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まちづくりチョビット推進室
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まちづくりチョビット推進室

京都府地域力再生活動
京都三条ラジオ・カフェ(79.7MHz) にて、
『まちづくりチョビット推進室』という番組を下記の予定で放送中です。
放送日時は第3、第4土曜日(15:30~16:00)
(詳細はラジオカフェのページでご確認下さい)
『まちづくりチョビット推進室』は、
「京都市景観・まちづくりセンター」と、平成25年、26年度の間、共同企画で行っておりました。
   
  過去のアーカイブ(第1回~116回)はこちら をご覧下さい。(過去の記事のリンクについては切れている場合があります。ご了承下さい。)
 

最新記事

第165回 ・住み続けて1年、本音で語る3L APRTMENT PROJECT

ラジオを開く

三: 三木 俊和 氏(有限責任事業組合まちとしごと総合研究所 グローカル・シンカー)
 3L APARTMENT PROJECT コーディネーター  
悠: 伊藤 悠希 氏(龍谷大学 政策学部4年生)
朱: 伊藤 朱音 氏(龍谷大学 法学部3年生)
杉: 杉山 有紀 氏(京都市 都市計画局 住宅室住宅管理課)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
伊藤 朱音 氏伊藤 悠希 氏三木 俊和 氏杉山 有紀 氏
絹: 皆様こんにちは。こんばんはかもしれません。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。今回は、2月オンエアした「3L APARTMENT」の杉山有紀さんをメインゲストに招聘しての続きです。タイトルは「住み続けて1年、本音で語る3L APRTMENT PROJECT」と題してお送りいたします。それでは本日のゲスト、4方おられます。いつものように他己紹介から行きますよ。まずは龍谷大学の政策学部の伊藤悠希さんと、法学部の伊藤朱音さん、偶然伊藤さんだけど兄妹ではないんだよという方々です。では伊藤朱音さん、伊藤悠希さんとはいかなる人物ぞ、短く述べよ。
朱: 伊藤悠希さんは、一言で言うと、本当にまじめな人という感じですね。
絹: ザ・真面目。政策学部4年生、伊藤悠希さんです。では今度は入れ替わって悠希さんが三木さんを紹介します
悠: 有限責任事業組合まちとしごと総合研究所の三木俊和さん。僕たちの3L APARTMENT PROJECTの行政と大学の間として僕たちのサポートをしてくださっている、とても心強い方です。
絹: 三木俊和さんです。実は私とは今日お会いするのは、リアルでは初めてなのですが、オンラインではモニターの端っこで何度かお会いしております。注目していた方です。
三: ありがとうございます。私が伊藤朱音さんを紹介したいと思います。3L APARTMENTは地域と繋がってやっていくということで、現在の入居者としては男子が多いのですが、伊藤朱音さんは女子の入居者さんということで暮らしていただいています。
絹: 確か今、6名やったっけ?
三: 新しい人が入ってくれて7名になりました。
絹: また増えてるやん!7分の1の紅一点。
三: 学生の間からは、何の話題を振っても笑顔でニコニコしてくれるので、自分がすごい面白い人になったんじゃないかと(笑)。「あかねん」と呼んでいるんですが、「あかねん」と喋っているとこっちが元気をもらえるような、そんな学生さんですね。
絹: ということで、ゲストの紹介は軽くドタバタと(笑)。この番組のヘビーなリスナーの方なら、2月放送を思い出してくださるかもしれません。さりながら一応、過程として「3L APARTMENT PROJECTってなあに?」ということを、三木さんに復習の意味で軽く語っていただきます。
(三木 俊和 氏 有限責任事業組合まちとしごと総合研究所より転載)
 

復習ですー3L APARTMENTとは

三: はい、ありがとうございます。前回、京都市の杉山さんの方からお話していただいているのですが、私の目線から3Lをお話したいと思います。3L APARTMENTという事業では、大学生の皆さんたちが、ともすれば学校と駅、実家との往復で、「大学で伏見に来てくれているんだけど(龍谷大学さんなので)、伏見に触れることなく結局卒業しちゃったな」という声があったりしまして…。せっかく伏見の大学に来たのだから、その地域に住んで、地域の人たちと触れ合うことで、ただそこに下宿したということではなく、そのまちに住んだ、まちで暮らしたということを感じながら、卒業していってほしいなという願いが地域の思いとしてあるわけです。そういうなかで3L APARTMENT事業は、大学生に京都市の市営住宅に比較的安価に住んでいただきながら、地域の自治会の活性化にも寄与していただくというプロジェクトになります。
絹: 短くまとめてくださって、ありがとうございます。3L APARTMENTの存在を最近知りまして、会う人ごとに僕、おしゃべりしているんです。そしたら初めの一言、「安っ!」て(笑)。京都市の市長さんと龍谷大学の学長さんが握手されている写真を見ました。三木さんが「まちに住む」というキーワードをくださいましたが、「キャンパスは大学の中だけじゃない。まちこそキャンパス!フィールドワークやれ!」という感じの大学の後押しを感じてしまいます。さあ、ざくっと3L APARTMENTの概要説明を三木さんにしていただきまして、それではエピソード1に入ります。この担当は実際に住んでいる学生お2人にしていただきましょう。ということでトークテーマはお2人に丸投げしますので、好きにしゃべって(笑)。
3L APARTMENTの舞台「田中宮市営住宅」 ホームページより転載)
 

■エピソード1 3L APARTMENTに住んで – 感じたこと、活動、えとせとら

●住もうと思ったきっかけ
絹: まずは学生2人の自己紹介とか、例えばなんでこんなところに好き好んで住んでいるの?とか、なんでそのパーカー、カッコイイ田中野宮3L APARTMENTのパーカーをお揃いで着てるの?とか、色んなこと話して!
悠: では早速、自己紹介から改めまして、龍谷大学政策学部新4回生の伊藤悠希です。
朱: 法学部新3回生の伊藤朱音です。よろしくお願いします。
絹: いきなり絡んでしまいますが、政策学部ならなるほどと、公共政策勉強するからこういうことに興味があるのかなあと自然に思ったんですけど、法学部で「お、これは珍し!」と。朱音さんの行動についても、後で紐解いていただけたらうれしいです。
悠: 住もうと思ったきっかけですが、ちょうど大学2年生の時、一人暮らしをすごくしたい時期ってあるじゃないですか。で、すごい一人暮らししたいなと思っていた時に、ただやっぱりお金がないので、なかなか住めないなと思っていたら、以前から3Lで住まれている先輩がいるんですけど、その人と共通の知り合いがいて、「3Lていうのがあるんやけど、安く住めるし、何よりも地域で学んだりもできて、政策学部の活動とも合っていると思うねんけど、どう?」みたいな話があって、「面白そうやな」というので…。
絹: そこで乗ったわけやね。ということはその先輩のことをあなたは信用していて、ちょっぴり尊敬していたりして…。
悠: そうですね。すごい尊敬している先輩で…。
絹: 朱音さんはどうして住もうと思ったの?
朱: 私は伊藤さんとは違って全然知り合いもおらずという感じだったんですけど、友人が学校の連絡をちゃんと見る子で、その連絡の中に、3Lの入居者募集がありました。その募集を見た友人から「自分一人暮らししたいって言ってたんなら、こういうのやってみたら?」みたいな感じで言われたことがきっかけなんです。
絹: 連絡をしっかり見る友達がいるということは、あんたはあんまり見ないということやな(笑)。
朱: 恥ずかしながらそうですね(笑)。でもそれがきっかけなんですけど、実際本当に「住みたい!」となったのは、自分は地元が寺内町と言いますか、結構お寺とかが多くて、京都もお寺が多いという土地柄を知っていたので、そこに下宿生としてではなく、本当に地域にいる人としてお祭りとか、催事なんかに関わりたいなと思ったので、そういう取組みをしているのなら「やってみたいな」ということで参加しました。
絹: 地元は寺内町とおっしゃったけど、京都の人ではないんやね?
朱: 京都ではないです。大阪です。
絹: 奇特な人やなあ。今のコメントなんかねえ。催事とか地元の行事に関わってみたいって、かつての学生のステレオタイプのイメージと今ここにお2人おられる方と違っているって、おっちゃんは感じます。「関わらんでええわ」みたいな、もっとクールで、最短距離で卒業だけ、単位だけ取れたらええねんみたいな、そんなタイプが多いのかなと思っていたら、どうやらお二方は違いますよねえ。リスナーの皆さん、学生気質が古いイメージとは変化しているようでございます。というのが私の観察です。
 

●住んでみたら、めっちゃ楽しかった!

絹: さあ、令和2年度の学生さんたちが行った取組みとか、実際に住んでみてどう?
悠: 率直な感想として、住んでみて、めっちゃ楽しいです。何がと言うと、学生同士すごい仲もいいんですよ。7人いるんですけど、学生同士、横のつながりもあるので、実際に地域の活動に参加する時も楽しい雰囲気で、学生同士も地域との関係もその雰囲気が醸し出されて…。
絹: ワンフロアに固まって7人が住んでいるわけ?
悠: そうですね。
絹: 1つの部屋に2人が住んでいるような寮的な感じではなくて、独立した部屋が7部屋あるわけ?
悠: そうですね。
絹: 寮に近いけど、でも周りに大人の人もいっぱい住んでるみたいな。朱音さんはどうですか?
朱: 本当に同じ意見なんですけど、めっちゃ楽しいんです。女の子一人で結構不安だったんですけど、大学生になって部活くらいの仲の良さがあるのは、ただ下宿しているだけでは味わえないかなとすごく思います。
絹: 素朴な疑問で、今、部活という言葉が出ましたけど、部活とか他の活動はやっておられる?
朱: 私は大学生になってはやってないです。
悠: 僕もゼミ活動だけで。
絹: 研究室とか、ゼミとかはあるわけやね。了解です。
 

●火の用心活動をやりました

絹: 令和2年の学生がやった取組みって、結構あるの?
悠: いくつか学生が取り組んだ活動があるんですけど、1つの例としては「火の用心」の活動です。実際に一月の夜、「火の用心!」と言って学生で管内の棟の周りをまわって呼びかけました。
絹: 「火のよーじん!」ポン!みたいなことやるんやね。かつてこのチョビット推進室に、消防局の今の消防局長さんがゲストで来られて、本職の大きな拍子木を持ってきて、ここでバチンとやってくれはった(笑)。その山内さんに成り代わって「京都の防火にお手伝いいただきまして、ありがとうございます。」と言わなあかんな(笑)。ありがとう。他には?
(火の用心! 3L  APARTMENTホームページより転載)
 

●子どもたちとあいさつ運動

朱: 「あいさつ運動」と言って、小学生の朝の登校時間に起きて、自分たちも「おはよう!」「おはよう!」みたいな感じであいさつをするという…。
絹: 朝の何時ごろ?
朱: 朝の7時45分から登校までの時間をちょっとやるという感じです。
絹: ほう。これもごめんね、ステレオタイプで。大学生は夜型、寝坊助、昼過ぎに起きだしてという感じですが。これはいかんね、ステレオタイプで。早起きやんね?
悠: そうですね。朝起きるのはちょっと大変やなと思う時もあるんですけど(笑)。
絹: ほう。見守り活動なんかもなさっていると。それはやっぱり親御さんたちや近所の人たちからしたら評判いいでしょ?
朱: 前までは毎朝子どもたちにお母さんがついていたりしていたんですけど、もうそのまま「大学生がおるからいいや」みたいな感じで、こっちに預けてくれたりみたいなこともあって。
絹: 実は私、自分自身では見守り活動をしたことがなくて、イメージが持ちにくいんですけど、実際に登校時に送り出す、どんなことを見守り活動というのか、もう少し平仮名にしていただけますか?
朱: 見守り活動と言うか、完全にしゃべってるという感じです。来た子たちとしゃべって…。来た子たちは集団登校するんですよ。その集団登校の集まる時間に行って、お見送りするという感じです。
絹: じゃあ集団登校というのも、みんながちょっとずつばらけて集合場所に来るわけやね。それまでに立ち話したりして、朝の子どもたちをほぐしてあげているわけや。精神的に。
朱: 私もほぐされています(笑)。だいぶ。
絹: これも黒子的な動きやけど、すごい精神衛生的にも子どもたちにはいいかもしれませんねぇ。ではエピソード2へそろそろ移ります。エピソード2は、3Lはただ学生が住むわけじゃない!学生と地域を支える三木さんについてということで、お話を進めましょう。杉山さんも入ってください。それでは三木さん、杉山さん、エピソード2をお願いします。
(朝のお見送り風景 3L APARTMENTホームページより転載)
 

■エピソード2 コーディネーターの役割と支える思い

●接着剤としての役割と、全体を見渡してのサポートと
三: 私は京都市さんと龍谷大学さんと自治会さんが取り組んでいる3L APARTMENTのプロジェクトにおいて、三者をつなげ、学生さんの日常の暮らしをサポートする取組みをさせていただいています。
絹: 三木さんは接着剤と言うか、糊と言うか、握手をしていただくのを導いている人、そんな感じですね。
三: そんな風にポジティブな言い方をしていただけると嬉しいです(笑)。
絹: コーディネーターの役割、そういう糊みたいな人がなんで必要なんでしょうねえ。杉山さん。
杉: やっぱり地域が学生に対して言いづらい事が出てきたり、学生も地域に対してどうしていいか悩むところも出てくると思いますし、行政や大学だけではカバーできない範囲というのが、どうしても実際に住むとなると出てきてしまうんですね。そういったところを三木さんにカバーしていただいたり、このプロジェクト全体を支えてくださっているという感じですね。
絹: リスナーの皆さん、今、三木さんと杉山さんにご登場いただいて、なぜコーディネートをする裏方の三木さんが必要なのということをお話しいただきましたけど、ここ、たぶん赤線の二重線を引いていただく所だと思います(笑)。自治会長である岡田会長、アツい方であります。この方もそういう役割、学生を守るというお立場でものすごくお気を遣われたというエピソードをお聞きしておりますが、全くそのカウンターパートとして、三木俊和さん(まちとしごと総合研究所)がいらっしゃいます。もともと京都市内に市営住宅が90前後、増えたり減ったりしておりますが、それに3L APARTMENT的な地域共生型集合住宅、コミュニティ生成型とも説明していいかもしれません。そういうプロジェクトを広げるのが杉山有紀さんの野望ですものね。
杉: そうですね。広げていきたいと思っています。
有限責任事業組合まちとしごと総合研究所 ロゴ)
 

●大学のフィールドワークが増えて…

絹: 最近、地域と学生の連携が増えているらしいぜ、というタレコミがございますが、どうですか?
三: 大学と地域の連携というのが、言われて久しくなってきまして、先ほど絹川さんが言われたように、昔の大学生と比べて、今の大学生って、比較的遊んでいる時間がなくなっちゃったところがあるのかなと思います。僕が現役の大学生だった時は、社会的なことを考えたい学生がNPOとかに電話をかけて、「何か関わるボランティアとか、インターンとかやってないですかね」みたいに相談に行って、「良かったら入力のお手伝いとかしてくれる?」と自分から何とか切り開かないと、そういう所につながれなかったんです。今となってはもはや授業で「この地域に入って、こういうことをします」という連携が行われつつあります。
絹: ああ、大学も変わったんだ。特に龍谷って、そういう雰囲気あるの?公共政策の悠希さん。
悠: そうですね。大学ではそういう授業がいっぱいあります。
三: そういうなかで、かなり地域に大学生たちが出てきてくださっているんですが、プログラムを組んで出てきてくださり、丁寧にやられる所はいいんですけど、やっぱり地域の中に学生がボンと入れば、きっと学ぶんだとか、学生と地域がガチっとやれば学ぶんだというところが…。
絹: そんなわけないようねえというのが、ありますよね。やっぱり糊と言いましたけど、美しいバラ色の話だけではなくて、トラブルの種とか、こんなはずじゃなかったと胸を痛めたりというケースに至らないように、周りの大人たちが学生さんを守る、あるいは地域を守るという立場の人はやっぱり要りますよね。
 

●守り過ぎず、ほったらかし過ぎず

三: そうですね。しかも難しいのは、今度は過度に大学生たちを守り過ぎてしまうと、貴重な経験、例えば地域とある意味良い感じでぶつかる事自体はすごい学びだと思うんです。もちろん取り返しのつかないようなぶつかり方はダメですが…。ですから守り過ぎず、ほったらかし過ぎずという、このバランスを取るということですね(笑)。
絹: ちょっと見守りつつ、痛い目にも遭わせてやると(笑)。
三: 色んな経験が大事だと思いますね。やっぱり。
絹: でもねえ、今のお話を聞いてね。そういうプロセスを通して社会に出てくる学生さん、うちの会社やったら欲しいと思うわ。たぶんね、周りの京都のリーディングカンパニーが企業訪問した時に「3L APARTMENT」と言ったとたん、「ああ、来てください!」とか、役員面接通るんじゃないかと。半分冗談で半分本気ですけど、それってすごく企業側にとっても「うん!」と思う事だと思います。さあ、何か言い残したことないですか?
 

