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まちづくりチョビット推進室
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まちづくりチョビット推進室

京都府地域力再生活動
京都三条ラジオ・カフェ(79.7MHz) にて、
『まちづくりチョビット推進室』という番組を下記の予定で放送中です。
放送日時は第3、第4土曜日(15:30~16:00)
(詳細はラジオカフェのページでご確認下さい)
『まちづくりチョビット推進室』は、
「京都市景観・まちづくりセンター」と、平成25年、26年度の間、共同企画で行っておりました。
   
  過去のアーカイブ(第1回~116回)はこちら をご覧下さい。(過去の記事のリンクについては切れている場合があります。ご了承下さい。)
 

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第129回 ・リワーク施設では何がなされ、利用者は何を学んでいるのか

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成29年4月放送分>

鹿: 鹿野 麗子氏 (医療法人栄仁会 京都駅前メンタルクリニック
aaaaaaaaaaaa復職トレーニング専門デイケア「バックアップセンター・きょうと」)
絹: 絹川 雅則  (公成建設株式会社)
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
それでは本日ゲストをご紹介いたします。今日は女性お一方です。ひょっとして、このタイプの専門家をこの番組にお迎えするのは初めてかもしれません。栄仁会 京都駅前メンタルクリニック 復職トレーニング専門デイケア「バックアップセンター・きょうと」臨床心理士の鹿野麗子さんでいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。
鹿: はい、よろしくお願いいたします。

■第一章 復職トレーニング専門デイケアって、ご存知ですか?
●「もう一度、働きたい…」に、寄り添って
絹: さっきも申しましたが、臨床心理士の方をお招きするのは、本当に初めてです。少し緊張しております。
では、本日のタイトル、テーマを申し上げます。「うつ病などの休職者のための復職トレーニング専門デイケアが京都にあるってご存知ですか」と題してお送りいたします。副題として「リワーク施設では何がなされ、利用者は何を学んでいるのか」と題してお送りいたします。
リスナーの皆さんにお伺いしたいのですが、と言っても答えがこだまのように返ってくるわけではないのですが、「復職トレーニング専門デイケア」ってわかりますかね。「バックアップセンター・きょうと」って、何それ?という方は結構おられるのではないかと思います。実は番組進行の私自身がつい最近まで、この存在に気付いておりませんでした。そもそもバックアップセンターとは何ぞやというところから、鹿野さんにひも解いていただきたいと思います。お願いします。
鹿: はい、よろしくお願いいたします。
絹: どうですか?聞いたことのない人にどう説明されます?
鹿: まず栄仁会ということで、ご紹介いただいたのですが、私どもは医療法人でございまして、病院などを運営している法人になります。
絹: 確か宇治のほうに「おうばく病院」って、ありますね。
鹿: はい。「宇治おうばく病院」がございまして、そちらの系列で京都駅前にメンタルクリニックを持っております。
絹: 精神科領域では結構評判といいますか、知る人ぞ知るという病院じゃなかったですかね。
鹿: 歴史もあるかと思います。民間の病院ではありますが、精神科の病院として、京都の南のほうでは、割と知ってくださっている方もおいでになるのではないかと思っております。その医療機関が提供している復職トレーニング専門デイケアということになります。
この復職トレーニング専門デイケアとは何ぞやということですが、うつ病など、メンタルの問題で会社をお休みしてしまわれた方がいらっしゃっています。昨今、数も増えているように思いますけれども、長らく自宅で療養されていた方が、「さあ、会社に戻ろう」というときに、その前に少しこちらのほうでバックアップできることがないかということを考えました。
お仕事に戻られる前に、生活リズムを整えたり、体力をつけたりしていただきます。また、お仕事をされている時に、何かご自分の仕事のやり方の面でうまくいかなかったとか、物事の捉え方の面でうまくいかなかったとか、陥ってしまいがちな行動パターンでうまくいかなかったということがお有りだったと思うんです。
そういう事でお休みをされていて、戻るにあたって、うまくいかなかったところを少し振り返っていただいて、まさにリハビリですよね。ちょっと整えていただいて、考え直したり、練習ができたりといった場も提供させていただいています。もちろん毎日通っていただくことで、生活リズムがついたり、体力がついたりもするんですが、私どもでは専門のプログラムをご提供しております。

●こうした施設は全国で増えています
絹: このプログラムが、リスナーの皆さん、なかなか優れものなんです。実はつい先日、ワンデイですけど、リワークプログラムに通ってこられる方が受けていらっしゃるのと同じようなもの、どういうものを受けているのか想像できるようなものを、私自身が、総務の担当の者と体験させていただきました。
それですごく感心したのですが、その時にいただいた資料を、パワーポイントのスライドの写しをいただいておりますので、ちょっと読みますね。
「バックアップセンター・きょうと」というのは、うつ病だとか、ストレス関連疾患、それから双極性障害と診断された方で、職場復帰を目指している方のための復職プログラムを提供する施設ですということを、いの一番に説明していただきました。
こういう施設、あの時のセミナーで、全国的にもう160数か所あると教えていただきました。これはやはり厚労省だとか、そういうところが推進しているんでしょうか。民間がおうばく病院さんのような形で、それぞれが民間の力で推進しておられるのでしょうか。
鹿: 今の「リワーク研究会」という研究会組織は、公的なものではなく、民間の方が声を掛け合って集まっています。ただ個々バラバラなことをやっていても、効果がきちんと出るかはわからないので、なるべく全国どこで受けても、ある程度の品質といいますか、同じようなプログラムを受けて、再発防止ができるように取り組んでいます。
絹: テレビなどで「うつ病は心の風邪だ」というようなフレーズが流行ったことがありましたね。でもそんなに簡単に思っていいのかなと、最近僕は思うようになりました。こうやってリワークプログラムのように、ちゃんと編まれたプログラムを専門家の助けを借りて体験することで、復職への道が開けるというのが本当にあるんだなということを、この間見せていただいて、実は驚きとともに感激したんです。

●ご登録いただくにあたって、少し条件があります
絹: また概要のほうに戻りますけれども、どのくらいの人数の方が京都駅前の「バックアップセンター・きょうと」さんのほうに通われているんですか。
鹿: 一応、精神科・デイケアの枠組みで登録をさせていただいていますので、定員を36名ということで運営させていただいております。
絹: デイケアと言うと、高齢者のデイケアをすぐに素人はイメージするんですが、うちの80代の親もデイケアセンターに通ったりしていますけれども、ああいう形の精神科版のようなものをイメージすればいいんでしょうか。
鹿: より職場に近い形を想像していただきたいんです。職場の慣らし勤務に代わるような形で、お仕事をお持ちの方で、今お休みされている、いわゆる働き盛りの方と申しますか、老若男女が集ってきておられます。
絹: 学生さんじゃないんだよと。ちゃんと社会人で職を持っている人で、気分障害とかストレス関連疾患で現在職を休まれている方、休職中の方、一年以内に復職が見込めると判断される方、それからお医者様に通われていて、主治医の先生がリワークの段階に達していると判断されている方と、いろいろ、少しですけど、条件はあると。
で、その精神科デイケアという仕組みの中で、36人の枠で、集団でみんなと同じような悩みを持つ人と、一緒に助け合いながら復職を目指す。でもチーム戦ができない人は困りますよね。
鹿: 会社でもチームでお仕事をされていると思いますので…。
絹: だから一応、集団を乱さないでほしいという条件は守れるねというのは、最初にあるんですよね。
鹿: そうですね。はい。

●いわば、慣らし運転の場なのです
絹: スタッフの方のことをお伺いしたいのですが、36人の方を受け入れるバックアップセンター・きょうとのスタッフ、どれくらいおられるのでしょうか。
鹿: 曜日によって少し変化も出てきたりはするんですが、提供するプログラムによりますので、だいたい7名で対応させていただいている形になっています。
絹: ここに「おうばく病院」の冊子があって、そこに鹿野さんが写っていらっしゃるのもあって、こういうのを見ると、精神科のお医者さん、看護師さん、精神保健福祉士さん、作業療法士さん、臨床心理士さんとかなりの種類の専門領域の方が寄っていらっしゃって、分厚い布陣だなというふうに感じました。なかなかこれだけの人が同じ場所にいて、隣には精神科クリニックが併設されていて、一般のカウンセリングなんかも、あるいは診察や治療行為なども隣の診療所ではなされていて、その隣のリワーク施設は、会社の会議室の少しくだけたような、居心地のいい、図書室とも見えるような…。
鹿: 談話コーナーとでも言いましょうか。
絹: セミナーなどを受けるのに適したような明るい部屋がありました。
リワークプログラムと言うか、休職していた方が復職したいと思う時に、いきなり以前の職場に戻って「さあ」というよりも、慣らし運転する場所があったらいいんじゃないのという考え方ですよね。
鹿: そうですね。

■第二章 具体的な内容を、少しお話ししましょう
●プログラムには3つの段階があります
絹: その慣らし運転のバックアップセンターでなさっているプログラムについて、リスナーの皆さんが想像しやすいような情報をいただきたいのですが。
鹿: 36名の方々が通ってこられていると申しましても、治療段階と言いますか、回復度合いは個々様々なわけです。ですので内部では3段階に分けております。ステージ1、ステージ2、ステージ3ということで、まず通い始めの方々は、生活リズムをつけていくとか、集団に慣れるというところを主眼に置いて過ごしていただく期間があります。ですのでお家でゆっくりお休みされている方が、いきなりリワーク施設に行ってどうしようと心配になられなくても、まずは通ってみていただければと思います。
みんながいる所でちょっと座って、静かに読書をしていただくとか、読書もちょっと頭に入りにくいという段階の方もおられるので、そういう方にはパソコンソフトを使って脳トレという簡単なゲームをしていただいたりとか、ペーパークラフトと言いまして、型紙を切り抜いて貼り合わせて作品を作っていくということで指先のトレーニングになったり、大勢の人と同じ場で過ごすという時間をつくっていただくことで、人がたくさんいる場に慣れるという段階を設けていまして、それがステージ1という段階になります。
そこでリズムがしっかりついて、通ってこられるようになりましたら、次のステージ2という段階になりますので、そこで初めて私どもの施設がご用意している講座を受講し始めていただくことになります。2つの講座をご用意していまして、コミュニケーション講座というものと、ストレスマネジメント講座というものをご用意しています。

●2つの講座をご用意しています
絹: ストレスマネジメント講座って、興味ありますね。やっぱり精神的に落ち込みすぎたり、しんどくなって休んじゃうという人は、ものの本によりますと、認知のゆがみというような、考え方や行動様式に癖があるそうです。素人なりの見解ですけど、すごい能力があって、誠実で真面目で、やる気もあるのに、「そこまであんた、自分を責めんでいいやん」というタイプの方がわりあいガクっとなるような気がするんですが、どう思われますか。
鹿: そうですね。そういう方って、やはり柔軟性に欠けるところがおありになるのかなと思って。真面目一本やりで、もちろんうまくいったり、成果もあげてこられたから、それでずっと来たのでしょうが、やはり今、変化の多い世の中ですので、それだけではうまく対応できないという局面で、しなやかに柳のように揺れたらよかったんでしょうが、そこがぽきっといってしまうということなんでしょうか。
絹: 元気な時にはすごく業績を上げてくれたりとか、後輩の面倒を見たりとか、音頭を取って中心的にリーダーシップを発揮したりしていたのが、ぽきっと行ってしまったのが、わが社でもありましてね。実際にその人、「バックアップセンター・きょうと」さんで、うちの第一号として、お世話になっているんです。それまでそういう経験をわが社ではしたことがなかったので、すごくびっくりしたとともに、そういう場所が世の中にあったんだということを教えてもらってよかったなと思っています。世の中にそういうものがあるよという存在を教えてくださった方がいて、「あなたそういう勉強をしたことがないでしょう」と言われ、「えー…」となったのですが、でも、いいですねえ、すごく。
鹿: 勉強という意味では、学校や企業の中で、「ご自身の考え方を振り返りましょう」とか、「行動を分析してみましょう」というようなテーマはないですよね。「人に上手にものを頼みましょう」とか、「うまく断りましょう」みたいなことはあまり学んできてないじゃないですか。ですので、そういうことをここの施設でやらせていただいている面もありますね。
絹: 徐々にバックアップセンターって、どんなのかイメージが持ててきたかもしれません。ここで鹿野さんが実際に現場で感じられた印象深いエピソードがあったら教えていただけますでしょうか。
鹿: 先ほどステージ2のところで話が終わってしまったのですが(笑)、ステージ3という段階もありまして、そういう講座も受けて、だいぶ心身ともに安定してこられて、もう少し負荷がかかっても、お仕事に近いようなテーマを持ってもできそうだという方にステージ3という段階で頑張っていただきます。
絹: 課題図書の要約、例えば『うつ病からの復帰』というような専門文献を…。
鹿: 『うつからの社会復帰ガイド』という図書ですね。
絹: それの要約をレポートでまとめるといった作業もこちらであるというふうに教えていただきましたが。それはステージ2、3どちらになるのでしょうか。
鹿: それはステージ1の間にやっていただきます。

●回復を目の当たりにしながら
鹿: 感慨深かったことということで、お題をいただいたので、そのお話をしますと、やはり1,2,3と上がっていくというのは、変化していくということを目の当たりにしますので、最初活気なく、来るだけでしんどそうにされていた方が、本当に回復してこられて、表情も明るくなり、活気も出てきて、周囲とコミュニケーションもできるようになり、お仕事に近いようなワークを過ごしていただいて、「戻っていきたいんです。いつ僕、戻れますか」というふうにスタッフに話しかけてくださるというのは、本当に実感できる喜びとして挙げられまして、スタッフは等しくそのように感じているのではないかなと思います。
私があともう一つ思っているのは、メンタルの病気になって復帰される方は、もしかすると今までやってきたことをあきらめねばならないとか、今までとは同じようには働けないみたいな、どこかあきらめのような、レッテルを貼られてしまったような、そんな感覚をお持ちではないかと思うのですが。
絹: それはもし復職を果たしたとしても、従来の部署に戻れないだとか、あるいは100%のパフォーマンスを発揮できないというふうに、周りから見られちゃうんじゃないのという心配を、不安を抱えちゃう。

●復職後のパフォーマンスがかつてより上がるケースもあります!
鹿: そうですね。周りからみられる心配もありますし、自分自身もできないのではないかと考えがちだと思うんですね。ただ私はリワークに関わっていて見ておりますと、プログラムでいろんなことを勉強されて、いろんな訓練をされるんです。そうすると今までなかった考え方が増えたり、今までしてこなかった行動パターンが増えたり、一人で抱えることが必ずしも良いパフォーマンスにつながらないということに気付かれたりするわけです。
絹: 例えばSOSが適切なタイミングで出せるようになるとか…。
鹿: そうです、そうです。逆にしんどそうな人に気付いて、声を掛けられるようになるということもあるでしょうし。
絹: 自分がしんどかったから、あいつもきっとしんどいに違いないと思える。
鹿: ええ。ですから助けたり助けられたりというような体験が、職場の中でも起こってくると、職場自体も風通しが良くなってきますし、その方自身も休む前と仕事のやり方が変わるので、パフォーマンスが上がる可能性も大いに秘めているんです。
絹: それって、すごいことですね。助けたり、助けられたり、ある種理想で、健康的な組織の姿ですし、追い求めて、なかなかそこに行きつけずにあがいている日常というのは、私にもありますけれども、復職後のパフォーマンスがかつてよりも上がるケースすらありますよと。

●OB交流会のお話から
鹿: そうなんです。そういうお姿を拝見できる機会があって、OB交流会というものを、私どもでは持っているのですが、職場に戻られた方が定期的にこちらのリワーク施設に土曜日に時間をつくって来ていただいて、近況を報告していただています。
そうすると「いや、実はこんな仕事をしているんですよ」とか、「こんな資格をとったんですよ」とか、「実は部下をもつことになりまして」といったお話を聞くと、「ああ、本当に変わられたな」というふうに実感できるのは、とてもうれしいですね。
絹: 今、復職プログラムに参加した人の中で、かつてのパフォーマンス以上の仕事のしかた、ものの考え方、感じ方が変わったことによって、昇進の実例すらあるんですよという、何かすごくほっとするエピソードを教えていただきました。
で、実際にこういうリワークプログラムを利用する、参加するにあたって、少し注意事項もございましたね。できればどの段階で来るといいよというのは、ありましたか。

●なるべく早い段階で、まずはご相談ください
鹿: もうギリギリの残り一か月しか休職期間がないというようなタイミングとか、傷病手当金が切れてしまうというようなタイミングで来られると、焦燥感ばかりが募ってしまって、腰を落ち着けて取り組めないということが起こってくるかと思います。
できうるなら少し起きている時間が増えてきて、お医者さんからも「少しお散歩とかにも行った方がいいんじゃないの?」とか、「家族と外出してみたら」みたいに言われる程度になられましたら、こちらのデイケアにショートケアという3時間のご利用の枠組みもありますので、ご利用頂けたらと。
絹: 「トライアル利用とかもあるよ」とおっしゃっていたものですか?
鹿: トライアル利用はまたちょっと別の仕組みなんですけど(笑)。
絹: まずは床上げして、3時間くらい動けるようになった段階で、こういう復職プログラムに参加すると、再発の率が結構下がるのではないかというデータが…。
鹿: 長く通っていただく期間を持てば、しっかりプログラムも最初から最後まで受けられます。私どもの施設では、先ほど申し上げたコミュニケーション講座も、ストレスマネジメント講座も、全15回で構成しておりますので、受け終わるのに3か月半かかるんですね。ですからそれを受けないままに戻っていかれるのは、やはりもったいないという気持ちもありますので、余裕がある時に来ていただくと心配せずにゆっくりお使いになれると思います。
講座を受けるということも期間がかかりますし、そこまでに到達するまでに慣れるということも、なかなか慣れない。来ると決めたけれども、実際来はじめると毎日来るのがつらいということも起こってきます。そういう慣れる期間を十分とった上での講座スタートという導入をしたいと思っていますから、慣れる段階であれば、それこそ床上げして、しばらくしたらお昼からでも来ていただいて、3時間過ごして帰っていただくというご利用の仕方から、徐々に慣れていっていただいて、午後に来ていたものを午前に振り替えて進めていくこともできますので、ギリギリというよりはなるべく早い段階で、まずはご相談いただくのがよろしいかと思っています。
絹: リスナーの皆さん、いかがでしたか。すごく大切で、深くて、重いテーマのほんのさわりを鹿野さんの協力でお送りいたしました。リワークプログラム、バックアップセンターというものの存在をぜひ意識していただけたらと思います。また第二回続けていきたいと思います。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。鹿野さん、ありがとうございました。
鹿: どうもありがとうございました。
投稿日:2017/04/25

第128回 ・OPEN DATAの開く近未来

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成29年3月放送分>

 

清: 清水 和孝氏 (京都市 総合企画局 情報化推進室 行政情報化推進係長)
絹: 絹川 雅則  (公成建設株式会社)
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 左絹川 右清水氏
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た、京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最前線をご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。本日はお一方、京都市からお越しいただきました。京都市 総合企画局 情報化推進室 行政情報化推進係長でいらっしゃる清水和孝さんです。清水さんお願いいたします。
清: お願いいたします。
絹: 清水さんと初めてお会いしたのは、2月4日、あるすっごい濃密なイベントでお会いしたんです。その名も「オープンデータ・ロボット活用イベントin京都」、新たなICTを使って未来に繋がるイノベーションを考えましょうよというイベントだったんですけど、その進行だとか裏方だとかで大活躍されていた清水さんにお越しいただいて、リスナーの方にも「なんかこれ、すごかったよねえ」というのをお伝えしたくて、今日来ていただきました。
番組タイトルとテーマですけど、「OPEN DATAの開く近未来」と題してお送りいたします。清水さんどこから行きましょうかね。

■第一章 「オープンデータ・ロボット活用イベントin京都」おもしろかったあ!
  ●オープンデータって、いったい何?
清: そうですね。2月4日の「オープンデータ・ロボット活用イベントin京都」について、少しご紹介したいと思います。
絹: 行ったことがない、参加したことがないよという方に、「何がどう面白かったの」というのを、企画された裏方としての清水さんの立場として、少し解説を加えていただけますか。
清: 面白かったと言っていただけると、我々イベントを開催させていただいた者としては、非常に有難いと思っております。このイベントは京都市役所で、今回、オープンデータのポータルサイトを開設して、いよいよ京都市でもオープンデータを全庁的に推進していこうというなかで、市民の方、団体の方、企業の方、大学の学生さんも、こういった動きを知っていただきたいとの思いの中で、2月4日にイベントを開催させていただきました。
絹: そもそもオープンデータって、よくわからない方もおられるかもしれませんよね。オープンデータがきちんと使われるということ、あるいはそもそもオープンデータとは何なのか、少しそこを「ひらがな」にしていただけますか。
清: 一般的に、行政機関が保有する公共データのうち、いわゆる二次利用と呼んでいるんですが、色んな形でデータを使っていただくことができるというもので、さらに今まさにICTの時代ですので、機械判読に適した形で、公開したものをオープンデータと呼んでおります。

●機械判読できると、どんないいことがあるの?
絹: 今、「機械判読」というちょっと難しい言葉が出ましたけれども、電子データでも例えば、PDFファイルを貰った日にはちょっと使いにくいよねということがありますよね。それを行政の方が持たれる膨大なデータを一般の人がそれを使って活用しやすいようにする。また、データを貰ったけど、再度読み込んで加工したりして、ジャマくさくてしかたがなかったのが、CSV形式のように、そういった手間が省けるようになると、何かすごいことが起きないかしらというところがあるんですよね。
清: はい。機械が読めるというのは、今、お話に出た例えばPDFですと、人間の目で見ると非常にわかりやすい形なんですが、機械ではどこに何が書いてあるかわからないということがあります。スマートフォンやパソコンなど、色んな機械が身近に使われているかと思うのですが、そういったものでデータを活用していこうとした時に、やはり人間の目で見ただけでは使い勝手が悪いということがあります。そこで先ほどのCSVといった形式で、色んなコンピューターで扱いやすいのが、オープンデータとして適しています。

●データを徹底的に開放せよ!-京都府と京都市が相互乗り入れに
絹: 2月4日のすごいイベントを、京都府さんと京都市さんが中心になって企画されたのですが、初めの来賓あいさつで、僕、ビビりました。内閣官房からIT総合戦略室の企画調査官さんが挨拶に立たれたり、総務省からは情報流通振興課の企画官、それから早稲田大学の政治経済学術院の稲継教授、それから京都府の政策企画部の梅原副部長が、Pepperと掛け合いの漫談みたいな挨拶をされて…。既に京都府と京都市が共同してこういうことに当たろうとされている。データも乗り入れようという精神を、まさに表現されていましたね。
清: はい。本当にスマートフォンとパソコンとタブレットだけではなくて、今やロボットのPepperが人間の代わりにしゃべってくれるとか、そういう時代になってきているということで、そういった機械、コンピューターが使えるようなものを、これからどんどん出していくというのが、非常に重要なところではないかと思っています。
絹: もう一度復習させていただきます。清水さんに解説していただきましたが、オープンデータとは、官庁あるいは民間の持つデータ、情報を、民間が二次データ利用できる形で広げていこうぜ、という動きであるようです。そしてこれは先般、未来投資会議という会議が中央省庁であったそうですが、安倍総理のコメントで、「データを徹底的に開放せよ」と。それがこれからの超少子化社会、人口減少社会を乗り切っていく、1つの大事な柱になるかもしれないという意識で、中央からも、われらが京都府、京都市に対して「こういう動き、頼むぜ」というような期待を寄せられていると思ったらいいのでしょうか。
清: はい。本当にデータをどんどん開放して、もしくは公開して、皆さんに使っていただくということです。それによって日本全体の経済が活性化したり、市民の方々に使っていただくなかで、「京都って、こういうまちだよね」ということを理解していただくのに、よりデータを使ってみていただこうということかと思っています。

