政策、エッセンシャルワーカーも対象になりませんか?

絹: さあ、その先どうなるのというところもお聞きしたいですけれども、「市営住宅、こんなふうになったらいいのにな」という勝手な素人のアイデアを竹内局長にぶつけてみて、どんな反応が返って来るか、ちょっと聞かせて頂こうと思います。
これは本当に素人発想です。京都保育園連盟の会長を務められる嶋本弘文先生、お坊さんで山科で安朱保育園という、ウェイティングリストができるような人気の保育園を運営されている先生がおられます。私みたいな素人の議論に付き合って下さる珍しい方なんですけど、2人で市営住宅のことを話していた時に、「京都で保育の仕事をしたいと思って、園に連絡してくれるような保母さん候補がいるとするやん。初めにどんな質問が来るかと言うと『社宅ありますか?』の次が『住宅手当は?』と来る。そんなに市営住宅が空いているならば…。現役の保母さんも保母さん候補もエッセンシャルワーカーの一員であるし、ケアギバーの一員でもあるわけで、彼らが園に近い、空いている市営住宅に市価よりも安い家賃で、社宅替わりには入れたらいいと思わへんか」と、そんな話をされました。こういう保育現場の団体の長の方が呟かれたことに対して、竹内局長はどう思われますか?
 

●エッセンシャルワーカーの方々にも、若者・子育て世代にも、これまでにない住まい方を

竹: これまた興味深いというか、前向きな提案だと受け止めています。市営住宅というのは、元々家にお困りの方のための住宅としてつくったものですから…。
絹: セイフティネット、福祉目的住宅だったのですよね。そもそもが。
竹: ですからそうした福祉目的の住宅、これはもちろん確保する必要があるのですが、ただ一方で今の23,000戸の中でそうした福祉目的で使う分を除いても、やはり現況で1,000戸くらいは市営住宅の本来の目的以外で使える余地があると見ています。そうしたところを、今おっしゃったようなエッセンシャルワーカーの方々のための住宅とか、先ほどご紹介した若い方、子育て世代向けの住宅とか、これまでにない新しい住まい方をして、せっかく市営住宅としてつくった建物があるわけですから、そこを徹底的に有効活用していきたいなと思います。貴重なご意見ありがとうございます。
 

●地域と入居者を結ぶ協定書を

絹: わあ、力強いコメント、ありがとうございました。で、プラスアルファ嶋本弘文先生と議論した続きがあります。
「ただ安く入れるだけじゃだめじゃないですか?」とこれは絹川くんの意見ですが、「公営住宅はどこも恐らくは高齢化が進んだりして、自治会運営がしんどくなったりしていますよね。ですからもし保母さんや看護婦さんだとか、介護職の方などがお入りになったら、それぞれお仕事はしんどいけれども、少しだけ地域のコミュニティに自分たちならこういう貢献ができますよみたいな、そういう一項が保育園連盟と京都市の間で協定書のような形で入り込むと素敵だと思われませんか」みたいな、いらん提案をしたんです。あるいは建設業の人間もエッセンシャルワーカーの端っこの方にいると僕は思いたいのです。というのは災害の時に出動したり、がけ崩れや大水の時に行ったりしますから。そういう職種の人たちも、職住近接で緊急出動しやすい京都市の内側の方にいてほしいなと思うんです。
で、そんな条件をつけて、各団体の長と京都市の市長さんなのか、副市長さんなのか、はたまた竹内局長なのか、協定の文書に調印がされました、新聞記者がフラッシュで、パシャパシャと撮っている場面を、僕は夢想をしております。
竹: 絹川さんの中で、もう話がどんどん進捗していますね(笑)。
絹: でもこれを実際に都市計画局の係長級の若手の耳元に「おっさん、こういう風に思うんやけど、なんとか頑張ってくれへん」みたいなつぶやきを続けております。だから竹内局長にこういうお話をして、実現にちょっとでも近づくとうれしいなと思っております。
 