●緩やかに住みながら繋いでいく

三: 地域という文脈の中で言うと、学生のパートナーとして大切な地域の自治会さんたちですね。なかなか難しいと思うんですが、自治会って、おじいちゃんおばあちゃんがやってくれて、ご夫婦は働いて、子どもたちは行事にお客さんとして参加するということがだいぶ増えていると思うんです。もはや自治会と文化とか、あるいはお祭り文化といったものは、あえて教えないといけなかったり、一人暮らしの様子も教えないといけないわけです。これまでは肌感覚で伝わってきたような若い方々への継承みたいなものを、どう肌感覚性を失わずに緩やかに繋いでいくかということを、住みながらやっていくというのが、コンセプトの柱として大事なのではないかと思っています。
絹: リスナーの皆さん、大切なキーワードをいただきました。緩やかに住みながら繋いでいく。ここも二重線引いてくださいね。大切なキーワードをちょうだいしました。リスナーの皆さん、今までお聞きになっていかがですか。何か聞いていてうれしいです。学生たちが地域に入ってそこで学ぶことを良しとする。ただそれを入って一緒に暮らしているのではなくて、サポートしようという大人たちが周りにいる。しかも京都市さんがちゃんと「見守るぜ」というスタンスで、これは実験的なプロジェクトが2年間続いているんですよね。
杉: そうですね。ちょうど2年ですね。
絹: 「だけじゃなくて、この先もあるぜ」と有紀さんは野望として公営住宅に広げていくという話をされています。最後、有紀さんに渡してPVやっちゃってください。
 

●3L APARTMENTのプロモーションビデオ、作成しました!

杉: はい。ここでアピールさせていただきたいのですが、今の3L APRTMENT PROJECTのPVを作成しまして、ちょうど3Lのフェイスブックのアカウントがあるのですが、そこでそのショートバージョンを公開しております。また是非そちらも見ていただきたいです。さらにドキュメンタリービデオでちょっと長編の30分弱くらいの映像も今順次公開に向けて、準備をしていますので…。
絹: 僕、できたてほやほやのそれを見せていただきました。感動的!力が入っています!京都市一生懸命作っています。写っている学生さんたちもかっこいい!ちょっと褒めすぎですけど、本当に素敵です。
杉: 是非是非見ていただきたいので、3L APRTMENTのフェイスブックをフォローしていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
絹: ということで、終わりになっちゃいました。皆さん、さよならあ!
全: どうもありがとうございました。
   
(3L APARTMENTオリジナルストーリーのショートムービーはこちら
(3L APARTMENTロングインタビュームービーはこちら
投稿日:2021/04/09

第164回 ・人とのつながりは、しんどいけど大切や~「ことらいふ東寺」の挑戦

ラジオを開く

増: 増田 二三夫 氏(㈱ことらいふ 代表取締役)
増: 増田 隆子 氏(まちの縁側「よっとーくりゃす」代表)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
  (増田ご夫婦:増田 隆子 氏 ・ 増田 二三夫 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。マスク越しで苦しいです(笑)!ちょっとくぐもった声で失礼します。本日はなんと10年ぶりにかつてのゲストが戻ってきてくださいました。本日のゲスト、10年前の当時は「まちの縁側よっとーくりゃす代表 増田隆子さん」という紹介をいたしました。増田さん、よろしくお願いいたします。ようこそお帰り(笑)。
増: ああ、どうも。帰ってきました(笑)。トシを取りました(笑)。
絹: そして、そのパートナーであらせられます増田二三夫さんです。よろしくお願いいたします。
増: よろしくお願いいたします。
絹: 増田さんは“株式会社ことらいふ”代表取締役でいらっしゃいます。高齢者居住の研究などに興味のある人は注目している人もおられるかと思いますが、株式会社形態を持たれて珍しい成功事例として高齢者のグループリビングを運営されておられます。さて、今日の番組タイトルですが「人とのつながりは、しんどいけど大切や~“ことらいふ東寺”の挑戦」と題してお送りいたします。それでは増田二三夫・隆子ご夫妻、エピソード1はどちらから口火を切っていただけますか?
増: お父さん、どうぞ。
 

■エピソード1 “ことらいふ嵯峨野”の実践

●“ことらいふ”の意味
増: 隆子のパートナーの増田二三夫と言います。よろしくお願いいたします。“ことらいふ”という名前、なかなか珍しい名前だと思います。これはまず古い都の古都と、ライフの生活という意味があるのですが、私どもではグループリビングと言いまして、今は高齢者中心の助け合い、支え合いながらともに暮らしていこうというのを嵯峨野の方で運営をしております。このグループリビングというのは、1人ひとりの性格や考え方、あるいは生きてきた道のりも含め、異なる人たちの集まりであるということ、その間にトライ、挑戦していこうということと、ライフの生活を掛け合わせた造語を、みんなで考えて、こういう会社の名前を付けました。
絹: 古都の暮らしかと思ったら、間にトライが隠れていたわけですね。さらっとグループリビングとおっしゃいましたが、実は大変なはずですし、うまいこといかなかった事例もいくつか聞いております。そやけど、“ことらいふ嵯峨野”は5年間…。
増: そうですね。オープンして丸5年になります。
絹: ここをおじゃましたのが5年前ですけど、あれはお披露目の時でしたか。
増: ええ、絹川さんに来ていただいて、美味しいワインをいただきました。
絹: この頃もう、右向いて左向いたらコロッと忘れてまして、そんなこといたしましたか、生意気な(笑)。でもね、冗談めかして言いましたけど、リスナーの皆さん、ほんまにすごいんですよ。5年間も続けているって。
ことらいふ嵯峨野 企業組合もえぎ設計ホームページより転載)
 

●グループリビングって、何?

絹: すみません、リスナーの皆さんの中にはグループリビングをご存知ない方もおられるかもしれません。ひらがなにしていただけると助かります。お願いいたします。
増: グループリビングは、高齢者の施設でもないし、共同住宅でもない。血縁関係もない、そういう人たちが1つ屋根の下で暮らし合う我が家、そういう中身です。
絹: “ことらいふ嵯峨野”さんの場合は、何人がお住まいになっているんですか。
増: 今、70歳から94歳まで、5人の方々です。非常に元気で、5人とも毎日朝6時に起きて、最初に廊下とかお風呂とか階段などの共用部分の掃除を皆でして、朝は仲間の方が料理を作っていただくという生活で朝が始まります。
 
絹: 5人組の方、長老が94歳、一番若い方が70歳であると。5人だけではなくて、ひょっとして“よっとーくりゃす”さんみたいに“よっとーくりゃすサポートメンバー”みたいな形で周りを支えるような方はおられるんでしょうか。
 

●地域の皆さんに温かく迎えられて

増: 嵯峨野という地域は、たまたまそこに素晴らしい物件があって決めたんですが、私たちにとっては縁もゆかりもない所で、落下傘みたいな形で降りてきたんですが、地域の皆さんが早速「こんな立派なリビングがあるのやったら、是非ここで子ども食堂をしたい」ということで、地域の方々が温かく向かい入れていただきました。毎月そこに子どもたちが集まるのですが、高齢者の方も個食よりも月1回だけみんなの顔を見て食べられるということで、多い時は100人くらいがリビングに三交代で集まったりして、本当にそこに来て地域の皆さんに支えられてよかったなと思っています。
絹: 地域の人が温かく迎えてくれて、「こんな立派なリビングがあるのなら、子ども食堂をやろうや」と声が掛かったわけですよね。これも珍しいなと思うんですけど、増田隆子さんは京都市のOGで水無瀬文子さんて、聞いたことないですか?
増: とねりこの家”ですよね、はい。
絹: “まちの縁側、とねりこの家”です。あそこが始め、地域に信用してもらうまでものすごく時間がかかったという苦労話を聞いたことがあるんです。はじめは「なんやけったいな人が落下傘で来た」と。「ちがいますねん」と言っても「新手の宗教か?」と言われたと。増田さんとこの“ことらいふ”は嵯峨野ではうまく受け入れてもらえたのは、人徳ですか?理解のある人たちだったのかな。
(とねりこの家外観 まちの縁側とねりこの家ホームページより転載)
 

●嵯峨野という地域性

増: 南区と比べてやっぱり意識が高いなというのは感じます。地域性はすごく違いますね。
絹: 増田さんたちがなさろうとしていることに対して、理解が早かった。
増: 絹川さんも来ていただいたオープンの時の竣工祝賀会で、あの狭い所に120~30人集まって、もう地域の方で大入り満員でしたから。その方がこのリビングを見て、「こんなに広いリビングがあるから、ここで何かしたい」ということで、むしろ地域の方々が…。
絹: ということは当該の嵯峨野エリアには地域の人たちが寄って何かをしたいという要望や思いはあったけれども、実際の空間がなかったと。それに対して増田さんたちの空間 “ことらいふ嵯峨野”が、「ワシとこはワシとこだけ」とばかり閉じてなくて、「どうぞ」と開いてはったわけですね。それは“よっとーくりゃす”そのものですね。5年間、今まで成功裏に続いておられる。ということは近所の方々とも仲良く続いているということを意味しますよね。
 

●“よっとーくりゃす”のこと

絹: 嵯峨野の5年間の実践から隆子さんが“よっとーくりゃす”を始められたのが10年前?
増: 13年前です。
絹: 南区の御実家、西九条ですよね。10年前はご自身で「西九条村」とおっしゃってましたが(笑)。結婚して外に出ていて、帰ってきたら街が変質していて寂しかったと。なんとかせなあかんと始めたのが“よっとーくりゃす”ですよね。“よっとーくりゃす”と“ことらいふ”似通ってるけど、ちょっと違うので、その辺の事を復習していただけませんか。
 

●“ことらいふ”の姿勢として

増: “ことらいふ”の場合は、先ほども言いましたように地域性というのがあって、ちょうど建物の空間もすごく良い空間であって、周りの方たちもそういった意識を持っておられる方も結構いらっしゃった。町内会の活動も活発で、あそこの持ち主の方も色んな方を招いておられたようです。
絹: ああ、元々の持ち主さんが…。
増: 祭りの神輿の出発場所になっていたみたいです。
絹: それはみんな知ったはりますわあ。
増: “ことらいふ”という会社が、家の中だけの生活ではなく、地域で住むということで、門戸を広く開いていた。そして定期的に色んな歌声とか、落語会とか、そういうこともやりながら…。
絹: やるべきことをちゃんと外に開かれるべく、自分たちの姿勢はこんなんやと、イベントを丁寧に打ってはったわけですね。
増: それはもう、ずっと定期的にやっていました。
絹: それは元々神輿の発信基地であって、それだけ地道な活動をされていたら、信用力はありますね。
増: それと私どもの会社の理念の中に、今まで培ってきた経験を地域社会に生かしましょうというものがあるんです。それと地域の方の要望がぴったり合ったというのが非常に大きいのではないかと思います。
絹: 高齢者グループリビングと言われていますけど、なんや若い衆が一緒に住んでいるらしいという噂も聞いたんですけど、どないですの?今も一緒に住んではるんですか。
増: いや、去年半年ほど学生さんがそこでおばあちゃんと一緒に暮らすということで頑張っておられましたが、今はもう卒業していないんです。
絹: いたはった時は可愛がられたんでしょうし、役に立ったんでしょうね。きっと(笑)。
増: 役に立ったんかな、あの子(笑)。
 

■エピソード2 “よっとーくりゃす”での実践

●“ちょっとお助け隊”のはじまり
絹: “ことらいふ嵯峨野”の5年間の実践から、今度は“よっとーくりゃす”のそばに、新たな“ことらいふ東寺”という新規プロジェクトを立ち上げられるという噂を聞きました。そこで今回ゲストに再登場をお願いしたのですが、“ことらいふ東寺”は隆子さんの御実家の近所だそうですね。その3軒の町家の地主から「増田さんとこやったら、どうぞ」と借りることになって、改修する話が動いたそうですね。
増: 13年間地域の活動を続けてきまして、1つひとつ思い返すと、地域の要求とか困りごと、それだけではなくスタッフの要求、それからやりたい事、その人たちに合った能力を引き出す活動を地道にずっと続けてきたんです。一方で、うちの町内も非常に高齢化が進んで1人暮らしの人がたくさん出て、例えば隣の人とか、向かいのお兄ちゃんお姉ちゃんに「ちょっと頼むわ」みたいなことが全くできないような状況になってきまして、町内会の役はおろか、町内会自身もやめる、縮小しているような状況がずっと続いていたんです。その中で一人ひとり、スタッフになってくれはりそうな人に声を掛けまして、今は25人くらいいるんですけど、色んな活動をやっています。
絹: リスナーの皆さん、今、えらいことをさらっと隆子さんは言わはるんです。25人、“よっとーくりゃす”という地域の居場所、コミュニティカフェ的な場所でもあります。そこのサポートメンバーが地元に25人、人に恵まれてはりますねえと言うか、それだけの方を育ててきはったと言うのか。すごいなあ。確かに生協さんの共同購入の取次ぎみたいなことをずっとされてきて、お年寄りが「字が小さいし、見えへんわ、書けへんわ」と言ったら、「書いたげよか」と言う小さいお子さんがいたり、そんな人たちの集まりなんですね、きっと。
 

●子ども食堂、ほんとはジジババ食堂(笑)もやってます

増: そうです。だからもう1人ひとりに声を掛けて、1人ひとりのことを考えながら、ずっとやってきました。ものすごく地味な事なんですけど、生協の共同購入は一週間に一回必ず来られる、顔を合わせる、そこで顔を合わして、荷物を渡すだけやなしに、色んな話をする。地域の情報が入って来る。その情報に基づいて色んな事をしてきたんです。例えば、栄養失調で倒れられたおじいちゃんがおられたので、お年寄りの食事状況をちょっと聞くと、非常に劣悪な、お弁当を取っておられて、それを三食に分けて食べるとかね。栄養失調の方がすごく多くなっているんです。それで本当は子どもやないけど、子ども食堂をつくったわけです。それで子どもも呼び寄せてね。
絹: 子ども食堂に来るのは、子どもだけとちゃうと。
増: 違います。ジジババ食堂なんです(笑)、本当はね。子どもの数は少ないんですけど。それから最近やっぱり注目されるのは、“ちょっとお助け隊”。それは先ほど言いましたように、近所の方の助けがなくなってきた、声掛けができないような、そういった状況の中で、例えばブレーカーが落ちたと。一晩中ずっと暗い所にいはったわけです。それで「なんとかして」ということで、そういうような状況になっているわけです。
 
(こども食堂 ことらいふホームページより転載)
 

●“ちょっとお助け隊”最初はボランティアでしたが…

絹: “ちょっとお助け隊”、ニアリーイコール25人の“よっとーくりゃす”のサポートメンバーが相談に乗ってあげはるわけですね。
増: というよりも、うちの方に情報が入ってきて…。
絹: 「増田さん、こんなんで困ってるねん」という第一報が入るわけですか。
増: はい。でも今は包括センターから入って来るんです。施設とか。
絹: 地域支援包括センターでしたっけ。公的な所からですね。
増: そうです。どんどんどんどん入ってきます。だから15分200円です。最初ボランティアでやっていたんですけど、ボランティアですると依頼者がものすごく遠慮をされて、ビールとか何やかんや持ってきはるんです。だからもう15分200円。
絹: 逆にそうした方が気楽やわと。
増: 気楽ですしね、15分200円はものすごく貴重なんです。例えば「洗濯物がちょっと屋根にかかったから取って」とか、夏になったら「簾かけをしてくれ」と。今は「ゴミ出しができないので、してくれ」とか、色んな事があります。それがどんどんどんどん忙しくなってきているんです。
絹: リスナーの皆さん、聞かれました?知らなかったでしょう?南区の片隅で13年間、こういうことを地道に続けてこられた方々です。さあ、それがです。“ことらいふ嵯峨野”に続く“ことらいふ東寺”という新しいプロジェクトを立ち上げようとしておられます。そのことについてお話しいただけますか?
 