●事の起こりは東日本大震災でした
絹: リスナーの皆さんにイメージを持っていただくにはどうしたらいいですかね。オープンデータが皆さんに意識され出したのは、いつごろからでしたかという話がありましたよね。東日本の震災以降だということ、あれはどなたのご挨拶だったのか、稲継先生でしたっけ?
清:  そうだと思いますね。すみません、そのあたりは私も裏方でおりましたので(笑)。
絹: 東日本の震災の時に、どの道が通れるんだろう、避難所はどこにあるんだろうって、みんなでデータが共有できれば、もっと色んな人が助けられたのにねという問題意識があちこちで言われたらしいですね。
清: やはり避難所に到達するのに、災害が起こったら通れないですよねというところを、車の位置情報や実際に走っている情報をデータとして扱えば、どこの道が通れるか、そこに避難物資が届けられるということがわかってくるということです。
絹: 例えばカーナビゲーションの情報で、震災の後、走り回っているデータ、これはビッグデータと呼ばれる範疇でしたよね。それが一般の方が使えて、加工しやすいように。それと行政が持つ避難所情報、「この避難所が生きてる」、それから支援に入っているNPOが「この物資が足りない、足りている」という情報が、もしうまくリンクできるとしたら、「何が起こったのだろう、起こるのだろう」ということがわかるというイメージの仕方でいいですか。
清: そうですね。まさにオープンデータだけで全て解決するというわけではなくて、やはりビッグデータやオープンデータの避難所の場所の情報などを実際に使えば、どこに物を届けたいのか、どこで困っている方がいらっしゃるのかというようなことがわかってくるのではないかと思います。

■第二章 どんなアプリケーションがあるの?
  ●歩くまち京都アプリー例えばバス停の位置や乗り継ぎや…
絹: では京都市の行政情報をオープンにしよう、あるいはデータを集めて開いていこうというので、いくつか既にスマートフォン用のアプリケーションが開発されているそうですね。情報化推進室に異動になられる前は、清水さんは京都高度技術研究所におられたという経歴の持ち主ですから、ちょっとその辺についてお聞きします。
次世代統計アプリ」とか、あるいは「歩くまち京都アプリ」、「京都はぐくみアプリ」この辺の解説できるところと言いますか、ネタをお持ちですか?
清: 例えば「歩くまち京都アプリ」は、非常に多くの皆さんが使われているアプリです。観光客の方が、今いる場所からどこに行きたいか、どこどこのお寺へ行こうということだけがわかっているという状況のなかで、市内の移動となるとやはりバスということになるかと思うのですが、それをどのように乗り換えていくのか、乗り換える前にそもそもバス停がどこにあるのかといったものを案内していただけるアプリになります。
絹: このアプリケーションは京都高度技術研究所がやったのですか?
清: もともと国の実証実験のなかで、オープンデータというのはこういうことで使えるよねということで取り組まれているものです。
絹: ほう、わかりやすい事例としてオープンデータって、こういう活用の仕方があるのを、皆さん見ていただけます、使ってくださいという感じでやったのですか?
清: そうです。バスの位置というのは、公共のデータでしかないというところがありますので、そういったものをより使って行こうということです。実際には実証実験という形になりますので、まだまだこれから改善の余地等は出てくると思うのですが、非常に使っていただけるものになっているのではないかと思っています。

●みっけ隊アプリー道路の危ないとこ、みっけた!
絹: それともう1つ、実証実験でひっかかりましたけど、私自身も「みっけ隊アプリ」の実証実験にちょっとだけ参画したことがあります。リスナーの皆さん、覚えていらっしゃいますでしょうか。何か月前かのこの放送で「みっけ隊アプリ」の関係者にゲストに来ていただきました。京都市の建設局の藤井那保子さん以下、あれは非常に面白かったですね。
レポーティングアプリの一種ですか、市民の皆さんが「道のここに穴があいてる、亀裂が走っている、危ないよ」と気が付いたら、パチッとスマートフォンで画像情報と位置情報とコメントを載せて「ここ、直してね」と土木事務所に連絡してくださるというアプリです。あれが集約されるとすごいことが起こったわけです。
清: 市民の方が直接「こういう所が悪いよ、壊れてますよ」という情報がいただけるというのは、我々としても非常に有難いお話です。また、実際に京都市が修繕したということになれば、連絡をされた方にとっても、自分の参画した内容が行政に伝わって、自分のまちが活性化していくのを実感していただけるのではないかと思います。良い取組をさせていただいていると思っております。
絹: もしそういう市民のボランタリーな協力がなかったとなると、行政担当者が全部回って、あるいは我々のような建設業者がチェックしてとなると、当然手が足りませんよね。予算も足りない。でも地域の人が、心ある人はそうやってわが町の大切なインフラが壊れていることに気が付いたら、せめて「直してよ」と言う事くらい、言うよと。直すのに時間がかかったら「あれ、どうなったのかな」と土木事務所などのホームページにアクセスすると、「これは直しました」「これはまだです。優先順位はこちらが高いです」「京都市の予算も限りがあるので、もうちょっと待ってください」ということをやってらっしゃったんですね(笑)。
清: そうですね。やはりそこのベースになっているのは、データだと思いますので。
絹: 市民の方々がデータを寄せてくださると。だから民間がデータに参画する、それと京都市が既にお持ちになっているインフラの位置情報とか、年齢情報とかと関わるというわけです。

●子育てアプリー定期検診やイベント情報や…
絹: さあ、もう1つ行きましょうか。「子育てアプリ」を教えてください。
清: 「子育てアプリ」は様々な部署で子どもさんに関わる色んな情報、定期検診であるとか、お子様に関するイベントなど、それぞれバラバラで出されているのを、自分の住んでいる行政区でどういった事が行われているのかをまとめて知って頂くのに、非常に役に立つアプリではないかと思っております。
絹: これ、実は僕知らなかったんです。もう子育て世代からだいぶ歳を取っていますから。でもお母さん方には役に立つアプリかもしれませんね。
清: そうですね。「子育てアプリ」は、今そういった形で京都市としてアプリを提供させていただいているんですが、色んな情報については、これからこのオープンデータポータルサイトに載せていきますので、それを使って子育て以外の環境であるとか、交通であるとかにも使っていただけるようになるかと思っています。

●データは二次利用(複製、再配布、加工、編集等)も商用利用も可能です!
絹: 持ってきて頂いた資料に“京都市オープンデータポータルサイト「KYOTO OPEN DATA」開設!11月30日”とありますが、ぜひリスナーの皆さん、ここに一度アクセスしてみていただけませんでしょうか。
清: 実際に使うのも無料で、持っているデータもオープンデータということで、手軽に使っていただけるものです。
アクセスして問題があることもなく、何か取られるということもないので、お気軽に使っていただければと思います。ただ、使われる際には京都市の出典であるということを表記していただく必要があります。
絹: 要するに仁義だけ、出典を明記さえすれば、二次利用、複製、再配布、加工、編集大丈夫よ、と。それどころか商用利用も、ビジネスに使ってもらってもいいよと。太っ腹な感じです。
清: 逆に使わない方が損なのではと思いますので(笑)。
絹: 現在公開されているデータですけど、平成29年1月25日現在のものですけど、222件の情報が公開されているそうです。ファイル数では8,000弱。例えば観光データというところを見ますと、地下鉄時刻表、市バス時刻表、観光施設情報、それから位置データは避難所、AED設置場所、公共施設、また各種統計データは、人口動態調査。これから一般市民の方が「もっとこういうデータがオープンにならないの?」という希望も言っていいんですよね。

●オープンデータのコンシェルジュデスクとお考えいただければ
清: このポータルサイトにお問い合わせというところもつくっておりますので、そこに皆さんのご希望の点であるとか、こういう活用ならもっとできるよねというところも教えていただければと思っております。ポータルサイトにデータだけが載せてあるということではなくて、「このデータを使ってこんなことをしてみたよ」という活用事例であるとか、「このデータを使って、こんなアプリができました」というようなアプリ一覧も載せさせていただいております。
絹: いいですねえ。オープンデータに関するコンシェルジュデスク的なものだと思えばいいですかね。
清: そうですね。そこを見ていただいて、自分ならこんなことができるよね、というふうに思っていただくのが一番いいかなと思います。
絹: さて、時間もだいぶ押してまいりましたが、もう1つ2つオープンデータの導く近未来をイメージしていただきやすいエピソードを、行きましょうか。

■第三章 近未来を、ちょっと覗いてみましょう
  ●鯖江市のこころみーHana道場
絹: 鯖江市、これは福井県ですね。何かここはオープンデータシティと呼ばれているそうですね。
清: データシティ鯖江」ですね。
絹: この間のイベントに鯖江から来られた方がすごく面白いコメントをされていたんです。「鯖江市では3Dオープンデータを使ってリアルに鯖江市上空を、例えばドローンで飛び回るようなアプリケーションが、その気になれば3分でできる仕組みをつくっているよ」と。オープンデータ伝道師の福野泰介さんという36歳の方が熱く語っていらっしゃいましたよね。そういうデータを鯖江では他にもオープンにされていて、「市内には渡れる橋が420橋あるけれども、その中で一番年上の橋は何歳?」と聞くと、「91歳」と答えが出てくるそうですね。構造物の寿命が50~60年とすると、「うわ、すごい古い」というのが、一般の方にすごくイメージできますよね。それから防災活用できるように、消火栓の位置とか…。
そのオープンデータ伝道師の方から、「IchigoJam:イチゴジャム」というすごく安いパソコンを使って、子どもたちにプログラミング道場の「Hana道場」というのをやっていらっしゃるというのを聞いたんですが、その辺について少し…。
清: 「Hana道場」は私は存じ上げてないのですが、この「イチゴジャム」というのは、私がパソコンを始めて触ったのが、高校時代なんですが、その時は非常に高額なパソコンだったわけですけど、今、それと同じ性能のものが実は100円のCPUでできてしまうという(笑)、そういうものでございまして。
絹: とんでもない進化ですね。
清: コンピューターが安いので、どんどん安い物を使いましょうよという思想と、実際に昔にあったパソコンと同じようなスペックで、昔触っていた我々世代が、子どもたちに教えることもできるということで、新しい小学生とか、子どもさんたちに、別の世代が教えていくということで、地方創生で、取り組んでおられるとお聞きしております。

●プログラミングと子どもたちの成長と
絹: 「Hana道場」って、そのプログラミング道場では1日に1つのプログラムをつくるぞというような教育がなされていて、なんと小学校1年生でプログラミングにはまっている子どもたちが現れていると。そういうアプリケーションを使って、例えばイノシシ被害を里山で減らすために、檻を使った罠猟師さんの効率を上げるためのプログラムができたりしたそうです。去年17頭しか獲れなかったのが、今年は91頭獲れたよとか、どんな仕組みなんですかねえ。
清: そうですね(笑)。プログラムをつくっているのは、お子様であったり、色々な方々ですので、本当にいろんな発想、アイデアでつくられているかと思います。その色んな発想の元になるのがデータだと思うので、そういったものでつくっておられるかなと思います。
パソコンを触って、自分で何かつくって、何かを動かすことによって、「何かをやってみよう」というモチベーションにもつながって来るかと思いますので、子どもさんたちがそういう風に思われると、「じゃあ次、何か新しい事をやってみよう」「これで何か次、面白いことができないかな」とどんどん発想が膨れ上がっていくのではないかというふうに思っています。
絹: 2020年には小学校でもプログラミングの必修化が予定されている。少子化、あるいは超少子化社会日本の地方都市で今までと同じような生活、便利さを享受しようとすると無理が来るところがある。行政の能力にも予算にも限界がある。それを行政が持つ、民間が持つオープンデータの情報を加工する、それも一般の方と知恵を出し合って一緒に、老いも若きもアプリケーションをつくりだして、生活をサポートしあおうよという動きにかもしれません。ちょっと超躍しすぎですか(笑)。

●近未来はデータと共に動くことで変えられる
清: オープンデータというのがキーワードになっていますので、少し技術的なところがあるかと思うんですが、元々はオープンガバメントですとか、最近ではオープンガバナンスと言われています。
オープンガバメントというのは開かれた行政ということで、ICTを使ってどんどん行政の持つ情報などを市民の方に知って頂こうというものです。昨今ではオープンガバナンスと言って、そういったデータとか情報など、行政の持っている資産をどんどん活用しながら、市民の方も企業の方も地域活動とか、経済活動のなかで変わっていこうというような動きが出てきているのではないかと思っています。
絹: リスナーの皆さん、今日はオープンデータ、ロボット活用というところに本気で汗をかいて、工夫している京都市の総合企画局の清水さんにゲストとして語っていただきました。近未来は本当に我々がデータと共に動くことで変えられる。そんな気がします。その中ではやはり行政と民間の我々がいかに手を結ぶか、そんなところが大事になってくるのかもしれません。
いかがでしたでしょうか。リスナーの皆さん、ぜひオープンデータポータルサイトを覗いてみてください。清水さんたちの足跡が見えるかもしれません。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、および京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。
投稿日:2017/03/31

第127回 ・全国女子駅伝 走路整備の舞台裏~大雪と戦う裏方さんたち

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成29年2月放送分>

長: 長尾 由規夫氏(京都市建設局 西部土木事務所 所長)
名: 名越 正揮氏 (公成建設株式会社 土木G所長)
絹: 絹川 雅則  (公成建設株式会社)
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左 長尾氏 右 名越氏

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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲスト、男性お二方をお呼びしております。お一方目はメインゲスト、京都市の西部土木事務所から。西部土木事務所って、皆さんご存知でしょうか。西部土木事務所の所長さんでいらっしゃいます長尾由規夫さんです。長尾さん、よろしくお願いします。
長: こんにちは。京都市建設局 西部土木事務所 所長の長尾でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
絹: はい、よろしくお願いします。そして、もう一方、長尾さんよりはちょっと若い、だいぶ若いか(笑)。37歳の、わが公成建設のエースの一人であります、名越正揮マネージャーです。
名: 公成建設 工事部土木グループの名越正揮です。よろしくお願いいたします。
絹: 少し前になりますが、皇后杯の第35回全国女子駅伝、覚えておられますか。
雪の中で、寒い中で、選手たちが雪まみれになって、走っている姿をテレビにかじりついて見ておられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。その舞台裏で「もう、イヤ…」という緊張感のなかで、そこを支えておられた影のプロデューサー、黒子さんたちを今日お呼びしました。駅伝を成立させるための準備段階がいったいどのようなものなのかというのを、西部土木の長尾所長と、その指示を受けて、実際に動き回っていた公成建設の名越さんとのお二方に語って頂きたいと思います。
 
■第一章 皇后杯 第35回全国女子駅伝、ご覧になりましたか?
●あれは大変な日でした
絹: お2人、大変ご苦労様でした。
両名:ありがとうございます。
絹: 私は暖かいところで(申し訳ないです)、テレビで駅伝の選手が走っていかれるのを見ていただけなんですけど、まずあの駅伝の前日から、大変でした。大雪警報が出たのは、あれは何時頃でしたかね。
長: 1月14日の4時16分に京都市内は大雪警報が発令されましたね。
絹: ねえ、警報が出てしまったんですよね。さあ、駅伝をやることは決まっている。もう選手も京都に大挙して入っておられる。できないようにならないか、心配しはったんとちゃいますか(笑)。
名: 正直、中止になるかとは思ってたんですけど。
絹: 中止になる、ならないの判断は誰がするんでした?
長: 事務局の京都新聞社の方でされると聞いていました。

●皇后杯 全国女子駅伝のコース
絹: 皇后杯の事務局というのは、京都新聞社主催ですか。陸連とかそういう方も関係されて、京都市さんとしては、会場の走路を提供するというか、万全に準備するということだったんですね。
まず一般常識から教えていただけますか。駅伝とか、マラソンとかやられる時、まず皇后杯女子駅伝のスタートはどこでしたか。
長: 西京極の総合運動場でございます。
絹: 西京極から宝ヶ池でしたっけ。これ、ラジオですので、地図を見せるわけにはいきませんので、ちょっと難しいかもしれませんが、駅伝のコースをリスナーの皆さんに思い出していただくために、どんなルートだったか、ちょっとご説明いただけますでしょうか。
長: 西京極スタジアムを12時30分にスタートして、国道9号を経て、西大路五条から北上いたしまして、ずっと右京区を…。
絹: 西京極スタジアムから出て、五条通、9号を東へ行きますと。そして西大路から左に曲がって北上、ずっと駆け上がっていくわけですね。これで一番上はどの辺でした?今出川まで行って、北野天満宮を通り抜けて…。
名: 金閣寺の方までですね。
長: そして船岡山の前を通過してですから。
絹: そしたら北大路まで北上するわけですね。
名: 堀川通まで行って、それから南へ下がっていますね。
絹: 斜めに上がっているのは、紫明通ですね。
長: そして烏丸通に当たって、烏丸通を南下して丸太町まで来て。
絹: 御所の南の端を東へ。そして次、北上していくのはどこですか。
長: 丸太町東大路ですね。東大路を北上し、また今出川に当たって、次は白川通まで出ていきます。
絹: 北白川の辺を国際会館まで行くと。
皆さん、イメージしていただけましたか。しゃべるのだけでも大変です(笑)。この駅伝の走路のうち、西部土木さんが分担される範囲はどこからどこまででしたか。
長: 大きく分けて二か所ございます。一つは西大路の五条から北野中学までの区間の西大路通を、まずメインで持ちます。そこから北部土木管内を経由して、御所の南側の丸太町通に入るとまた西部土木管内になります。
絹: リスナーの皆さん、ここで土木建設関係の一般常識あるあるでございます。
この駅伝の走路の整備のために出張られたのは、今日のゲストの長尾所長率いる西部土木、それから北部土木と左京土木事務所という、それぞれ3つの土木事務所です。京都市の出先の機関でございますが、我々のインフラ、道などを整備する役割をお持ちの役所の機関ですけれども、普段ほぼ黒子という形で、人知れず活動されているチームなんです。土木事務所の3つの北部、西部、それから東部が活躍されました。長尾さんの西部土木は五条通から北野中学までのエリアと、御所の前の丸太町通の区画を、それでも3分の1以上ありますよね。
長: そうですね。それくらいございますね。
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皇后杯コース地図 公式HP引用http://www.womens-ekiden.jp/course/map.html
 
■第二章 皇后杯 全国女子駅伝―前日
●駅伝スタート32時間14分前、大雪警報発令!
絹:  さあ、それでは時系列的に追っていきましょう。
スタート32時間14分前、えらい緊張感が漂ってまいりました(笑)。女子駅伝走路の舞台裏。
大雪警報が発令されてしまったのが、本番前日の1月14日なんと朝4時16分、スタート時間の32時間14分前、土木事務所に集合がかかっているんですね。
長: そうなんです。今、京都市の建設局では大雪警報が発令された場合には、関係のある土木事務所について、所長・次長の2名が速やかに参集するという形になっています。大雪警報が発令されたら同時に参集することで、市民、区民の皆さんの安全と安心を確保していきましょうというのが、趣旨でございます。

●警報発令だからこそ、管内パトロールも重要です
絹: リスナーの皆さん、役所なら土曜日は休みやと思っているでしょ。前線の役所の人たちは関係ないんですよ。所長と次長さん、長尾所長と堀田次長が土木事務所に土曜日の7時半、集まっておられます。そして国道162号の中川トンネル付近、これは所長ご自身が道路パトロールに出かけられたんですね。
長: 今回の雪の特徴としては、朝の4時16分に大雨警報が発令されて以降、積雪が確認されるまで、かなりの時間がございましたので、私と堀田次長とで1回目の道路パトロールを、お昼の2時40分くらいから、国道の162号を確認しに行った後に、日吉美山線の方も併せて確認に行った次第でございます。
絹: 名越さん、府道日吉美山線という言い方は一般の方はピンとこないかもしれませんね。
名: そうですね。路線名で言っても、なかなか伝わらないかもしれないですね。
絹: どの辺って、イメージしたらいいですかね。
名: 清滝トンネルがあるんですが、地域的に鳥居本という言い方をしたりもしますけど、平野屋さんという鮎の有名なお店があって、そこからスタートしまして、六丁峠を通りまして、JRの保津峡駅を経由して、水尾の集落を回りまして、その先が越畑という集落があります。
絹: いわゆる愛宕山の宕陰地区と言われているあたり、水尾の里、越畑、棚田のエリア、その辺まで。これ、駅伝コースよりもよっぽど長いですよね。この日吉美山線の方が。普段から分掌範囲と言いますか、守ってくださっているエリアなんですね。それと共に162号も五条通からどの辺までですか。
長: 中川トンネル(中川集落があるんですが)のあたりまでを西部土木が持っておりまして、そこからは北部土木、京北・左京山間部土木という3つの土木事務所が、国道162号を管理させていただいています。
絹: ですから、いくら女子駅伝皇后杯の前日だからと言っても、普段から守って下さっている京都日吉美山線、国道162号線の中川まで、宕陰まで、越畑まで、放っておいたらいいというものではないと。
長: もちろんそうです。
絹: ここのところ、皆さん覚えておいてくださいね。駅伝コースよりも長いし、広いんです。ありがとうございます。

●六丁峠でブリザードを確認!!
絹: それで所長がパトロールに出かけられて、「こら、いかん!」と思われたことがあったんですよね。
長: そうなんです。パトロールは2時45分にスタートして、国道162号の中川トンネルまで大きな混乱や積雪を確認できなかったのですが、もう一方の日吉美山の方に行く時に、六丁峠(平野屋さんからあがって間もなくのところ)でブリザードと言いますか、吹雪いている状況が確認しました。この時間帯でこういう状況になっているのであれば、明日の12時30分のスタートまで大変な積雪が予想されるであろうと、その時に確信しました。
絹: リスナーの皆さん、今、長尾所長はブリザードという言葉を使われました。南極ではなく京都市内ですよ。でもそういう峠道などに行くと、本当に吹雪いている。これは駅伝に多大な影響が出るだろうという見立てを立てられた。
そして、「さあ、準備をせなあかん、こら、やばい」というので、集合をかけられたわけですか。

●公成建設チームとのタッグのもとに
長: そうですね。日ごろ、土曜日・日曜日、夜間については、緊急業者の公成建設さんにお世話になっているんです。そこでチーフの名越さんと、この日の夜から次の日の朝までの対応について、綿密に打ち合わせがしたかったので、休日ではありましたが、事務所の方にお越しいただいて、対応を相談しました。もちろん金曜日までにも、「土曜日・日曜日の対応はこういう風にしようね」という調整はしていましたが、やはり緊迫度合いが、この段階でずいぶん違いましたので。
絹: 「これはちょっと冗談やないぞ」と、普段の体制でいけないかもしれないという危機感をお感じになったと。ですから名越さん、「西部土木に出ておいで」と呼び出しがかかったわけですね。
名: そうですね。
絹: 西部土木って、場所どこやったっけ。
名: 四条の天神川の南西あたりですね。
絹: これは一般の市民の方にはなじみの非常にない場所ですけど、我々には、あるいは名越マネージャーなんかは、よく通っている場所です。わが社、公成建設のように、土木事務所に緊急・休日時に対応する年間契約を結んでいる地元企業が複数あるんですね。そういう方が京都市さんの土木チームとタッグチームを組んで、いざという時には出られるように、普段から段取り打ち合わせを続けております。
さあ、普段と違う打ち合わせが始まりました。

●なんとしても雪を残さず、走ってもらおう!
長: そうですね。何より危機感を持っていたのは、日ごろの162号と日吉美山の体制だけでも、今回の大雪では大変だったところに、やはり皇后杯、35回の女子駅伝を安全にかつ円滑に走路を整備していくという大きな使命がございましたので。
絹: そうですよね。普段のプラスアルファで、しかもアスリートが走るわけだから、自動車が走れるような整備よりももっと雪をきちっと除けておかなければならないということですよね。
長: 本当にその通りで、車が走るわけではございませんので、それもアスリートの方が、それぞれの都道府県の期待を背負って走られるわけですから、安全には万全を期す必要がございます。
絹: スタッドレスタイヤなら少々雪がかぶっていても、走りますよね。普通の陸上のランニングシューズにはスパイクなんかついてないですよね。カーブなんか、結構なスピードで曲がり切らずにステンと転んでケガをされたらどうしようかって思われました?
長: もうそれが一番心配で、名越さんとも雪を残さないような形で、アスリートの方々が安心して走ってもらえるような走路をつくろうなというのは、打ち合わせで言っていたんです。