■エピソード3 洛西“SAIKO”(さあ、いこう)プロジェクトとは

●実現する数々のプロジェクトを、一気呵成に進めます
絹: それから洛西ニュータウンでも何かやるぜみたいなことをチラッと先ほどの打ち合わせでおっしゃっていました。それについてもコメントをお願いしたいのですが。
竹: はい。洛西ニュータウン、それから洛西エリア、桂坂など洛西地域全体の未来をつくっていこうというので、「洛西“SAIKO”(さあ、いこう)プロジェクト」と銘打って、洛西の未来へ進んでいくプロジェクトを進めております。
絹: 最近の京都市のネーミングセンスがすごいブラッシュアップされているような気がしますが、気のせいでしょうか(笑)。
竹: やっぱり新しく、そして前向きに、そしてヒタむきに、京都市も進んでいこうということで、ネーミングなんかもこだわっています。
絹: こぼれ話というか、内緒話の1つですけど、行政の友人から、特に都計局の連中から聞きますと、プレゼン資料とか、パワーポイントのスライドをつくるでしょ?そしたら局長自ら手を入れられて、直されるそうです(笑)。ですから今の「洛西“SAIKO”(さあ、いこう)プロジェクト」、陰でネーミングを付けたのはこの方かもしれません。未確認情報でした(笑)。
竹: 「洛西“SAIKO”(さあ、いこう)プロジェクト」は違います(笑)。市の職員有志からの提案で、「これ、いいね」ということでみんなで決めたのがプロジェクト名です。「さあ、いこうプロジェクト」では、洛西のタウンセンターをもっと活性化しようとか、洛西の住み方を、もっといろんな若い方、子育てする方に住んでいただこう、市営住宅、府営住宅、それから戸建て住宅の所ももっと住みやすくなるような環境づくり、それから交通ネットワークについても、より使いやすい、皆さんにとって便利なネットワークにしていきたい。そんな諸々のプロジェクトを一気呵成に進めます。この夏にはこんなことをしますよというのを出して、いつからではなく、今からでもできることはどんどん進めて行く、要は実行型、アクション型のプロジェクトをまさに現在進行形で進めています。ご期待ください。
絹: 今年は実行段階だよと。プランだけの段階ではないよとおっしゃっています。期待しましょう。
先ほどのコメントの中に市営府営という言葉に引っかかったのですが、やはり洛西のなかにも府営もあるわけですね。ということは府市協調と、知事さんと市長さんがよくおっしゃいます。それが形になりそうな勢いです。夏以降、是非リスナーの皆さんもこの辺りにご注目願えればと思います。
        (京都市HP【広報資料】より)
 

●全国に先駆けたプロジェクト、注目しましょう!そしてご一緒に取り組みましょう!

絹: 今までお聞きになっていて、いかがでしたか?住みたくなる京都の町へ。「ヒタすら、ヒタむき」に応援します。これ、掛け声だけでは、どうやらなさそうです。我々京都市民の1人ひとりも京都市さんが都市計画局を中心にどういう風に実行段階に入られるのか、是非注目していただけませんか。そして自分なりに手伝えること、何かないのかなあと、僕がこのラジオを収録することを思い立ったのも、私がほんの少しだけお手伝いできることって、これくらいなんですよね。でも注目をすれば、京都市がどういう形で動いていくか、全国に先駆けた勇気ある作戦行動をとっていらっしゃることに気が付くことができるかもしれません。
最後にもう一回、竹内さん、何か思い残したこと、言い残したこと、ありませんか。
竹: はい、京都の千年の歴史というのは、やはりこの千年間にわたって、住んでいる方々がつくってきた歴史があって文化がある。今の我々はこの千年の歴史を受け継ぎながら、もう千年先の京都が京都で在り続けるように取り組んでいかねばならないと思っています。その千年先を見据えて、そして今日から始めること、明日から始めること、この一年でやること、そうしたことを市内にお住いの皆さん、あるいは会社の皆さんと一緒につくりあげていきたいと思っています。まちづくりというのは行政だけがやるものではなくて、みんなで全員野球で、みんなで話し合って進めて行くものだと思っています。皆さんからも是非どしどし提案をお寄せ下さい。
絹: 竹内さん、ありがとうございました。
竹: ありがとうございます。
絹: この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
投稿日:2023/06/26