■エピソード3 “ことらいふ東寺”の挑戦

●お助け隊が出張?
増: 昔から一緒に住むということは、1つの選択肢だと思っていました。お年寄りだけじゃなくて、今、若い人の家もお金もないという中で、相談は結構入っているんです。だから一緒に住もうと。それと今はもううちの近所はお年寄りが多いので、若い人を勧誘しようということで、第二のグループリビングを考えました。1つ、嵯峨野と違うのは、地域の中での助け合いがあるということです。嵯峨野の方の色んな用事があるとすると、年に何回か私の所が派遣しています。
絹: ほう、お助け隊を出張させてはる?
増: そうです。だからそれは必要な事だと昔から思っていたんです。
絹: “よっとーくりゃす”と“ことらいふ”がええ感じでミックスされていくんですね。
増: 進化してきたんです。お父さんどうぞ(笑)。
 
 

●“ことらいふ東寺”のサロンでやりたいことー地域食堂・地域居酒屋…

増: 実は私は京都生協に三十数年間勤めていて、不動産の開発の関係の仕事もしていまして、昨年は4人、大家さんから「家を取り壊すので出て行ってくれ」といったことがありました。そんな経緯で町内の空家の所に4人のお年寄りと1人はまだ若い40代の方に来ていただきました。そのうち1人は今度“ことらいふ東寺”に入居していただくことになりました。“ことらいふ東寺”というのは、単に入居者(今度4人が住むわけですけど)だけと違って、それプラス長屋風と言うのを考えています。“ことらいふ東寺”のサロンでぜひやりたいのは、地域食堂と言うんでしょうか。地域で特に一人暮らしの毎晩お弁当を取っている方は、そこで温かいご飯をみんなと一緒に食べてもらうようなサロンです。
絹: 共同の、みんなの台所みたいな感じですね。
増: そして月に2回くらいは、安くてうまい居酒屋もやろうかと(笑)。
絹: なるほど。そういう形でご夫妻のタッグを組まれて13年、そして15年とやってきたことが新たな形で船出しようとされています。でも事前の打ち合わせで、「もう、しんどいわあ」「あかん」と思われたことが、二度や三度ではなかったと。それからラジオに一緒に出るのも、「ラジオでケンカしたらどうしよう」と、ものすごく心配してはったそうです。(笑)それも乗り越えてまた新たにやろうとされているわけですが、5月にシンポジウムなどもできたらいいよねと語っておられましたが、そのことについても構想と言うか、野望と言うか語っていただけませんか。
 

●自分に何ができるのか考えてみて、そこに色んな仲間が集まってきます

増: それは何かと言いましたら、本当にしんどいんです。新しい事を立ち上げるということは。お金もすごくかかることなので、だけども色んな工夫と皆さんの努力と知恵でなんとかできるのと違うかというふうに、それを私たちは発信したい。自分に何ができるのかという夢から出発してもいいんです。だからそこを諦めないで追及してほしいし、色んな仲間や色んな人たちが集まってできるのではないかと。で、今はやっぱり色んな意味でも好機やなと思いますので、是非とも皆さん頑張ってください。
増: 私どもがやっている“ちょっとお助け隊”もそうなんですけど、やっぱり地域の方々にちょっとお助けすると「ありがとう」という笑顔で応えていただく。その笑顔と「ありがとう」が何よりも次の励みになるのかなと思います。そういうまちになっていったら、やっぱり地域が変わっていくのではないかと思っています。
絹: リスナーの皆さん、実際にここ13年15年と地道に地域で、そして南区と嵯峨野で実践を積み重ねてこられたご夫妻の言葉だけに重みがあるように聞こえませんか?そしてさらに好機であると隆子さんはおっしゃいました。と言いますのは、同じ思いをしている人たちが京都の中に、南区にお一方、山田木工所の山田さんと言う方、それから山科区にてんぷら屋さんの笑人(わろうど)の盛武さゆりさん、この方も地域の子ども食堂のネットワークの一角を支える方です。同じ思いの方が同時多発的に助け合おう、集まろうという動きすらあります。行政もサポートしてくれるはずですし、京都府も動き始めております。ぜひ、皆さん、ご注目を。この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市・景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。お二方、ありがとうございました。
両名: どうもありがとうございました。

 

投稿日:2021/03/12

第163回 ・3つのLって何のこと?京都が変わり始めてまっせ!~地域で暮らしながら学ぶ

ラジオを開く

杉: 杉山 有紀 氏(京都市都市計画局住宅室 住宅管理課)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
  杉山 有紀 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。さて、本日のゲストをご紹介いたします。杉山有紀さんです。お気づきのようにお若い女性です。肩書は少々長うございます。京都市都市計画局住宅室 住宅管理課の杉山有紀さんでいらっしゃいます。よろしくお願いします。
杉: はい、杉山です。よろしくお願います。
絹: まだ今日会って三回目くらいです。杉山さんの上司がおもろいおっさんでね(笑)。岩本剛さん。もうだいぶ前にこのチョビット推進室のゲストに「まちづくりの最終形って何?」というようなタイトルで出てくださった方と再会しまして、「絹川さん、ワシよりも有紀出して!」と仰って、今日の御出演が決まりました。
杉: はい、ありがとうございます。
絹: そんな不思議なご縁に導かれての、本日のタイトル、ちょっと謎みたいなんですよ。「3つのLって何のこと?京都が変わり始めてまっせ!~地域で暮らしながら学ぶ」と題してお送りいたします。では今日のゲストの杉山有紀さん、そもそも3つのLって何か、ひも解いていただけますか。
 

■エピソード1 そもそも 3つのLって、何?

●市営住宅の困りごとと学生さん
杉: 3つのLって何のこと?と書かせていただいたのですが、これは私たち住宅管理課で行っている3Lアパートメントプロジェクトというプロジェクトのお話です。何かかっこいい名前ではあるのですが、何の話やということだと思います。これは大学生に市営住宅で暮らしてもらって、住民として地域の自治会活動に参加してもらうというプロジェクトになっています。私たちが市営住宅を管理している側になりまして、そのつながりで市営住宅の単身部屋に学生さんに入ってもらうようになります。
絹: 京都市って、市営住宅が結構たくさんあるはずですよね。
杉: 88ありますね。
絹: お、さすが本職パッと出てきたね。88か所もある。僕がパッと思い浮かぶのは、洛西ニュータウン、あれは市営住宅ですか?
杉: そうですね。あとニュータウンで言うと、洛西ニュータウンのほかは向島とかもありますね。
絹: 向島もでかいですね。そして素人であります我々が思い浮かぶのは、ああいう市営住宅を管理されている方が、抱えておられる困りごと、あるいは地域が抱えておられる困りごととして、「空いているのちゃうの」とか、「高齢化してお年寄りが増えて、若い人が少ないんとちゃうかなあ」とそんな想像を働かせるのですが、それと関係ありますか?
杉: そうですね。市営住宅、若い人もいらっしゃるのですが、お金をためて持ち家を買うために出ていかれる場合もありますし、どうしても元々住んでいらっしゃる方の高齢化というのも進んでいますので、自治会活動をされている中でも役員の担い手不足で悩んでおられるという声を伺っております。その声を受けて、私たちの方でも何かできないかと考えまして、学生に入居してもらうのはどうだろうという案が出てきました。この学生というのが、京都市の人口の一割を占めておりますので…。
絹: リスナーの皆さん、今大事なポイントが出てきました。京都市の総人口約142万人、それの一割と言うと、14万人から15万人の学生さんが京都にいはると。京都はそれがすごい特徴で、日本中で一番学生比率の高い街ではないかとすら言われているそうですね。 さあ、そんな中で住宅管理の担当をされている有紀さんたちが色々考えられました。それを象徴する手元資料をちょっと紹介してもいいですか?
杉: ありがとうございます。お願いします!
 

●掲載された京都新聞から

絹: 実は隠れて予習しているんです(笑)。 令和2年3月8日月曜日の京都新聞です。見出しが「伏見の市営住宅に龍大生、連携事業1年、自治会活動暮らして学ぶ」とあって、「大学生が市営住宅に住んで、自治会の一員として地域活性化に一役買う。伏見区竹田の田中宮(たなかのみや)」「自治会と地元の龍谷大学、市の連携事業3Lアパートメントが始まって今年で一年を迎える。全国でも珍しい試みで、龍大生3人が行事や防災などの活動に加わって地域に溶け込みつつある。」これが去年の3月の新聞記事です。
3L APARTMENT ホームページより転載)
 

●市営住宅に暮らす学生さん、増えています!

杉: 今、ご紹介いただきました伏見区にあります田中宮市営住宅、こちらに龍谷大学の学生さんに暮らしてもらっていまして、現在は3名だったところから6名に増えておりまして…。
絹: 増えてるやん。ということは先細りじゃなくて、ちょっとずつ広がりつつあると。うれしいじゃないですか。
杉: そうなんです。うれしいことです。元々住んでいた3名の学生の口コミで広がっていったり、後は募集を見て、「全然地域と関わったりしたことなかったけど、興味をもってやってみたいな」と思ってくれた子が参加して、だんだん広がってきているものになります。
絹: 実際に僕は取材していないから門外漢としての想像ですけど、実際に住んでおられる人たち、若い学生さん6人も来てくれたら、すごくうれしいのと違うかしら。
杉: やっぱりパッと明るくなったよねというような声は聴きますね。学生さんたちが自治会活動に参加してくれているだけで雰囲気が変わるという声を頂いています。
 

●学生さんの入居、実は地元の要望でした

絹: 新聞記事には、田中宮市営住宅でも入居約80世帯のうち、高齢者を含む世帯はおよそ半数以上で、防災面などの不安を抱えていたり、単身者用の部屋が空いていることをなんとか活用しなければと、自治会の方から京都市に学生の居住を要望された、とありますが。
杉: そうなんです。元々、田中宮市営住宅には龍谷大学の学生さんがボランティアで一時的に入ったりして、学生とのつながりがあったんです。で、「来てくれている学生たちがずっと住んでくれたらもっと地域とも深く関わってもらえるのに、どうにかそういう仕組みってつくられへんのやろか」というような相談もありまして…。
絹: リスナーの皆さん、その田中宮市営住宅の位置関係ですけど、皆さん土地勘はありますか?近鉄の竹田駅よりもちょっと南…。
杉: 歩いて10分~15分くらいの所ですね。
絹: それから京阪で言うと墨染の駅から西に向かって15分くらい歩いてという感じですか。国道の赤池から歩いて10分くらいかな。そんな感じの位置関係です。城南宮さんの南のほうですね。
 

●「暮らしながら学ぶ」を実現するために

杉: この取組みとしては入居している学生さんが自治会の役員として地域の自治会活動に参加していくというもので、「暮らしながら学ぶ」というのを大きなテーマにしています。
絹: 大学側も全面的に協力されているみたいですね。
杉: そうなんです。地域に学生が入って、それで終わりではなく、大学、自治会、地域、そして京都市、他にも色んな関係機関が集まって学生や地域をサポートできる体制を取っています。
絹: 別の新聞記事には「空き部屋になっていた単身用の部屋、1DK約29㎡を使っている」とあります。入居費管理費は計24800円。これは手ごろですよね。
杉: そうですね。近隣の学生が一人暮らしをするようなお部屋の家賃からすると安く設定されていると思います。
絹: 僕はそんなに詳しいわけではないですけど、例えば息子がワンルームマンションに入ろうとすると5万くらい確保しないといけないのではと…。
杉: そうです。4~5万円くらいがこのあたりの相場とは聞いています。
絹: 学生の経済的負担を軽くするために、事前に京都市がお風呂を改修したり、エアコン、冷蔵庫、家電製品も設置したと。もう至れり尽くせりじゃないですか。
杉: そうなんです。もう身一つで入ってもらえるという状況ですね。
絹: でも地元の方から「学生さんによかったら入ってほしい」という声が京都市に届いて、それを京都市が丁寧に拾わはった。これもなかなかちょっと美しいじゃないですか。
杉: ほんまですか!
絹: それもちゃんとそういう声が届くんですね。
杉: やっぱり頂いた声をどうにか私たちも実現できないだろうかというのは考えてまいりますし、その中でも特に田中宮については、単身部屋が空いたまま、次の募集を待っているような状態だったので、条件としても整っていたというところはあります。
絹: 大学に通うだけでは経験できない色んな世代の住人との関わりを通じての学び、それも京都で学生生活を送る上での大事な学びではないのかと大学でも思われたわけですよね。
杉: 大学の学内では学べないような関りを、市営住宅をフィールドとして学んでもらえる良い機会になるのではないかというところで、龍谷大学さんに賛同いただいたという次第です。
3L APARTMENT ホームページより転載)
 

●3つのL の答えです

絹: さあ、そこで謎のタイトルの答えが出てきます。
杉: ついに申し上げます(笑)。3つのLというのが「local」「life」「learning」という3つの単語の頭文字を取っております。これが「地域に暮らしながら学ぶ」という3Lアパートメントプロジェクトを表している要素になっております。
絹: 「local」「life」「learning」、地域で学んでくれと。
 

■エピソード2 熱くて優しい自治会長さんのこと

●田中宮に自治会を立ち上げる
絹: さあ、次のエピソードです。なんか面白い自治会長さんがいたはるらしいですな。
杉: そうなんです。自治会長さんがとてもインパクトがあると言いますか、個性的な方でして…。
絹: 新聞記事でお坊さんみたいにつるんとした人が作務衣を着て…。結構恰幅のいい人、この人?
杉: そうです(笑)。第一印象はちょっとこわもてな感じもある人なんですが、実際話してみると義理と人情で、とっても優しい熱い方なんです。
絹: お名前は?
杉: 岡田俊秋会長です。
絹: 岡田俊秋自治会長。これは平成31年の時点で御年62となっていますから、今はもっと上ですね。
杉: 63歳ですかね。そもそも田中宮市営住宅には自治会がなかったのですが、平成24年度に自治会を自ら立ち上げられた方です。
絹: どうやら熱い方のようですね。
(左側 : 岡田俊秋自治会長 3L APARTMENT ホームページより転載)
 

●ふれあい祭り、子ども食堂、ソフトボール大会…みんなの喜ぶ顔が見たい

杉: とても熱い方で、地域のことをすごく考えておられて、「ふれあい祭り」という地域のお祭りとか、子ども食堂や、ソフトボール大会など、色んな行事を実施して、「子どもたちの喜ぶ顔が見たい!」「地域の人が喜んでいる顔が見たい!」という気持ちで活動されている方です。学生の事もすごく気にかけて下さっていて、コロナ禍ということもあり、昨年はアルバイトができない学生がいたんですけど、「大丈夫か?」「食えてるか?」と、とてもこまめに声を掛けて下さっていました。自治会としても住人の皆さんに対して色んな策を練っておられて、実行されていて、とても優しくて熱い方です。
絹: 3Lアパートメントのフライヤーと言いますか、三つ折りパンフレットがあります。その中を見ますと、岡田自治会長の人となりを表す、「田中宮名物、岡田会長の粕汁」というのがあって、会長が蔵元から仕入れてくる美味しい酒粕を使って手製の粕汁を振舞ってくださいますと。これまで粕汁が苦手だった方も絶賛と書いてあります。
杉: 冬と言えば会長の粕汁で、めちゃくちゃ美味しいです。
(田中宮名物、岡田会長の粕汁 3L APARTMENT ホームページより転載)
絹: それとともに子ども食堂をやっていらっしゃるんですね。周辺の子どもたちにお声かけをして、学生と一緒にご飯を食べますと。時には夜に地域の大人たちが大人食堂って…。食堂って言ってますけど、当然アルコールとか出そうですよね(笑)?
杉: そうですねえ(笑)。色んなものが出てますね(笑)。
絹: いやあ、面白いですね。それから「ふれあい祭り」。地域で途絶えていた夏祭りが十数年ぶりに復活。
杉: 毎年秋に行っていまして、これが一番、田中宮市営住宅自治会の行事の中では大きな行事になっています。ちょっと今年度はコロナの影響で、規模を縮小しての実施という形で、外ではできなかったんですけど。
絹: それはしょうがないですよねえ。
杉: ただそれも入居している学生が中心となって、「今年もぜひやりましょう」ということで、たくさん動いて実施してくれました。
 
  (第5回ふれあい祭り 2020.10月開催 3L APARTMENT ホームページより転載)
 

■入居している学生さんのこと

●「地域に入ってやってみたい!」
絹: それでは住んでいる学生さんの様子について、教えていただけますか。
杉: 入居している学生は、今は6名なのですが、とっても真面目ないい子たちで、地域のために自分たちも何かしたい、何ができるやろかということを、すごく考えて、志を持って入ってきてくれているんです。
絹: なんかちょっと美しすぎません?僕、以前はね、学生さんは地域にかかわらないとか、ほっといてみたいな、スマートフォンの中身だけ、ネットの世界に没入してというイメージがあって…。ああ、でも運動部とかガンガンやっている人はやっていたよなあ。
杉: 私も最初は失礼なんですけど、そういうイメージを持っていまして、学生さんで地域に入ってやりたいなんて、やる気を持ってくれている子がいるんやろかと思ってたんです。ただ実際、こうして募集してみると、みんな「やってみたいです!」「入ってみたいです!」と言ってくれる子もいて、今年も入居募集はもう既に終えたんですけど、1つの枠に何人もの学生さんが応募してくださって…。
絹: リスナーの皆さん、今のところ赤線引いてくださいね!枠よりも多くの人が応募してきたと。ということは、龍大生のある部分は大学に近いし、条件もいいし、地域のお手伝いもしてという希望があるわけや。
杉: そうなんです。「地域に入って僕もやってみたいです!」と言ってくれるのは、本当にうれしかったですね。
 

●3.11以降、学生気質が変わった?