●ひたすら融雪剤を撒きつづけて
絹:  で、まず何をされたんですか。融雪剤というのを、撒かれたんですか。それも普段よりたくさん撒かなければならなかった?
名: そうですね。双ヶ岡の高架の下に山ほどある塩カルが全てなくなった状態でしたね。次の日には。
絹: 双ヶ岡の高架橋の下にそういうストックヤードがあるんですか。
名: 塩カルだけが置いてあるんです。
絹: 塩カルと言うと、正式には融雪剤。塩化カルシウムですね。白い色をした…。
名: 丸い粒状のものです。
絹: 誤解を恐れずに言うと、コーンフレークの白いやつ(笑)。ちょっと違うか。
名: その丸いやつという感じですか。
長: ちょっと違うかもしれませんが、粒状のものです。
絹: それがいつも何袋、そのストックヤードにあるんですか。
名: 600~700袋くらいは常時置いていまして。
絹: それ全部、撒き切った?
名: そうですね。数えているだけでも500は軽く撒いていますね。
絹: 融雪剤は手で撒くんですか?機械撒きですか?
長: 普段はマンパワーで、手で、スコップで撒いていたんですが。
絹: 我々の先輩方は、あれを撒くと腕がパンパンになるという逸話はよく聞きましたけど。
名: 顔もべとべとになりますので。今回はちょっとたまたま散布機をリースすることができましたので、それを使用して散布をさせてもらいました。
絹: 融雪剤の塩化カルシウムはよく効くものですか?
名: そうですね。ただずっと降り積もって来る雪に対しては、なかなかちょっと威力がないのかなと。アイスバーンになっている状態で撒くと、じわっと溶けていきますので。そういうのには効果的かなと。

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塩化カルシウム散布機械

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塩化カルシウム散布中の様子

 
■第三章 皇后杯 全国女子駅伝―当日!
●全国女子駅伝の開催を確認―午前7:10
絹: 双ヶ岡の高架橋のストックヤードの600~700袋を全部撒ききるくらいまで。さあ、撒ききれました。当日、1月15日の7時10分と、ここに記載がありますけれども、駅伝のスタートまで5時間半前、駅伝開催が確認と。予定通り12時半にやるぞという連絡が事務局からやってきました。またぞろここで緊迫感がやってくるという、緊迫の5時間前。走路パトロールに長尾所長以下は走られます。どうでした?この時は。
長: この時は3回目のパトロールに出ているわけですけど、スタート前5時間30分で、西大路通に積雪がまだ確認できていると。これについては、我々所長、次長は相当危機感を感じました。
絹: 間に合うんやろかと。
その時名越さんは?
名: まださらに雪も降っていましたので、ちょっとどうなるのかなというのはありましたね。

●融雪剤の散布が効いてきた、これはいける! ―午前10:20
絹: 所長がなんとかこれでいけるんとちゃうかと思いだされたのは、何時くらいですか?
長: 10時20分くらいですね。開始の2時間ちょい前に3回目の融雪剤の散布が効いてきて、ようやく走路に雪がなくなってきて、アスファルトの状態が確認できてきた頃です。
絹: アスファルトの黒い色が出てきたと。
長: というのが確認できてきた時に、私はうれしくて市役所の本部の方に、西部管内はいけるぞという報告をした記憶があります。
絹: それが2時間前。ただしそこでは終わらなかったんですね。まだもっと安全を期そうと、まださらに直前まで作業を続けられたと。

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西大路五条交差点付近


●さらなる安全のため、路肩の雪も除雪
長: そうなんです。走路として走って頂けるのは、ここで確信をしたんですが、より安全にアスリートの方々が雪でスリップしないようにと思ったので、路肩と言いまして、道路の端っこに残っている雪がずいぶんございまいした。融雪剤というのは、車道に撒くイメージがあるので、ここが今回一番苦労したところで、路肩の雪というのは、人海戦術しかないんです。車両はなかなかそこには入れないので、人が1つずつ取っていく、もしくはホイルローダーと言いまして、西部土木が持っているショベルカーですけれども、それをそこまで移送させて、除雪していくという選択を取りました。
⑱(修正版)
       ホイルローダーでの除雪作業の様子
絹: ホイルローダー直営班出動という命令をされました。役所の方も総出で、そして我々も名越チーム以下、出てくれていました。
駅伝のスタートが12時半、北行き路肩の除雪を完了して、それから南行き路肩の除雪を開始が、なんと30分前。そしてすべての除雪が完了して、撤収という時には、もう駅伝が始まってました(笑)。

●裏方気質というもの
絹: 皆さん、象徴的なエピソードを1つ、ご紹介したいんですが、名越の上司にあたる藪田土木部長が心配してテレビ放映を見ておりました。ところが彼は駅伝の選手の走られる姿は一切見ないで、足元だけじーっと見ていたと(笑)。「ああ、雪をきれいに除けてる」とそれだけ。ことほど左様に舞台裏を支える人たちというのは、そういう性質を持っておりまして、京都市の方々ももう大変ご苦労されて、土木事務所に出入りする我々、地元の建設関連企業も、名越さん睡眠時間削っているよね。
名: そうですね(笑)。
絹: 皆さん、今日はちょっと視点を変えまして、華やかな女子駅伝、もちろん駅伝の選手の方々、雪まみれになって、あれは帽子を被らないとやってられないくらい大変な雪の中を走られました。しかも京都チームが優勝!ねえ、けが人なかったですよね。何よりでしたね。
長: ただ今回、我々西部土木の所員、直営班に集合をかけた時に、エピソードが1つございまして、なかなかみんなが寝られない状態だったと。家にいても、いつ所長から電話がかかってくるか、ラインで参集を指示されるかで、もう4時、5時から起きて待っていたという、大変うれしい事を聞かされて、よかったなと思っています。
絹: リスナーの皆さん、実は物事には全てスポットライトの向こう側には、こういう準備を、段取りをする人たちがいる。特に行政の方々は当たり前のように、こういうことをなさいます。それが一般市民の方々にはなかなか見えづらい。そういう行政の方々と一緒に動くのが我々、地元の建設関連の会社であります。そういう者たちの頑張っている姿が、もし目に留まりましたら、「ご苦労さん」と一声かけてやっていただけるとありがたいと思います。
長: もう西部土木の職員は全員喜んで「ありがとうございます。」と言わせてもらいます。
絹: ということで、今日は女子駅伝の舞台裏、陰で支えてくださるプロデューサーたちのエピソードをご紹介させていただきました。
さあ、また京都で色んな行事があります。大文字駅伝、ございます。その時も裏方さんはがんばります。ご苦労様です。
長: 京都マラソンもございます。
絹: ということで、今日はしめさせていただきます。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、および我らが京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。ありがとうございました。
両名: ありがとうございました。
投稿日:2017/02/28

第126回 ・子ども食堂はマジックワード~出会いを生み出す子ども食堂

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成29年1月放送分>

杉: 大場 孝弘氏(公益財団法人 京都市ユースサービス協会
京都市山科青少年活動センター 所長)
絹: 絹川 雅則 (公成建設株式会社)

 

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大場氏
京都市山科青少年活動センターホームページ http://ys-kyoto.org/yamashina/
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲストです。お一方、大変熱い方で、先日、人を介してお会いした時に、意気投合してしまった方です。公益財団法人京都市ユースサービス協会 京都市山科青少年活動センター(愛称:やませい)の所長をなさっています大場孝弘さんです。よろしくお願いします。
大: よろしくお願いします。
絹: そして本日のテーマ、タイトルですが、「子ども食堂はマジックワード~出会いを生み出す子ども食堂(やませいの挑戦あるいは悪だくみ)」(笑)と題して、本日の番組を進めさせていただきます。

■第一章 子ども食堂とは
●山科青少年活動センターって、何をするところ?
絹: 大場さん、子ども食堂、タイトルにもございましたが、マジックワードだそうですね。
大: たぶん今年に入ってから、『子ども食堂』という言葉を聞かれる機会が、すごく増えていると思うんです。それだけではなくて、「『子ども食堂』のことを考えましょう」というお声を掛けると、毎月毎月色んな方からお問い合わせを受けます。私どもで宣伝をしたりするんですが、これだけ色んな方から次から次へと多種多様な方がお見えになるというのは、ちょっと珍しい事だなと思っています。そういう意味でも突然のブームのように、今『子ども食堂』が注目されていると感じています。
絹: そもそも『子ども食堂』とは、というところに入る前に『山科青少年活動センター』って、「オレ行ったことねえよ」という人に、短くどんなことをなさっているところか、教えていただけますでしょうか。
大: 名前が長いので、いつもは、特に利用されている青少年の方は『やませい』とおっしゃるのですが、私どもの施設は、京都市が施設を建てまして、今は13歳、つまり中学生年代から30歳までの方を主な対象とした青少年の余暇施設としてあります。それ以外にも一般の方がお使いになったり、色んな事をされますが…。
絹: 13歳から30歳と、限られているでしょ。だから堅苦しくて、閑古鳥が鳴いていて、ひょっとしたら施設としてはあくびをしている所かなという、私の勝手な思い込みがあったんですけど、この間おじゃましたら、ぎょうさん人がいたはりましたね。
大: そうですね。延べ数で言いますと、年間で6万人くらいの方がご利用になりますね。こういう風な活動センターは、京都市内に7か所あるのですが、山科は特にご利用の方の9割くらいが、山科醍醐地域の方というかなり特徴的な施設でもあります。
絹: 地域性が強いと。しかも外環状線、地下鉄東野駅から歩いて5分くらいですか。
大: 10分弱ですね。西友のちょっと西の方になるというふうに見ていただいた方がわかりやすいかもしれません。
絹: 渋谷街道よりもちょっと南ですね。そこで色んな方が6万人も集われる『やませい』、『山科青少年活動センター』ですけれども、『子ども食堂』をなにやら、作戦を立てて動かしていらっしゃるという噂を聞きつけて、私は取材に参りました。
『やませい』で起こっております『子ども食堂』について、リスナーの方に教えていただけないでしょうか。

●子ども食堂のそもそも
大: 『子ども食堂』というのは、2年くらい前から全国に広がり始めていますが、もともと東京で始められました。その名付け親の方は、「子どもが一人でも来られる食堂」、つまり子どものための食堂というわけではなくて、そこには色んな世代の方がいらっしゃるなかで、お子さんがいらっしゃってもいいけれども、という形で始まっているのが『子ども食堂』なんです。
一方で、私たちの施設では、もともと中学生、高校生、大学生年代の若い方たちが結構ご利用になります。そういう皆さんと色々お話をしていると、食事など、色んなところで結構困った事を抱えていらっしゃるお子さんがいっぱいいらっしゃって、何か応援できることがないかなと考えていたところでした。特に食というのは大事な事なので、それをできるようにということで、中でカフェみたいな形で、晩御飯にはならないけれども、ちょっとおなかの足しにはなるようなことをやりましょうかということでやってきた経過があります。
絹: 『やませい』は良い設備をお持ちですね。イメージしていただきやすいのは、昔、小学校や中学校で家庭科の授業をやった調理実習室、あんな感じの良いのをお持ちなんですね。
大: もともとは勤労青少年のための余暇施設という形で始まっていたので、その時に講習会として、料理教室を結構頻繁にやっていた関係で、あの施設が残っていました。そのままだとちょっと広すぎるということもあって、その一部をカフェのカウンターに改装して、カフェとしても使えるようにさせていただいています。
絹: 本当に興味をひかれた方は、ぜひ一度覗きに行っていただければと思います。居心地のいい場所、そして活気のある空気、テニスコートでは若い人たちがテニスに興じ、勉強会なども提供されているという空間です。そして最近私の周りでも『子ども食堂』というキーワードを時々聞きます。
例えばうちの会社は山科に独身寮があるんですけど、そこに最近着任してくれた寮監さんが面白い方で、服部さんと言いますが、なんでも大場所長のところにちょくちょく出入りしているそうですね。

●寮監さんと子ども食堂
大: はい。まちの中に一枚貼ったポスターをご覧になって、「ぜひ私も何かやってみたい」と飛び込んで来られて、初めは本当にびっくりしたんです。そこで何か自分で開きたいという方はよく来られるのですが、「こういう場所があるので、一緒に何かできないか」というお声を掛けていただいて、それがとてもびっくりしましたね。
絹: その一枚貼ってあったポスターというのは、どんなポスターですか?
大: 「山科で子ども食堂をやりますが、一緒に何かやりませんか」というお声掛けのポスターでした。
絹: 「作戦会議に行きませんか」のあのポスターですか?
大: そうです。
絹: うちの独身寮の寮監さんは、そういう非常に頭の柔らかい人で、「独身寮だから社員の若い子しか使っちゃいけないという常識を少し緩めてみませんか」と思っているようです。もちろん料理もうまいんですね。
実はここに『やませい』さんのホームページからダウンロードしてきたんですけど、
子ども食堂に関心のあるみなさんと作る食堂
ひとあし早いクリスマス食堂
12月19日月曜日、夜の6時から8時まで
料金は300円。
『やませい』でやります!来ませんかというものですが、これもちょっとお話しいただけませんか。
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大: 実はこのメニューは服部さんのご提案で、実際にチキンをうまく料理していただきました。その時、色んな方がお手伝いに来られるんですけど、レシピを公開されて、たぶんその方たちもおうちに帰ってクリスマスのチキンを作られたんじゃないかと思うんですけど(笑)。
今回はセンターをご利用になっている中高生の子達ががっつりと食べられるようにしたいということで、チキンをメインのプレートにして、それ以外にスープなど、色んなものも入れながら提供させてもらっているという形です。

●子ども食堂に寄せる思い
絹: リスナーの皆さん、『子ども食堂』って、何か堅苦しいイメージを持たれている方がいらっしゃるかもしれません。子どもの貧困という、ある種重たい話題、課題、キーワードではありますけれども、大場所長はそういう事を感じさせずに、どうやら『子ども食堂』へのハードルを下げようとしていらっしゃるようにも思えてまいりました。
大: 子どもの貧困という問題と一緒に『子ども食堂』が語られていて、そういう事に特化しながらやっておられる所もあるんですが、そういう所は無料で食事が提供される所が多いんです。でも私たちの所に来ているお子さんたちを見ていて感じるのですが、「タダで食べ物をあげるからおいで」と言われて、そこに行くのって、結構自分の中で躊躇があるだろうな、恥ずかしかったり、イヤだろうなと思えるところがある。それだったら色んな事をやりながら、ひょっとしたら安い料金だとか、何かその中でお手伝いをして、一緒に入れる方がいいのかなと思ったわけです。できれば簡単にいろんな人が入れる仕組みの中に、困った子もいてもいいなという感じの広がり方が、実は一番うれしいなと思っています。

●子ども食堂ネットワークをつくりたい
絹: 『子ども食堂』だけじゃなくていいよと。
それと『やませい』の大場所長の構想の中には、山科子ども食堂ネットワークというか、まず10か所つくれればいいなと。もう実例がいくつか生まれているそうですね。
大: どこか一か所が頑張って子どものために10日間食堂を開こうとすると、ものすごく大変なんです。それよりはちょっとそういう気持ちをお持ちの方同士が集まって、月に一回だけ、とにかく無理のない範囲でやりましょうという場所が、もし区内に10か所増えたら、それで「月に10回、子ども食堂がありますね」という形になる。そうなった方が、色んな人が関われるし、入りやすいし、皆さんの負担も少なくて、色んな人が関われる、そんな場所が広がった方がいいかなと思っています。そういうやってみたい方に私どもの方に来ていただいて、ちょっと経験を積んでいただいて、実験もしてもらって、輪を広げていただくみたいなことを、今願っています。
絹: その中の一人が、うちの独身寮の寮監さんの服部さんだったと。で、実は大場所長にアポを取ってもらうのに、服部さんに電話してもらったんですよね。
大: そうなんです(笑)。

●今まで会えなかった色んな人がやってくる!
絹: さあ、ではタイトルに戻ります。「子ども食堂はマジックワード~出会いを生み出す子ども食堂」。大場さんはこのように語られました。
『子ども食堂』ということを標榜すると、今まで会えなかった色んな人が『やませい』に寄って来られるんですと。
大: 本当にびっくりするんですけど、たぶんこれまであまり出会えないような方、それこそ服部さんもある意味ではそういう方ですけれども、「施設を提供しますよ」などと言ってこられる方はほどんど今まで出会ったことがないですし。
絹: 建設会社の独身寮って、昼間空いているので、食堂はあるし、厨房は当然ありますよと。食材もなんとかちょっとぐらいは余っている物がありますし。と言うのは、うちの会社の職員で家庭菜園をやっているやつもいるし、実家の宮津に帰れば、農薬のかかってない大根などの野菜や、「チヌ釣ってきました」と寮へ持って帰って来る人もいるし。ということを、服部さんはどうも思っていたみたいですね。
大: 実際に、山科の中で、例えば家庭菜園をされていて、今まで配っていた食材が余っているからというので、「使いませんか」とお声を掛けていただいたり、この前は肉屋さんが来られたり、つい最近は趣味で釣りをしている人が「魚がいっぱい釣れるから、それを使わへんか」と相談に来られたり、本当にいろんな方がどんどんお越しになる。
絹: そしたら魚の捌き、三枚おろし教室なんてのも出来るかもしれませんね。
大: そうすると「なくて困るな」と言うと、「私、知ってるよ。そういう人。」とか、「うちの誰かに頼むわ」と言って飛んできてくれたりと、色んな事がどんどんどんどん広がっていく。ちょっとこの広がり方は本当に不思議だなと思うくらいで。たぶん子どもというのと、食堂というのがくっついているというのは、すごいネーミングだなと、私は思います。
絹: だから大場さんはマジックワードだとおっしゃるんですね。
大: はい。この1年、半年くらいで、本当にたくさんの方とお出会いさせていただいたし、それだけではなく「自分も開きたい」とお声を掛けていただいたり、材料を提供したいということとか、色んな方がどんどんお見えになります。

●子ども食堂と地域の居場所
絹: 私が『子ども食堂』というキーワードに出会う前は、『まちの縁側』あるいは『地域の居場所』、『サードプレイス』という言葉を追いかけていた時期がありまして、コミュニティカフェだとか、コミュニティ食堂など、人には家庭と職場と、男でしたら飲み屋以外に羽を休める場所とか草鞋を脱ぐ場所が必要だという思いがあったんです。実は探してみたら、日本にはいっぱいそういう場所をつくっていらっしゃる方が『住み開き』と称して、それこそ週に1日だけは自分の居間を地域に開けましょうとやってらっしゃる。
「お茶とお漬物くらいしかないけれども、よければどなたさまも」とやってらっしゃるご婦人がおられたり、コミュニティガーデンとして、「庭をいい具合にできたから、見に来て!興が乗ったら、そこでバーベキューでもしようか」というようなおじいさんがおられたり…。そういう人たちの存在って、すごくありがたいなあと思って、訪ね歩いていた時期があります。
今回、大場所長の山科エリアでの子ども食堂のネットワーク構想、それはもう確実に居場所ですね。
大: そうですね。もともと青少年活動センターというのは、2000年くらいから若者の居場所を標榜し、どこにも所属しにくい、人との関わりが難しい困っている方たちの助けになればとやってきたところがあるので、どこかそこに繋がっているところはあるのかなと思いますね。

■第二章 地域通貨『べる』のこと
●誰かの役に立って、得る通貨
 絹: さあ、その大場構想、子ども食堂ネットワークの中に、他とは違うちょっとユニークなものを見つけました。山科地域だけで通用する地域通貨『べる』というものについて、ちょっとご説明をお願いします。
大: これは「食べる」とか「遊べる」とかの「べる」でして、『るるぶ』に近いのかもしれませんが(笑)、そんな形で前のスタッフがつけたんです。
元々はセンターの中で若い人たちが誰かの役に立ってお礼としてもらうもの、そのクーポンを『べる』という形にしていて、そのクーポンをできれば地域の中で色んな場所で使えるようになるといいなという思いで始めているものです。
絹: 地域通貨というものを、ご存知のない方のために、念のために申し上げますと、『子ども銀行券』をイメージしてもらうと(誤解を生むかもしれませんが)、わかりやすいかもしれません。『肩たたき券』や『お手伝い券』のようなもので、『やませい』に出入りする元気な中高生が地域のお手伝いをする。例えば「蛍光灯を替えた」とか「庭の草引きをやった」としたら、例えば50べる、100べるとかいうのを、「ありがとう。これ、お金じゃないけどお礼だよ」と裏書きして、地域の高齢者とか大人からその子がもらう。それを持って『やませい』に帰って来ると、「それでカレーでも食うか」、あるいは「子ども食堂でご飯食べる?」あるいは「エスプレッソコーヒー飲んでいけよ」という仕組みなんですよね。
 大:  はい。ですから先ほど『子ども食堂』の話をした時にしていましたが、タダの所へ行くというのは、結構敷居が高いと思います。自分が誰かの役に立って、喜んでもらって、そこで得たもので自分で行くということがある方が、『子ども食堂』としても楽しいし、その子にとっても自信になるかな。それがうまくくっつくと、結構これは面白いんじゃないかなというふうに、今思っているんですけどね。

●困りごとを抱えた子が相談できる地域にしたい
 絹:  これはすごくユニークで、大事な事を思いつかれたな、すごい発想だなと感心して聞いたんですけど、ちょっと重たい話になりますが、やはり青少年を多くそばで見ていらっしゃった大場さんですから、色んな困りごとを抱えた子たちもいるよと。
この間お会いした時に、「ぎりぎり大変な状態にならないとSOSを出さない子たちがいる。だから周りの大人に困ったことがあったら相談できるような、そういう地域であるにはどうしたらいいか、その発想から『べる』に行きついた」とおっしゃっていましたね。
 大:  たぶんそれが子ども食堂ともつながっているんですが、どうしてもそういうしんどいお子さんたちは、周りに助けてくれる大人がいないという、しんどい面があるんです。人との関係がやはり薄い。そういう意味では、「親も含めて色んな大人が信じられない」と思っていることがいっぱいあって、そういう傷ついた体験をいっぱい持っているので、そうじゃない大人や先輩がいるよという体験をしてもらうには、出会ってもらう必要があるんです。
それには子ども食堂もいいですし、『べる』で何かやって、「ありがとう」と言ってもらって、何かを得る。それを持っていったら「ご苦労さんやね」と言ってもらえるような経験、つまり「自分を助けてくれる大人がいるんや」という経験を小さい時に積んでおいてもらったら、ちょっと小さなことで困った時に、「ちょっと困っているんやけど、相談に乗ってくれる」と行けるのではないか。それがたくさん重なっていくと、本当にとことん困る前に、早目に行って誰かに相談して、全部は解決しないけれども、少しは和らいだり、改善の道が見つかるみたいなことになるといいなと思っているんです。

●地域の中に、もっと人間浴できる場所をつくりましょう
 絹:  まさに精神的な耐性と言いますか、「柳に雪折れなし」みたいな腰の強い心根を、若いうちに育てられないか思ってらっしゃる。この仕組みを使って、子どもたちを地域の大人たちが見守る仕組みがつくれないかということを、発想されたようです。
これは『やませい』ワード、大場さんの造語だと思いますが、すごい言葉をこの間教えていただきましたね。
 大:  これは元々近くで一緒に活動されている人からお聞きした言葉なんです。「地域の中に、もっと人間浴できる場所をつくりましょう」というものです。森林浴よりも、今必要なのは人間浴かもしれないと。本当にいろんな関係の中に、その人がいるということが、どれだけ大切で幸せなことかということを、今ほど必要だと思うことはないので。
 絹:  海水浴ならぬ、森林浴ならぬ、人間を浴びると書いて、人間浴。いいですねえ。直接いきなり深い話はしないけれども、なんか顔を見て、「あのおっちゃんは料理得意や」と。「あのおっちゃんは釣りが得意や」と。「あのおばちゃんは家庭菜園やったはる」、「あのお姉さんは保母さんOB?」とかって、色んなタレントが周りにいて、それぞれが何かあったら、「おう、声を掛けろや」という、こっちを向いてくれている人が『やませい』の近所に…。「あれ、山科エリアでうろちょろしてたら、また会ったね」と道で挨拶できる。それだけでも違いますね。
 大:  本当にそういう人たちをたくさん知っていること、それこそお互いの名前を知っているとか、名前で呼ばれるという関係の中に、もうちょっといた方がいいかなと、今すごく思うところです。