第186回 ・まちの同級生~「京都をつなげる30人」との出会いから…

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小: 小野寺 亮太 氏(京都市子ども若者はぐくみ局 子ども若者未来部育成推進課)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
          (小野寺 亮太 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。お若い方に来ていただきました。“京都市子ども若者はぐくみ局”、変わった名前でしょ?京都市の中にはこういう局を担当している人たちがいるんです。“京都市子ども若者はぐくみ局”から小野寺亮太さんにお越しいただきました。小野寺さん、よろしくお願いします。
小: よろしくお願いします。
絹: 小野寺さんと僕の出会いは、ごくごく最近と言っても年末でしたかね。
小: 年末ですね。
絹: 年末にゲスト交渉に行ったら、産休に入ってしまって、しばらく連絡取れなかったんです。京都市の中でもこうやって、男性で産休を取って、昨日も電話したら在宅勤務でしたね。
小: そうなんです。育児をしながら仕事を頑張っています。
絹: 小野寺さんは、京都市の総合企画局の市民協働担当の相川さんという、市民協働ファシリテーターの元締めに近いところにおられる方にご紹介いただきました。この番組の第181回に熊切さんという方をゲストに「市民協働ファシリテーターってなに?~3人のファシリテーターに聴く」をオンエアしましたが、その時の熊切英司さんに続く、2人目のファシリテーターとして小野寺さんに来ていただきました。市民協働ファシリテーター、今、100何人でしたっけ?
小: 150人くらいです。
絹: その中で活きのいいのを3人くらい紹介してと頼んだんです。それでアドバンスドファシリテーターという仕組みもできてきたでしょ?熊切さんはそういう研修も受けていらっしゃいました。で、2人目として来ていただいた小野寺さんということで、是非リスナーの皆さん、ご期待ください。
さて、今日の番組タイトル、テーマです。「まちの同級生~京都をつなげる30人との出会いから…」と題してお送りいたします。先ほどゲストの小野寺さんと打ち合わせして決めました。小野寺さんの思いが入ったタイトルです。
 

■エピソード1 まちの同級生、京都をつなげる30人って、どういうこと?

●職業も年代も多様な30人が集まって…
小: 私は子ども若者はぐくみ局におりますが、今やっている仕事としては、京都市では青少年活動センターという中学生から30歳くらいまでの方たちの居場所を公的施設として持っておりまして、主にその担当と、成人式の担当をしております。
絹: 青少年活動センターは私もご縁がありまして、山科青少年活動センター(愛称:やませい)に時々行っていました。何年か前のゲストに大場さんと言うセンター長をお呼びして、山科子ども食堂ネットワーク構想について語っていただきました。そういう言わば若い人がたくさんいらっしゃるところですよね。それを7つ束ねる部署にいるのが、小野寺さんです。
小: そうです。今の仕事はそうなんですけど、今日のタイトルである「まちの同級生~つなげる30人」ということで、まずこれがなんぞやというところからお話したいと思います。これは市民、企業、行政、NPOから構成された約30人のまちづくりのプレイヤーが協働する、地域にイノベーションを起こすためのプログラムを繋げる30人となっています。
絹: いやあ、面白そうです。なんとなく想像できるのが、私のような初老のおっさんとかじいさんはメンバーとしては少なくて、ひょっとしたらメンバーは20代、30代、40代くらいまでの人が、30人の中に多そうな気がするなあみたいな、合ってます?
小: 意外に錦商店街のお偉いさんの方がいらっしゃったりとか…。
絹: おっさんもいはるんですか?
小: そうなんです。本当に年代も幅広く、学生の20代もいれば、60代のバリバリ働いておられる方もいらっしゃいますし、本当に多様なセクターの方から30人が集まりました。
 

●まちづくりのプレイヤーたちがイノベーションを起こす

絹: これは行政が声を掛けておられるんですね。
小: 行政と、京都市と連携協定を結んでいる“スローイノベーション”という、これも市民協働ファシリテーターの…。
絹: スローイノベーション、ゆっくりなイノベーション。ひょっとして京都市の行政マンだったけれど、飛び出しているような人が時々いるじゃない。何かそんな匂いがするけど、違います?
小: 違いますねえ(笑)。バリバリ民間の方々ですけど(笑)。スローなイノベーションを提唱されているんです。
絹: 中心人物はどなたですか。
小: 市民協働ファシリテーターの講師でもある野村さんという社長の方が、まちづくりのキープレイヤーとなる方たちを約30名集めて、色んな地域の課題や社会の課題を皆さんの強みを使いながら解決していこうというプログラムです。
絹: 京都をつなげる30人というプログラムは、もう何年か行われているようですね。
小: 僕が入ったのは3期なので、その時点で3年は続いていることになります。私の時は「脱炭素社会をいかに実現するか」みたいなテーマで色々動いたんです。脱炭素社会というと、すごく広い課題なのですが、それをもう少し市民目線に落とし込もうと、30人で対話を重ねながら「本当の課題って何なのだろう」みたいなのを突き詰める作業が、私にはすごく刺激的でした。
絹: まちの同級生というタイトルをお選びになったことからすると、京都をつなげる30人の3期生とのお付き合いが、ひょっとすると卒業しても未だに続いていそうな感じですね。
小: そうなんです。やっぱりそこで信頼関係というか、みんなを尊重しながら1つの課題に向かって走っていくという感じで、本当に仲良く、ざっくばらんに、心から話せる仲間になったような感じですね。
 