絹: 3.11って、もう何年前になるんでしょうかねえ。
杉: 2011年ですよね。
絹: そうすると10年ですよね。あの頃から被災地に入る学生さんとかが増えて、何か学生気質が変わってきたような、そんな気も少ししているんです。言葉を選ばずに言うと、「恥ずかしげもなく世のため人のために動く」という人が、少し若い人の中ににょきにょき出ているような気がせんでもないのですが、その辺有紀さんの年代はどう思います?
杉: 私が学生の頃は、そこまで地域にとか、誰かのためにとかいう人、もちろんいたとは思うんですけど、目立ってそういうイメージってなかったですね。
絹: そういう人口比率がちょっとアップしてきた気がしません?3Lアパートメントプロジェクトなんかに関わっていると。
杉: 今の学生さんを見ていると、本当にそうで、龍谷大学の学生さんだけじゃないのかもしれませんが、関わっている学生も自分たちで変えたい、何かをしたいということで、すごく自発的に動くということをしていて…。
 

●住んでいる学生同士もすごく仲がいいんです

絹: 頂いているメモを見ますと、「彼らは何か志を持っているような気がする」というコメントと、住んでいる龍大生同志も仲が良くて、一緒に飯を食ったり、部屋に集まったり、寮みたいな雰囲気も、その田中宮市営住宅にはあるようで。あ、学生さんが集まっているフロアって一緒なんやね。
杉: フロアが同じ階で、隣り合わせになっている部屋もあるので、フラッとみんな集まって一緒にご飯食べたりして、同じ階に住んでいる仲間なので終電とかも気にせずにいられますし…。
 

●学生を守るためのルールが設定されています

絹: でも、一定トラブルを防ぐために、田中宮の一般の住民は彼らの部屋を訪ねるのはやめようというのは、マナーとしてあるみたいですね。
杉: 学生たちも住民さんの部屋の中には入らない、また住民さんも子どもであっても学生の部屋には入らないということを、岡田会長が徹底してされています。
絹: それはやっぱり岡田会長の学生を守ろうというご配慮なんですか?
杉: そうです。この事業を始めるにあたって、学生を守るための方法としてルールを設定されています。
絹: そっかあ。なかなか深いですねえ。さて、時間が残り少なくなってきましたので、これからどうなっていくのだろうという予告編と言うか、展望も含めて、コメントしていただけますか。
(集団登校する小学生の見送り 3L APARTMENT ホームページより転載)
 

●3Lアパートメントプロジェクト、市営住宅以外にも、全国にも広げていきたい

杉: ちょっと私の野望みたいなところも含めての話になるのですが、現在、これは田中宮の市営住宅で行っているのですが、他の市営住宅にも広げていきたいなと思っていますし、それだけではなく市営住宅以外の自治会にも広げていきたい。やっぱり地方から出てきて下宿している子もたくさんいると思いますし、そういった一人で住んでいる学生も地域に関わっていって、サークル活動の一環のように、地域をフィールドとして学生の自由な発想や感性が活かせる場をつくっていけたらと思っています。
絹: そのあたりを運営協議会の事務局長を受けていらっしゃる三木俊和さんあたり、“まちとしごと総合研究所”あたりと話をしてみたいですね。
杉: そうですねえ。これは30分では全然収まらない話なので。
絹: その有紀さんの野望が、京都市だけでなく、全国にもね。
杉: 全国にも広がって、新しい自治の形になってほしいなと。
絹: その前に、京都府さん、なんで京都市さんの真似、できないのと。あ、ひょっとしたらもうされているかもしれませんけど、府営住宅もあるものね。僕は建設屋ですから、民間の立場から田中宮で起きるような共同住宅、3Lプロジェクトが起こりうるようなマンションだとかアパートとかをつくってみたいですね。
杉: 実際に入居学生の中にも、不動産だったり、ハードの部門で3Lみたいなことができないかと思ってくれている学生も住んでいるので、是非学生の声もお届けできたらなと思います。
絹: いやあ、彼らと悪巧みしたいねえ!
杉: 是非、しましょう!
絹: そのためのプラットフォームなんかも、実は京都府の方々と作り始めているんです。ですからそんな話も、連携プレイをしていけたらと思います。リスナーの皆さん、今までの話、お聞きになっていかがだったでしょうか。京都市の住宅室、市営住宅を管理している部門が何やら悪巧み、それも非常に大切な悪巧みを始めて一年以上経っています。これが広がると京都市はより暮らしやすく、学生が元気になる、そんな気がしませんか。一回で終わるような話ではないので、第二弾、第三弾と続けてまいります。またプロモーションビデオもおつくりになっていますので、できた時点でお知らせいたします。この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市・景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。有紀さん、ありがとうございました。
杉: はい、ありがとうございました。

 

投稿日:2021/02/26

第162回 ・大学生のためのアプリ KYO-DENTってご存知ですか?~開発学生のプロジェクトメンバーに直接聞いちゃおう!

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大: 大久保 忠重 氏(京都市総合企画局総合政策室 大学企画係長)
小: 小尻 真希 氏(京都市総合企画局総合政策室)サポート
園: 園山 倫太朗 氏(京都文教大学 総合社会学部2回生)
松:  松本 彩 氏(佛教大学 社会学部現代社会学科2回生)  
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)

 

大久保 忠重 氏) (園山 倫太朗 氏)    (松本 彩 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は、当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストはお三方をお招きしております。まずお一方目は京都市総合企画局総合政策室大学企画係長の大久保忠重さんです。
大: 大久保忠重です。よろしくお願いいたします。
絹: よろしくお願いいたします。それからスタジオの外に、やはり京都市からサポートスタッフとして小尻さんに来ていただいています。今日はお声は出されないかもしれませんが。
それからお若いゲストが2人おられます。園山倫太郎さん、よろしく!
園: よろしくお願います。
絹: 島根出身、京都文教大学2回生。今回のプロジェクトチームのリーダーを去年務めたと。
園: おこがましい限りです(笑)。
絹: それからコロナの影響で、スタジオの中に入れる人数を制限していますので、ゲストですけど、もう1人松本彩さんという学生さんもおられます。おーい!
松: はーい!
絹: あとでまた登場します。というゲスト紹介です。
今日の番組タイトルは「大学生のためのアプリ KYO-DENTってご存知ですか?~開発学生のプロジェクトメンバーに直接聞いちゃおう!」と題してお送りいたします。それではエピソード1に入っちゃいましょう。口火は大久保さんから切っていただきましょう。「そもそもKYO-DENTってなんぞや?」行きましょう!
 

■エピソード1  そもそもKYO-DENTってなんぞや 

●京都ならではの大学生のための学びのアプリ、リリースしました! 
大: KYO-DENT、大学生のためのアプリということで、今年の3月にリリースされたものになるのですが、京都市には38の大学があって、15万人の学生さんが学んでおられます。これはいずれも政令都市ナンバー1の数でして。
絹: 京都市民の数、減り気味ではありますが、昔習ったのは140万人、一時は150万人、すると何人に1人が学生さんになるんですか。
大: 10人に1人ということになります。多いです。東京よりもはるかに多くて、学生さんが活躍しているまちということになります。その学生さんに少しでも充実した学生生活を送っていただきたいと、この4年間で京都でしっかりとした思い出を学んでほしいということで、このアプリを開発させていただきました。この京都、例えば世界遺産で学べる授業であったり、今年からは京都鉄道博物館で学べる授業など色んな授業もありますし、地域の町内会さんとかに学生が出向いて、色々交流を深めてもらったりなど、大学のキャンパス以外にも学びを深めるツールがたくさんあります。ところがそれがなかなか伝わっていない、学生さんが知らないということで、それがきっかけで今回このアプリを開発して配信をさせていただいております。
絹: いい試みですねえ。僕らの学生時代って、自分自身もう60を超えていますので40年近く前ですけど、なかなかそういう授業はなかったですものね。
(※京都市ホームページより【広報資料】「大学のまち京都・学生のまち京都」公式アプリ KYO-DENT(キョーデント)配信について※キャンペーンは終了しております)
 

●大学生の皆さんにアプリのもろもろ、考えてもらいました

大: ありがとうございます。京都ならではの学びというところを、どんどん深めているのが私どもの仕事でして、ただ学生のためのアプリなので、大学生に実際に機能とかデザインも含めて考えていただこうということで、先ほどご紹介した園山さんとか、松本さんを中心にプロジェクトメンバーを立ち上げて、今回KYO-DENTの中身を議論いただいたというのが、開発の経緯になります。
絹: 口火を大久保さんに切っていただいたところで、次なるバトンは倫さんですか?
 

●横のつながり、縦のつながりを広げたい

園: 倫さんです(笑)。その当事者としての意見を、ちょっと話させていただきます。
このアプリをつくった目的としては、やはり京都って、市民の10分の1学生がいるにも関わらず、横のつながりがまだうまくできていなくて、大学それぞれの孤立した環境にあるなと自分自身感じていました。また、様々な企業さんがおられるにも関わらず、縦のつながりもあまりできていないなと思ったので、このアプリ開発プロジェクトが立ち上がったことで、横のつながりと縦のつながりをより広げていくためのアプリとして、自分は位置付けています。
絹: それで偶然、すごい迷惑なコロナさんが来てしまって、その中でよけい横のつながりがブチブチに分断されているなかで、ひょっとしてこのアプリを開発されたタイミングって、バッチリ違います?切れているつながりをつなぎなおすのに、いい時期につくってくださいましたよね。
大: そうですね。対面での活動が制限されているなかで、こういったアプリを通じて配信できるというのは、強みかなと。こういうコロナ禍の中では、このアプリは非常に使えるのかなと。学生さんが自分で動けないなかなので、そういった中でも色んな取組みがされており、私どももしていますので、それを届けるツールがこの3月にできたというのは、僕らの心強いものになっていますね。
園: 学校に行かないと、本当にこういう情報を得ることができなかったのが今までだったのですが、アプリとして手元で持ち運ぶことができるようになると、そこから情報を得ることができるようになるので、大変今に合ったものかなと思います。
絹: しれっと大久保さん、今ここに座っておられますが、隠れていい仕事をしていらっしゃいますね。
大: 園山君と松本さんのお陰です(笑)。ほんまに。
園: アプリの機能は、大学生が色々と話し合うことができる掲示板の機能があったり、これまでの学習の積み重ねを記録する機能があったり、大学生なので飲食店などのクーポンが使えるものであったり、歴史の長い京都には文化施設が多いので、そういう所にも安く入れるような機能もついています。
 

●このアプリをきっかけにプロジェクトが立ち上がれば…

絹: さっき、このアプリの本質的なこと、横のつながりができるといいよねと、それから地域とのつながりができるといいよねという話を、打ち合わせでしていましたが、資料に「みんなの掲示板」機能と書いてあります。僕がインタビュアーとして興味があるのは、この掲示板機能がうまく使われると、面白いことが起きるのではないかなと、そんな予感がするんですけど。
園: 横のつながりをもっと増やしていきたいという思いがあるので、学生同士が課題とか、「こういうところを、もっとこうしたらいいのでは」といった議論を活発にできたことの延長線上に、もし何かのプロジェクトが立ち上がったりしたら…。
絹: ここに「大学の枠を超えた、学生だけの居場所とかコミュニティをつくるのに、このアプリがきっかけになるのでは」と書いてありますね。今のミレニアム世代よりも更に先のZ世代の連中は僕らと違って、オンラインでこのアプリがきっかけになって、「おーい、こんなプロジェクトやるけど、集まれ」なんてやりかねないね。
大: この京都の学生だけが使えるというところがミソになっていまして、ツイッターなんかは全世界に発信されるんですけど、京都の学生だけがこのアプリの掲示板に投稿できるように制限を設けています。
絹: いいですね。コミュニティサイズと言うか、スモールシティ京都に特化できると言うか。「あ、すれ違ったアイツ、アプリで会ったヤツとちゃうか」みたいなそんなこともあるかもしれませんね。
倫さん、こういうことにプロジェクトリーダーとして携わって、どの辺がワクワクした?
 
  コトカレ ホームページより転載)
 

●最初の0から1をつくるということ

園: やっぱりこうやって学生同士がつながってプロジェクトを立ち上げることができれば、どこまでできるかわからないですけど、もしできたら、すっごい面白い事が起きる。と言うか、そこから大学のプロジェクトとか、サークルに終わらず、その後の人生においても自分がやりたいことをできるように、やりたいことをそのまま延長線上としてできたらいいなという思いがあるので、それを自分たちがつくる、最初の0―1をつくるというのは、すごいうれしかったですね。すごいワクワクしました。
絹: 今、良いことを言いましたね。0―1をつくるって。倫太郎さんは結構欲張りで、大学の枠を超えていくことを良しとするタイプの人のようです。この辺りはなかなか見どころありと、おっちゃんは思います。
さあ、13分になりましたので、一度外におられる彩さんに交代しましょうか。後で「ちょっと喋らせろ」という時はサインをくださいね。バタバタと交代しますからね。
園: 了解です(笑)。
 

■エピソード2 KYO-DENTのコンセプトとおススメいろいろ

●せっかくの京都。ちょっと覗いてみませんか?
絹: では選手交代で、同じくプロジェクトチームのメンバーであります松本彩さんに声を出していただきます。軽く自己紹介を!
松: はい。佛教大学社会学部現代社会学科2回生の松本彩と言います。よろしくお願いいたします。
絹: 彩さん、エピソード2は何から行きます?やっぱりこの扉ですね。
松: はい。このKYO-DENTのメインとなるポスターの画像を見ていただきたいのですが、是非これを聞いていただいている皆さんも検索して見ていただきたいと思います。
この黄色いポスターの中にスマホが扉になって、「せっかくの京都。ちょっと覗いてみませんか?」という言葉と共にある画像なんですけど、これがすごくこのアプリのコンセプトにぴったりで、やっぱり自分自身もそうだったのですが、大学に入って何をしたらいいんだろうとか、何かきっかけが欲しいとか、そういう人たちって、意外とたくさんいると思うんです。そういう人たちにとってこのアプリがきっかけになれば、たった1つのスマホから大学の色んな選択肢の幅が広がればという気持ちで、このアプリを作ったし、このポスターを作ったんです。
 
絹: リスナーの皆さん、ラジオで画像を想像するのって、無茶言うなという話ですが、イメージしてください。黄色いA4のポスターのところに、KYO-DENT 2020.3.26リリースというタイトルのチラシがあると。背景は黄色い無地なんですけど、その真ん中に扉を開けるところをイメージしてください。扉はスマートフォンなんです。スマートフォンにノブがついていて、それを回してカチャっとやると次なる世界に行くよと。このKYO-DENTは「Kyoto」と「student」を縮めた造語?
松: はいそうです。「Kyoto」「student」を掛けており、京都の学生に使っていただけたらということで、この名前にしました。
絹: 松本彩さんは、アプリのコンセプトと言うか、明示しているものは扉だということに、一番ワクワクされていますね?
 

●大学生になったものの、何をすればいいのか…

松: そうですね。自分自身がこのアプリ開発プロジェクトが扉となったというか、大学生になって、最初何をすればいいのか、何かやってみたいけど、4年間ってあっという間で何をしたらいいんだろうという時に、アプリ開発プロジェクトのポスターを見て、それがきっかけになって、ここに飛び込んでいったんです。その飛び込むきっかけがこのアプリ開発だったので、アプリの中で何かできないかなと思ったのがこういう形でした。それこそアプリの中に色んな学生団体だとか、色んなプロジェクトだったり、色んな京都の学生のための情報が詰まっていて、みんながたくさんある中から選択肢として選べるというのが、このアプリの魅力だと思います。
本当に自分で選択肢を見つけていくって、すごく難しいんですよね。でもたくさんの選択肢が、行政の方たちが私たちに提供してくださるのを一気に見られるというのは、すごくメリットがあるなと私自身思いますし、本当に学生に使ってもらいたいなと思っています。
絹: リスナーの皆さん、お気づきですか?松本彩さん、すっごく力が入っていますよ(笑)。
それでね、利用対象が大学コンソーシアム京都加盟大学に在籍する学生で、しかもこれはニクいなというのは、日本語・英語2か国語対応と、やるじゃないですか。それから構成メンバーは8大学から12名、うち2人が留学生、京都医療科学大学、産業大学、京都大学、文教大学(さっきの倫太郎さんですね)、同志社大学、佛教大学(これが彩さん)、立命館大、龍谷大学ということですね。
ちょっと質問ですけど、プロジェクトチームの活動は12月で終わってますけど、まだまだお2人、このアプリの行く末に関わろうという気持ちはありますか?
松: ありますね。やっと出来上がったところと言うか、ここからまたたくさんの学生の方が使ってくださって、またどんどん改善点が見えてきているところなので、それを自分自身も開発メンバーとして見届けたいところがありますし、最後まで責任をもってやり遂げられたらなと考えています。
 

●安心して使えるアプリです!おススメは…

絹: すばらしい。そしてすごく色んな機能を持っているアプリケーションのようですが、松本彩さんが一番好きな「この機能がお勧め!」みたいなところを紹介していただけませんか。
松: 「京のコト機能」というので、学生向けの情報配信をしている機能があるんですけど、京都市さんだったり、大学コンソーシアム京都さんなど、学生向けのニュースを配信しているんですけど、やっぱり大人の方たちが配信してくださる情報であり、なおかつ行政なので、安心して見られるというところも魅力的で、自分たちで情報を取捨選択していくのって、結構難しいんですけど、安心と言うのは学生にとってすごくいいかなと。
絹: ある程度、総合企画局を中心に、それぞれの部局がスクリーニングして、いい加減な情報は排除して「これいいね」というものが配信されるということですね。
例えばうちの会社、公成建設の「インターンシップでネクスコの高速道路の城陽高架橋の工事を見に行きませんか」とか…。
あるいはバードマンラリーって聞いたことある?鳥人間コンテスト。あれのプラットフォーム、発射台をうちの会社で40年以上つくり続けているんですけど、「その現場、本番前に見ます?」みたいな情報をもし総合企画局に寄せたら、ちょっと見て、「この情報、やめとこか(笑)」なんていうプロセスがあるんやね(笑)。はい、すみません(笑)。どうぞ。
松: このアプリを最初に開発した時に、難しいと感じたのが、行政のアプリだけど学生が魅力的に感じるというのが、意外と結構難しくて、ただそこをいいとこ取りしたんじゃないかなと感じていて、学生が何か情報を求めていて、でも安心した情報を行政だから得られるというところで、これはやっぱり一番使いやすいのではないかなと思っています。
 

●お得情報の発信もあります!