●サポートする側も支えながら、支えられ…
絹: 大学生の話も教えていただきましたけれども、結構今の大学生、学生ローンを抱えちゃっているよと。
大: 「奨学金という名の学生ローン」と言われていますが…。
絹: 例えば立命館大学が100円食堂をやったりしていますが、そういう子たちと学生さんたちとは、全く通奏低音は一緒だなと。『やませい』のサポートスタッフ側で、大学生がいてくれたりとか、地域の方たちの手となったり足となったり、動いてくれたらすごく素敵ですよね。
大: たぶんそうやってサービスをする側でもあるし、子どもたちに対応しながら、子どもたちと遊びながら遊んでもらえるというか、そのこと自身もその人自身の役立ち感を持てるし、自信にもつながると思うので、本当にお互いさまでお互いを支える部分が結構あるなと思っています。

●コミュニティカフェで、大学で、注目される子ども食堂
絹: 大場さんに教えていただいた、今既に動き出している『子ども食堂』の例、例えば『おむすびの会』、それから『笑人(わろうど)カフェどんげね?』というのが、実際に動いていらっしゃったりして、徐々にこの大場構想は現実味を帯びてきております。
そしてこのチョビット推進室のゲストにも出てくださった『京都市未来まちづくり100人委員会』という、勝手連みたいな、「京都のためにほっといても汗をかくぜぇ」みたいな、変な人たちの集まりだったんですが、そういうOBたちが『山科GOGOカフェ』だとか、『左京朝カフェ』だとか、そういう区役所をキーステーションにして、色んな交流をしている場があります。そんな所にも大場さんは顔を出しているとおっしゃっていましたね。
大: ええ、そこで時々「子ども食堂、子ども食堂」と言っているので(笑)、結構そこで知って頂いて、後でご連絡いただく方もいらっしゃいます。
絹: 橘大学の准教授の小辻さんという方が理事長を務めておられるNPO法人があるのですが、そのNPO法人の主たる研究テーマは、京都にある居場所を調べ上げて、マッピングデータをつくるというもので、小辻さんはそれぞれインタビューして、行きたい人が行けるような、そういう活動をしてらっしゃる方です。実はその小辻准教授の結婚披露宴で、彼の上司にあたる教授たちが、僕の隣のテーブルに座られたんです。そこで「絹川さん、こんなん知ってる?」とゴソゴソと出してこられたフライヤーが、オレンジ色の子ども食堂の作戦会議みたいなやつだったんです。それをうちの寮監さんである服部さんに渡して、それがきっかけですので、橘大学も色々頑張っているみたいですね。
大: 本当に近い所でもあるので、今でも色んな形で、大学生の方も含めて関わりを持たせていただいているので、是非ともこれからも色んな形でお願いしたいですし、もうちょっとあの人たちが加わってやれるところがありそうな気がします。

●ネットワークをもっともっと広げたい
絹: はい、では年初の抱負と言いますか、平成29年は『やませい』の大場所長は『子ども食堂』がどんなふうになったらいいと思っておられますか?
大: 本当に山科の中に『子ども食堂』が色んな形でできること、そのために「私、やってみたい」とか、「手伝いたい」という方がいらしたら、一度お声を掛けていただけると有難いと思います。
絹: はい、『やませい』あるいは『子ども食堂』・山科という検索ワードで、必ず引っかかります。愛称『やませい』、京都市山科青少年活動センター所長の大場さんをお招きして、今日の特集「子ども食堂はマジックワード」と題してお送りいたしました。皆さま、ぜひ覗いていただけませんか。あるいはサポーターで何か差し入れていただけたらうれしいです。
大: ありがとうございます。お待ちしております。
絹: それではそろそろ終わりです。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。今日は大場さん、ありがとうございました。
大: ありがとうございました。
投稿日:2017/02/15

第125回 ・空き家に悩むすべての人へ ~地域住民たちが自ら作ったガイドブック「空き家の手帖」ってご存知ですか?~

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成28年12月17日放送>

菅: 菅谷 幸弘氏(六原自治連合会事務局長 六原まちづくり委員会委員長)
寺: 寺川 徹氏 (寺川徹建築研究所 六原まちづくり委員会)
杉: 杉崎 和久氏(法政大学教授)
絹: 絹川 雅則 (公成建設株式会社)
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打合せ風景
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 左から杉崎氏、寺川氏、菅谷氏
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲストはお三方お呼びしております。まずはほぼ常連さんに近い法政大学の杉崎教授、この方は我らがまちセン、京都市景観まちづくりセンターの職員の時代に私と知り合いました。そして五条西洞院のわが社、公成建設のご近所さんでもあらせられます。よろしくお願いします。
杉: はい。よろしくお願いします。
絹: そしてお二方目、六原自治連合会の傘下に六原まちづくり委員会という、すごいメンツの委員会がありますけれども、そこの委員長さんをなさっています。菅谷幸弘さんです。
菅: はい、菅谷でございます。よろしくお願いします。
絹: よろしくお願いします。そしてその六原まちづくり委員会の委員さんで、ご本業は一級建築士さん、建築家です。寺川徹建築研究所さん、宇治で事務所を開いておられます。寺川徹さんです。
寺: 寺川です。どうぞよろしくお願いいたします。
絹: 今日の番組タイトルは、「空き家に悩むすべての人へ~地域住民たちが自ら作ったガイドブック『空き家の手帖』って、ご存知ですか?」と題してお送りします。この素晴らしいブックレットのご紹介と、その後についてインタビューしていきたいと思います。
いつものように、進行者が手を抜くために、他己紹介をさせていただきます。杉崎さん、菅谷委員長はどんな方ですか。短く述べよ。
杉: 何ていうか、「もう、どこまで先が見えているんだ」と思えるような、そういう視点でまちづくりに関わっていらっしゃいます。まちづくりというと、つい身近な事を考えがちですけど、先の先を常に見通して活動されているという印象があります。
絹: はい。それでは今度は菅谷委員長、寺川徹さんはどんな方ですか。
菅: はい、今は右腕以上の存在で、まちづくり委員会の中ではなくてはならない、そういう方です。
絹: ありがとうございます。それでは寺川さん、杉崎さんって、どんな人ですか。僕はよく知ってますけど(笑)。短くお願いします。
寺: まちづくりの事を上から目線ではなくて、草の根レベルで、ものすごく真摯に考えて活動される素敵な大学教授さんです。
絹: いやあ、いい切り口ですねえ。上から目線ではない先生。さすがです。はい、ありがとうございました。今日はこういうお三方でお送りいたします。しばらくお付き合いください。

■第一章 『空き家の手帖』
  ●そもそも『空き家の手帖』って、なんですか?
絹: なんでこういうものができたのか。すごい事だと思うのですが、ひょっとしたらまだご存知ないリスナーの方がおられると思いますので『空き家の手帖』って何ですか?というあたりから解説をしていただけませんでしょうか。
寺: 六原まちづくり委員会で、様々な空き家の対策を取ろうと委員会をやっているなかで、空き家の所有者の方がよく悩んでおられることに対する対処策をまとめました。
そもそもは、会議をしていて空き家対策の会議のメンバーに専門家が多くて、たくさんの知識は持っているわけです。そこで例えば空き家を貸したいけれども、貸したら返って来ないと思っている人が多いので、そういう誤解を解きたいということと、「空き家にしていても誰にも迷惑はかからないでしょ」という意見も空き家の所有者の方は持たれているんですが、本当は空き家を放置しておくことによって、そこに住める人を押し出しているような感じにもなって、人口減にはからずも加担しているというところもあるんです。そういう空き家を「取りあえず置いておくのではなくて、人に貸すなどして、人口減対策にも協力してください」ということを広めたいという思いで、作った冊子になります。
絹: リスナーの方々に想像力を働かせていただくために、ちょっとだけこの冊子の中から言葉を紹介させていただきます。ラジオは見えませんからね。行きますよ!
“空き家の放置は危険です。”
最初に崩れた、結構傷んだ空き家の衝撃的な写真とともにこのキーワードが踊っています。
“気が付かないうちに柱や天井が腐ります。”
「わあ、天井が抜けているわ」という写真があります。
“手遅れになる前に活用しましょう。”
これが扉です。それからしばらく続いて、
“実は空き家は色んな使い方ができます。”
「あんまりお金をかけてないけど、ピカピカやないけど、居心地よさそうに改修したはるわ」という写真が、事例が続きます。
そして色々活用のノウハウ、それから「片付けが、空き家防止の第一歩」という第5章が続きます。実はこれ、学芸出版社から出る前に、私家版として出ていて、自費出版ですか?
菅: そうです。自費出版で3,000部を地域に配布させていただきました。皆さんに空き家がどういうものか、活用するにはどういう方法があるか、困った時に対処できる内容がその中に書かれているという冊子を作って、お配りしたわけです。
絹: 私家版のうちの1冊が、わが手元に来ていました。今回、ご案内いただいて、5章が増えているのに気が付いていませんでしたけど、いい感じにまた新しい本になりました。リスナーの皆さん、これ値打ちありますよ。
すみません、菅谷さん、補足をお願いします。
菅: 空き家をどれだけ流通させるかという取組みをずっとやっていたんですが、自走型で動き出してからは空き家がなかなか動かない壁にぶち当たっていまして、でも地域には将来空き家になる家(予備軍という位置づけにしているんですが)が多数見受けられる。それならば今現在の間に、空き家にならないために、予防的な活用などを住んでいる方にお示しすることで、空き家になることを少しでも減らしていけるんじゃないかということで、その本を活用していただけたら有難いと思っています。
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■第二章 私たちの活動のこと―自走式まちづくり
  ●片付けと空き家問題
絹: この『空き家の手帖』の巻末の方を見せていただきますと、六原まちづくり委員会さんが2014年以降にどんな活動をしていたのかという活動記録があります。これ全部読むと大変ですけれども、でもすごく地道にかっちりと取り組んでおられます。
一例を挙げさせていただきますと、学区内における空き家啓発活動と称しまして、住民向けの空き家問題セミナーを開催されております。愛称が『住まいの応援談』(フレーフレーの応援団じゃなくて、語り合うの「談」)で、2014年の3月、第1部は六原学区の防災まちづくりに関する大学院生の発表、第2部は『空き家の手帖』完成記念発表披露会、第3部は京都市の空き家条例の解説、それからタタタっと飛んで、これは味があるなと思ったのは、2016年の2月、第1部は和尚さんによる仏壇のたたみ方セミナー(笑)、一瞬笑いますけど、実は大変なことで、ここで見て僕は感心しました。やっぱり空き家の当主はこの辺を悩んではるんですよね。
菅: 当初、私たちも片付けというところを見落としていたんですけど、動かない理由にやはり物が片づけられないから、空き家を流通できないという問題が色んな所で見受けられて、やはり片づけをしていかないと流通に繋がらない。「その中に仏壇があるから、どうしようもできない」という話などもお聞きするなかで、じゃあ、仏壇のたたみ方みたいなものをと、地域におられるお寺の副住職にお願いして「仏壇をたたむというのはどういうことなのか」という話をしてもらって、地域の人に理解してもらおうと考えたわけです。
絹: 今、菅谷委員長が語られたのは、84ページ、「仏壇があるので家を貸したり売ったりできません。」という部分です。
“他の物を全部片づけたとして、仏壇どうするの。さすがに処分できひんやろ。”
“こっちの家に持ってきたらどう?”
というお母ちゃんの提案に対して、
“あんなでかい仏壇、この小っちゃい家のどこに置くつもりや”と。
そこで、和尚さんが、
“仏壇はね、お寺に預ける事も可能です。ご相談ください。”と。
むちゃくちゃ寄り添ってますよね。これは感心しました。
東山区は空き家率が確か高い…。

●「向こう三軒両隣」のうちの一軒以上は空き家という現実
菅: 22%くらいです。
絹: 京都女子大の井上えり子先生が、そういう調査を綿密にされていたのはいつ頃でしたかね。杉崎さん。国交省の何かでしたかね。
杉: 僕はその時京都にいないんです。ごめんなさい。
菅: 平成18年くらいからですね。その取り組みがあって、19年20年くらいに六原学区の中をくまなく調査されて、そのデータを地域の人にお伝えするというワークショップをしたりしました。
絹: たぶん、僕その頃のどれかの回で、東山区役所で開催された時に出席していて、井上えり子先生の存在や、こんな地道な調査がなされていることを知って、あの時覚えたのが空き家率22%というのはどういう数字かということでした。22%というのは「向こう三軒両隣」のうちの一軒以上は必ず空いている状態、と言われてびっくりしたんです。
空き家の対策と言いますか、今空いていて危険家屋を何とかしようというところから、防災まちづくりという視点から、たぶん六原の皆様はスタートされた。それを行政からのサポートだとか、専門家派遣という仕組みで、「一緒にやろうよ」という声がかかったんですね。

●防災と空き家対策
菅: 最初は空き家の流通が先でした。ただ、私たちの地域も密集市街地で細街路が非常に多い地域でして、防災の問題もそこには必ず横たわっています。空き家というのは一軒一軒の点なんですけど、やはり地域全体を面で見た時に、空き家と防災というのはすごくリンクしていて、一緒にやらないと意味がないみたいなところから防災が新たに加わって、今も活動を続けているという流れですね。

●空き家予防という考え方
絹: 皆様の色んな地道な活動のなかで、初めは空き家の流通から発したことだけれども、「流通の事例を1つひとつ積み上げていくことよりも、予防をしないとあかんのとちゃう」と意識が変わってきたと、さっきおっしゃっていましたね。
寺: 六原学区の空き家の取り組みは、そもそもは行政事業としてスタートしているわけです。ただ行政事業というのは2年間の年限がありましたので、行政事業の後も取り組みを続けようとやっていくと、どうしても成果が出ないというところで、3年目でぶち当たっているわけです。
自走しだして1年目。空き家の取り組みを一年活動して、何軒流通させられたかだけで成果を問うていると、「自分たちでやっている限りは、結局やってもやりがいがない」というところで、何かあきらめのような部分も、実は出てきていました。そこで「考え方を変えませんか」ということを井上先生がおっしゃってくださって、「成果主義ではなくて、予防することも、5年10年の長期で見れば、空き家を減らすことに必ず繋がるので」ということで、1年1軒流通できなくても、もういいじゃないかということで、予防に振ったという感じですね。
絹: いやあ、井上えり子先生のそのコメント、泣かせますね。
菅: 肩の荷が下りましたね、その時。
絹: 先ほど、杉崎先生の他己紹介での「上から目線じゃない研究者」という言葉がありましたが、井上えり子先生にも共通するところかもしれませんね。
菅: 確かにそうですね。

●六原まちづくり委員会の立ち上げ
絹: 先ほどの事前打ち合わせの時に、「自走式まちづくり」という言葉を初めて教えていただきましたけれども、これはたぶん六原用語の1つかなと思いますけれども、これも井上先生が発せられた言葉を皆さんが取り上げられたんでしょうか。
菅: そもそも行政事業というのは、行政が予算を付けて行政マンが来られて、コンサルの方が来られるというような流れになってしまうのですが、終わると当然行政の方は来られませんよね。コンサルの方も当然来られません。それに付随する費用も出ません。それでピシャッと終わってしぼんでいくなんていうのは、もう多々あると思うんですけど。
絹: よくある、ありがちなパターンですよね。
菅: でもその空き家の問題というのは、これからもますます増えるということを考えると、せっかくこういう土壌ができているのに、これをうやむやにしてしまうのは、非常に忍びないなという思いもありましたので、何とか今の枠組みを継続してできないかということで、六原まちづくり委員会を立ち上げて、外部の方々にも協力をお願いして、今も来ていただいているというところです。

■第三章 六原という地域―高いコミュニティ力と今後の課題と
  ●積みあがってきた六原の土壌
絹: 「せっかくこういう土壌が出来上がっているのに」とおっしゃったところを、もう少しお願いできますか。専門家がたくさんいてくださる、それから井上先生に代表されるような調査が地道になされて、データが蓄積している。そのほかにございますか。
菅: 例えば空き家という1つの問題は、1年2年で解決できるような問題ではなくて、やっぱり地域にずっと横たわっていく問題なんです。その地域の人たちの意識の中に問題意識がないと、ますます増えていくだろう。そういう意味では、地域の方々に口やかましいくらいに色々訴えることが、予防に繋がっていくんだろうなとは考えているんです。
絹: 寺川さん、もうすでに六原地域では「手をかけよう」みたいな、あるいは「片付けするのを、1人で抱え込まなくても一緒にやらへん?」みたいな雰囲気が、浸透しつつあるという感じになっていますか。
寺: そうですね。やはりまちづくり活動なので、何かをして急にドーンということはないのですが、“徐々感”というのは感じています。例えば、そろそろこの空き家の所有者さんに話に行こうかなと思っていた物件があったのですが、気づいたら流通に自ら持っていかれていたケースなどもあります。
本当は僕たちが何も活動しなくてもいいのがゴールですから、自分たちで手柄を取りたいのではなくて、自分たちがいなくても勝手に動くようになるというのを目指しているので、そういう意味ではゆっくりとした意識の変化は感じられたりはします。
絹: ひょっとしたら六原まちづくり委員会さんが仕掛けた漢方薬が、じわじわと効いているのかもしれませんね。
杉: そうですね。あと1つ思うのは、さっき調査という話がありましたね。調査も専門家や中心の人たちだけではなくて、既存の町内会の人たちも割り当てみたいなのがあって、みんなが参加して、現状を調べるという仕組みをつくられているんです。ですから各地域には交代しながら毎年1人ずつ、この空き家の取り組みに関わる人が出てくるわけです。そうするとその人が所有者さんだったりすると、それがきっかけになるという仕組みにもなっているんです。

●「コミュニティ力がすごい」と評価いただきます
絹: そういうことをお聞きしますと、この六原自治連合会と言いますか、六原のエリア、かなりコミュニティとしては成熟度が高いところではないですか。
菅: 私はその地域にしか住んでないので、他の地域と比較できないんですけど、外部から来られた方が口をそろえておっしゃっていただくのが、「コミュニティ力がすごいな」という風な評価はいただきます。
絹: ひょっとしたら他地区、他エリア、他都市から「ちょっとおじゃまします。お話聞かせてください」みたいなことがあるんじゃないですか。
菅: 今年だけで視察、何件受けましたっけ?
寺: 6~7件でしょうか。
絹: 確かそれ、『空き家の手帖』のどこかお尻の方に記載があったように記憶しています。あ、2015年度6件で約120人視察受け入れ。2016年度は8月時点までですけど3件で45人お客さんが来てはりますと。すごいですね。
ご存知ない方にお伝えしたいんですけど、わが京都の東山区六原というエリアは面白い動きが静かに進行しています。そしてこの動きは、たぶん同様の困りごとを抱えておられて、解決策に行き詰っていらっしゃる方、例えば私です(笑)。一筋の光明をいただいた気分でおります。

●同じ困りごとを抱えた人たちへ
絹: 全く個人的なプライベートな話ですけど、私の母が上京区で住まいしております木造の二階家がございます。父が母のためにつくった家ですけど、昭和40年代の竣工です。最盛期は6人で一緒に暮らしておりました。父が死に、息子たちが独立し、母は一人暮らし、80数歳、片付きません。外から見ると瀟洒な一軒家、ええ感じに見えないことはない。でも内側はゴミ屋敷度が着実に進行しているという状態で、ものすごく悩ましい。空き家予備軍という用語があるかどうかは存じ上げませんが、確実にわが実家は空き家予備軍であります。
京都市の空き家担当部署の方に「京都市の空き家条例は素晴らしいですけど、本当は空き家予備軍対策も、ひょっとしたら福祉の関係の力も得て必要ではないでしょうか」と、こういう番組を通じたり、役所で議論したりしたことがあります。だから私にとってこの『空き家の手帖 私家版』とそれから今度の学芸出版社版とは、本当にうれしい文献なんです。本当にありがとうございます。
片付けが空き家予防の大きなファクターと言うか、大黒柱の1つかもしれないという書き方をしてくださっていますでしょ。今、そういうことをはっきり言語化していただいたことが、まずはうれしかったということと、今この『空き家の手帖』が出版されて、地域でどんなことが動こうとしていますか。今後の課題も含めて、何か皆さん一言ずつありましたら。これからの六原、あるいはこれからの空き家予防、あるいは先ほど寺川さんがおっしゃったようなポジティブな事例など、他にありますでしょうか。

●六原でも民泊が増えてきました…
菅: 今の大きな課題は、私たちの地域に小中一貫校が統廃合で地域にできたんです。東山開睛館と言うんですが、私たちの地元にあります。
絹: なぜかわが社が施工担当したという(笑)、偶然もあります。
菅: お世話になりました。
私たちの思いは、そこに集う子育て世代の人たちに本来入ってきていただいて、空き家の活用ができれば、非常にいいなと。そうすると今の若年層の人口増加につながり、地域に活気が出てくる。そういうつもりのまちづくりをしているんですけど、今は観光で民泊施設が非常に多くできつつあって、そういうところに根こそぎ刈り取られていっている。
絹: ちょっと心配…。
菅: 大いに心配ですね。例えば不動産価値が急激に上がったりして、流通に回ると今までの1.5倍とかの高値になってきていて、本来来てほしい人たちが手出しができないような金額になったりしているんです。
絹: それは気がかりですね。民泊需要と言いますか、観光客受け入れのお皿が必要なことはわかりますけど、でも若年の方たちが来てくださることの方も忘れてはならないというか、そういう意味では京都府が仕掛けておられる次世代型下宿ソリデール事業というのを、注目なさっていますか?