●京都市未来まちづくり100人委員会との共通点

絹: 以前、小野寺さんにもお話したことがあるかもしれませんが、私は10年以上前に、京都市の総合企画局が主管で“京都市未来まちづくり100人委員会”、一般の市民を無給で百数十名、土曜日の4~5時間、会議室に閉じ込めてこき使うというとんでもない委員会に所属しておりました。私勝手に自嘲的に「やらずぼったくり詐欺企画」というあだ名をつけてましたけど(笑)。本当に熱心に「京都のために汗をかいてもいいよ」「自分の知恵を持って行ってもいいよ」という人たちがどっと集まっていた、そういう仕組みがあるんですね。僕は1期から3期まで。で、後で聞いたら小野寺さんは4期生だと。
小: そうなんです。そんな繋がりもあって。
絹: 確か7期で発展的解消ですね。で、その時の香りがこの「京都をつなげる30人」というのと、結構だぶっているような気がします。
小: まさしくだぶっていますし、より具体化したようなイベントでもありますね。
絹: ですから100人委員会で醸成された、得られた経験値だとか、ノウハウをさらに30人というところに凝縮して、100人委員会よりもひょっとしたら進化版みたいな気がします。
 

●トートひろばでのイベント

小: まさにそんなイメージです。今回私は阪急・阪神さんと同じチームで、インフラもお持ちで、そこでイベントをさせてもらうことができたのですが、30人の知恵をそのイベントに凝縮させたみたいなことができて…。
絹: その阪急・阪神さんと組んだイベント、内容を聞きたいですね!
小: 阪急洛西口の高架下に“トートひろば”というイベントスペースがあるんです。
絹: どんな字を書くんですか?
小: カタカナで「トート」、英語なら“TauT”で、Tが高架下みたいな格好になっているわけです。そこは色んなイベントをされていて、イベントを通じて地域を活性化していこうみたいな、そういう思いをお持ちだったのです。今回「脱炭素」ということがテーマでしたが、「脱炭素って、わかりにくいよね」という話がみんなの中であって、環境にいいこととか、地球にやさしいって、どんなことなんだろうみたいなことに落とし込んでいったんです。
まず環境にやさしいことを実感してもらうきっかけをつくるようなイベントをしたらいいんじゃないかという話になって、いろんな切り口からブースを出して、イベントをやりました。
絹: ブースを出すというと、何か学園祭みたいなノリをつい想像してしまいますが、あるいは手作り市とかね。何かトートひろばでまちの学園祭とか、手作り市っぽいイベントが高架下に現れたんでしょうか。
 