絹: もう1つ、好きな機能は何ですか?
松: お得情報を発信している機能がありまして、「お得!機能」というものなのですが。
絹: おお、やっぱり女の人のお得情報って、うちの嫁さんも好きそうやわあ。
松: キャンパス文化パートナーズ制度とか、学割とか、学生の間にせっかくだから京都をたくさん見て知りたいけど、やっぱり学生なのでお金があんまりかかるのも…というのがここで色んなものを使っていただいて、京都を満喫していただけたらというので、ここは推していますね。
絹: ここでもう一度倫ちゃんに入ってもらいましょうか。
大: じゃあ僕が出て、倫ちゃんに代わります。
 
  (キャンペーンは終了しております)
 

■エピソード3 アプリ開発者としてお伝えしたいこと

●KYO-DENTをきっかけに、新たな一歩を踏み出してください!
絹: さあ、それではリスナーの皆さん、エピソード3という形で収束に向かいますが、さっき2人に喋ってもらって、本当に短い時間だったけど、アプリケーションを紹介してもらいましたね。他にもう少し、リスナーの皆さん、あるいは学生さんに伝えたいこと、地域のおっちゃんおばちゃん、じいさんばあさんに伝えたいこと、それぞれ一言ずついただけませんか。
松: やっぱり私自身がそうだったのですが、大学生活何をしたらいいだろうとか、何を始めたらいいだろうと、すごく皆さんこれから不安になるでしょうし、2回生や3回生の方でも、何かやっていれば良かったかなとか、そういうことがたぶん色々あると思うんです。このKYO-DENTがきっかけとなって、何か踏み出してみようと思えたらいいなと、そういうきっかけがたくさん詰まったアプリだと思うので、これを見てきっかけにして、何か大学生活を踏み出していただけたらと思っています。
 
 

●KYO-DENTを通して、地域の方々とつながりたい

園: 今言っていただいた学生目線としては本当にそうで、後悔して欲しくないです。たった4年間なんですよ。人生の中で。だから僕たちは一年生の時からこういうことに関わる事ができたんですが、早めに色々な事が知れるアプリにしていきたいと思うのと、やはり地域の皆さんとも関わっていきたい、縦のつながりも本当に増やしていきたいと思っているので、人口が減っていく、高齢化していく社会の中で、いかに学生が地域の中に入り込んで、色々共助することができたらなと思っています。
絹: 倫太郎さんは良いキーワードをくれました。共助、共に助け合うと書いて共助と読みます。このアプリケーションを学生さんに伝えるだけじゃなくて、私たちのようなおっちゃんおばちゃん、じいさんばあさん、長く地元にいる大人たちがいかにこのアプリにアクセスして、これを扉にして学生さんたちとつながるかというようなことも大切になってくるね。
園: そうですね。本当にそう思います。僕も地域で色々やっているので、このアプリを通して、このアプリは学生のためなんですが、色々なルートを使えば関わる事ができると思っているので、そういうふうに幅を広げていきたいと思っています。
 

●KYO-DENTと思い描く未来

絹: もしすごくこのアプリが有名になって、色んな事が起こるとして、近く起こりうる未来みたいなことを短く「きっとこんなことが起こるぜ」みたいなことあるかな?
園: 今さっき、僕が0-1という話をしたんですけど、本当にまだ1なんですね。リミッターはないと思っているので、100がゴールとは限らないんですけど、どんどんみんながつくりあげていく過程で色々なプロジェクトが起こって、そういうのが社会課題となっていることであれば、色んな大学の学生と関わる事ができるので、プロジェクトが起業に代わって、起業から事業としてうまくランニングしていくことができるようなことが生まれていくのではないかなと思っています。
絹: いいですねえ。それじゃあ、最後私がまとめを引き取るとして、今、勝手な思い付きですけど、河原町御池にQUESTIONビルという新しいビルがあります。あそこにStudents Labというプラットフォームみたいな学生のたまり場もできています。
園: 行きました!
絹: QUESTIONビルとこのアプリが連携する未来が、なんとなく妄想として私の頭に沸いております。それからコミュニティステップスというでっかい階段教室みたいな面白いセミナールームがありますが、あそこで夜な夜なアプリを介して、リアルとオンラインで学生と地域の人たちがミーティングしているという未来もなんとなく妄想されてきます。
リスナーの皆さん、いきなりよくわからない話をしてしまいましたが、学生たちにきっかけを渡して、京都市の総合企画局 大学政策担当の皆さんは面白い仕事をしています。このスマートフォンが扉になっているという絵に象徴されるように、学生たちはひきこもるのではなく、京都のまちに一歩二歩と踏み込む思いを持っておられます。その受け皿として京都市民はいかに受けるか。これは京都の先人たちがずっとしてきたことです。若い人たちを大事にすることで、新しいものを歴史の上に積み重ねる。それが我がまち京都のはずです。是非KYO-DENT、アプリケーションをダウンロードのうえ、ご協力を賜りたいと思います。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。倫さん、彩さん、そして大久保さん、小尻さん、ありがとうございました。
全: ありがとうございました。
(KYO-DENTアプリケーションのダウンロードは上記よりお願い致します!)
投稿日:2021/01/21

第161回 ・さとのやま保育園ってご存知ですか?~ヤキニク屋が作った保育園って何?

ラジオを開く

遠: 遠藤 久子 氏(さとのやまほいくえん 園長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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      (遠藤 久子 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は、当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストはお一方、妙齢のご婦人をお呼びしております。京都北山、焼肉の南山さんからお越しいただきました「さとのやま保育園」園長先生、通称えんちゃん、遠藤久子さんです。よろしくお願いします。
遠: よろしくお願います。
絹: 遠藤さんには「さとのやま保育園の今」ということを、後々ひも解いて頂きます。
今日の番組のタイトルですが「さとのやま保育園ってご存知ですか?~ヤキニク屋が作った保育園って何?」と題してお送りいたします。
遠藤さんにお話しいただく前に、ちょっと私、露払いをいたします。「さとのやま保育園」、実は2年前に取材に行ったんです。企業主導型保育園に挑戦されて、当時の社長さんが楠本貞愛(くすもと ていあい)さん、たぶん年回りは私くらいか、少し上くらいで、すごく感じのいい方で、企業が主導する保育園をやりたいということに惹かれて取材をして、2年経ってしまいました。その後どうなっているのか、2年ぶりに最近おじゃましまして、遠藤さんとも再会しまして、「なんで楠本貞愛会長じゃなくて、私なんですか?」と聞かれましたけど(笑)。
ではマイクをえんちゃんこと、遠藤さんにお渡しして、エピソード1に移りたいと思います。ご存じの方はご存知、でもまだご存じでない方のために、「ノートルダム小学校の北側に、保育園ってあったん?」という話をお送りします。
 

■エピソード1  そもそも「さとのやま保育園」てなに?

●さとのやま保育園は焼肉屋がつくった保育園です
遠: はじめまして、「さとのやま保育園」園長のえんちゃんです(笑)。「さとのやま保育園」はたぶん日本で1つかなと思うんですが、焼肉屋がつくった保育園です。たぶん色んな企業さんが保育園をつくっているとは思いますが、きっと焼肉屋はうち一軒かなというところですね。
絹: その確率、めちゃめちゃ高いと思います。なんで2年前、楠本貞愛社長はそう思われたんでしょうねえ。
遠: その当時、焼肉南山の職員が結構結婚が多くて、子どもを出産して、当時の社長である貞愛社長が従業員の子どもを子守しながら、従業員に働いてもらっていたという時期が結構あったようで、たまたま従業員の焼肉パーティーを3階のテラスでやった時に、子どもたちが走り回っていて、その姿を見て、「もう絶対にここは子どもが走る姿が一番似合う」と社長が思ったようで。
絹: 手元資料で、京都移住計画の人たちが作ってくれた「食を通じた社会づくり」という記事を読んでいるんですけど、南山さんのレストランの日本家屋の移築したやつ、茅葺の屋根のいい感じのレストランの隣にビルがあるんですよね。4階建てのビルの、「さとのやま保育園」はその3階にある?
遠: 3階と4階です。
絹: だから北山通に面して、ビルの3階と4階に保育園があるんですよ。
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京都移住計画ホームページ「食を通じた社会づくり(前編)」より転載)
遠: その子どもたちの姿を見た時にそう思って、保育園を設計してくださった方が新潟にいるのですが、その方が代表と出会った時に、貞愛代表が思う保育園のコンセプトとすごく近い保育園が鹿児島にあるよということを聞いて…。
 

●お手本は、鹿児島の「ひより保育園」です

絹: 白水さんの保育園、なんていう保育園でしたっけ。
遠: ひより保育園」です。鹿児島にある。
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(鹿児島県霧島市にある「ひより保育園」ロゴ ホームページより転載)
絹: フットワークが軽い社長さんやから、飛んで行かはったらしいですね。
遠: そうです(笑)。それを聞いてすぐに鹿児島の「ひより保育園」さんに見学に行かせてもらって、子どもたちが楽しく料理していたり、楽しく作ったものをみんなで食べていたりということに、代表がものすごく心を打たれて、「私、この保育園やる!」となって、やると決めてから半年間、ずっと走り回っていました。
絹: めちゃめちゃ早いんですよ。鹿児島のその「ひより保育園」を見てそこから半年でつくってしまうんですものね。当時、その話を聞いて、私、口あんぐりしていました。それから視察に行かれた「ひより保育園」の子どもたちの表情がまた…。小さな子どもたちが料理のボウルでまぜまぜしていたり、お味噌を仕込むのを子どもたちが保育士さんたちと一緒にやっていて、にっこにこしている写真がいっぱい載ってるんです。それを当時の社長は見て、「これだ!」と思われたんでしょうねえ。
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「ひより保育園」ホームページより転載)
遠: そうですねえ、もう「これだ!」という思い、1つですよね。
絹: それで2年前に京都北山南山の隣のビルにつくってしまわれましたと。あっという間に。当時その副園長格で白水さんという若い男性が鹿児島の「ひより保育園」から時々出張してきていましたよね。彼の話をインタビューしたのを覚えているんですけど、彼も保育の専門家ではなかったんですよね、確か。それで今日のゲストで来てくださっている、えんちゃんこと、遠藤久子さんも保育士資格を持ってなくて園長になっちゃったんですよね。
 

●実は私、保育士の資格持っていません

遠: そうです。そうです。私は元々北海道出身なんですけど、北海道に住んでいた時に1年間だけ保育園で働いていたことがあったんですけど、ちょっと違う経緯があって、保育業界から離れたんですけども…。
絹: 手元資料によると、北海道旭川市に住んでおられた頃、保育園で働いていたことはあるけれども、そのあとはサーフィン大好き、横乗り系プロショップのオープニングスタッフとか、スポーツ系のところに行っちゃうですよね。で、店長さんとして15年くらい働かれて、結婚をして京都に来られて、それでまたスポーツショップに入られて、すごい売上を上げた経験もあるんでしょ?
遠: そうなんです。へへへ。
絹: だから腕があるんですよ。
遠: 好きなんです。
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絹: それでまた、今度は全く違う「さとのやま保育園の園長をやってよ」と当時の楠本貞愛社長に口説かれて、「いや」と言わずに「やるわ」と言ったのはなぜですか?
遠: 「ひより保育園」の白水園長が「僕も保育資格ないよ」と言うのを聞いて、「ええー」と。保育の世界ではこういうことがあるんだという保育のベテランさんが何年もかけて取得して園長さんになるんだなというイメージがあったので…。
絹: ですからえんちゃんこと、遠藤久子さん自身が型破りのレアケースですよね。さとのやま保育園自身が、焼肉屋さんがおつくりになった企業主導型保育園としてはほんとにレアケース、今日は非常に特異点のゲストがここに来られています。
 

●おかげさまで園児の数はどんどん増えています

絹: 企業主導型保育園のサポーター営業まで、業務は多岐に渡りますと。親子入園面談からスタッフの採用までって、全部これ、遠藤さんが関わっていらっしゃいますよね。
遠:  はい。全てが初のお仕事で。
絹: よう2年間できましたね。
遠: そうですね。もう走り続けています。
絹: 漏れ聞きますと、初年度よりも今3年目ですけど、子どもさんの数、増えているというじゃないですか。
遠: 11人スタートで、今34名になりました。
絹: リスナーの皆さん、ここのところ聞き逃さずにちょっと耳をそばだてていただきたいのですが、それって、周りの地域の人たちが「ええー、焼肉屋さんがそんなんをつくって、保育園できるの?」という評価ではなくて、「ここ、ええわ、おもろいわ」と言うてるのの裏返しでしょ?園長先生に聞きたいのは、親御さんたちのつぶやきをいくつかお耳に届いているじゃないですか。そんなのを1つ2つ紹介していただけませんか。
 

■エピソード2 さとのやま保育園の今 ~ ちょっと変わった保育園です

●0歳から食材に触れています
遠: やっぱり食をすごく大切にしているんですけど、「お家ではあんまり上手に食べさせてあげられないけど、さとのやまの食材を使った給食食べていたら安心」みたいな声だったり…。
絹: ということは、本当に食材なんかも安心・安全であったり、美味しかったり、ひょっとしたら一緒に作ったりするのかしら。
遠: そうです。0歳から食材に触れて、3歳くらいになるともう包丁を持って、0歳から5歳までみんなそうですけど、みんな自分たちが食べる給食のお手伝いを活動に取り入れながら…。
絹: 今、さらっとすごいことをおっしゃいましたよ。3歳児が包丁を持ってと。おままごと用のプラスチックの包丁では、どうもなさそうですね。
遠: 本物のよく切れる包丁ですね。
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さとのやま保育園 Facebookより転載)
絹: それ、親御さんによっては「なに危ない事させてるのよ!」と言うような人も…。
遠: いますね。
絹: でもそういう人もいるけど、全体的には「ええやんか」という声が多いわけでしょ。
遠: そうです。多いですね。逆にお家だとお母さんはハラハラして、一緒に包丁を持って食材を切るなんて、「やめて!」となってしまう。お家ではなかなかできない事を、保育園の仲間と楽しくやる活動を通して、楽しんで調理していますね。
 

●旬のものを食べて元気になる

絹: 今、こういうエピソードを聞かせていただきますと、「さとのやま保育園」は焼肉屋さんがおつくりになった保育園だけあって、「食べて元気になる」ということにすごくこだわっていらっしゃる節がありますね。
遠: そうです。春夏秋冬、季節を通して旬のものを体に取り入れるということをすごく大切にしているんです。旬なものというのは栄養がいっぱいなので。そういうところで免疫力や抵抗力もものすごく高くなるので、去年はインフルエンザになった子が一人もいなかったんです。そういうのもすごくうれしいなって。本当に食べたもので体がつくられているんだなと思います。
絹: 旬なものを食べると抵抗力がついていいと読んだり聞いたりしますけど、実際にそれを平場でやり遂げているというか、インフルエンザが去年は1人もでなかったと、これもさらっとえらいことを言うてはるなと(笑)。
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京都移住計画「食を通じた社会づくり」記事より転載)
 

●今日やることは園児が話し合って決めます

絹: それで手元資料にまた目を落としますと、“初めに九州の鹿児島のひより保育園に行った時に、驚いた”とあります。当時の楠本貞愛社長も、もちろんえんちゃんこと、遠藤先生も「ひより保育園」に行っているでしょ?
遠: はい。何度か研修に行っています。
絹: 一番驚いたこととして…。仮に保育園や幼稚園をイメージします。先生が前に立って、「今日は〇〇のお遊戯します。はい、みんな並んで」というイメージを持ってしまうけど、一番驚くのは“今日何するか、保育士の先生が決めない”と、書いてあるんです。朝の会で子どもたちが話し合って決めていると。「今日は何する?」「〇〇やりたいな」と自分たちの考えを子どもが発言する姿を見られて、ショックを受けて帰ってこられた。
遠: そうなんです。びっくりしました。
絹: ということは、京都の「さとのやま保育園」でもそれは踏襲されているんですか。
遠: そうです。本当に私たちが大切にしているのは、子どものペースを大切にするということです。それを全員でやっているんですけど、大人が先に「〇〇するからね」とか、モノを用意して「これをやります」と、そういうのが決まってしまっているのは、どうしても大人主導じゃないですか。
絹: 教育学の専門家が今の話をお聞ききになったら「おおっ」というふうになるんじゃないでしょうか。実は最新なんです。僕は大学の一般教養くらいしかないですけど、今、日本でなされているような、カリキュラムを組んできちんとお行儀よく座ってというのではなく、モンテッソーリ教育だとか、フリースクールだとか、カリキュラムを作らない、子どもたち、生徒たち、学生たちが学びたいことを自分で学ぶ、それを教師が手助けするというものです。初めはカリキュラムがないからヨタヨタしているけれども、卒業する頃にはものすごいスピードで進んで、カリキュラムのある普通の学校よりも生徒たちの学習レベルが高くなるという学校が、世の中には、特に海外に多いらしいですね。それの保育園版じゃないですか。まさに。
遠: はい。がんばっています。
絹: ですから本当にすごい実験を2年間続けてやっていらっしゃるところが、目の前に、北山通にあります。遠藤さん、もう少し日々さとのやまで起こっているエピソードをご紹介いただけませんか。
 

●大人が働いている姿を見せる

遠: 焼き肉屋のつくった保育園というところで、一番素敵なことは、保育園があるビルの地下1階には「ギューテロワール」という肉職人を育てる施設があって、実際に普段焼肉で出すお肉を、毎日切っている場所でもあるんですけど。
絹: はい、私も行きました。普通、南山さんは、一頭の牛をご自身の所で精肉と言いますか、切り分けて、それは普通は舞台裏でやられることだけど、ちゃんとガラスの見える所で、子どもたちがそれを見て、「あ、牛が、こういう風にお肉になるんだ」と見える空間があるんですよね。
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(「ギューテロワール」の様子。京都北山 南山 ホームページより転載)
遠: そうですね。そこがすごく大切なんですけど働く大人を子どもたちが近くで見れるという、そんな環境がすごく素敵だなと。私も保育園やってみて思うんですけど、普段お父さんお母さんの働いている姿って、なかなか子どもたちは見られないと思うんです。自営業なら見えるかもしれないんですけど。そういうなかで色んな大人が真剣にお仕事をしているところを見られるというのが、もっともっと大人になった時に、選択肢として出てくるとうれしいなって。
絹: 楠本貞愛会長(当時の社長)の思いとして、バックステージもスポットライトを当てて、子どもたちに見せちゃおうと。あんたたちが食べているのは、こういう作業で生まれてきているんだよと。で、子どもたちの目があったら、職人さんたちも「どや!」みたいな気持ちになるじゃないですか。
遠: なりますね(笑)。
絹: 僕はお話を聞いていて憧れてしまいました。やっぱり我々の建設現場でもなかなかわが子たち、小さい子たちにその姿を見てもらうことは難しい。でもなんとか見てほしいという思いは一緒ですものね。
 

●「さとのやま食堂」開催しています!