●次世代型下宿事業「京都ソリデール」
菅: この間、私たちのまちづくり委員会に関わって頂いている不動産のコンサルティング協会の方から、その情報をいただきまして、一軒にその情報をお届けしようというところです。
絹: この番組のハードリスナーの方でしたら覚えていらっしゃるかもしれません。アクティブシニアという言い方はあまりよくないかもしれませんが、元気な高齢者で単身あるいはご夫妻のところに若い人を下宿に送り込むという「京都ソリデール事業」(ソリデールはフランス語で連帯の意味)を京都府が立ち上げまして、add SPICEの岸本千佳さんが、その次世代型下宿事業を手掛けていらっしゃいます。この六原にもこういう人たちが来てくださるといいですね。
菅: そうですね。私たちも東京の方に、講演に行った時に、高齢者の住まいに若い人が住むという取組が、既に東京の方で展開されつつあって、それはいいヒントやなと資料を持ち帰った記憶はあるんです。
絹: 本当に我々に一筋の光明となる本を出版してくださってありがとうございます。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、われらが京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。ありがとうございました。
一同: ありがとうございました。
投稿日:2016/12/28

第124回 ・次世代下宿「京都ソリデール」事業 ~アクティブシニアの皆様へご提案  大学生と同居・交流する古くて新しい住まい方~

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まちづくり“チョビット”推進室<平成28年10月22日放送>

椋: 椋平 芳智氏(京都府建設交通部住宅課副課長)
小: 小西 由紀氏(京都府建設交通部住宅課技師)
石: 石本 彩乃氏(京都府建設交通部住宅課主事)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとのご紹介や、最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
 
■序章  はじめに
絹: さて、本日ゲストは、お三方来ていただいております。男性お一人、かなりゴツい体形の方です。それから女性、技師がお一人、主事がお一人です。
では、ご紹介します。京都府建設交通部住宅課、椋平芳智さんです。
椋: 椋平です。よろしくお願いします。
絹: それから小西由紀さん、技師さんの方ですね。
小: よろしくお願いします。
絹: さらに石本彩乃さん、主事さん。
石: よろしくお願いします。
絹: さっきもちょっと意地悪をしていたんですが(笑)、技術屋さんの小西さん、椋平芳智副課長の人となりを短く述べよ(笑)。
小: いつ寝ているのか、わからない人です。
絹: お、えらい動き回ってはるんですね。
小: うーん、ずうぅっと職場にいます(笑)。
絹: いや、わかる気がします。綿密な資料を作っていただきました(笑)。
石本さん、小西由紀さんはどんな人ですか。
石: つっこみが冴えわたる、かわいらしい方です。
絹: ほう、つっこみが。じゃあ、あなたはボケの方?
石: いや、私は傍観者です(笑)。
絹: はい、では順番で言うと椋平さん、傍観者の石本さんて、どんな人です(笑)?
椋: 観察力の鋭い、かわいい方です。

●京都府の新しい住宅施策が始まりました!
 絹: はい、ありがとうございます。この番組のリスナーの方ならよく聞く他己紹介をやっていただきました。ゲストの方の人となりの一端が透けて見えたらうれしいです。
さて、こんな形で始めさせていただきます。本日は大変うれしいゲストです。というのは、私自身の問題意識で悩んでいることを、京都府さんが乗り出してくださった。その新しい住宅施策、次世代下宿「京都ソリデール」について、ゲストの椋平さんと小西さん、石本さんに教えていただこうという企画であります。
今日、番組タイトルは椋平さんたちにつけていただきました。椋平さん、タイトルをまず発表をお願い致します。
椋: はい、「アクティブシニアの皆様へご提案  大学生と同居・交流する古くて新しい住まい方」。これをタイトルにさせていただきます。
絹: 長い!(笑)けど、アクティブシニアっていう言い方を、好まれない高齢者の方もおられますが、元気なお年寄り、要は介護が必要なレベルじゃない、まだまだ元気よと。そういう方に「大学生と一緒に住まへん?」ということの提案なんですね。
ではざっと事業内容要約からお願いします。
椋: はい、このタイトルをつけさせていただいた理由にもかかわってくるのですが、今日お話する「次世代下宿京都ソリデール」は、高齢者宅の空いているお部屋に、大学生が低廉な(安い)居住費負担で入居していただいて、そこで高齢者と大学生が朝晩のあいさつや、リビングでの会話などの交流のある生活をしていただこうとするものなのですが、この事業がご自宅に空き室があって、大学生と同居・交流する生活に関心のあるアクティブシニアの方がいらっしゃることがスタートとなるから、このタイトルとさせていただきました。
絹: はい、ありがとうございます。リスナーの皆さん、京都ソリデール、京都府の次世代下宿事業って、覚えてくださいね。これはひょっとしたらひょっとする、面白いです。
ソリデールって、なんか外国語っぽいサウンドですよね。何語ですか?
小: フランス語です!
絹: ということは、フランスと欧州で色々事例があるよということなんですね。
椋: はい、そうです。

■第一章 次世代下宿「京都ソリデール」事業とは?
   ●「京都ソリデール」はこんな事業です
 絹:  では、事業の内容についてご説明いただけますか?
椋: はい。まず高齢者の方ですが、例えばファミリー向けのキッチンや台所を備えておられて、お部屋が3室、4室とある住宅に、お一人とかご夫婦で暮らしておられると、現在使用されていない空き部屋があるのではないかと。例えば、以前は子ども部屋で使用しておられた部屋、または現在使用していない離れ、そして2階の部屋はほとんど使用していない方もいらっしゃるというふうにお聞きしております。
次に大学生ですが、1人暮らしをされている方は、ワンルームマンションなど、一人暮らし用の小さなキッチンやユニットバスで生活されていて、隣近所との交流や地域の活動に参加されていない方や、遠方の実家から2時間程度かけて通学されている方もいらっしゃるとお聞きしています。
そこでこの質の高い高齢者宅の空き室に、京都の大学生が低廉な居住費負担で入居していただいて、高齢者と大学生が、朝晩のあいさつやリビングでの会話などの交流のある生活や、そして時には高齢者といっしょに地域の活動に参加してもらえたらという取組が、この次世代下宿「京都ソリデール」事業なんです。
絹: はい、ありがとうございます。ご存知のように、私の本業は地元の建設業者です。ですから建築のお仕事で、ワンルームマンションなんかのお仕事も請け負います。仕事でやる時は、「へい、おおきに」とさせていただくんですけど、やっぱりかつて経験した時は、ご近所で「あんまり…」「ちょっと反対」みたいな空気になることがあります。というのは、やっぱり今、ご説明があったように、ワンルームマンションのステレオタイプなイメージかもしれませんが、「近所と交流がない」とか、「顔が見えない」ということがあるからだと思われます。
椋: そういうことはお聞きしますね。
絹: 全てのワンルームマンションがそうだとは言いません。もちろんすごく頑張っていらっしゃる管理人さんとか、オーナーさんもおられまして、素敵なところもあるんですけど、こういう問題意識をなんとか解決したいというお気持ちがあるわけですよね。
椋: そうなんです。

●こんなことを目指しています
絹: さあ、さらなる事業目的について、詰めてもらいましょう。これ、よう考えたら「ソリデール事業」って、名前がついていて素敵なんですけど、懐かしい匂いがしますよね。
椋: その通りです。
絹: 昔は当たり前に、ワンルームマンションなんてない時代なら、こういう事がよくあって、まかない付き下宿、大学生が一緒にご飯を食べていたとか、ありそうですよね。
椋: そういう方が多くいらっしゃったとお聞きしています。
絹: 大学生がワンルームマンションより安く住めたらいいなというのと、うちのおふくろなんかもそうなんですけど、蛍光灯が替えられなくなってきたとか、高い所に脚立で上がって落ちて救急車で運んだとか、もし若い人が一緒に住めたら…というのはありますね。
椋: この事業の目的を説明するのを忘れていたのですが、まずこちらから質問をしたいんです。
ワンルームマンションに住んでおられて、朝夕の挨拶をする人もいなくて、隣に住んでいる人が誰かわからなくて、地域との交流もない生活を4年間された人と、同居する高齢者と日常の挨拶や会話をして、近隣の方とも顔見知りで、交流のある生活を4年間した人と、いずれも大学生ということで想定していただいて、どちらが京都に愛着がわく可能性が高いと思われますか。
絹: なんか、皆まで言うなみたいな感じですね(笑)。
それは当然、京都ファンと言いますか、ひょっとしたら逆にそういうのが嫌になってしまうかもしれませんけど、京都を好きになってくださる可能性は、絶対後者であって、ワンルームで交流なしに巣立つ人より、「じゃまくさいけど、年寄りの相手も近所とのつきあいもするぜ」みたいなタイプを、もし自分が就職の人事担当部長でしたら、間違いなく選びますね。
椋: ありがとうございます。今回の事業の狙いは、後者の近所の方とか、高齢者の方とか顔見知りになる生活をしていただいて、一方で高齢者の方の安心や安全につながったり、大学生の生活費負担の低減などの側面も持ちながら、京都のファン、大学生には京都に愛着を持ってほしいという狙いで今回の事業を進めております。
と言いますのも、ここ京都でも人口減少、そして少子化が問題になっています。合計特殊出生率という言葉がございますが、これが全国ワースト2位という状況が、ここ数年続いています。
絹: そんなにすごかったですか。
椋: そうなんです。東京に次いで、全国で2番目に、女性の方が生涯に産まれる子どもの数が少ないという状況になっておりまして。

●ちょっと余談ですが
絹: そういえばわが社でも、独身者比率が上がってきています。
椋: 晩婚化、そして出生数が低くなるという、色んな問題があるとお聞きしております。
絹: なんか話がずれてしまいそうですけど、今日は女性のゲストがお2人、京都府の技術者として、主事として来ておられます。京都府は職員の女性比率が高いですよね。地元の建設業界と合コンを仕掛けなあかんのかな(笑)。
変な話ですけど、実は切実な問題も含んでいまして、技術職の男性というのは、遠隔地へ行ったり、天候に左右されますので、長い時間現場で指揮をとらねばならないので、休みが少なくて、女性と出会う機会が本当に少ないんです。だからまた、番組が終わったら相談に乗ってやってください(笑)。すみません、話を戻します。
椋: あ、戻す前に、建設業協会でもドボジョと言うんでしょうか、土木を仕事とする女性の方を増やしていこうという取組をやっていらっしゃいますけど、京都の建築技師は最近多く採用されている傾向がありますので、ドボジョの方とか、うちの建築の女性の方とか…。
絹: この頃ね、ドボジョという言葉と、建築小町という言葉が出ているそうですね。うちの中でも建築系の技術屋さんで、6年生の女性が一人、3年生の女性が一人、ようやくテストケースで根付いてきてくれています。また、土木系の女性の技術者は、うちは残念ながらいないんですけど、たぶん行政の方から増えていくと思われますね。期待しております。すみません、元に戻りましょうか(笑)。

●先進事例―フランスでは
絹: この取組は、ソリデールという響きがフランス語っぽいねという話が出ていましたので、どこかに参考にされたフランスの事例、あるいは欧州の事例があるんですね。
椋: はい、おっしゃる通りです。同様の取組はヨーロッパで始まりまして、フランスではパリのボランティア団体、非営利団体で「パリソリデール」があるんですが、そういった団体などが取り組んでおられます。お年寄りが若者に自宅の一室を低家賃で提供する代わりに、若者はお年寄りの心の支えになるような同居について、マッチングを実施しておられて、国内では、東京や福井でNPO等が取り組みを開始しておられます。
絹: パリのソリデールですけど、この言葉を椋平さんに教えていただく前から、海外のアパートで空き室が出た時もそうですが、高齢者だけのアパートにせずに、異年齢の家族が隣り合うように、公営住宅などはされているということを、だいぶ昔に聞いたことがありますし、昨日たまたまYouTubeか何かで、コナンドイルのシャーロックホームズのドラマを見ていたんです。結構古い時代のドラマですけど、あの時代からイギリスでは下宿人は、結構おいででおられたみたいですね。老婦人で、ダンナが先に亡くなって、メイドさんと一緒に二人で住んでいて、ロッジングハウスと言うか下宿で、男性が屋根裏部屋に住んでいるとか、二階に住んでいるとかという脚本だったので、「あ、ソリデールって、結構古くから似たようなものって、あるんやな」と、昨日の晩、思っていました。
椋: ただ、フランスの方の取組を聞いておりますと、一応14年経過しているのですが、比較的古くからということではなくて、まだ十数年というような状況で、パリでは高齢者と若者のマッチングを年間300組以上、累計3,000組以上されている団体が2団体あり、フランスの地方都市でも5団体が同様の活動をしていらっしゃるとお聞きしています。
●先進事例―日本国内では
絹: こういうマッチングをする、言ってしまえばおせっかいな人たちは必要ですよね。で、日本に振り返ってみますと、いかがでしょうか。
椋: 国内の状況としては、東京の団体がこの取組を開始してから5年が経過しており、現在5団体がこの事業に取り組んでいますが、毎年1組とか2組のマッチングに留まっている状況だということです。
絹: じゃあ、意識してそういうマッチングをしようとなってからは、まだそんなに日が経っていないし、実例も積みあがっているわけではないんだよということですね。
椋: そうですね。マッチングの組数自体は、フランスのようには行っていない状況ですが、昨年度、東京と福井の状況を、現地でお話をお聞きしたんですが、実際に同居しておられる方々は、非常にうまく同居しておられて、交流もしておられる様子が伺えました。

■第二章 京都府ならではのシステムとは?
  ●リフォーム補助を受けることができます!
絹: それからこの仕組みの特徴として、信用のおける、例えば京都府さんのような人が仲立ちになるということと、公の助成を少しつけようということですが、リフォームでしたっけ?
椋: はい、補助です。
絹: それが一つの柱になっているようです。そこのところを少し、ご説明をお願いします。
椋: まず行政のかかわりについてですが、東京と福井の事例では、行政があまり主体的には関わっていない状況でして、京都ではマッチング団体さんと連携して取り組みながら、府のホームページや京都府から高齢者団体、京都府から大学を通じた情報発信というような形で、積極的に関わっていこうと考えております。リフォーム補助につきましては、担当の方からご説明させていただきたいと思います。
石: リフォーム補助の対象となる工事としましては、使われていなかったお部屋を大学生が入居できるように壁や床を張り替えるとか、大学生が使うお風呂やトイレをリフォームするとか、ドアに鍵をつけるなどして、セキュリティを向上させる工事や、高齢者と大学生が交流するリビングのリフォームの工事などが対象となっております。また、補助金は上限90万円となっております。ただし補助率が2分の1ですので、工事費が180万円までは高齢者の方にも同額ご負担いただく必要があります。
絹: こうやって公的な仕組みもちゃんと担保して、一般の方が、高齢者のご夫妻や、あるいはお一方が乗り出しやすい、京都府は背中をチョンと押すよという仕組みをつくってくださっているわけですね。

●こんなふうに取り組んでいます
絹: 次に京都府の中での取り組みの現状について、お話しいただけますか。
小: 今年度の最初の取組として、フランスの「パリソリデール」だったり、東京のNPOみたいに、高齢者と大学生を募集して、同居のマッチングをして、同居後のアフターケアを行っていただけるような事業者を公募し、業務を委託しています。
実際4つの事業者さんに委託しているんですが、まず絹川さんもご存知のシェアハウスの豊富な運営経験を持っておられる京都移住計画に所属しておられる岸本さんの事業所であるアッドスパイスさん。
絹: 岸本千佳さんには注目しているんですよ。若いけど。30歳くらいですものね。
小: そうですね。
もう一社が、毎年約200名の大学生を福井県の河和田という所や、京都府内の美山や与謝野という所に連れて行って、滞在して、地域活性の活動に取り組まれている株式会社応用芸術研究所さん。
絹: この方も興味があります。実はゲスト候補として狙っている方です。
小: それから、ほとんどの組合員さんが高齢者さんで、生活の文化的経済的向上を図るための取組を行っておられる京都高齢者生活協同組合くらしコープさん。
さらに、賃貸受託のトラブル対応として学生の相談やオーナーへの啓発や、オーナーから借り上げて学生へ賃貸する業務を行っているNPO法人フリーダムさん。
これらの個人事業者さん、株式会社さん、生活協同組合さん、NPO法人さんが、それぞれのネットワークやノウハウなどを活かした提案をいただき、京都府と連携して、高齢者や大学生へ事業のお知らせをしています。
絹: 今年度はまずこの4社の人と、モデルケースを、ということですね。あまり最初から欲張らずに、実験的にやろうぜという段階みたいですね。

●確実にニーズはある!
絹: では、高齢者の方や大学生の反応はどうですか。
小: 高齢者さんに関しては、事業者のお知り合いの高齢者さんや、京都SKYセンターというところ、あと各大学の同窓会さん、各県人会さんなどにご説明に行かせていただいております。さらに高齢者さんのサークル活動とか、地域でやっておられるような歌声喫茶なんかに、アクティブなシニアさんが集まっておられるので、そういった場でご説明させていただいています。
絹: 実際に、小西さん、行ったりするんですか?
小: 行っている所も、行ってない所もありますけど(笑)。
絹: いやあ、歌声喫茶に目をつけるところなんか、頭柔らかいわあ(笑)。
小: 先月には高齢者さんを対象とした説明会も開催させていただいたんですけど、確実にニーズはあるなというふうには感じています。実際、数名の方が事業者と相談を開始していまして、大学生向けのチラシの準備や、大学生との交流会・お茶会等、「実際にやってみたい」という高齢者さんのおうちで、こういったことをしようかなと進めているところです。
絹: 実際に手を挙げてくれている人がいるんですね。実は岸本さんから電話がかかってきまして、「絹川さん、受け入れのアクティブシニアの人、紹介して!」と。
椋: 直球ですね(笑)。
絹: 知り合いの方、2~3人、うまいこと行かなかったけれども、彼女、実際に視察して、交渉してくれました。でも、色んな方が手を挙げてくださって、良かったですね。
さあ、今年度目標は?
小: 今年度目標は10組です!これを目標に、京都府と事業者が連携して取り組んで、来年度にはさらに多くの方々にこの暮らし方が広がるよう取り組んでいきたいと思っています。

■第三章 ご質問にお答えします
  ●少しでも不安を取り除くために
絹: 事業概要の説明でだいぶ時間を取ってしまいました。いらんツッコミを入れるおっさんがいたせいで(笑)。25分も経ってしまいましたが、深めていきます!
例えば自分が学生を受け入れてもいいよとなった時に、不安に思うことがあるかもしれませんね。そんな時、どういうアドバイスをされているんですか。
椋: 知らない方と、他人と同居するということは、どなたでも不安があるだろうと考えております。その不安を解消するために、実際のマッチングまでの間に、直接お会いいただいたり、同居するルールを話し合っていただいたりということで、面会して、お会いいただいて、お話するという機会を設けて、取り組もうとしています。また、先ほど小西から説明がありましたように、事前にお茶会であるとか、交流会などの取組をしながら進めて行こうかなと。不安を少しでも取り除ければということも、心がけております。
絹: それから時間のすれ違いが起こる時の危険性を少しでも減らすために、部屋割りなどの条件もあげていらっしゃるようですね。
椋: そうです。プライバシーの部分もございますが、実際の大学生の方、高齢者の方では、生活の時間帯が異なりますので、例えば高齢者の方は早く就寝されて、夜遅くに大学生が帰って来られた時も、大学生の部屋に玄関から直接行けるような、そういう間取りが必要かなと考えております。
絹: 費用なんかにつきましては、家賃は無償のケースもあるけれども、一般のワンルームに住むよりもだいぶ安いというのを設定しようとされているんですね。
椋: そうです。この事業の取組として、家賃については無償か通常の家賃よりも安くということで、事業を考えております。

●「京都ソリデール」ぜひ検索してみてください!
絹: 短い時間でしたので、全ての情報を皆さんにお伝えすることは、少し難しいですけれども、ぜひ京都府のホームページ、あるいは京都府次世代下宿「京都ソリデール」事業を検索いただけたら幸いです。
実はこれは本当に応援したい事業です。私事ですが、80過ぎの母が実家に一人で住んでおります。もし私の母の家がこういう風にできれば安心だなと思うけれども、実は今までうちの中が片付かないとか、他人を入れるのが心配だとか、色んなハードルがあって、誰に相談したらいいか、わからなかったんです。皆さん、これをぜひ注目してくださいね。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りしました。みなさん、ありがとうございました。
一同: ありがとうございました。
投稿日:2016/10/30

第123回 ・「みっけ隊」アプリのその後

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成28年9月17日放送>

以前の放送で取り上げた、京都市さんのアプリケーションを利用した取り組み、「みっけ隊」のその後について、お話を伺いました。

 

藤: 藤井 那保子氏(京都市建設局 土木管理部土木管理課 計画調整係長)
岡: 岡林 祐司氏(京都市建設局 土木管理部土木管理課 計画調整担当)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)

 

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左 岡林 祐司氏  右 藤井 那保子氏
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は、地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は、当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲスト、なんと3回目のご出演になるという、常連に近い京都市建設局 土木管理部 土木監理課 藤井 那保子さんです。
藤: どうもこんにちは。
絹: そしてその藤井那保子さんのシモベ(笑)、配下、部下、同僚であります岡林祐司さんです。
岡: 部下の岡林です。よろしくお願いします(笑)。
絹: われらが京都市建設局からお2人お招きしております。
そして今日の番組のテーマ、タイトルでございますが、以前も一度放送させていただきました「みっけ隊アプリのその後」と題してお送りいたします。何やら※テレビ放送で取り上げられて、えらいことになっているらしい、そういう聞き込みがございました。
それでは藤井那保子さん、岡林祐司さん、よろしくお願いします。
さあ、ちょっとウォーミングアップの意味で、他己紹介をやりましょうか。那保子さん、岡林さんて、どんなシモベ?
藤: いやあ(笑)。岡林君とは今年から一緒に仕事をやるようになって、もう置いて行かれるくらい、前へ突き進んでいるので。これまではどちらかと言うと私の方が前のめりになっている方が多かったんですが、さらに50メートルくらい前に(笑)。ちょっと追いつくのに大変やなと思いながら、でもガンガン行ってくれるので、すごく助かっています。
絹: リスナーの皆さん、前のめりの岡林さんです(笑)。前のめりの行政マンて、どんなんや(笑)。
岡: すごい汗かいたんですけど(笑)。
絹: では岡林さん、親分の藤井那保子さんて、どんな方ですか?
岡: 一言で言うと、「すごい人やな」というのが本音です。まわりから「すごいぞ」と言われていましたので、「どんなにすごいねん」と思っていたんですが、一緒に仕事をさせてもらうと、確かに一言で言い表せないので、一言「すごいわ」というのが本音ですね(笑)。
絹: さあ、どうすごいのか、エピソードがひょっとしたら聞けるかもしれません。

●「みっけ隊アプリ」の復習を、ちょっとだけ…
絹: さあ、エピソード1に入る前に、「みっけ隊アプリ」の復習、私が以前、京都市の建設局さんのワークショップに1、2度出させていただいた時の報告を、ちょっとだけします。
京都市の建設局さんと京都市の高度技術研究所がタイアップして、スマートフォンアプリをつくられました。何やらそれが面白いのではということで取材に行きましたが、我々、建設屋にとっても、非常にうれしい側面を持つアプリケーションになりました。つづきをどうぞ。
岡: 「みっけ隊」というのは、道路・公園・川の壊れた所を、市民の皆さんが写真を撮って、行政に知らせることができるアプリケーションになっています。要はスマートフォンで写真を撮っていただければ、行政に「ここが壊れているよ」というのが、お知らせしていただけるシステムです。
絹: 簡単にまとめるとそういうことです。藤井さん、復習はこういうところでいいですか?
藤: 大丈夫だと思います。

■第一章 テレビに取り上げられた「みっけ隊アプリ」
  ●御池城にテレビカメラがやってきた
絹: なんでも先ごろ、このスマートフォンアプリ(「みっけ隊」という愛称ですが)、フジテレビや関西テレビで取り上げられたということを、お2人の上司である平井大課長(笑)に教えてもらいました。テレビ出演総なめで、結構いい評価をいただいたということを漏れ聞きましたので、そのあたりから少し教えていただけますか?
岡: うちの大課長が(笑)、すごく情熱的に「みっけ隊」について話をしまして、関西テレビさんやフジテレビさんが、すごく私たちの意向を読み取った放送をしてくださったというのが、8月下旬とつい先日になっております。
絹: そのそばで、スタジオで見ておられたわけですよね、お2人は。
藤: 取材陣が役所の方に来て、課長の席で座っているのを撮るというような感じです。
絹: あの御池城で?北館4階の土木監理課の課長席にテレビカメラが入ったんですか。
藤: そうです(笑)。
絹: 役所でそんなことって、ないことでしょ?
藤: そうですね。中まで入ってきては。それ以外の職員は普通に仕事をしていますし、そこだけスポットライトが当たって、キャスターが取材しているというような(笑)。ちょっと面白い光景ですね。
絹: そこへ我々建設屋が「こんにちは」と入ったら、「今、入ったらあかん」みたいなことですよね(笑)。そこでどんな取材がなされたんですか。土木事務所や出先の方にも取材に行かれたと聞きましたが。

●まる一日かけての密着取材!
岡: そうですね。まず大課長の方で、「みっけ隊」がどういうものか説明をさせてもらって、土木事務所に行きまして、実際に投稿いただいたものを、直す過程までずっと、密着で取材をしていただいています。一日かけてずっと取材していただきました。
絹:  一般の市民で、「みっけ隊アプリケーション」を自分の携帯にダウンロードされている方の、実際の投稿というのは、どんなものだったんですか。
岡: 「道路に穴があいている」とか、「蓋が落ちかけているよ」とか…。
絹: 「側溝の蓋がちょっとずれているし、そこへ自転車が乗り上げたら危ないんとちゃう」とか、「お年寄りが躓いたら怪我するで」とかいうのを、アプリケーションを通じて…。
岡: そうです。投稿いただいたのを、蓋を交換したり、穴を埋めたりということです。
絹: それは実際にあったことなんですね。用意されたものではなくて。
藤: そうです。実際に投稿いただいたものを、職員が直しに行ったものです。