●脱炭素を具体に落とし込む

小: 手作りっぽい物もありますね。例えば古着を売るイベントをやったりとか、それも環境にやさしいことだし、あとはリユース食器を使って食品を提供したり。さらに人力で発電するもので、「電力を生むのにこんなにパワーがいるんだ」みたいなことを子どもたちに知ってもらったりとか、本当に様々な切り口で、「環境にやさしいことって、こういうことにも繋がっているんだ」と実感してもらう、そういうイベントでしたね。
絹: 体を使うこととか、古着を見直して、作られ命を得たものを大切に使おうよみたいな、いいですねえ。リユース食器なんかも、ひょっとしたら本当にじゃまくさいことかもしれないけれども、それでもちょっとこだわりたいみたいな形でやられるとね。
ただ、あんまりこういう発言をしない方がいいのかなとも思いますが、僕、脱炭素というと否定的な感覚もどこかにあって、利権に繋がる脱炭素とかSDGSとかいうことを、「うさんくさ」と思う絹川くんもいて…、でも本当にまじめに取り組んでいらっしゃる方たちとそういうものを分けて考えないといけないなと思いつつ、僕実はSDGSのバッジ付けている人、嫌いなんです(笑)。
小: そうなんですか(笑)。でも結構いますよね。
絹: そうなんです。ただ脱炭素ということから、リユース食器だとか、本当に電気を人力で起こそうとするとすごいパワーが要るので、電気はこんなに大切なんだねとか、古着を大事に着ようねみたいなことに、一段分解していただくと、僕にとってはうさん臭くなくなるんです。
小: ほんとですか(笑)。まさにそういうふうに落とし込んでいかないと、人の選択って変わって行かないよねみたいな話が出ましたね。
絹: 上滑りで世論誘導をされて、「ビジネスチャンスに結び付けよう」だとか、「公金チューチュー」って、この頃ネットで流行っている言葉がないですか?地域課題を解決するためではなく、どなたかの懐が豊かになるために助成金を使おうという人たちが世の中にゼロではないので、そういう匂いにはちょっと私は今過敏になっています。
小: 実際に人が動く動機って、やはり納得性や共感だと思うのですが、そういう意味で対話を重ねることによってどうやって共感が得られるのか、動く動機になるのかというのを、30人でとことん話し合いました。
 

●環境と経済はどう成り立つのか - 電力会社の玉石混交

絹: トートひろばでは、どんなブースでどんなことをやったのか、もう少し教えていただけますか。
小: ブースもそうなのですが、環境と経済がどうやったら成り立つのかというトークセッションをみんなでしました。ゲストにテラエナジーさんという、お寺で電力会社を立ち上げた方がいらっしゃるのですが、なぜ立ち上げたのか、今どういうふうな世の中を目指しているのかという話をみんなで共有しながら…。
絹: テラエナジーさんみたいな感じでやられる方々はなんかすごいなとか、尊敬できるのですが、なかには山の中でメガソーラーなどをやって、土砂崩れを起こしているようなところもあって、似ているけど違うという感覚がしますよね。「後はどうなってもいい」という企業群とテラエナジーさんは行動形態は似ているけれども、似て非なるものだと、その辺がトートひろばで集まって来られた方に肌感覚で伝わるといいですよね。
小: そうなんです。本当に電力を替えるだけで環境に良くなるというところもあって、人の選択1つひとつが世の中を良くしていくんだというふうになっていけばいいなと。
絹: 玉石混交で実は難しいんですけど、色んな情報公開がされてないようですから。すみません、いらん突っ込みを入れてしまいました。
 

●まちの同級生との出会いが私の糧に

小: そうやって対話をしながら、まちの同級生ができた。そういう信頼ができる関係づくりができたというのが、私の糧になっています。
絹: 30人おられたら、本当に色んな専門家が集まられたでしょうねえ。年齢構成も縦にバラエティに富んでいるとおっしゃいましたから。
小: ですから普段の仕事では出会えないような方たちと出会えたということが、私の財産になっているなという感じですね。
絹: 今、パッと代表的にまちの同級生として出会った方のなかで、固有名詞ありで「この人、面白いねん」という人、例示できます?
小: それで言うと、“なんかしたい”さんという合同会社があるんですけど、学習支援をやられている起業家で、それも塾みたいな感じですが、塾を通じて子どもの居場所になっていたり、色んな悩み相談を受けたり、親同士の居場所になっていたりとか…。
絹: おいくつくらいの方ですか?
小: 私よりちょっと上くらいですかねえ。
絹: と言うと?
小: 30代半ばくらいだと思います。
絹: この辺の30代真ん中±アルファくらい、どうやらすごい手練れが集まってそうな年代です。私は60代半ばくらいですが、若い時、「儲けてなんぼ」みたいな教育を受けたじゃないですか。心の中で「世のため人のため」とかって思う部分がないわけじゃないですが、昭和育ちは恥ずかしくてそんなことは言わないわけです(笑)。「まず社員食わせてなんぼや!」みたいな。ところが今、20代30代の人たちは当たり前に世のため地域のためにということを、最初からさらっと言う人、多くなってません?
小: あ、多いですね。
 