絹: 今、「ギューテロワール」という南山さんの本社ビルの地下にある所をご紹介いただきましたけれども、ここでのイベント、直近で行われることについて、少し園長先生にお話しいただけませんか。
遠: 毎月第二第四土曜日の11時半から1時までなんですけど、普段私たち大人も子どもも、美味しくいただいている給食を、地域の皆様にも食べていただきたいなと思って、「さとのやま食堂」を開催しているんです。その時には食育チームが作ったお惣菜も並べて、是非お家でも食べていただきたいなというのと…。
絹: 「そこへ行きたい!」「さとのやま食堂へ行きたい!」と言ったら、どうしたら行けますか?
遠: お電話でご予約になるのですが075-711-7511までお電話ください。
絹: 今、こういうご時世ですから、完全予約制です。
遠:  そうなんです。ちょっと席数を減らさせていただいています。
絹: 事程左様に、さとのやま保育園さんは地域に開かれているようです。地域の方たちに「来てね」と。それから12月26日から30日は南山歳末感謝祭でしたっけ。これは地域のお店がマルシェを開かれる?
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(詳しくはヒトヨシストアインスタグラムへ)
遠: 7店舗のお店が集まって商品が並びますので。またお肉もお安く買える期間になっています。
絹: 第二第四土曜日は特価の日。地下の「ヒトヨシストア」に行かれると、なかなかいいかもしれません。実は取材のために南山さんに1~2度ご飯を食べに行きました。やっぱりこういう子どもたちを育てる保育園のスタッフがそばにおられるというレストラン、なんかちょっと違うなという雰囲気がありました。落ち着いているというのか、本当に色んなものを大切にされているなということがレストランの、あるいはシェフの、あるいはフロアスタッフの行動からも、それから茅葺のあのしっとりした佇まいからも伝わってくる気がいたします。
リスナーの皆さん、是非、「焼肉屋さんがつくった保育園って、どんなんだろう」とご興味のある方はお調べいただき、そして「さとのやま食堂」、これは一見ではなく、一食の価値はありそうです。ぜひ予約のお電話をして、買い物にもいいかもしれません。ということで、終わりの時間になってしまいました。今日は楽しかったです。ありがとうございました。
遠: ありがとうございます。
絹: この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。えんちゃんこと、遠藤久子さん、ありがとうございました。
遠: ありがとうございました。さようなら。
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投稿日:2021/01/14

第160回 ・京都信金さんの新しい建物QUESTIONってご存知ですか?~様々な人の「?」が集まる場所

ラジオを開く

森: 森下 容子 氏(京都信用金庫 QUESTION 館長)
柳: 柳井 秀哉 氏(京都信用金庫 QUESTION)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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 (森下 容子 氏 ・ 柳井 秀哉 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介から参ります。お近くから来ていただきました。新しいビル“QUESTION”の館長、森下容子さんです。
森: 今日はよろしくお願いいたします。森下と申します。
絹: そして同僚と言いますか、部下と言いますか、奴隷?(笑)
森: いやいや、同僚です(笑)
絹: 柳井秀哉さんです。
柳: 柳井と申します。よろしくお願いいたします。
絹: ここは京都三条ラジオカフェ、三条通寺町かどのスタジオからお送りしておりますが、QUESTIONさんのビルは歩いて3分?5分?
森: 3分くらいでしょうか。河原町御池の南東角です。
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QUESTION Facebookより転載)
絹: 燦然と輝くQUESTIONビル。これが今、私がすごく心惹かれる場所なので、おいおいQUESTIONビルなんぞやというところをお2人に解き明かしていただきます。
そして番組タイトル、テーマを申し上げます。「京都信金さんの新しい建物QUESTIONってご存知ですか?~様々な人の「?」が集まる場所」と題してお送りいたします。
さて、ゲスト紹介の第二弾、例のごとく進行の絹川が手を抜きます。ではまず柳井さんに、メインゲストの森下館長って、どんな人ですか?その人となりをリスナーの方たちに短くお伝えください。
柳: はい、他己紹介と言われて、ちょっと恥ずかしい部分はあるのですが…。今日はラジオということで、気合が入って、ピンク色の服装で来ていただいてまして、QUESTION始まって以来の女性館長ということで、僕たち9名の長としてバイタリティ―溢れて、率先して第一線で僕たちを引っ張っていっていただいております。思ったことは全部、上にも言っていただいて、僕らはすごく助かっております。
絹: 怖そうですねえ(笑)。
柳: 僕らには優しいんですけど、上には結構言っていただくので、有難いです。
絹: 上の管理職にすると怖いかもねという(笑)。今の短い紹介の中でも1つ大切な情報が取れました。QUESTIONのスタッフ、京信さんのプロパースタッフは9名であると。9名のチームがあの大きなビルを動かしているということを、リスナーの皆さん覚えておいてくださいね。
それでは今度は、森下さん、同僚、部下、奴隷(笑)の柳井さんとはいかなる人物か、短く述べよということで、よろしくお願いします。
森: 柳井さんはもちろん京都信用金庫の職員でもあるのですが、2年前から経済センターに出向もしておりまして、今QUESTIONでやろうとしていることを、先陣を切って1年間、外で経験をしてきた実力者でもあります。
絹: ああ、経済センターで僕が初めて柳井さんにお会いしたのを、僕は忘れていて、柳井さんは覚えたはった…。
柳: 覚えてました。はい。
森: 柳井さんは起業家の方や学生のアツい思いをくみ取ることができる方で、さらに剣道の達人でもあるということで、チームのリーダー的な存在で頑張ってくれています。
絹: 棒を持たさないようにしましょうね(笑)。無事、ゲスト紹介が終わりましたので、エピソード1に入っていきたいと思います。
 

■エピソード1  そもそもQUESTIONって?

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●このプロジェクト、4年前から始まりました
森: 河原町御池に、この11月2日に新しくQUESTIONというビルを京都信用金庫のほうでオープンをさせていただいきました。まだ1ヶ月経っていないという状況なのですが、元々はその場所に京都信用金庫の河原町支店がございまして、4年以上前になるのですが、老朽化に伴って建て替えをするということになりました。一時麩屋町の方に移転をして営業をしているさなか、そこの場所で新しい京都信用金庫としての取組みをしたいということになりました。どういうビルを建てるのかというところから、結構信用金庫の中のプロジェクト的に進められてきました。
絹: 先ほど事前の打ち合わせの時に、4年前の時に柳井さんはいなかったという話をしていましたけど、4年って、プロジェクトにしたら結構長いプロジェクトですね。
森: そうですね。私も4年前にはそのプロジェクトには参加していなかったのですが、その当時の若手の職員が河原町御池という場所にどういったビルを建てたいのか、どういったコミュニティを生む場所にしたいのかというところから話し合いをしまして、今の形の原型ができています。
 

●銀行とコミュニティづくり

絹: リスナーの皆さん、お気づきになりましたか?今、森下さんのコメントの中にQUESTIONビルの性格を象徴するような言葉が1つ混じっていました。「どういうコミュニティをつくりたいのか」と。銀行マンの口にする言葉とはちょっとかけ離れているなと、今、びっくりしたんです。「コミュニティをつくりたいか」と若い行員さんたちが話しているわけですよね。
森: 金融業なので、もちろんお金をお預かりしたり、お金をお貸しするということが本業ではあるのですが、今はやっぱり預けるとかお貸しするだけではなくて、人と人とか、事業と事業を繋げるような事が金融機関にも求められていますし、その決済機能だけではなくて、信用金庫がお客様と伴走して課題解決をしていく課題解決機能というのが、やっぱり今は未来型の地域金融機関として求められていることなので、それを体現していく場所としてQUESTIONができているというところです。
絹: 私にはショッキングな発言と言いますか、自分は金融機関は何たるかということについて、常識にものすごく縛られているなと。「あれ、なんか違う」みたいな、「すごい何かをやらかさはるんちゃうか」みたいなワクワク感があって、お2人に是非ともゲストにと思った次第です。まだ2~3度しか会っていないんですよね。リアルで2度、オンラインで1度ですけど、でも面白い。さあ、その私が「なんかすごい」「面白い」と思っているのは何なのでしょうということで、そのQUESTIONの成り立ちについて続けていただけますでしょうか。
 

●QUESTIONのコンセプト

森: QUESTIONというのは、ビルの名前からしてそうなんですが、1人では解決できない問いや課題に対して、様々な分野の人が集まって、みんなで寄ってたかって、その問いや課題の答えを探しにいく場所というのをコンセプトにしています。「何かを始めたいという気持ちを持っていても、なかなか勇気をもって行動することができない」そんな言葉をよく私たちも耳にするのですが、QUESTIONはそれぞれの問いや課題を互いに持ち寄って、そんな思いをぶつけあいながら、課題を解決できるような場所にしたいなということを考えています。
絹: 実現できたらすごいじゃないですか。でも一般のリスナーの方はイメージが想像しにくいかもしれませんので、例えばどんな問いが持ち込まれるのか、あるいは持ち込まれたのか、それを聞いてくださる方たちというのはどんな人たちがいるのか。そのテーブルを囲んで、寄ってたかって「ああでもない、こうでもない」というような知恵者がそんなにいるの?等々、様々な疑問がわいてきますが、それを柳井さん引き取っていただけますか?
 

●こんな人たちがあなたに寄り添います

柳: はい!問いというところで、最初のコンセプトでいくと、起業家さんの課題であったり、何か問題を持ってきていただかないといけないかなというところを想像されると思うのですが、僕らも最初はそうだったんですけど、そこの問いに関しては「なんでもいいよ」ということで、母性で受け止めようということになっています。
で、その問いと言うか課題を持ってきていただいて、私たちコミュニティマネージャーが京都信用金庫で9名、あとはインターン生ですね、現役大学生の2回生3回生が中心になるのですが約5名、あと実は京都信用金庫以外にも外部で関わっていただいているパートナーの方がおられます。株式会社ツナグムさまということで、移住促進をされている団体であったり…。
絹: 田村さんたちですね。
柳: あ、そうです。田村さんです。であったり、NPOグローカル人材開発センターというところで、企業と学生さんの有機的なつながりをやられているところだったり、様々な京都信用金庫以外の外部団体も関わっていただいております。
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㈱ツナグム notoサイトより転載)
絹: 確か、今そうやってパートナー企業の皆さんがツナグムさんに、グローカル人材開発センター、それからクロステック・マネジメントさんなど、その他にも周りに40社くらいでしたっけ?
柳: 一番関わりの深いコアパートナーは私どもも含め4社、それ以外に外枠でパートナーという立ち位置でオペレーションまでは伴わないものの伴走していただく方が4社ほどございます。そのまた大枠にアソシエートパートナーということで、起業家の方を中心に専門家集団ですけど、約50社、協賛と言いますか、サポートいただいています。
絹: あ、増えていますね!
柳: そうですね、はい。200社が目標で、ご協力していただける先を私どもの方でお声掛けをさせていただいている状況です。そのような方々が問や課題のある方々に寄り添っていただいて、一緒に具現化と言いますか、アクションに移せるようなサポートをする場が、QUESTIONかなと思っております。
   

●必ずしも行動に移さなくてもいいんです。気づきを、出会いを、見つけに来てください

柳: ただ、アクションに移せなくてもいいかなと思っておりまして、そのなかで「やっぱりやめとく」となっても何か気づきに代わったり、その中でアソシエートパートナーの方と一般の方とが出会う場が創造できれば、私たちは1つの成果かなと思っております。
絹: 出会いの場でもある。それからコアパートナーが4社、そしてパートナー、アソシエートパートナーと、三重の円をイメージしていただけましたでしょうか。9人のコミュニティ・プロパー・マネージャーは京信マンです。そのそばに学生インターン、その外に三重線の円をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。我々一般人は1人で抱えているにはこの問題はデカいと。でもなんとかしたい。これ解決したら京都が住みやすくなる、息苦しさがちょっとマシになるかも…、でも行政に相談するのもなあというのが、もしあったら勇気を出して、「これ私の“?”ですねん」と言って、森下さんや柳井さんに相談したとしましょか。そうすると何が起こるんですか?
 

●まずは「QUESTION POST」という手もあります

森: 私たち運営しているのが、京都信用金庫、ツナグムさん、グローカルさんなどと一緒に協力しながら、その周りにいらっしゃるパートナーさんやアソシエートパートナーさんと一緒に課題解決のためのプロジェクトをつくったり、仲間集め、共感者集めということでセミナーを実施したりといったこともできますし、まず何か人に聞いてほしいというような事があれば、「QUESTION POST」というのがありまして、そこに皆さんご自身の課題とか問いとか好奇心等を投げていただきましたら、48時間以内に何かしらお答えをお返ししますということで、今、取組をさせていただいております。
絹: 私、本職は地元の建設屋ですので、自分の会社を運営するだけでも色んな課題を抱えています。それだけじゃなくて、ラジオのパーソナリティ的な事もしたり、あるいは(だいぶ前に終わりましたが)京都市未来まちづくり100人委員会の事務局もしていたことがあります。あの当時の事を思い出すと、一般市民から百数十名の人を公募で毎月集められまして、色んな課題について自由に話し合ってプロジェクト化していくという実験を京都市の総合企画局が行い、ノウハウを蓄積いたしました。これの民間版、さらにその企業寄り、学生寄りかもしれないなと。たぶん自分はそういう100人委員会で議論した記憶があるので、それで引っ張られたのかもしれませんね。その時は行政とどうするか、総合企画局の方が市民の課題に対して、「では〇〇局の〇〇さん、アドバイザーで入ってよ」と市民の中に呼んできて、法的な事、公的な事、一緒に助け合えることができないかみたいなことで、岡崎公園の辺りがすごく素敵になったことにお気づきではないでしょうか。あれは100人委員会の岡崎ホールディングスというチームが下絵を描いたものに、肉付けされたものだというふうに私は理解しています。一般市民のアイデアがかなり入った計画でありました。そういうものが今、京都では動きますので、十分そういう素地はあると。
   

●市民主導のまちづくり、ポートランドがお手本なんです

森: もちろん行政のお力というのは、すごく強いものだと思いますし、市民の声を聴かれる、情報が集まって来るということもあるかと思いますが、QUESTIONの方でも本当に一個人の方であったり、学生の方であったり、もちろん中小企業の方であったり、そこで働かれる従業員の方であったり、そういった色々な、様々な方のQUESTIONや課題に市民レベルで一緒に解決していきたいという、まちづくりという意味で、うちの理事長の榊田もよく言うのですが、ポートランドを見本にしているんですけど。
絹: すみません、ポートランドってどこでしたっけ?
森: アメリカなんですけど、アメリカ人が一番住みたい街ランキングでポートランドが選ばれた事があるような街でして、まちづくりの中で本当にタウンミーティングというのが市民レベルで行われて、行政主導というよりは、市民で自分たちの住みたい街をつくっていきたいというまちづくりをされるソーシャルな街があるんですけど…。
絹: ということはQUESTIONビルは京都版タウンミーティングの受け皿になるかもしれないということですね!
森: そうですね。そういう場所にしたいなと思っています。
絹: 偶然なんですけど、この小さなラジオ番組の名前が「まちづくりチョビット推進室」なんですね(笑)。昔からまちづくりという言葉に惹かれながらも反発を感じながらも、また惹かれていると。やっぱり自分たちが愛するまち京都を何かいいものにしたいという人とお近づきになりたいわみたいな感じですね。
 

●「QUESTION POST」はオンラインでも可能です

絹: さあ、もう少しイメージを固めていただくために、「QUESTION POST」でしたっけ、例えばこんなものが投げられましたよというご紹介は可能ですか?
柳: そうですね、細かいところまではともかく、ご紹介はできるかなと思っております。「POST」の方は会員の方が課題や問いを投げていただく場となっているのですが、実はオンラインで投げていただけます。なかなかリアルでは現場に来れないけれども、お仕事の合間にネットで書き込んでいただいて、それをお答えするという形です。その第一号は、1人ではちょっとなかなか解決できない、テーマを決めたいということだったので、そのテーマに対して学生さんも一緒にアサインしてもらえませんかというお話をいただきまして、なかなか一般の方で学生さんと繋がる機会というのはあまりないかなと思うんです。そんななか、学生さんも一緒に考えようよというのが第一号で今、プロジェクトとして生まれております。
 

■エピソード2 QUESTIONビルのこと

●5階で学生さんたちが対話の機会を待っています。
絹: そしてこの間始めて視察と言いますか、QUESTIONビルにお邪魔させていただいた時に、グローカル人材センターの人たちがいらっしゃる場所は5階ですかね、あそこはなんと呼べばいいんですか?
柳: STUDENTS LABになりますね。
絹:  学生さんがたくさんおられて、そこへ絹川さんみたいなおっちゃんが来て、色々話をしてくれはったらええんですわと。そういう出会いを学生さんは求めているし、課題を持った大人が寄って、学生と語り合うという場に育つといいですねみたいなことを、グローカルの方と田村さんがおっしゃってましたけど、私の翻訳の仕方が度を過ぎていますでしょうか(笑)。
柳: いえ、間違っておりませんね。そうなんですよ。学生さんが社会人と出会うというのも1つですけれども、学生さんも中小企業の社長さんであるとか、サラリーマンで活躍されている方と対話する機会があまりないと思うんです。そこで学生さんもその対話を通じて、何か気づきであったり、出会いが生まれる場所になればいいので、是非5階でアツく語っていただければいいなと思っています。
5階
(QUESTION(京都信用金庫)Facebookより転載)
 

●「コミュニティステップス」ではイベントやセミナーをたくさん開催していきます!