●道路も橋もちゃんと走れて当たり前、ではありますが…
絹: そういう情報を寄せてくださった方というのは、地元の方ですよね、きっと。
藤: おそらく。
絹: だいたいそういう情報を寄せてくださる方って、総数でどれくらいおられるのか、だいたい掴みつつあるんでしょうか。今、解析中?
藤: そうですね。そういう解析もしていかなればということで…。
絹: 以前、この「みっけ隊アプリ」の第一回の特集番組をつくらせていただいた(もう何ヶ月も前ですけど)、その時も申しましたが、我々はご存知のように地元の建設屋です。
このアプリケーションを通じて、一般の市民の方が、都市インフラ(例えば道だとか、橋だとか、側溝の蓋だとか、照明中の電気が切れているとか)に興味を持ってくださるのは、何かものすごくうれしい思いがしたんです。我々の仕事もそうですし、藤井さんや岡林さんの建設局の土木事務所の仕事もそうですけど、見えにくい。
岡: おっしゃる通りです。
藤: 当たり前のようにありますしね。道路も。
絹: 道路はちゃんと走れて当たり前、電気は来て当たり前、ガスは来て当たり前、水道は来て当たり前。
で、当たり前のことが当たり前になされてないと、「コラ!ワシら税金払ってるやんか!ちゃんとしてよ」と文句言われるのが、ありがちなパターンです。
でもそのアプリケーションで「ここ危ないのと違う?」と、わざわざ自分で知らせてくださる人、ありがたいなと…。

●「みっけ隊アプリ」の運用が始まって・・・
藤: 本当に。今までアプリを運用しだして、まずは新聞に載せていただいたりはしていますが、直接市民の方々とお会いして、建設局が考えていることを、きちんと顔を見て伝えてということを、イメージしていたんです。
そうしないとこのアプリがうまく回らないかなと考えていたんですけど、実は新聞にさらっと載って、テレビでも紹介されて、ダウンロードしていただいている市民の方々は、うちが思っていることをきちんと理解していただいて、投稿していただけるということができているので、予想以上に大きな混乱はないと言うか。
絹: びっくりですよね。アプリケーションをつくって配布する側の京都市の建設局さんにしたら、とんでもない数の投稿が来て、「あれもやれ、これもやれ」と爆発したらどうしようって、あるいは「言ったのに、直さへんやないか」と怒られるのではと、はじめは怖かったと思うんですよね。
藤: そうですね。
絹: でもそれを乗り越えて着実に市民に伝わっているとしたら、よかったですねえ。

●対応の状況を「見える化」する
藤: そうなんです。それでやっぱり優先順位が高くないもの、危なくないものは、どうしても後回しになったりするんですけど、アプリ上では「調査済み」ということで、黄色のマークでずっと残っていきます。その期間が一定長くても、そんなに「対応が遅いのではないか」というお電話をいただくこともないですし。それは土木事務所がアプリで返信する時に、「時間がかかります」とか「お金を取らないといけません」という理由をちゃんと示しているということが大きいのかなと思っています。
絹: 市民の方がそうやって連絡してくださるというのはすごいし、行政の方も、これは仮説ですが、もちろんインフラに関わる建設局的なところからの問い合わせも多いのでしょうが、ひょっとしたらちょっと外れた、インフラの担当ではない、道路の担当ではないようなところからの問い合わせはないですか。
岡: 実際、市民の方から「これいいな」という声や、建設行政以外の方からの問い合わせも多々いただいているのかなという…。
絹: ああ、やっぱり。以前も藤井那保子さんがこのアプリケーションを発想して、準備を積み上げて行かれる時に、「これはひょっとしたら、土木事務所とかインフラのメンテナンス(危ないところを早く一緒に見つけてきちんとしましょうね)ということから、ひょっとしたら広がっていく世界かもしれない」という仮説を立てられていましたよね。その辺について、夢の段階かもしれませんが、少し語っていただけますか。

●ゴミや空き家、災害などにも使えるかも
藤: 広がりという面で言いますと、今は維持管理というところに特化してつくっていますが、市民の方々が住んでおられて、いつも通っておられる道というのを、違う視点で見てもらうという発想だと思うんです。
例えばそれがゴミとか、空き家とか、そういったものにも実は使えるんじゃないかとか、災害も1つだと思いますし、そういった広がりというのは、あってもいいのかなと思ったりもします。
絹: 「みっけ隊アプリ」ですけど、例えば本当に一朝事ある時、台風だとか、地震だとかで、本来の使い方ではないかもしれなけれど、「お隣の家がこんなになっている。亀裂が走って危ないんじゃないかしら」というのを、ひょっとしたら知らせてくる方が出てくるかもしれませんね。
藤: そうですね。そういった使い方というのも、今後どんどん進んでいったらいいなと思いますし、せっかく作ったシステムなので、土木だけに留まらずにもっと色んな方面で使っていただけたらいいなと思います。

●「みっけ隊アプリ」と市民参加
絹: インターネットを介した情報の共有は、こういう形で土木や建設の分野にも影響があるんだなというのを、本当に近くで見せていただきました。
そのうちアプリの分析のホームページを「お前、見てへんのか」みたいな形で、「業者のくせに、地元の建設屋のくせに、そのウォッチくらいしとけよ」という突っ込みが土木事務所から入ると、また「わかってますぅ」と言わなあかんのですね(笑)。
藤: そうなんです。今ホームページとか、今アプリを開いていただいたらわかると思うんですが、もう真っ青になっていると言うか、京都市がマークで埋め尽くされていましてね。
もうちょっとうまく見えるようにしなければならないなというシステム上の課題はあるんですが、かなり多くの市民の方々が、ちょっとした危ない箇所を投稿していただいています。
絹: すごく大上段に振りかぶった言い方をしたら、このアプリは市民参加という、ずっと京都市さんがここ15年以上かけて、地道にしてくださったことの、1つの結実、成果の1つかもしれません。もっと言えば、選挙の時にすごく投票率が低いという悩みがあるじゃないですか。そういうことにも影響を与えかねない仕組みかなと。おまかせ民主主義というものではなくて、市民・府民の中には一定層、黙っていても「何かできることをやるねん」という人たちがいるでしょう?で、ひょっとしたら、そういう人たちを発掘するツールとして…。
だいたいスタート時点、この「みっけ隊アプリ」って、マニアックな世界じゃないですか(笑)。でもそれに反応してくださる方々がおられて、それもどうやら結構地元の、年齢的にも高そうだと。

●自分たちの活動も投稿していただいています
藤: そうですね。危ない箇所を投稿するだけじゃなくて、自分たちの活動も投稿できるようになっているんですけど、それもそんなにPRはしてないんですけど、着実に増えているんですよ。
絹: 例えば?!
藤: 「清掃活動を橋でやりました!」とか、「公園でやりました!」とか、「川でやりました!」というのを投稿してくださって、それが増えるかな、どうなのかなと。実証実験の時はほとんどなかったんですが、本格運用になって、本当に月に2件、3件、4件と、徐々に増えて行っているので、なんかこれは素晴らしいなと。
絹: すごい現象ですね。ワークショップの時もね、「予算の見える化ゲーム」をやったじゃないですか。あれ上手でしたね。
土木事務所だとか、そういうインフラのメンテにかけられる予算は、これだけの規模ですと。一般市民から「これと、これと、これと直して」という要望が来ました。あなたが行政ならどれからやりますかという優先順位をつける。
そしたら、街灯、道の穴ぼこには「これは危ない!」、ぺんぺん草が生えてゴミが散乱には「これは自分らでもできるんとちゃう?」と言った人がいたんですよね。あれにはびっくりしましたよね。
藤: そうですね。
絹: 京都市さんは、ワルやなあ(笑)。うがった言い方ではないですよ。本当に予算というものの考え方で、ない袖は振れないなかで、一生懸命やりたいけれど、2万件来る、その中から大事なものを処理していくのに、「後回しにせざるを得ないんです!わかって!」みたいなことを、言わなくてもわかりますものね。自分で優先順位をつけた人は。
また、そういう人たちが投稿してきてくれるのと違いますか。
藤: そうなんです。それに正直本当に驚いていて。
絹: で、ひょっとしたら、その投稿に対して、土木事務所の担当者が「おおきに!」みたいな書き込みをしてないですか。
岡: まだ、そこまではくだけてはないかなあという(笑)。個人的にはくだいても面白いかなと。例えば「私たちやりました!」「ありがとう!」みたいな形でもいいのかなとは思っていますけど、まだそこまでは行ってないですね。
絹: 京都市のインフラのウォッチャーと言いますか、ファンと言いますか、そういう人たちがポジティブな投稿をしてくださった時には、集めて「ありがとう大会」みたいなのができたらいいですね。
藤: そうですね。本当にそれはやりたいですね。土木事務所単位とかで、「みっけたい集まれ!」みたいな。
絹: 土木事務所の駐車場で、幟をたてて、「みっけ隊、おおきに!」みたいなこと、色々問題があるかもしれないけど、持ち寄りでバーベキューやってたりして(笑)。
藤: 確かにそれは本当に思いますね。
絹: そんな時やったらね、我々建設屋はドラム缶ぶったぎって、バーベキューコンロみたいなの、すぐ持っていきますよ(笑)。
藤: じゃあ、その時は是非!(笑)

●ぜひ、「みっけ隊」で検索してみてください
絹: 皆さん、いかがでしょうか、本当にこれは京都市の高度技術研究所と建設局が開発された「みっけ隊」という小さなアプリケーションが巻き起こしている、ほんの小さな現象ですけど、すっごい意味のある市民と行政の連係プレイが起こり始めている。これは日本中に伝染する可能性がある。あるいは分野が、建設、土木に留まらない可能性があるということで、非常に可能性を秘めた京都市さんの面白い悪だくみだと(笑)、思っております。
皆さんもご興味のある方は是非!どこからダウンロードできるんですかね。
岡: Googleとか、アプリで「みっけ隊」と打っていただければ!
絹: 検索すれば、私みたいな60前のおっさんでも、自分の携帯に入っていますので、使ってみてください。面白いことを体験することができるかもしれません。
さあ、今日話してみていかがでしたか、岡林さん。今日、初めての出演ですね。
岡: 非常に楽しかったというのが本音です。
絹: いやあ、シモベの行動をもうちょっと聞きたかったけど(笑)。ボスから前のめり、自分の50メートル先に行っていると評されているところは、どんなところだと思います?
岡: どんなところって、ちょっと難しいかな(笑)。
藤: たぶん心当たりはあると思います(笑)。
絹: その辺はまた今後ということで(笑)。

「みやこ子ども土曜塾」11月19日にやります!
絹: それでは次の話題です。これも京都市さんとのタイアップ企画ですが、「みやこ子ども土曜塾」というのが、11月の19日の土曜日、13時から16時半頃まで行われます。これについて少し告知をさせてください。
岡林さん、これ知ってる?
岡: 知ってます!大丈夫です(笑)。
絹: どんなことなのか、短めに言ってください。
岡: 子どもたちが建設業がどういった仕事をしているかを体験できるイベントをご用意しております。
絹: 道路建設業協会という一般社団法人があります。私もそこに属しておりますが、11月19日に竹田駅西口ロータリーに集合して、2台のバスで光アスコンさんというところのプラントに行きます。
アスファルトフィニッシャー、路面切削機、タイヤローラー、コンバインドローラー、ミニバックホウ、ライン引きってどうするの?
道路屋さんたちが、小学生たちに「こんなふうに道路ってつくるんだよ」というのを、プレゼンします。申し込みは道路建設業協会のホームページからかな。道路建設業協会まで問い合わせてください。それから、このチラシって、区役所でもらえるのかな。
藤: 一応、配架する場所ははっきりとは決まってないのですが、そういうところでお配り出来たらと考えております。一応、京都市が後援という形で、道路建設業協会さんがメインで開催していただくことになっています。
絹: 当日は今日ずっとお話しました「みっけ隊アプリ」についても、京都市さんから子どもたちにプレゼンする時間があるそうです。子どもたちが使うと面白いかもしれませんね。
リ スナーの皆さん、いかがでしたか。京都市はテレビに取り上げられるくらい面白いことを、時々なさいます。そしてお2人、藤井さんと岡林さんの上司、平井大課長がブイブイとテレビで、本当にあつく語っていらっしゃった。この映像もたぶんYouTubeなんかで検索するとヒットするやもしれません。「みっけ隊アプリ」で検索をかけてみると面白いと思います。
さあ、そろそろ終わりの時間です。皆さん、行政には、人知れず、見えないところで、色んな工夫をしている人たちがいます。それは我々建設屋も同じです。見えにくいけれども、都市生活の基盤を支え、暮らしを支えるという人たちがいることを、たまには思い出していただけたらなと思います。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市・景観まちづくりセンターの応援でお送りしました。
藤井さん、岡林さん、ありがとうございました。
両名: ありがとうございました。
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※「みやびじょん」テレビ放送の様子
藤井様、岡林様が出演されています。
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https://www.youtube.com/watch?v=aWCdjbFIxqQ

 

投稿日:2016/09/20

第122回 ・「シュッとした京都」~京都府が何やらやらかそうとしています~

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成28年8月13日放送>

京都府政策企画部長付 副主査の東氏と、飛び入りゲストにも参加してもらい、スマートガバメント構想とIoEと府民協働についてお聞きしました。

東: 東 健二郎氏(京都府 政策企画部長付 副主査)
小: 小川 拓馬氏(京都大学 公共政策大学院)
山: 山岸 将暉氏(京都大学 公共政策大学院)
丹: 丹下 智氏(京都大学 公共政策大学院)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、今日のゲスト、4人いらっしゃっています。まずはメイン。京都府の政策企画部長付副主査でいらっしゃいます、東健二郎さんです。
東: よろしくお願いします。ありがとうございます。
絹: そして若い飛び入り参加者が3名。我らが京都大学公共政策大学院と、これも難しいところから来ていますが、M1M2の3人さんです。
小: 公共政策大学院修士2回生の小川と申します。本日はよろしくお願いいたします。
絹: はい。飛び入りありがとう。次は山岸くん。
山: はい、同じく公共政策大学院修士1回生の山岸といいます。本日はよろしくお願いいたします。
絹: はい、最後は?
丹: 同じく公共政策大学院修士1回生の丹下と申します。よろしくお願いいたします。
絹: ねえ、なんで自分が何回も落ちた大学の学生を迎えなあかんねん(笑)!でも、本当に地元、われらの誇り。京大からよくお越しになりました。
さあ、東さん、今日の番組のテーマ、タイトルですけれども、ちょっと変わったタイトルを頂戴いたしました。「シュッとした京都~京都府が何やらやらかそうとしています~」
東: 「シュッとした京都」 ですね。私は京都の人間ではないんで、イントネーションがよくわからないんですけど「シュッとしてはるわあ」の「シュッと」です。
絹: これからちょっと流行るかもしれません。ある部分ではすでに意識され始めています。「シュッとした京都~京都府が何やらやらかそうとしています~」と題してお送りいたします。

■第一章 「スマート京都構築プラン」会議のこと
  ●京都府主催の面白い会議、行ってきました!
絹: 実際には「スマート京都推進プラン」というカタいお仕事を今、東さんたちは画策しておられるわけですが、まずは「シュッとした」の説明から行きますか?
どこでこの「シュッとした」を聞いたのかと言いますと、この間の7月31日の日曜日だったんですけど、岡崎公園に行きましてね。そこで僕、東さんとは2回目だったですね。
東: そうですね。1回目は府庁に来ていただいた時ですから。
絹: お会いして、誘われたんですよ。「スマートガバメント構築プランで会議をやるから、面白い会議やから、ワールドカフェもやるからおいで!」と言われて行ったら、なんと三十数名の人が集まっていて。物好きですねえ、休みの日に(笑)。
東: でも最初は「土日の方がいいよ」と言われて、まあそんなもんかと思ったんですけど、あの日暑かったですから、まあ涼しい所でアツい議論ができてよかったのか…。
絹: 私は、京都府さんがこういう企みと言いますか、ワークショップと言うか、イベントを丁寧にされているらしいというのをキャッチしていました。
福知山でも少し前になさっていて、その時は定住促進プラン、移住というテーマで色んなアイデアを一般の方から集めておられましたけれども、その時には私は行けなくて、東さんの上司の梅原副部長に「残念、行けなかった」と言ったら、「京都でもやるからおいでよ」と誘ってもらって、顔を出したんですけど、すごかったですよ。楽しかった。

●私たちの生活と新しいテクノロジー
絹: さあ、リスナーの皆さんには何のことか、たぶんわかっていらっしゃらないので、スマート京都構築プラン、まずは京都府さんはどういうことを考えていらっしゃったのかというのをお願いします。
東: はい。入り口はたぶん皆さん、テレビやラジオ、インターネット等で、毎日「人工知能でどう」とか、「ロボットでこんなことできます」とか、「スマートフォンでこんなアプリがあります」といった形で、色んな話題として新しいテクノロジー(技術だったりサービスだったり)を見聞きすることが、最近増えてきていて…。
絹: 僕らみたいな60近いおっさんから言うと、「IoTとか、IoEとか、おっちゃん何のことか知ってる?」と言われて、グッと詰まるわけです。
“Internet of Things”“Internet of Everything”。「IoTとIoEは違うんやで」というところから教えてもらいましたよね、この間(笑)。それが我々の生活に深く関わるかもしれない、もうすでに関わっている、そんな話をしてもらいました。

●天気予報をイメージしてください
東: はい。日曜日に冒頭話したのは、例えばということですけど、天気予報の話をしましたよね。
絹: はい。まず天気予報をイメージしてと。
東: NHKさんでも、衛星からの画像をもとに、予報士さんがもっと細かいプログラムをされた画像や予測のシステムを見て天気予報をつくっていらっしゃると思うのですが、一方でどうしても外れますよね。一口に京都市と言っても、今出川より北は気候が違うとか、経験的に皆さんわかっているようなことが予報にどれだけ反映されるかというのがありますよね。
そうした時にIoTと言われている技術を使う方法が考えられています。
車のワイパーは雨がポツポツ来たら、動き出し、本降りになったらワーッと回すような仕組みになっているわけですが、そのワイパーにセンサーをつけて、小さなセンサーからインターネットに情報を飛ばして、それを集計する。そうすると、あるエリアを走っているたくさんの車が、ワイパーを急に動かしだしたとなると、たぶん雨が降ってきているんだろうなというのが、実地ベースでわかるわけです。
そういったことを、天気予報の新しいサービスとして提供できるのではないかと自動車会社さんが考えていらっしゃるということが新聞記事に出ていました。ワイパーはそんなことのために生み出されたものではないのですが、違う目から見ると、ワイパーが動いている、動いてないという情報が、新しいサービスを生み出すわけです。天気を知りたい人は、天気予報を急いで見るというのではなくて、ワイパー情報の何かのサービスを見るとわかるようになるかもしれない未来がすぐそこに来ているんだなということです。これはワイパーの話ですけど、他の色んな…。
絹: ワイパーの例えがすごくわかりやすくて、天気予報が外れることがあるかもしれないけど、トヨタさんがそういうワイパーの動きを集約した情報で、天気予報の精度を上げたり、西の方で雨がふっているという情報がいっぱいきて、それを集約したら、うちへはもう30分したら来るなとか、そういう世界がもう当たり前に来つつあるんだよねという、信じられないような情報の、データのとり方があるという話でしたよね。

●新しいテクノロジーを行政サービスに取り込めないか…
東: はい。そうした時に、行政って、何か問題が起こった時に、その問題はなぜ起こったのかと考えて、じゃあ、今度からこうしますということを、色々考えるのはすごく得意なんですけど、今言った「次、雨はどこで降るの?」とか、地震の予知とか、それに応じた、事前にこういうところにはもっと色んな建造物をつくって、被害を防がないといけないとか、そういった事を考えることが結構苦手だったりするんです。
もちろんそれは新しいテクノロジーを使っても同じなのですが、やり方として苦手であるというのが、どうしてもつきまとっていまして、一方で世の中でそういうサービスなり、テクノロジーが出てきた時に、行政がそういうことを放っておいてもいいのかなと。
放っておくというのは、規制をする・しないということではなくて、そういうアイデアを自分たちが日ごろ仕事をしている、政策を生み出す新しいサービスを、京都府の場合は府民の皆さんにお届けするという中に、取り込めないのかなというのは、考えるべきではないかと思っています。そういうことを考えようというので、プランをつくっているということです。

●後追い対策ではなく、先取り対策へ
絹: 皆さん、今、さらっとすごいこと言われたの、気づいておられます?だいたい僕らの常識では、行政の仕事って、後追い、つまりこんな困ったこと(例えば事件だとか事故だとか)が起こったので、仕組みを構築して、そういうことが起こらないようにしましょうねという感じだと思っていたら、東さんたちは先取り?
東: できればいいですねというふうにしたいなと。
絹: そういう意識に変わってきている。だから僕らがステレオタイプで思い描く行政の姿から、どうやらこの人たちは踏み出そうとしている気がします。という、そんなことに気が付いてほしいなと。すみません、邪魔をしました。次をどうぞ。

●自由でリラックスした楽しい会議でした
東: そうした時に、なんで日曜日に府立図書館でやったかという話です。
私もそうですけど、日ごろ役所の中にいて、「ああでもない、こうでもない」と、もちろん色んな議論はしていますし、その時に有識者と言われている方々や、もちろん府民の方の意見もいただいて考えるプロセスは元々あるんです。でも、「今はできていないけれど、ちょっと先にはこういうことをしたいね」ということを話し合う場づくりとして、役所の中でするのではなくて、現場と言うか、その人が活動している場所に出かけて行って、あるいはそういう所にみんなで集まって話し合いをする方が、たぶん良いアイデアが出てくるのではないかと思うんです。ずっと座って、ガーッと考えるよりも、散歩しているときの方が、ふっとアイデアを思いつくとか、全然違う人とちょっと雑談している時に、良いアイデアが思いついたりしますよね。
ただ、そういったのは、行政の人はあまり得意じゃなかったりして…。もちろんおしゃべり好きな人もいますが。コツコツと机に向かって仕事をするということももちろん必要なのですが、そうではないことも大切なのではないかということです。
そんなことを思いながら、今日お伺いしたら、そういう場づくりをしている活動のチラシが掲示されていましたが、そういった活動が民間さんの中に、すごくあるなあと。
絹: 例えば、「home’s vi」の若い人たちとかねえ。場づくりという言葉が当たり前に行政の方から語られるのも、僕は驚きですが、リスナーの皆さん、今、東さんが言おうとしていたのは、京都府が主催する会議、ブレーンストーミングのアイデア出しだから、「3時間みんなネクタイしめて背広着て、きちんと真面目にやっていたんとちゃうの」と思われるかもしれませんが、あにはからんや。小さいテーブルの真ん中には、お菓子は置いてあるわ、飲み物もその辺に置いてあるわ、席から立って動き回るのも自由だわ…。
東: 本もありましたしね。図書館ならではだと思いますね。
絹: 司書の人たちが集めたデータもあるわ、だから非常にリラックスしたカフェの雰囲気で話をする、アイデア出し会議をする。だからワールドカフェと言う名前がついていたのかもしれませんが、楽しかったですよ。
こういう形でブレスト会議を仕掛けた東さんたちですが、行政の人たちが得意な、と言いますか、今までの行動パターンのOKKというキーワードを教えてもらいましたよね。「思い込み」「経験」そしてベテランの「勘」で、公共政策を決めていくというところから、IOE等の新しいテクノロジーで集まってくるデータに基づいたものがつくれないか、それから今、おっしゃったような一般の方たちの生のアイデア、思い、と言うよりもあの時はもっといい言葉使われましたよね。「みんなのイラっというのを集めたい」と。そういうのをすごく丁寧に拾おうとされています。すみません、また腰を折っちゃった。
tyobittogazou