●サードプレイスという居場所が、今、求められています

絹: だからやっぱりジェネレーションと言うか、人種が変っている気がします。その “なんかしたいねん”合同会社ですか?子どもの居場所であり、親の居場所でもあるって言うでしょ。私も実はその居場所というキーワードを長年追いかけておりまして、サードプレイス、まちの縁側、地域の居場所というのを尋ね歩いていた時期もあります。
そういう居場所が、例えば小学校区にいくつかあったら、それがあるだけでその場所の地縁が良くなったり、地域の課題が少し減る気がしますので、すごいなあと思って、居場所という言葉がパッと出てくるなんて。
小: 私の仕事にも関わって来るのですが、学校でもない、家庭でもない、まさにサードプレイスという居場所は、世の中に求められているなというのは感じますね。
絹: 私自身が子どもの頃からでしょうか、人と人との繋がりを切る方向、分断される方向のベクトルで育てられたという気がしていましてね。今の若い人たちは我々の世代がチョキンチョキン切って来たものを、もう一回繋ぎなおす世代かもしれないという仮説を、私は今持っているんです。
 

■エピソード2 子どももまちの同級生

●「こども基本法」のこと
小: この4月に「こども基本法」という法律が施行されました。
絹: あまり詳しくないのですが、色んな物事を決めていく時に、当事者である子どもの声もちゃんと拾おうぜみたいな、すごい法律らしいですね。
小: そうなんです。これで本当に世の中が変わるなと思っています。国の方も「こどもまんなか社会」と言っていますが、子どもを軸に色んな政策や取組みを進めて行くことが、ほぼ義務付けられてきたということです。
絹: 昨日もお電話で突っ込んでしまいましたけど、理念としては素晴らしいと。でも実際にやるのに、子どもの声を拾うのって、すごい腕が要るんと違いますかと。ということを小野寺さんに議論をふっかけていましたけど(笑)。
小: 本当にそうで、こどもは社会的弱者であるので、そういう人の声を聞くというのはやはり大人側の知性が求められるのかなと。
絹: 知性とともに、場づくりという言葉がありますけど、こどもたちがこの場は安全なんだと、自分の思いを開陳してもいいんだという信用してもらう場をつくれる大人サイド、これはものすごく高度な、敢えてファシリテーションという言葉を使うと、ファシリテーター研修を受けてこられた小野寺さんたちにとっても、これは腕利きじゃないとなかなかできない技でしょう。
小: まさしくそうです。ですから市民協働ファシリテーターのさらにプラスアルファで子ども若者向けのスキルというのは、今後身に着けていかねばならないなと思っています。
絹: そういう研修を受けたりしている行政マンが、特に若い人で育ってくると、世の中変えちゃいそうな気がしますよね。だから小野寺さんみたいな人に「ゲストに来て!」と言って呼んだりするんでしょうね(笑)。
 

●子どもと対等に意見を言い合える関係を

小: 子どもの声を聞く、聞かせる、言わせるというのはナンセンスかなと思っていて、子どもも大人と一緒でまちづくりのパートナーであると認識することで、言わせるだけじゃなくて、子どもと対等に意見を言い合えるような関係になっていくと、僕は理想かなと思っています。まさに子どももまちの同級生だよというふうに思って、これからそういう場をつくっていけたらうれしいなと思っています。
絹: なんか落としどころがばっちり落ちてきましたね(笑)。
市民参加だとか、市民協働というキーワードが京都市の中で語られるようになってだいぶ経ちます。でもワークショップや場づくりを行って市民の声を広く聴きましょうというのが、時が経つにつれてアリバイのようになってしまった。つまりワークショップというタイトルがつくのをやっておけばいいみたいな間違った流れが、一時的に現出していたことも記憶しています。その反省からもう一度魂を入れ直そうとして、市民協働ファシリテーター研修のような制度が6期にわたって行われ、小野寺さんのような方たちが今育ち始めていると、オールドファシリテーター世代と言いますか、一期生の研修を受けていた頃の自分は、今感じています。
聞くにつけ、ものすごく高度なことを国は意識し始めて、小野寺さんの言葉を借りれば「こどももまちの同級生」。これ、さらっと言っちゃったけど、ものすごい難しいことを標榜されていると私は感じています。ということで、市民協働ファシリテーター研修を受けた6期生の100数十名の人たちがそろそろまちに出始めるのではないかと思っています。色んな所で関わって、場をつくって、声を拾って、新しい地域課題解決に向け動かれることに、もし気づかれた方はトントンと肩を叩かれるなり、そばににじり寄っていただけたら最高です。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
投稿日:2023/05/31
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