絹: 階段教室というと変ですが、京都市役所の方に向いて、ひな壇のような階段のような、すごい素敵な空間がありますね。あれはなんとお呼びになっているんですか。
柳: 名称が「コミュニティ・ステップス」になっています。
絹: 階段だからステップスですね。僕はこの間その上の方に座らせていただいて、階段の下の方の所にご講演をされる登壇者が座られて、オンラインとリアルと両方で発信されていましたね。
柳: ご参加いただいたのが、ちょうどイベントだったのですが、様々な方をお呼びしてこれからも実施していくつもりです。で、ちょうどリスナーの方でしたら、外からQUESTIONを眺めていただければ、その大階段が見ていただけるかなと思います。
絹: 森下さんと柳井さんたちが、もう息も絶え絶えになりながら、「QUESTIONは60%くらいの完成率ですけど、とにかく倒れるまでやります!」みたいな形で、どんどんどんどん夜な夜な悪だくみのイベントを発信し続けているという感じが見て取れますけど。
森: オープニングが11月だったので、11月12月にかけてコミュニティステップスを使った形が多いかと思いますが、イベントやセミナーをたくさん実施していきたいなと。そこで色んな方に参加をしていただいて、QUESTIONをまず知っていただきたいなというのもありますし、そこに参加していただくことで、今まで出会うことのなかった人たちが出会っていただいたり、知らなかったことに気付いていただいたり、そういった機会をたくさんつくっていきたいなと思っているので、京都で、京都府外でも活躍されている方をたくさんお呼びしてトークセッションという形でイベントをさせていただいております。
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(QUESTION(京都信用金庫)Facebookより転載)
 

●ノルマ撤廃―京都信用金庫の思い

絹: 私が初めて参加させていただいたQUESTION Nightには京都信用金庫の榊田理事長もお座りになっていました。実はひそかに尊敬していまして、なんかすごいと。コメントをノートにちょっとだけ書き取ったんですが…、
『「京信さんがやるビルって、これほんまに儲かるんでっか?」と言われるんです。でもね、銀行のミッションは完全に変化しています。京都の中小企業の役に立つことをやりたいし、やらねばならないし、世の中をより良くして役に立つことにこだわりたいんです。あちらもこちらもソーシャルに心が動く仕事ができるかというのを、銀行マンと銀行の中で話をし続けて、もう何年も前にノルマは撤廃しました。』(以上 榊田理事長のコメント引用)
ということでした。うわっと思いましたね。
柳: 私がちょうど営業に出ている時に、ノルマが撤廃されまして、本当にノルマがなくなって、お客様との対話の時間というのがすごく増えまして、よりお客様に寄り添って営業ができて、結果的にはお客様に満足度というのは高くなったのかなとは思いますね。
絹: リスナーの皆さん、30分でまとまるようなテーマではないんです。でもね、河原町御池のQUESTIONビルというのを、ぜひぜひ覗いてみてください。課題を抱えて何とかしようという連中が、特に若い層も、それ以上の層も、集まる傾向がある、ひょっとして京都の特異点と呼ばれる場所になる可能性を十分に秘めています。眼が利いている人は行政の人も既に注目をしておりますし、若い人は入り浸っているような学生さんもいます。ということで、もう一回タイトルを申し上げますと「様々な人の「?」が集まる場所QUESTION」ぜひご注目ください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。森下さん、柳井さん、ありがとうございました。
森: ありがとうございました。
柳: ありがとうございました。
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投稿日:2020/12/03

第159回 ・人とつながりのある住まいを作りたい~コレクティブ・ハウスというくらし方

ラジオを開く

浅: 浅野 哲生 氏(ねこレクティブ 代表)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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  浅野 哲生 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソード、特に隠れたエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のリモートゲスト紹介は、タブレットの中で小さいお顔が写っておりますが、浅野哲生さん。皆さん聞き覚えがないとは思いますが、ねこレクティブの代表です。浅野さん、よろしくお願いいたします。
浅: よろしくお願いいたします。
絹: ねこレクティブと言っても、何のことかたぶん皆さんわからないと思います(笑)。おいおいこれを解き明かしてまいります。そして本日の番組のタイトル「人とつながりのある住まいを作りたい~コレクティブ・ハウスというくらし方」と題してお送りいたします。さあ、これも難しい(笑)。では番組のタイトルについて、本日のゲスト浅野哲生さんから解説を。いきなりゲストに丸投げという形で、よろしくお願いいたします。
 

■エピソード1  コレクティブハウジングの可能性

●ねこレクティブはこんなことをしています 
浅: 改めて、ねこレクティブの浅野と申します。よろしくお願いいたします。
絹: ねこレクティブのねこはひらがなの「ねこ」、キャットです。コレクティブとねことを掛けた造語であります。
浅: 私どもは、ねことコレクティブハウスということで、ねこと人とのつながりのある住まい方として、コレクティブハウスというものを、もっともっと日本に、関西に、京都に広めていきたいなというお思いで活動を進めています。
絹: 現在、ねこレクティブチーム、私の情報ではメンバー構成約3名。この間始めてお2人とはお会いしました。
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     ねこレクティブHPより
 

●コレクティブハウスとは

浅: はい、そうです。コレクティブハウスというものが何なのかということを疑問に思う方もいらっしゃるでしょうから、まずそこから。コレクティブハウスは賃貸住宅です。各戸は水回りが独立した普通の賃貸のような住宅なのですが、それに加えてコモンスペースがある住宅です。
絹: リスナーの皆さん、イメージしてくださいね。ここ、実は重要なのですが、分譲ではなく賃貸です。借りられます。一部屋一部屋に水回り、ひらがなで言うとお風呂、トイレ、キッチンがそれぞれ自分の部屋にあります。それプラスアルファ、他の住人さんも一緒にいられるリビングみたいな、食堂みたいな、余計な部屋がついていると。コレクティブハウス、もうちょっと別の言い方ありますか。
浅: 居住者さんが、自分たちで自分たちの暮らしを作っていくような暮らし方をしているということです。例えばさっき共用部分にコモンルームがあると申し上げましたが、そこにはキッチンがあったりします。そのキッチンで当番制でみんなの食事を作ったりします。だいたい一ヶ月に一回くらい、当番を持ち回りでやっているようです。食べたい人は申し込んでおいて、当番が作った食事をコモンルームで食べたりできる。そのような生活の一部を共同化するような生活ですね。ちょっとイメージがつきにくいですかね。
絹: 会社の寮のちょっと豪華版と言うんでしょうかね。例えば独身寮や学生寮をイメージすると、自分の個室はそんなに大きくないから、水回りなんてほとんどないよね。でも二人暮らしとか、子育て世帯とか、三人とか四人でも暮らしていて、そういう空間はあるけれども、独身寮のように食堂のようなものもあると。でも独身寮のように、寮監さんみたいな人がいて、料理人さんが作ってくれるというわけではなくて、物好きにも、月に一回くらい、食事当番を順番に回して一食430円くらいで作ってもいいわよみたいな、そういう変わった連中が集まってくる…。
浅: 変わった連中なのかどうか、ちょっとわからないですけど(笑)。
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(コレクティブハウジング社HPより
 コレクティブハウス聖蹟コモンミールのクッキングと食事の風景)
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(コレクティブハウスHPより
 コレクティブハウス聖蹟の屋上では菜園を、地上庭では樹木や草花を育てておられます)
 

●こうしたくらし方、実は1つの潮流だったりします

絹: でも変わった連中という思い込みが実はそうじゃなくて、首都圏の方では確か2000年前後からじわじわと市民権を得ている暮らし方というふうに、なんとなく感じていますが、その辺はいかがですか。
浅: 関東の方では、NPO法人コレクティブハウジング社さんというところが企画・コーディネートされているコレクティブハウスが、それこそ2000年代からいくつもできています。実際に例えば子育て世代の方も住んでいらっしゃいますし、独身の方もいらっしゃいますし、高齢者の方も住んでいらっしゃったりします。色々多世代の方々が暮らしていらっしゃるという住まい方ですね。
絹: 私も少し予習をしてまいりました。コレクティブハウジング社、CHC社という東京のチームが2000年前後から実例を積み重ねておりますが、ブックレットと言いますか小冊子を作ってくださっていたり、新聞を作っていらっしゃったりします。それを読ませていただきますと、例えば古いマンションの2フロアを、ある大家さんが買い切られて、15家族くらいが一緒に住む、そんなコレクティブハウスをおつくりになられている事例が書かれていました。普通、賃貸で大家さんと言うと、浅野さんがさっき教えてくれたコモンルーム、食堂なんてつくらないで、できるだけぎっしり入ってもらって効率重視でいったらいいのに、その大家さんは効率よりもコモンルームで住人同士が助け合うみたいなことを選ばれた。不思議なことをするなと思ったら、そっちの方がなぜか人気があって、空家にならない。大家さんにとってもいい現象が出ているようですね。
(コレクティブハウジング社 メディア掲載情報はこちら
 

●引っ越してきて、知り合いのいない寂しさがきっかけで

浅: 住まい側からしても、いわゆるワンルームなり、どこにでもあるような賃貸の住宅というのは、ご近所さんの繋がりはほとんどないですよね。京都などでも「町内会に入ってください」等、色々あると思うんですけど、本当にその町内会にも入らないでいると、地域のつながりがほとんどできないんですね。
私自身もずっと京都に暮らしていたわけではなくて、実は5年ほど前から仕事で京都に住んでいるのですが、越してきた当初は全く地域に知り合いがいなかったんですよ。
絹: 浅野さんは5年前はどこにいたんですか。
浅: 元々は兵庫県の神戸市にいたんですけど、京都に越してきて、京都には本当に友達もいないし、知り合いもいないしというなかで、休みの日に家に帰ったら、本当に一人なんですよ。話し相手もいないし、寂しいなと思っていました。そこで猫と暮らせば幸せになるんじゃないかと思って(笑)。
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絹: それがねこレクティブのそもそもの始まりの発想ですね(笑)。
浅: そうです(笑)。でも一人だとなかなか飼いづらいわけです。旅行に行って、家をあけると猫がひとりぼっちになるわけですから。だったらシェアハウスだったらいいんじゃないかと、色々さがしていたんですけど、シェアハウスって皆さんご存知ですかね。風呂、トイレ、キッチンは共同で、寝る場所だけ別に部屋があるみたいな住宅で、知らない人が一緒に住んでいると。
 

●シェアハウスもいいけれど、1人の時間も大切…

絹: なんか素敵だなと。なんか昔のアメリカの青春ドラマに出てきそうな暮らし方、だけどどうしても水回りだとかトイレだとかお風呂だとかが共用なので、人と会いたくないという時にこもりにくいという部分があるのかなあと、僕は想像しかできませんが、そんなふうに思ったりもします。
浅: そうですね。一人だと寂しいんですけど、シェアハウスって、ちょっと密すぎるなと感じていて、やっぱり一人の時間も大事だし、人との繋がりもつくりたい、そのベストなバランスって何だろうと思っていたんです。そうした時に京都府さんがコレクティブハウスを何年か前から推進する事業をされていまして、私も関東の方でコレクティブハウスに実際住んでいらっしゃる方が話をされるイベントに参加させていただいて、「あ、これだ!」と思ったんです。
(京都府HPより『京都版コレクティブハウスの推進』はこちら
 

●子育て支援としてのコレクティブハウス

絹: なかなかアンテナ高いですね。私が気が付いたのがつい最近で、今年のお正月の新聞記事で気が付いて、そういうイベントに2回ほど出席をしました。
そのプロジェクト、もともとは今の京都府知事の西脇さんの政策の柱の1つに「子育て環境日本一にしたい」というのがあるのですが、京都府の子育ての推進セクションにいる若き行政マン川崎哲嗣(さとし)さんが、その政策を具体化するためのアイデアを提案したのが始まりだとのことです。彼は北欧で生まれたコレクティブハウスという暮らし方が子育て環境を分厚くするのにいいはずだというレポートを色んな仲間と書いて、庁内ベンチャー事業に提案、それが取り上げられたと。その結果が浅野さんや僕たちが出たモデルケースを京都にもつくろうというプロジェクトだったということです。
浅: はい、その通りです。京都府が子育て支援の一環としてコレクティブハウスを推進しようということなのですが、お子さんがいる方で、例えば親御さんがどちらも出かけるとなった時に、コモンルームって誰か人がいるわけなんです。ちゃんと顔も見知った人たちがいる。そうすると「ちょっと出かけるから子どもを見ていてねと」いうこともできるだろうし、子どもたちも他の家の子どもたちとそのコモンルームで遊んでいたりできるわけです。今は兄弟姉妹がいっぱいいる家庭って、そんなに多くはないと思うので、一人っ子だとしても、コレクティブハウスに住んでいる色んな年齢の子どもたちと一緒に遊べたりするわけです。そうすると子どもたちにとっても、非常に楽しい住まい方ですし、子どもを持たれる方にとっても安心してそこで暮らせるというので、これはいいなと。実際、私がもし子育てするにしても、この環境はいいなと思って。
 

●顔の見える安心感

絹: 普通の分譲だとか賃貸だとかって、僕は本職は建設屋ですから、その手の共同住宅もお仕事として工事をしたりするんですが、私自身は2003年に自分の土地の上に五階建てのコーポラティブハウスを建てるという実験をやったんです。それをなぜしたかと言うと、自分の頭の上だとか、隣に、誰が住んでいるのかわからないような所に住みたくないと。挨拶もしないようなのは気持ちが悪いと。色々苦労はあったけれども、お陰様でうちのマンションの13家族はみんな顔見知りです。たとえ頭の上でドンドンドンと子どもの足音がしても「あ、あの子が暴れてるんや。元気やな」と苦にならないし、年に一回組合員総会をやって、かつては大バーベキュー大会とかをしたものです。カタい会議の後は、みんなで料理を一品ずつ持ち寄って、ロビーで焼きそばを焼いたり、子どもたちは花火をしたり、アイスボックスにビールを入れて、おじさんたちはそれで宴会をしたりとかね。うちの場合は分譲ですけど、それを賃貸でやろうというのが、たぶんコレクティブハウスなのかもしれませんね。
浅: そういう顔の見える関係性の中で住む安心というのが、やはりあると思います。
絹: 京都府はモデルで府が先導して、しかも建設交通部といったハードのセクションではなくて、子どもや青少年だとか、子育て環境を良くしようというセクションがそれに動き出したというのがちょっと面白いですね。
 

■エピソード2 コレクティブハウスのオンライン見学会、開催しました!

●住みたい側からのアプローチに、それはそれは喜んでいただいて…
浅: 我々も実際、コレクティブハウスがどんなものか見学してみようということで、今年の9月にオンラインの見学会というものを開催しました。先ほどの話に出てきたNPO法人コレクティブハウジング社さんたちと、実際にコレクティブハウスに住んでいらっしゃる方々の生の声を聴いてみようと企画したものです。
絹: リスナーの皆さん、信じられますか?このコロナの影響で、東京の視察のプロジェクトが中止になったんです。やっぱり行きにくいと。京都府は予定していたんです。ダメになったのを、ここにいるねこレクティブの浅野さんたちが「オンラインで見学会、やる気になったらできるやろ、やってよ」と東京の人たちにねじ込んで(笑)、実現させてしまったんです。コレクティブハウジング社の人たちも協力がすごくて、聖蹟というコレクティブハウスと巣鴨にあるコレクティブハウスの2軒のコモンルームに集まって下さって、直接質疑応答だけじゃなくて、動画までつくってくださったんですよね。
浅: 紹介動画ですね。
絹: なかなかの手練れの連中やなというのがわかりましたね。
浅: もともと私たちは2020年の4月から活動を始めているのですが、最初は私一人でねこと暮らすコレクティブハウスをやりたいとネットでワーワー言っていたのですが、一人協力者が現れまして、一緒にやろうと活動を始めたわけです。私も本業は別にあって、この活動をしているわけですけれども、建築のプロでもないし、住宅のプロでもないし、どうしようかというので、東京の方にコレクティブハウジング社というのがあるよと。コレクティブハウスの企画、運営、コーディネートをやっているよということで問い合わせをしてみました。そうしたらコーディネーターさんと実際住んでいらっしゃる方の三人がかりで、こうやってオンラインで話を事前に聞いてくださったんです。その中で我々の思いとかをお伝えしたところ、私は今年31ですけれども、若い人たちが主体となって、しかも居住希望者の側からコレクティブハウスをつくりたいというのは非常にうれしいとおっしゃっていただいて…。
絹: そうですよね。行政が言ってきたのでも、私みたいな建設業者の下心があるようなおっさんが言ってきたのでもなく、純粋にこういう所に住みたいんだという人が言ってきたと。これはうれしい。
浅: もともと関東の方にあるコレクティブハウスもやっぱり事業者主導で今までつくってきたけれども、「こんな所に住みたい」「自分たちの暮らしを自分たちでつくりたいんだ」という思いを持った人たちが集まってつくるという動きが、どんどん加速していってほしいよねと思っていらっしゃったらしくて、非常に喜んでいただきました。このコロナ禍で見学会、直接はちょっと難しいけれども、オンラインでならできるし、もしやりたかったら言ってねとおっしゃっていただいて、「じゃあ、ぜひやらせていただきます」と。「我々が告知して、人を集めてやるので、是非お願いします」というふうに連絡を取って、ご快諾をいただいて、今回のオンライン見学会にこぎつけたという形です。
 