■第二章 「シュッとした京都」って、どういうこと?
  ●行政の在り方を変えるきっかけに
東: たぶん「シュッとした」のところが飛んでいたのかもしれませんね。
絹: すみません、「シュッとした」に行きましょう。
東: そうした時に、色々お話を聞いてみようとか、色んなアイデアをもらって考えて行こうとか、そういうやり方だったり姿勢を持ったりする…。要は「あの人はシュッとしてはるわあ」というのは、いい時も悪い時もあるのかもしれませんが、たたずまいとか、姿勢の問題とか、思いの問題と言うか、その人が日ごろ何かやっていることが、何かの時に違う形でにじみ出ているという様をうまく表現しているなと私は理解していて、そういう価値観的なものですかね。
具体的なサービスとか、政策をする中身の話はもちろん重要なんですが、そういったものが生み出そうとする思い(例えば子育てのサービスでもお渡しするだけではなく、渡し方だったり、アプリのデザイン的なものも含めて)があれば、「シュッとした」ような感じになるのかなと思うんです。そういったことも十分考えて、行政は進めなければならないのかなと。
「良いも悪いも役所仕事だ」と言われていますが、それはそれで重要なことはあるんです。一方でそういうことで全部線を引いてしまわないで、ちょっとついでに何か言って差し上げる、例えば「困ったことなんですか?」の一言もそうなんですけど、「こういうふうにしたらどうですか」と言うような、そういう働き方というのも考えていくべきなのではないかと。
「シュッとした京都」の京都は、もちろん京都府全体のことですけど、行政の在り方みたいなものも変えていくきっかけになるのかなと思っています。
絹: 「シュッとした」という言葉は、えらいたくさんの意味を含んでいるようですね。行政としてシュッとするにはどうあるべきかという、立ち居振る舞いから、ひょっとしたら打てば響くような反応も目指していらっしゃるのか。それと情報だとか色んな仕組みを府民に手渡すときのラッピングまで「シュッとしていたい」というような、何重にも思いがあるようです。
さて、シュッとした京都府を目指すために、「府民の参加、協働×(かける)IoT・IoE」ということを考えていらっしゃるアイデア出し会議でありました。

●様々な人の距離を縮めるテクノロジーの使い方
絹: さあ、今まで飛び入りゲストの京大のM1M2のお三方、今東さんの話を聞いて、何か思うことがありますか?
東: 次、話せるなという話を、ちょっとずつ小出しにしていたので、どうですか?
山: 僕は大学院で共生社会みたいな、色んな人たちが共に生きられる社会みたいなのを考えています。社会には色んな人たちがいるわけで、例えば障がい者や高齢者、外国人の方もいらっしゃるにも関わらず、これまでそんなに行政に参加できていなかったのかなと思っていて、そういう人たちの声を、もう少し行政とか政策に入れ込むことができたら、何かもう少し面白い社会と言うか、色んな人が楽しめる社会がつくれるのではないかと思って、そういう勉強をしているんですけど…。
絹: お客さん感と言うか、自分が関わったりすると他人事じゃないものね、自分事になるものね。
山: そういう点から見て、今の東さんがおっしゃっていた場、話し合いの場みたいなのは、参加できるきっかけになるんじゃないかと、面白く聞いていました。
絹: ありがとう、ナイスつっこみ!
東: その話はまさに重要で、高齢者とか障がい者の方とおっしゃっていましたが、テクノロジーが不得手な方って、どうしてもいらっしゃいますよね。年齢とかに関わらず、色んな状況で、なかなか利用できないとか、使いにくい人たちを、逆にそういう人たちの距離を広げてしまうようなテクノロジーはダメだと。これはアイデアソンとは別に検討委員会で、有識者の方に色々意見交換をしたなかで、そういう話もいただいたんです。
テクノロジーがそういう人たちとの距離を縮めるような使い方、だからテクノロジーありきじゃなくて、使う人の心構えが、それもシュッとしたところなんだと私は思うんですけど、そういうのは考えたいなと思いますね。
絹: 僕ら、場づくりだとか、ワークショップだとか、ワールドカフェだとか、市民参加だとか、色々民間の立場で15~20年前くらいからシコシコやっていて、本当にアナログで来たんですよ。
でもアナログで本当に顔を見合して、目を見て、ああでもない、こうでもないとやっているところに、IoEとかIoTのものが掛け算になった時に、何か面白いことになるかもしれないという期待を京都府さんはお持ちになっているんですね。今まで市民参加とか府民参加とか言われていたところに、新しい道具が、しかもテクノロジーでどう使えばいいのか、まだわからないけれども、すごい面白いことが起きる可能性を秘めている。大学院でもそんな話をするのかな?
確かこの3人は、公共政策大学院 曽我謙悟教授の門下生なのかな。でもこういう若い人たちが京都府の行政の方と絡んでいるって、これは捨てたもんじゃない京都という気がしますね。
小: ありがたい立場なんです。僕たちからすると。現場に入らせてもらえるというのは、すごく貴重な経験だと思うんです。

●学生さんを府庁に呼び込むということ
絹: 現場に彼らを呼び込んでいるんですか?
東: そうですね。今日は午前中、データの話があって、データを分析して、政策を立案しようという活動をしていました。
私が公共政策大学院の授業におじゃまして、学生さんに「いろいろ考えませんか」と、ちょっと呼びかけて。呼びかけるのはできるんですけど、結局行政もそういうことはあまりやってない。もちろんこれがすぐに何かにつながるわけじゃないんですけど。「大学の知を活かそう」というのは、言葉では言うんですけど、実際やってみたら、どういうことが起こるかなかなかわからないので、実際にフェイストゥフェイスで、そういうことに興味のある学生さんに来ていただくことにしたんです。
今日はちょうど山ほど統計のデータを打ち込み、打ち込み、「どうしよう」みたいな話をしていたんです。今、統計情報を集めていて、公開もしているんですが、公開のやり方で何か問題があるかなとか…。やり方もそうなんですが、統計情報を集めて職員がつくっていて、その職員の仕事そのものも、さっきのテクノロジーみたいな感じで、実際使うシーンがもっとはっきりすれば(これが欲しいとなればすぐ数字が出てくれば)、こんなにイラッとすることはないのですが…。
今日はだいぶイラっとしましたよね?大変でしたよね。
だいぶイラッとしました(笑)。
東: エクセルが上手か上手でないかというのももちろんありますし、「エクセルがもっと親切になれよ」ということかもしれませんが、我々がやりたいと思ったデータを集めて、それをこれから統計の回帰分析や曽我先生に教えていただいているソフトを使って、あれこれやってみようという前段階で、今日結構時間を取っていたんです。
そういった時に、こういう学生さんと少し年齢が上の人間とが、データを扱ってみるという経験を役所の中でやっていただくと(一緒にやるというだけではなく、わざわざ役所に来ていただいたのは)、政策企画部のオフィスに来てもらったら、周りで色んな話が聞こえたはずで、そうすると仕事がリアルに見えると思うんです。
公共政策大学院で、皆さんが公務員になるわけではないですが、公共政策の中心だと皆さんが考えている公務員の世界が、いったいどういったものかがリアルに見えるか見えないかで、たぶん授業に戻って、政策について意見交換しようとなった時に、人の顔が見えていると議論に深みが出ると言うか、違った議論もできるのかなと思って。そうしたことを期待しているわけでは、もちろんなくて、あくまでも各個人でどう受け止めるかということですが。ただ、そういったきっかけも持ってもらいたいし、我々もそういう学生さんを受け入れて、机はああいう形になってちょっと窮屈だったんですけど、学生さんが来るという職場であるべきだと思っているんです。
だけど府庁って、遠いんですね。今日初めて来たという人ばかりで(笑)。絹川さんには、気軽に来ていただいていますけど、やっぱりなかなか…。
絹: それは僕が京都府のお出入り業者の一社だから(笑)。あ、関係ないか、発注部署に行ってないな(笑)。

●きっかけは色んな形で、色んなタイミングで
東: そうだとしても、やっぱりなかなか身近になってない。別に近くにいるから、すぐに何かが変わるわけではないですが、やっぱり職員の中には声をかけてくれた人がいたでしょ?みんな気になるし、何か新しいことができるかなとか。京大さんとおつきあいがあるのなら、次こんなことしてみないかというような、その職員が日ごろあたためていたものがあって、京大とならできるかもしれないとなると、学生さんがそこにいたということを通じて、何か次に繋がるかもしれませんよね。直接何かお願いするか、先生に何かお願いするか、それはわかりませんが、そうしたきっかけは色んな形なり、色んなタイミングで生み出した方が、我々行政の職員の仕事の仕方にとってもいいんじゃないかと思って、ちょっと無理やり「府庁に来たら、お昼ご飯をおごるし、来てね」と言って、今日みんなでお寿司を(笑)。
絹: ラジオで収録にまでつき合わせて(笑)。
東: 今日、こんなのがあるし、見に来たらって言って、出演しようねとは全然言ってなかったですし、絹川さんには事前に言っておかなければと思って、来る車中で電話をしていたら、うっすら気づいたよね?これ、たぶん出演交渉されているなと思って、ここに来た時は、ここのスタジオに入ることは覚悟のうえで来ていただいたのかもしれませんけど(笑)。

●「皆さんの意見を聞かないと、行政はわかりません」ということ
絹: こうやって若い人が、実際に最前線で政策をつくる行政マンの言動を見聞きできるというのは、非常に素晴らしいことだと私は思います。
かつては一般府民、市民と行政が遠かった時代がありました。でもこの間、東さんから、「行政の取組に参画している府市民の割合が11%止まり、NPOや自治会への参加者は30%弱」という統計データを教えていただいたんですが、東さんは「この差はなんなんだ!?」と。ここに問題意識を感じていらっしゃいます。言われなくても、頼まれなくても、NPOや自治会で汗をかいている人は、思ったより多いのに、行政と一緒に手を組んで、世の中をまともに、もう少し生きやすくしようぜという人はちょっと少ないなと。ここのところを変えて行こうとしているのが、ひょっとしたら東さんたちの言う「シュッとした」ことに繋がるのかもしれません。
東: 取組みに参加というのは、ふわっとした言い方なので…。お任せしていても信頼しているんだということも込みの数字として受け止められるんですが、行政の活動で、やはり地域の活動をよくしていきたいという思いがあって、政策もやっているんですけど、そこが何か繋がってないかもしれない。そういうことを気づくきっかけとして、データを使って、じゃあ何をするか。まさに現場に出て行って、「皆さんの意見を聞かないと、行政はわかりません」と、そんなことを恥も外聞もなく言ってしまっていいのかどうかはありますが、そこはそういう問いかけをさせてもらうということが必要なんだと思います。
絹: いや、それがいいんです。
リスナーの皆さん、行政マンが自分の担当する職務において、「実はわからない」と言うことは勇気が要るし、でもそこからしか始まらない。府民、市民の人が一番よくわかっている。だから教えてくれ。こういう一声が、京都府がシュッとする京都府に変わろうとしているところです。どうでした?面白かったでしょうか。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト等の援助でお送りしました。皆さん、ありがとうございました。
一同: ありがとうございました。
投稿日:2016/08/16

第121回 ・新しい役割を探して… ~建築researcherの立場から~

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成28年7月16日放送>

まちづくり“チョビット”推進室で、何度もインタビューしている「京都移住計画」と連携している「RAD」の榊原充大氏にお話を伺いました。
設計図になる前の地域コミュニティに内在する困り事や、誰に相談すれば良いのかわからない課題を拾い集め、解決に導いてゆく地道な行動が、建築という専門領域を超えて進み始めているようです。

榊: 榊原充大氏(RAD)
絹: 絹川雅則(公成建設株式会社)
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最前線をご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲストですが、私からしたら非常にお若い方です。「RAD」を率いておられるお二人のうちの二人目、榊原充大さんです。
榊: 榊原です。よろしくお願いします。
絹: はい、よろしくお願いします。榊原さんとはまだ本当に何度かしか会ったことがないのですが、先日私の会社にインタビューに来てくださって、お会いしました。
で、よくわからんけど、なぜか興味があるというか、惹かれるというか、何か匂うぞ(笑)、みたいな感じで、ゲストにお呼びいたしました。
快く引き受けてくださって、ありがとうございます。
榊: とんでもない、ありがとうございます。
絹: 「RAD」の「R」はリサーチの「R」、「RAD」の「A」はアーキテクチャー、「D」はなんでしたっけ?
榊: 「D」はドメインです。場所だとか、住所だとかですね。
絹: 「建築の居場所を探る」というキーワードが引っかかりました。「建築に居場所って、当たり前やん」と思うかもしれませんが、どうやら建築の専門家としての新たな社会での居場所を探りたいとの意味があるのかな、と勝手に想像しております。
今日は若き建築家「RAD」の榊原充大さんをゲストに、どんなお話が聞けますか、ご期待ください。
さて、本日のテーマですが、番組タイトルとして、「新しい役割を探して ~建築researcherの立場から~」と題してお送りいたします。さあ、若き建築家集団がどんなことをされているのか、あるいはどんな思いで、京都で、あるいは色んなところで動いていらっしゃるのかを、これからお聞きしていきます。

■第一章 RADって、何をしている人たちなの?
●建築に関わる困りごとを解決したい…
絹: 何をしている人なのかというのが、もう一つよくわからないんですけど、さっき事前の打ち合わせで、建築の専門の勉強をされて、社会に出てきておられる若い建築家であると。建築に関係するけれども、既存の建築家の職務からはみ出てしまうかもしれない、あるいはまち場の人が、建築に関わると思うけれども、何か困っている「どうしたらええのやろう、誰に相談したらええのやろう、わからへん…」というのを、料理したろかという思いがあるんですってね。
榊: そうですね。割と「建築をやっています」とか、「建築家です」というお話をすると、皆さん、どうしても家を建てる人なんだというイメージを強く持たれてしまうところがあります。
一方で建築に関わる仕事や役割というのは、「建物を建てる」というところだけに留まるものではないんじゃないかと思っているところがありまして、まちづくりもその一つの実践の形かなと思っています。一般の人たちにとっての、建築、建築家、あるいは建築士のイメージを、ちょっとずつ変えていけたらと思っています。
「建物を建てる」以外に、こういうこともできるんだということを、自分たちの活動をもって、具体的にお伝えしていければいいなと、考えています。
絹: リスナーの皆さんに、ぜひこれは覚えておいていただきたいです。我々一般人が思っている以上に、建築、あるいは建築家、建築に携わる職能を持つ専門の人たちが活躍できる分野は、実は広いかもしれない。その事に気が付き始めた若き専門家集団が「RAD」かもしれないなと思います。
ですからこの番組が終わる頃に、リスナーの方が「へえ、建築って、広いんだね。ひょっとしたらまち場の困りごとを、色々楽にしてくれたり、こんがらがっている紐をほどいてくれたりするのが、建築に関わる若い人かもしれない」と、思ってもらえるといいですね。
榊: そうですね。
 3

●「RAD」のはじまり
絹: 「RAD」の榊原充大さんたちが、こだわっていらっしゃるリサーチ、「RAD」の「R」のリサーチとは何ぞやというところからお願いいたします。
榊: はい。僕らは建築リサーチ組織という名前で「RAD」というチームを運営していまして、一方で僕自身も建築家/リサーチャーという肩書で、個人で仕事をしています。
「RAD」は、建築に携わるフリーランスのアソシエーションという形態をとっていて、今5人のメンバーで運営しています。一番初めに発起人となったのは、僕ともう一人川勝という人間です。
絹: 川勝真一さん、1983年生まれ、「RAD」のスターターメンバー、チャーターメンバーのおひとりと言うか、川勝さんと榊原さんがチャーターメンバーなんですね。
榊: そうですね。最初に川勝と「RAD」を立ち上げる時(2008年)に、いわゆる「コミュニティデザイン」という言葉が出てきて、これからどんどん家を建てていくというよりも、今ある資産をどういうふうに活用していくべきなのかが問われ始めるようになりました。「建てない建築家」という異名をとった山崎亮さんが一躍有名になってくるような時代でした。
絹: 建てない建築家として異名をはせた山崎亮さん。何冊かご著書を読ませていただいたことがあります。私の友達の中でも、山崎亮さんを大好きな人と、嫌いな人に分かれるんですが、あの事務所(スタジオLさん)に関わっていた知人がおります。

●根底に流れる共通理念
榊: そういった考え方に、一面では非常に賛同しつつ、でも一方ではまだ建築が必要とされる状況というのは必ずあるとも思っていました。むしろ、「こういう時に建築家の人が役に立つんだ」という状況をどんどん見せていくことをしたほうがいいんじゃないかと話をしていて、それがある種の共通理念として「RAD」の動機になり、またメンバー個人個人の仕事の一番根底に流れている部分でもあるなと思うんです。
そういった時に、建築の設計でもなく、あるいは研究でもない、その間みたいな活動と言うか、役割みたいなものが必要になるのではないかと思い、その考えを「リサーチ」という言葉に込めました。「リサーチャー」あるいは「リサーチ」という言葉は単に調べる(人)という意味にもとられますが、「設計」と「研究」の広がりを仕事の舞台にする、という気持ちを込めて名乗っているという感じです。

●地元の空気感や思いをリサーチする
絹: リスナーの皆さん、今のお話、聞かれました?すごく大事なことを、すごくベースのことを語られたと思います。
どうしても我々は、おうちを建てるだとか、建物をつくるだとか、図面をひくだとか、設計をするだとか、美術館を建てるだとか、学校を建てるだとかの建物の図面、それのモデルをつくって、実際に建てられるように設計をして、我々のような施工班に渡すという流れを想像しますけれど、どうも榊原さんたち、リサーチャーという言葉を調査、図面をひくまでにもっと色々図面に現れない、線になる前の空気のような、思いのような、あるいは地元の人やまわりの人が「こうあってほしいな」と思うものが見えてないんじゃないのとおっしゃっているようにも聞こえました。そこをていねいに拾うと…。
榊: なるほど。ありがとうございます。
まさにおっしゃる通りで、これまで「リサーチ」と言うと、建築の分野では設計するための下調べだとか、設計の根拠をつけるための調べものというイメージが強くあったのですが、そのリサーチだけでもちゃんとアウトプットすることができると、有意義な資料や成果になっていくんじゃないかという思いがあります。ですから設計のためのリサーチだけではなく、別の効果や影響をもたらすためのリサーチということを実践できないかと考えているところです。

■第二章 RADって、例えばどんな仕事をやってるの?
●奈良県斑鳩の事例―仕事のはじまり
絹: 実はすごく難しいテーマを語っていただいております。このリサーチとはなんぞやというところを、さらに深めるために、エピソード2では、じゃあ具体的にどういう仕事をされているのか、もしお聞きできれば、想像していただきやすいかもしれませんね。
例えば、建築する図面にはつながらないかもしれないけれども、調査結果を明らかにして、蓄積して、公開するというプロセスが、どういうふうに世の中に、地域に、あるエリアに影響したのかという事例があれば教えてください。
榊: はい。個人と組織とで、1つずつご紹介したいと思います。
まず組織としては、僕がメインで進めていて、もう5年くらい続いているプロジェクトがあります。
舞台は、奈良県の斑鳩というエリアなのですが、斑鳩と言うと法隆寺で有名な所なので、皆さん、修学旅行などで行かれたことがある人も多いんじゃないかと思います。
ところが一方で法隆寺があまりにも有名すぎて、斑鳩というまちの魅力自体がなかなか地元の人に共有されず、外の人にも伝わっていないという状況が1つの課題として見えてきました。

プロジェクトの前提として、まず京都大学の研究者の方が、その地域の近代建築、古い建築を、悉皆調査で一軒一軒調査されて、それをアーカイブにされていたんです。そのアーカイブをどういうふうに活用できるかという形で、僕らのところに相談が来たんです。
絹: なんでそういう面白い相談があなたのところに来るの?(笑)
榊: そうなんですよ。ありがたいことに研究者の方や、企業、美術館、その他施設、あと行政の方から「誰に頼んだらいいのか」という感じの依頼をいただくことが多くて…。
絹: さっきの京大の近代建築だとかを悉皆調査をされていたのはなんという先生ですか?
榊: 谷川竜一先生です。今は京都大学から金沢大学に移られましたが、それが1つのきっかけになりました。

●奈良県斑鳩の事例―研究の成果をわかりやすく伝える
絹: ということは、想像するのですが、そういう専門家たちの中に榊原さんたちの存在が、ある種知れていたわけですよね。
榊: そうですね。谷川先生には、人づてで、「京都にこういうことをしている人がいるよ」という情報が入ったらしいです。谷川先生には、研究の成果をうまく活用するとか、ちゃんとデザインして、それを人に伝えるというところが、どうしても研究者の立場からだと弱くなってしまうというお考えがあったようです。
絹: そうですね、今求められる科学者や研究者の像として、象牙の塔に引きこもって、難しい理論や基礎研究をやっているだけでは、本当はだめなんだと。我々みたいな一般人に噛んで含めて解りやすくプレゼンできる能力がないとダメだよと言っている先生がいましたが、そういうところを担おうとしていらっしゃるわけですね。
榊: そうですね。個人的には、意図的に象牙の塔にこもって、同業者で切磋琢磨しながら、新しい成果をどんどん発展させていくという仕事は必要だと思うんです。一方でそれをきちんと伝える伝達者のような役割がアウトソーシングされるような状況ができても面白いのではないかと思っているところがあります。
絹: 翻訳して、解りやすい物語にして、そして伝達する役割…。

●奈良県斑鳩の事例―古いまちの写真からアーカイブをつくる
榊: プロジェクトに話を戻すと、その悉皆調査の成果が1つのスタートラインになったのですが、かつての古い建築物をピンポイントで対象化するというのはなかなか難しい。そこでその町に住んでいる方々にとって、その建築物がどういう存在だったのかを知るためのワークショップを一回やってみよう、となったんです。そのために「まちの人が箪笥の奥にしまっている、まちが映っている古い写真を一度集めてみませんか」という話に展開していったんです。
こうしてワークショップを1つ提案することによって、地域に眠っている古い写真(まちの人は「自分の写真なんて価値がないよ」というふうによく言われるのですが)が集まることによって、かつての斑鳩町の姿が見えてくるんじゃないか。そのためのアーカイブをつくろうというプロジェクトになりました。
今は実際にウェブサイトが立ち上がり、斑鳩町立図書館の聖徳太子歴史資料室のスタッフの皆さんの絶え間ないご協力のもとに、地域の古い写真が、最近では200~300くらいアーカイブの中に増えてきました。
古い写真を集めてみましょうという同じような取り組みは、他のエリアでも行われていたりしますが、単年になったり、途切れたりして、なかなか更新が続かなかったりするのですが、我々の方ではその辺は課題として乗り越えないといけないと、今着実に5年と言う歳月を経ています。
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●奈良県斑鳩の事例―まちの再発見、コミュニケーションのツールとして
絹: その5年も続いているということは、箪笥の奥の写真、自分たちにとってはただの古い写真だけれど、それかアーカイブ化されて、外の方に伝われば「わ、すご!」という声が、写真の所有者たちにも聞こえるでしょうし、あるいはその写真を前におばあちゃんが孫に「この写真はね」とかいった語りが生まれたりもしますよね。
「ひょっとしたら斑鳩町って、斑鳩エリアって、すごいとこやったんと違うの」みたいな我がまちへのプライド、斑鳩町のいいところ探しみたいな空気が、すうっと出来上がっていくのかしら。
榊: そういう形になるといいなと思っています。子どもたちにとってはかつてのまちの姿はわかりませんし、一方でおじいちゃんおばあちゃんがその時のエピソードを語ってあげたり、コミュニケーションの1つのきっかけにもなると思いますし、これから先は子どもたちにその姿をどう伝えていくのかということが課題になっているという感じですね。

●愛知県のある地域での事例―伝達者、コミュニケーターの役割
絹: 「例えばどういう仕事をやっているの」というもう一つの例は?
榊: 個人で今まさに取り掛かっている、進み始めたプロジェクトに、愛知県のある地域で行われている開発系のまちづくりのプロモーションがあります。そのまちづくりの取組が市民の人にまだなかなか伝わっておらず、断片的な情報で批判をされてしまったりとか、あるいはそのエリアを超えた人たちにまだ全然届いていなかったりという課題があるんです。
絹: よくあるんですよね。僕たちは工事をする立場の建設屋ですから、近隣とのすり合わせと言うか、準備がちゃんとできてないのに、見切り発車をされてしまうと、反対運動の中で、施工する技術者がえらい困った立場に追い込まれることがあるんです。「え、会社に言われてこの仕事をやりにきたのに、なんで動かないの?僕らが悪いんじゃないよね」みたいな困りごとが起きないように、そういう手続きが取れるといいですよね。
榊: そうなんです。まさに土木事業も関わってくる大きなプロジェクトなので、どのようにしてその必要性、あるいは魅力、これからの姿を、まちの人に届けて、一緒に望ましい地域の姿を考えていくのか。そういう伝達者と言うか、コミュニケーターと言うような役割が必要とされている状況があります。そこで形式上はプロモーションのディレクターという形で関わらせてもらいます。
絹: それは行政の方と関わったりするんですか?
榊: そうですね。行政の方と関わったりとか、あるいはまちづくりプロジェクトを委託されて推進している方と一緒に進めたりという感じでやっています。
絹: そういう大きな都市計画系のプロジェクトも、行政の方々のお考えも少しずつ変化しているようですね。
榊: そう思います。ですからそれを、うまくこれから先に繋げていけるのかどうかがか課題です。
絹: さて、リスナーの皆さん、どうですか、想像つきますか?
すごく大切な分野に乗り出しておられると思います。既存のところから少しはみ出て、でも今不足している部分、一般の人に専門的な分野(まちづくり・都市計画・建築など)をわかりやすく伝え、地域の人たちは大したことはないと思っていても、外から見たら「すごいじゃない」と思うようなことを丁寧に掘り起こすことで、まちの大切な記憶や地域の誇りを取り戻したりといった仕事も、コミュニケーターとして取り組んでいらっしゃる。
「これが建築?」と思うかもしれませんが、建築とリサーチというのは、こういう分野みたいですよ。

■第三章 RADとして、個人としてこだわっていること
●得意分野を活かしたフォーメーション
絹: 「チームでも個人でも働き方にこだわっている部分がある」と先ほどおっしゃっていましたが、もう少し聞かせていただけますか?
榊: はい、ありがとうございます。
個人で仕事をさせてもらいつつ、「RAD」というチームも運営していて、先ほどもお話しした通り、「RAD」はフリーランスのアソシエーションという形で運営していまして、皆それぞれ建築に関連する仕事を持っています。
設計士の人間がいたり、展覧会のディレクションなどを行うのが得意な人間がいたり、あるいはフィールドワークが得意な人間がいたり、一方で僕のように、ある種、編集的な側面を平面にする…。
絹: ああ、そうだ。編集者だ。
榊: ある状況のなかで、何が必要なのかを整理しつつ、どういう資源が必要なのかということを、色んな所から集めて、プロジェクトを回していくという、そういう役割かなと思うんです。
そういった色んなスキルを持った人間たちと、いただいた仕事を、適切なフォーメーションを組んで取り組むということを、今すごく意識しています。
例えばあるプロジェクトで、地域での調査と、それをパンフレットにまとめる必要があるならば、フィールドワークが得意な人間と、編集が得意な僕が協力しながら進めるということも、ひとつのフォーメーションです。
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絹: リスナーの皆さん、だんだんわかってきましたよ。彼は編集者、ひょっとしてもし映画だったらプロデューサーだとか監督だとか、そういう部分が似合うタイプの仕事をしている方だなと思っています。
建築の専門の勉強から飛び出して、その範囲を手探りで模索しながら、今、この世の中に、あるいは京都に、ある地域に足りないものを、編集者目線で、フリーランスの人を集めてでも、チームワークで今までにない仕事をつくっていこうと。
それを誰に相談したらいいのかわからない人がかぎつけて、「榊原さん、ちょっと相談乗ってよ」という形になっている。面白い状況が起こっています。この年齢の若い方たち、今、いくつだっけ?
榊: 32です。
絹: 聞きました?32ですよ。
こういう人たちが出てきてくれたというのは、捨てたもんじゃないなと思います。短い時間でなかなか読み解けない難しい分野でありますが、「RAD」の榊原さんをお迎えして、「新しい役割を探して」と題してお送りいたしました。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都市・景観まちづくりセンターの応援でお送りしました。榊原さん、ありがとうございました。
榊: こちらこそ、ありがとうございました。
投稿日:2016/07/16

第120回 ・「京都移住計画」ってご存じですか?Part2~移住を通したまちづくり~

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成28年5月7日放送>

第113回(2015年9月26日放送)で放送いたしました「京都移住計画ってご存じですか?」の続編として、代表の田村 篤史氏をお招きし、京都への移住とまちづくりの関係についてお話しいただきました。

<出演者>
田: 田村 篤史氏(京都移住計画代表兼求人担当)
絹: 絹川雅則(公成建設株式会社)
藤: アシスタント 藤井 崇(公成建設株式会社 総務部)
20160426ちょびっと2
左から藤井、田村氏

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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストでありますが、少しかな、かなりかな、私よりもだいぶ若い方ですけれども、変わった方なんです。最近、私が注目して追っかけている方です。京都移住計画、京都に移り住むと書いて、京都移住計画代表の田村篤史さんです。田村さんよろしくお願いします。
田: よろしくお願いします。こんにちは。
絹: こんにちは。そしてサブのアシスタントでわが社から総務部の…。
藤: 公成建設総務部の藤井です。よろしくお願いします。
絹: はい、藤井課長を連れてきました。二人で田村篤史さんをこれから紐解いていけたらいいなと思っております。よろしくお願いします。
本日の番組タイトル、番組のテーマでございますが、「京都移住計画って、ご存じですか?Part2~移住を通したまちづくり~」と題してお送りいたします。さあ、どんな話になりますか。皆さん、ご期待下さい。
■第一章 京都移住計画って、何?
 ●京都移住計画の成り立ち
絹: それでは田村さん、エピソード1から行きます。
各方面で、行政だとか、まちづくりに関わる都市計画研究者だとか、京都府のある部署だとか、特に移住促進センターに関わられる方々は、田村さんたちのこと、京都移住計画のことを注目している人は多いと思われるのですが、一般のリスナーの方はまだご存じない方も多いかもしれません。ですので、そもそも京都移住計画って何?という成り立ちとか、概要から教えていただけませんでしょうか。
田: では、成り立ちの方からお話しさせていただければと思うんですが、2011年の5月に京都移住計画は誕生しました。実は私が東京にいる時につくったのですが、今みたいにしっかりしていなかったので、簡単に言うとサークルみたいな感じでしょうか。いつか京都にUターンしたいとか、移り住もうと思っている人たちが集えるようなコミュニティを東京で始めたのが、最初のきっかけになります。
 ●僕自身、出戻り組です
絹: はあ、元々は東京だったんですか。で、この間のお話では、2012年に田村さんは京都に戻ってきたんでしょ。
田: そうですね。Uターンしたのは2012年です。
絹: インパクトハブ”で田村さんと※江口晋太朗さんという方のトークセッションを聞いていたんですけど、田村さんも元々京都に戻りたいという思いをもっていたんでしたっけ。
田: そうですね。就職は東京だったんですけど、5年以内には戻ってくるつもりで、そもそも出て行きました。
絹: 就職って、さらっと言われたけれども、某リクルートとか、何か人材系のでっかいところにおられたような気がするんですが、間違いですか(笑)。
田: 某リクルートさんではなく(笑)、人材系のベンチャーですね。当時していたのは、企業と人を繋ぐということでして、今、僕がやっていることと、僕の中では近しいという感覚をもっています。地域と人を繋ぐという意味で。
※1984年生まれ
編集者、ジャーナリスト
メディア、ジャーナリズム、ソーシャルイノベーション、参加型市民社会などをテーマに企画プロデュース、執筆活動を行う。
 ●東京の引力
絹: そしてあの時に、シェアハウスの運営も経験したよとか、周りで東京にいる友達で、「いつか帰りたい」と言っている人は多いけれど、「いつか」と言っている限り、「いつか」は来ないんじゃないかとか、危機感とか、ちょっと心配になったよというお話をされましたよね。それほど東京って、引力が強い所なんだって。
田: そうですね。イベントでもよく「引力」という言葉を使わせていただいているんですが、やっぱり人・モノ・情報が集まってくるという意味で、働く人たちもそこに行った方がいいんじゃなかろうかみたいなことが、刷り込まれているわけじゃないけれども、潜在的に気持ちとしてあるというのは、やっぱり大きいのかなという風には思っていますね。
絹: 昔から東京へ行くべえみたいな…。
田: 一旗あげるみたいな感覚が、今もあるのかなと。地方に行っても、やぱり大都市圏で成功をすることが、1つのロールモデルと言うか、ステータスと思われているところは、多いのではないかとは思います。
絹: でも僕がなぜ、京都移住計画という言葉の響きに魅力を感じるのか、自分で考えてみますと、東京へ行くと、あんまり好きじゃないので(ごめんなさい、東京の方…、本当に政治の中心だし、文化の中心だし、ビジネスの中心でもあるかもしれませんが)、しんどいんです。新幹線に乗って、行って帰って来るだけで、何かすごく磨り減るような気がして、私が生物として弱いのかもしれませんが、あのすさまじい通勤だとかに耐えるというのが、ものすごく人間として大変という思い、これはたぶん田村さんと共通するのかなと。
田: そうですね。僕も当時一年目は東京のサラリーマンたるもの、そういうものだという意識があったので、満員電車のラッシュとかは気にはしなかったんですが、でも何か自分のなかで「そうなの?」という心の声みたいなのがあって、それが人間らしさを損なっているような営みでしかないなと思った時に、「みんな好きでそうしてないよね」という違和感が積もり積もっていたところはあるかなと思いますね。
 ●地元に帰りやすい社会にしたい
絹:  そういう意味で、まともな神経の持ち主と言うか、非常に自分の身体の感覚に正直な方なんだなと思いました。それであの時の話に戻りますが、「地元に帰りやすい社会に、俺はしたいんだ」と言ってましたよね。
田:  はい。当時、つくった時、そうなったらいいなというのは、思いとしてありました。
絹:  それで、京都移住計画という、まずはサークルから始められて、色んな情報を集めるのに、ご自身も帰りやすい、そういう状況を周りに作りこむには、どういう条件が揃うとUターン、田村さんの場合は京都に帰りやすいのかなということを、考え始めたんですって?
 ●「居・職・住」というキーワード
田:  はい。そうですね。で、その時に、これもやりながらですけど、じゃあ情報って、具体的にどんな情報なのと思った時に出てきたのが、面白い人、面白い仕事、それから面白いといったら変ですけど住まいと言うか、それを今、言葉を変えて居場所づくりの「居」という言葉と、職業の「職」と、住まいの「住」で「居・職・住」と呼んでいるんです。
絹:  リスナーの皆さん、「ここ、テストに出ます」じゃないですけど(笑)、我々が通常使う「衣・食・住」ということじゃなくて、京都移住計画の田村さんたちが使う「居(居場所の居)・職(職業、仕事)・住(住まう所)」という情報を、田村さん達は丁寧に拾い始めました。
田: たぶんそれぞれの情報を切りだしたものはあると思うんです。仕事情報だけとか、住まいであれば、不動産のサイトがあるとか。でもはたしてそれだけで移り住むということのイメージが具体的にできるかと言うと、たぶん暮らすという部分が抜け落ちているなというのが感覚としてあって、そこに行くとどんな人たちと関わりながら、日々暮らしていくのかとか、どういうコミュニティがあって、そこに関わりを持つのだろうといった情報の方が大事なのではないか。特に京都というのはそういうコミュニティがたくさんあるまちだと思うんです。それが見える方が引力になるのだろうなと思いました。
絹: 京都に帰った時に、居場所がはたしてあるのか、どんなコミュニティがあるのか、コミュニティが見えるようにしてあげたら帰りやすくなるのではないかというところの問題意識でしたね。
■第二章 京都移住茶論(きょうといじゅうさろん)のこと
 ●サロンを始めたきっかけ
絹: そこで面白いことをやっているんですよ、彼らは(笑)。そのための集まり、イベントというのが、確か“京都移住茶論(サロン)”というイベントを、何ヶ月に一回やっていたんでしたっけ。
田: 2ヶ月に一回くらいやっていまして、今まで25~6回くらいでしょうか。
絹: すでに25~6回。と言う事は2年以上?
田: はい、そうですね(笑)。
絹: さあ、ここでは何か起こるんでしょうか。
田: これ、元々やり出したきっかけみたいなものは、最初は本当に情報だけ発信していたんですが、結構無責任なことをしているなと思ったんです。「京都へおいでよ、おいでよ」と言うだけの情報で。もう既に移り住んでいる人たちはいるのに、その人たちが京都を面白がっているかとか、京都の暮らしぶりがどうかということを見ずに「おいでよ」と言うのは、ちょっと違うなと思ったので、まずは移り住んできた人は、何を求めて京都に来たのかということを聞いて行きたいという思いから、最初移住してきた人同士のコミュニティをつくろうということで、スタートしました。
絹: まずは移住済みの人の顔の見えるサークルみたいなものをつくったと。
田: そうですね。
絹: 最初から集まりました?
田: 最初は4人です(笑)。そこから増えていって、今は平均20~30人が来ていただけるようなイベントにはなっています。
 ●こんなメンバーで開いています
絹: 実は先月だったか、先々月だったか忘れてしまいましたが、私、取材におじゃましたんです。田村さんに申し込んだ時に、「私は移住希望者でもありません。移住を検討している者でもありません。京都に生まれ育って50数年生きていますけど、紛れ込んでもええか?」と聞いたら、「いいよ!」と答えてもらって、面白かったあ(笑)。移住を検討して、東京だとか色んな所から来られた人が、約半分?
田: そうですね。だいたい半分から3分の1くらいは…。
絹:  そして移住を済ませた先輩たちが3分の2?2分の1から3分の2くらいのところで、あと異分子として京都市の職員でそういうことに興味のあるまちづくりアドバイザーの天岡さんだっけ、それと京都の建設屋である私という2人が紛れ込んで、なんでかわかりませんが盛り上がりましたね。
田: ありがとうございます。楽しんでいただいて…。
 ●それぞれが住んでいる所自慢をします
絹: もうエピソード2に勝手に流れて入っていってますけど、あの時何が起こったんだっけなあ。
1つ記憶にあるのは、京都と言っても広うござんすと。上京区、中京区、下京区、あるいは長岡京と色んなエリア、亀岡に住んでいる人もいると。それぞれの住んでいるエリア自慢をして、移住希望者に対して、「うちにおいでよ」みたいな(笑)。「ここはこんなにいいとこがあるよ」、例えば「下京区はこんなに素敵な場所だよ」「亀岡、長岡京、向日はこんなエリアで、ここが好き!」みたいなことを言っていらして、それでなんかすごく盛り上がってましたよね。
田:  そうですね。移住を検討する人たちに対して、僕らが「こうだよ」というのが、伝えようがあるようでないなと思っていて、むしろそこにもう既に住まわれている方の生の声ほどリアルなものってないので、それが伝わればいいなと。ただ、「いざ住んでいる所自慢をして」と言っても、パッと出てこない人も多かったりするんですね。でもその問いがあって、自分の住んでいる所とか地域を改めて見直すという機会があって、その人たちがまちに関わる事とかを、ちょっと意識し始めてもらうと、より京都に根付くという意味で、住む意識みたいなものは育まれるのかなと思いますね。
絹: そもそも京都移住計画をどうして田村さんはつくられたのですか、それから移住計画が京都で2年以上に渡って2ヶ月に1回開催されているイベント、京都移住茶論って、どんなことが起こっているんですかという質問に対して、リスナーの皆さん、イメージをもっていただけましたでしょうか。私が不思議だなと思ったり、面白いなと思っている事の一端を今、田村さんに語っていただきましたが、ここでまた、エピソード1に少し戻るのかもしれませんが、京都移住計画のメンバー、どんな人たちがいるのというところをお願いします。
■第三章 京都移住計画の特性
●僕たち中心メンバーのこと
田:   一緒に活動している中心メンバーが、だいたい10名くらいおりまして、先ほどお伝えした「居・職・住」という3つのキーワードと、あとは情報発信とかそういう役割みたいなところで、それぞれ担当と言うか、得意分野を活かしながら、プロジェクトとして進めさせていただいているという感じになります。
絹: 実は田村さんをここにゲストとしてお呼びする数ヶ月前に、岸本千佳さんが来てくださっているんです。その時は京都市の都市計画局の嘱託職員として。その時に、何か変わった方だなと思っていたら、NHKのU29だっけ、フリーランスの不動産業をしている若い女性ということで、全国ネットで流れちゃって、「えっ!」とびっくりしたことがありましたけど、その岸本千佳さんもコアの一人ですね。
田:  そうですね。彼女がまさにその移住計画の中の、いわゆる「移住不動産」と勝手に呼んでいますけど、不動産と人を繋ぐというところで、関わりを持ってくれています。先ほどおっしゃっていただいた変わっているというのは、何かそこで雇用関係にあるわけではなくて、プロジェクトとして一緒に動くというような、そんな感じなんですね。
 ●住んだ、その先にある景色を発信する ― 住
絹: チームを組んで動いていらして、移住計画の方々が住まいということで発信される情報は、物件情報って普通ありがちな物件情報とちょっと違うんですよね。
田: そうですね。間取りがどうかとか、アクセスがどうかということよりも、そこに住むとどういう景色がその先に見えるんだろうとか、そこの暮らしが(住む人によって本当は変わるんですが)、僕らの主観的な目線として、こういう暮らしもありなんじゃないかという提案を含めたような記事が物件のサイトには載っているという感じですね。あとは改修しながら進めるような物件があったり…(笑)。
絹: 改修しながらというのは、セルフビルドで興味のある人はどんどん触って、好きなように料理していいよと。条件的にもそんなに高くないものが多いですね。
田: そうですね。本来、即入居じゃないので、やっぱり家賃的にはその分抑えたような物件もあったりします。
絹: そういう面白いというか、人肌を感じさせる不動産の情報にアクセスする人が結構おられるわけですよね。
田: ニッチではありますが、そういうことを求めてアクセスされるんだと思います。やはり改修しながら住みたいというニーズに応えられる不動産屋さんって、なかなかないですよね。そんなことをしても、めんどくさいので。
 ●企業のストーリーごと発信する ― 職
絹: それとともに、就職という、いわゆるリクナビだとかマイナビだとかの就職サイトとは違う、図らずも今、ニッチとおっしゃいましたが、非常にニッチな就職サイトでもあるわけですよね。
田: そうですね。「居・職・住」の職の部分がまさにそれを担っているわけですけれど。
絹: ちょっと職業のところの概要をちらっと開陳していただけますでしょうか。
田: ウェブサイトの中で求人のページがありまして、京都の中の京都らしい企業、事業の内容、仕事のこだわりとか、そういったストーリーをきちんと追いかけながら、結構骨太な記事なんですが、取材をさせていただいて、発信するというところで、「そういう企業って、いいな」と思ってもらった人と企業を繋ぐという接点づくりをさせていただいているという感じですね。
絹: 何年か前、始めにその話を聞いた時には、実は全然わからなかったんです。「田村さん、何を言っているんだ」と。ところが北区にフラットエージェンシーさんという、非常に先進的な不動産業を営んでいらっしゃる会社があって、その吉田光一会長は、先ごろ御子息に社長業を譲られましたけれども、そこの就職プロセス、人材獲得というのが、京都移住計画さんのサイトを通じて複数名、若い人が入っていらっしゃるそうです。私自身がそのフラットエージェンシーさんがなさっている事を非常に尊敬して注目しておりますので、そのエピソードが若い人に伝わったとしたら、これはうれしいなと。こういう人材獲得の、まさにニッチだけど、面白いやり方があるんだなというのがやっとわかってきたんです。
 ●「会社の人となり」がわかるようなページにしたい
田: ちょっと補足的な話で言うと、フラットさんの会長から御子息に経営をバトンタッチされた際に、我々の記事の社長のインタビューの部分を息子さんに更新するという流れがあったんですけど(まだちょっと僕らがやりたい形になってはいないのですが)、できれば会長の記事も残しながら、息子さんの記事も残すみたいな形にして、その会社の歴史がずっと残り続けるような、そんな記事になっていけばと考えているんです。会長に会ったことがないけれどもという未来の社員が見た時に、その「会社の人となり」がわかるような、そんなページに育っていくといいなということを、最近ちょっと思っています。
絹: ですから京都移住計画のサイトにアクセスするような方は、就職の例えば休みが何日で、初任給がいくらでとか、仕事の内容ももちろん大切ですが、そういう情報よりも、この会社はどういう性格で、どういう上司やどういう先輩がいて、何を生きがいややりがいにしてというエピソード、物語を感じ取ろうという人が多いのかもしれませんね。
田: なるべくそれが出るような取材は心がけております。
絹: どうです?リスナーの皆さん、この辺ユニークだと思われませんか。今、職というところ、それから住というところ、さらに居場所の居と、居・職・住という三つの切り口から、京都移住計画のチーム10名とおっしゃっていましたが、目指そうしているところの一端を切り取ってみました。面白いと私は思っています。
田: ありがとうございます(笑)。
 ●人と企業を繋ぐ、イメージをつくりだす
絹: ここから先は私の妄想レベルで、実現する、しないは別なんですが、私は京都の地元で建設業を営んでおります。ご存じのように建設業というのは、現場一品生産の職種で、お天気にも左右されます。今のところ休みも多くないし、かつては3K「きつい、汚い、危険」と言われた代表選手でありました。それはだいぶ変わってきているんですが、なかなか若い大学生、高校生はわが職種にアクセスしてくださいません。さあ、これをどう打開するか。東京へ、例えば京都の建設屋たちが大挙して行って(笑)、「京都移住サロン」と言って、おっさんらが座っていて店開きしたら、おもろいかなあ、どう思われます(笑)?
田: だいぶインパクトはあると思います。就職希望の人を集めるというところかどうか、今即答はできないんですが、インパクトはあると…。
絹: どうですかね、建設業界でなくてもいいんです。でも本当に色んなまじめにと言うか、面白く地道にやっている中小企業の内容にアクセスできて、「こいつらとなら、働いていいかな」と思えて、そういう人たちが募集に応じてくれるルートが、首都圏、関東圏から京都に開かれることを、何か夢見てしまいますね。
田: どうしてもイメージが先行すると、アクセスしない人が多いなと思うので、そのイメージをどう払拭するかというところで、何か御一緒できる部分があればいいなと思います。
絹: そろそろまとめの時間になりました。何か僕ばかりしゃべっているような気がしますが、アシスタントで来てくれた総務の藤井課長、何か聞きたいこととか、感じたこととかある?
藤: 移住と言うと、昔は田舎に行くとか、そういうイメージがあったんですが、割と都会に行くというか、最近はポジティブなイメージが増えているなというところで、そういうイメージづくりと言うか、京都移住計画もそれの1つなのかなと思いますね。
 ●全国に広がる移住計画
絹: そして京都移住計画だけじゃなくて、例えば佐賀の移住計画とか、かつては6地域に移住計画があったけれども…。
田: 去年の今頃が6地域でした。
絹: 今は15地域に増えていると。しかも全国で同時多発的に動きがあるよと教えてもらいました。九州の連中は「九州変人会議」とか言っているらしい(笑)。これも面白そうやなあ。
田: やっぱり人が引力になるっているのは、大きいと思います。
絹: 「京都変人会議」というのも、十分つくれそうな気がするけど(笑)。
田: 本当にそうですね。京都は面白い人が、たくさんいるので、それこそ絹川さんのラジオに出ているようなユニークな方々を総動員して、やってみるというのも面白い。
絹: 田村さん自身もユニークな人の1人だって、理解しています?
田: (笑)
絹: 東京から京都へ来て、京都のまちのために汗をかいてやろうぜというような若い人、特に30代が結構京都を注目していて、移住したいという流れがあるそうです。そして聞いてみますと、なんと女性比率が65%?
田: はい、女性の方がちょっと多いですね。
絹: 京都の独身者よ、期待できるぜということかもしれません。リスナーの皆さん、冗談めかして言いましたが、是非、京都移住計画、田村さんたち10名の若者たち(30代かな)に、御注目下さい。そしてできれば応援を。「京都移住茶論」というキーワードで検索いただければ、アクセスできると思います。
さあ、そろそろ終わりです。この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。田村さん、ありがとうございました。
田: ありがとうございました。
投稿日:2016/05/07
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