●コレクティブハウスの空気感、おわかりいただけますでしょうか

絹: 私自身もそのオンライン見学会の中に紛れ込ませていただいたのですが、本当に素晴らしい2時間半くらいの集まりでした。その企画をする人、コーディネートをする人だけじゃなくて、実際に住人として住んでいらっしゃる方々がインタビューに応じてくださいました。
もうあまり時間がないので、エピソードをそんなにたくさん紹介できないですけれども、「なんでここのコレクティブを選んだの?」というインタビューをした時に、一人の入居者の方が「パートナーがその当時、人間嫌いでやさぐれていたので、これではいかんと思って、無理やり引きずり込んだ」と。で、やっぱり人との付き合いが、やさぐれていた人の内面を癒す効果があったのかもしれないし、「コレクティブに移って、子どもが増えた」なんてエピソードもありましたしね。それから2007年に竣工した「スガモフラット」でオンライン見学会をさせてもらったのですが、これはなんと元児童館、14階建ての建物の高層の2フロアをリノベーションしていて、大人15人、子ども7人という人口構成です。それから「コレクティブハウス聖蹟」は郊外アパートのリノベーション型20戸とありますが、これも面白かったですね。
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(コレクティブハウス社HPより転載
 スガモフラット居住者組合「スガモンズ」月1回の定例会の様子)
 「スガモンズ」Instagramはこちら、ブログはこちら
浅: はい。コレクティブハウス専用でつくられた建物なので、一棟丸ごとコレクティブハウスなんですよね。
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(コレクティブハウス聖蹟:コレクティブハウジング社HPより転載)
絹: なかなか言葉だけで、現地を見ていらっしゃらないリスナーの方にはお判りいただきにくいかもしれませんが、コレクティブハウスの住人たちの特徴が少し聞き取れたような気がしまして、なぜか地域に滲み出すという性質がある。東京の方の町内会の青年部になぜかコレクティブの住人が参加して、「兄ちゃん、よく来たな」とすっごく喜ばれるとかね。夏祭りの裏方をやってしまうとか、手作り市をやっている人もいるとか、子ども食堂もやっていると言ってましたね。
浅: そうそう、言ってましたね。あとガレージで日本酒バーみたいなのをやっているとか。
絹: だから何か変わっていると言うか、面白いと言うか、古くて新しい、昔のニッポンてこんなこと当たり前やったんとちゃうのというのを、もう一回やり直している人たちみたいな気がしますね。
 

●ひとを大切にした民主的な運営です

浅:  その古い中にも新しいやり方というのもあって、コレクティブハウスの住人というのは一ヶ月に一回くらいミーティングをされているそうなんですけど…。
絹: 第三日曜の午前使って、定例会をやっているんですよね。
浅: 暮らしの色んなところを話し合うというところなんですが、その中でも例えば自治会などでは一世帯一人出してくださいという形だと思うんですけど、コレクティブハウスは個を大事にするというところで、一世帯一人ではなくて、大人一人ひとりが参加してくださいねと。住んでいる人たちの良いように、ルールを変えていきましょうねというやり方で、非常に民主的と言いますか、人間を大切にするような運営をされているなあというところで、昔ながらのムラ社会みたいなものとはまた違う新しい風が吹いている繋がりだなと感じました。
絹: リスナーの皆さん、今までのところ伝わりましたでしょうか。若い31歳、僕は62歳ですから、ちょうど半分の人が、人と繋がる暮らし方に可能性を見出しています。他の土地から京都に越してきて、やっぱり知り合いがいないと寂しい、暮らしにくい、ねこを飼いたくても一人では飼えないと。そこで周りの人と繋がりあうとか協力し合う、助け合うみたいなことを考え出したと。そんなことを真正面から考えている人がここにいるということに驚きませんか?僕らの世代では核家族で、自分が!自分が!私たちだけ!私たちだけ!とばかりに本当に孤立分断されて、子育ての時には、誰にも相談できずに若いお母さんが悩んでしまったり、そうやってずっとここまできたのが我々の世代です。今、揺れ戻しがきていますよ。
浅: はい、これから新しい暮らしをつくっていきたいと思っています。
絹: ということでそろそろ終わりです。これは今後追跡いたしますので、その2、その3のコレクティブハウジングシリーズ、是非ご期待ください。
浅: よろしくお願いいたします。
絹: この番組は心を建てる公成建設の協力でお送りいたしました。ねこレクティブの浅野さん、ありがとうございました。
浅: ありがとうございました。
絹: それではさよならぁ。
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(ねこレクティブHPより)
投稿日:2020/10/21

第158回 ・知っているようで知らない上下水道局の仕事~ダブルメモリアルイヤーに思う

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辻: 辻井  剛 氏(京都市上下水道局 総務部 総務課 広報企画係長)
寺: 寺田  洋 氏(京都市上下水道局 総務部 総務課 協働推進係長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
辻井、寺田係長水道局
  (辻井 剛 氏 ・ 寺田 洋 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト、お二方、上下水道局の方からお呼びしております。京の水からあすをつくる、京都市上下水道局 総務部総務課 広報企画係長 辻井剛さんです。
辻: 辻井です。よろしくお願いいたします。
絹: そしてもうお一方、同じく上下水道局 総務部総務課 協(とも)に働くと書いて協働(きょうどう)と読む。協働推進係長 寺田洋さんです。
寺: 寺田です。よろしくお願いいたします。
絹: 辻井さん、寺田さん、よろしくお願いいたします。
我々の大切な「水」を扱っているところから、今日、お二方のゲストです。では今日の番組タイトルとテーマを申し上げます。
「知っているようで知らない上下水道局の仕事~ダブルメモリアルイヤーに思う」と題してお送りいたします。
それでは辻井さんと寺田さんにお話しいただく前に、私のゲスト紹介ではちょっと物足りないということで、進行の絹川が手を抜きまして、時々やらかすゲストの他己紹介です。では辻井さん、寺田さんとはいかなる人物ぞ、短く述べよ。
辻: そうですね。一言で言うと、優しい男ですよ。実は前の職場から一緒に仕事をしていまして…。
絹: え、前の職場って、どこだったんですか?
辻: もともと区役所の方におりまして。
絹: あ、伏見ってことでしたね。「ふしざく」あれは正確には何て言いましたっけ。「伏見を肴にざっくばらん」。おもろい部署にいましたね。
辻: そうです。区役所の方でも2年ほど一緒に仕事をしていまして、その後お互い異動したんですけど、また異動先で再会ということで、不思議なご縁を感じております。
絹: はい。という寺田さん、見るからに優秀そうな方です。では寺田さん、辻井さんとはいかなる人物ぞ。
寺:  飄々と何事も前向きに仕事をこなす方で、上下水道局の広報にかかる事務を一手に引き受けている、非常に優秀な職員です。 
絹: 結構広報って、大変ですよね。
辻: ああ、色々、そうですね。
絹: ちょっと聞いたんですが、「今年は色々プロジェクトやイベントを用意したけど、全部あかんようになったんや。大分困ってます」ということをおっしゃっていました。
はい、そういう広報イベントに代わるという形で今日はラジオを通して上下水道局の知っているようで知らない仕事について、お二人に語っていただきます。
それではエピソード1、参ります。寺田さんから口火を切ってください。
 

■エピソード1 琵琶湖疏水の魅力発信

●琵琶湖疏水が日本遺産に認定!
寺: 私が協働推進係長として担当していますのが、琵琶湖疏水の魅力発信にかかる事業でして、先日大変うれしいニュースが一つございました。文化庁が所管しております日本遺産という事業があります。
絹: あんまり詳しく知りませんので、それ、教えていただけますでしょうか。
寺: 日本遺産は文化庁が所管していまして、日本全国には多数の文化財があるのですが、一定の地域内にある文化財を一体的に活用・整備し、その情報発信をまとめていこうと。そういうことを通じて文化財群の魅力を高めて、地域の活性化につなげていこうということで、色んな文化財群を認定するのが日本遺産という制度でございます。この度、私ども上下水道局が管理しております琵琶湖疏水が今年の6月に認定されたという、うれしいニュースが入ってきたところでございます。
絹: ご存じのように私の本職は建設業です。我々のような建設屋にとっては、うれしい、非常にうれしい。「これまで認定してくれんと、今頃遅いやんけ!」と言いたいくらいうれしいです。よかったです。
本当にわが京都では、疏水は大事業で先輩方から聞くところによりますと、当時の国家予算に匹敵するようなものが京都に投入されたと。当たり前に水を飲んでますけど、トイレに流してますけど、先人たちのものすごい仕事がなされたことを、特に土木系技術者は身に染みて勉強していると思います。
 

●びわ湖疏水船、ご存じですか?

絹: これ、うれしいニュースですけど、具体的にはどのように発信していかれるんですか?
寺: 日本遺産に認定されたら、どういうことができるのかというところで、そういう情報発信にかかる事業ですとか、あとは琵琶湖疏水の観光客の受け入れを目的とした整備などを進めていきます。
絹: 近年、びわ湖疏水船というのが就航したじゃないですか。あれ何年前でしたか、割合最近でしたよね。
寺: そうですね。平成30年の3月に就航したところです。
絹: あれ、いっぺん乗ってみたいなと思うんですけど、今度のコロナ禍の前はなかなかいっぱいで乗れなかったんじゃないですかね。
寺: そうですね。昨年までの実績で言うと、毎年春と秋の観光シーズンに運航しているのですが、通算で95%以上の乗船率を誇っている、本当に人気の事業となっております。
絹: ここにある資料、市民新聞ですか。「琵琶湖疏水竣工130周年」という、なかなかレトロな雰囲気の大きな写真と共に、新聞を開きますと、疏水周辺の見どころマップというのもあって、いい資料ですね。
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京の水だよりvol.11より
 

●疏水沿線の観光スポットー「琵琶湖疏水マップ」作りました!

寺: 疏水沿線は本当に色んな観光スポットが集まっている場所でございますので、そういったところを皆さんに知っていただいて、歩いて回っていただきたいという思いで作っております。
絹: 疏水沿いの遊歩道は、桜の季節にはすごくいいスポットですし、あそこは自転車を入れたら、まずいんでしたっけ?
寺: いえ、山科区内を走る琵琶湖疏水沿線は東山の自然緑地という、歩く、そしてサイクリングもできるような歩道が整備されていますので、歩いても自転車に乗っても楽しんでいただける場所になっています。
絹: 琵琶湖疏水の疏水船に乗って、上ったり下ったりするのも素敵ですが、そぞろ歩くのも素敵な場所です。そのために上下水道局さんは「琵琶湖疏水マップ」をおつくりになっていますので、ぜひ行ってくださいね。
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●琵琶湖疏水沿線の見どころをVRでご覧いただけます

絹: そしてなんと、「VRで魅せる琵琶湖疏水」とありますが、これ一体何ですか?バーチャルリアリティーを使うんですか?
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寺: 「びわ湖疏水船」とホームページで検索いただきたいのですが、そうするとこの船に関するホームページが出てまいります。そこに「VRマップ」ということで、ページを作っておりますので、ぜひそちらをご覧いただきたいのですが、疏水沿線のスポット数十か所、40か所以上をVRでご覧いただけるような情報発信をしています。
絹: そしたらホームページから、専用の眼鏡のようなものをしなくても、いけるんですか?
寺: そうです。ゴーグルなしで、ホームページの画面で見ていただける、そのスポットの360度の周辺の春と秋のそれぞれの映像を見ていただいるようなコンテンツになっております。
絹: リスナーの皆さん、なかなか知っているようで知らないでしょう。そういう工夫もされているんです。ぜひアクセスしてみてくださいね。「琵琶湖疏水船」で検索すると、そういう40か所にアクセスできます。
さあ、まずは疏水の魅力発信ということで、寺田さんに口火を切っていただきましたが、一旦ここでおきまして、エピソード2として辻井さんにマイクをお渡ししてお話しいただきましょう。
 

■エピソード2 上下水道の仕事って?

●今年はダブルのメモリアルイヤーです 
絹: 先ほども言いましたが、今年はメモリアルイヤーなんですね。今年は記念の年です。
そこのところ詳しくお話しいただけますか。
辻: わかりました。今年はですね、メモリアルなんですが、ダブルのメモリアルということになっています。中身としては琵琶湖疏水の竣工から130年、あと下水道事業開始から90周年という、この2つの大きな節目の年になっています。
絹: そうかあ。琵琶湖疏水は130年前に先人がおつくりになって、その後40年経って、やっと下水ができたんですか。
辻: そうですね。時間差で言うと、それくらいになります。
絹: 僕は昭和の30年代の生まれですけど、その頃はまだ汲み取りと言うんでしょうか、バキュームカーと言っても、今の若い人はわからないかもしれませんが、そういうのがまだ走っていましたね。やっぱりまだまだ下水道は完備されてなかったんですね。
辻: 昭和30年度末で言うと、人口当たりの下水の普及率がまだ25%くらいといったデータもありますね。
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京の水だよりmini vol.8より
 

●上下水道の機能や役割、あまり意識されていないでしょうが…

絹: 上下水道の仕事は、我々の日常生活に密着しすぎていて、実はあまり知らせていません。インフラという言葉を皆さんはご存知でしょうか。便利な都市生活を過ごすために、それこそ黒子のように溶け込んでいる、自分たちの足元にある道路であるとか、ライフラインの代表が上下水道でありますけれども、電気やガスというようなものもインフラストラクチャーと称します。その大きなものをご担当なっている上下水道局、その辺についても辻井さんからお話いただけそうですね。
辻: 今、お話いただいたように、普段、皆さんの生活でなかなか意識することって、そう多くはないのかなと思うんです。特にお引越しをされた時に、水道の開栓の手続きをされたりという方もいらっしゃるかと思います。でも特に下水道、汚れた水をきれいにするとイメージされる方は多くいらっしゃるかと思いますが、他にも色々な機能があったり、役割があったりするのですが、その辺については、実はあまり知られてないのかなと思うところです。
 

●最近の豪雨への対策としてー堀川雨水幹線、呑龍トンネル…

絹: 我々、建設業者はインフラをつくったり、整備したりする黒子の仕事を、上下水道局さんと一緒にやることも結構多いです。ぜひ、みなさんの足元をどういう形で黒子たちは支えているかというのを、時々意識していただくと、上下水道局さん共々、我々はすごくうれしいと思います。
見えそうで見えてない上下水道局さんの仕事で、例えば近年、雨がどっかんどっかん降るでしょう?そんな時には下水道にはものすごいプレッシャーがかかると思うんですけど、そんな話もどうでしょう。
辻: そうですね。最近のゲリラ豪雨の降り方って、以前に比べてもすごいものになっています。ああいう突発的な雨は、昔は地面が土だったので、地面そのものに吸い込まれて消化されていたのですが、今はアスファルトですので、吸収する能力が以前に比べて下がってきている課題がございます。だからと言って溢れさせるわけにはいきませんので、京都市としましても、雨水をためる大きなトンネルや池をつくったりして、浸水被害の軽減に努めていたりします。
絹: 例えば、皆さんご存知の堀川通、あの真下あたりに、とてつもないそういう仕組みが隠されていますよね。
辻: はい。堀川中央幹線のことですね。これらの施設を雨水幹線と我々は呼んでいます。
絹: それから呑龍トンネルも着々と。もうだいぶできているんですよね。それはなぜそういうものが計画されて、工事が行われているのですか。
辻: 一つには浸水被害の軽減と言いますか、未然に町に水が溢れるということを防ぐのが大きな目的です。
 

●上下水道管のメンテナンスも我々の大きな使命です

絹: 堀川通を通ったことがある方、数年前の豪雨で、堀川通の舗装がぼこんと盛り上がっていた事件を覚えていらっしゃる方がおられるかもしれません。いきなり舗装が、大きなところでは段差が30センチ近くアスファルトがめくれあがっていたと。「バイク通らなくて良かった。大事故になるわ」というのを目撃したことがあります。それは地中に走っている雨水下水道管にものすごい量の水が集中して、それが空気を圧縮して、空気が押し上げたということを、後で大学の先生の解説を聞きましたけれども、我々の足元ではそういうことが時々起こります。市民生活を守るために、上下水道局の方々が日々メンテナンスに苦労しておられるというのは、そういうところです。
そのためには古くなったインフラをなんとかメンテナンスしなければなりませんが…。
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辻: やはり時と共に古くなっていきますので、きちんと更新したうえで、次の世代に繋いでいくということが、私たちの大きな使命です。
絹: 今、例えば下水道管なんか、あるいは水道管もそうですが、メモリアルイヤーとおっしゃいましたよね。下水は90年と。ということは結構なお年寄りの水道管、下水道管が京都市内には埋まっているのではないですか。
辻: 場所や敷設された時期にもよるのですが、随時そういう古いものは取り換えていって、新しいものにしていくということですね。
絹: 私も詳しくはないのですが、古い水道管をイメージしていただけますでしょうか。昔は鉛でつくっていた時期もありましたし、人間と一緒で、管の中にもコレステロールが付くんですよね。それをきれいにしたり、あるいはコンクリートの下水道管だったら、重みで割れたり、木の根が侵入して割れたり、中が詰まったりして、壊れていくことがあります。そういうものも管更生工法といって、地面を掘り返さずにきれいにしていくという、そんな仕事も建設の世界にはございまして、上下水道局さんからそういう仕事が出て、地元の業者たちも日々汗を流しています。そこからの繋ぎですが、「だから水を使ってね」でしたっけ?
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京の水だよりvol.12より
 

●水を使って有意義な暮らしを送っていただきたい…

辻: もちろん無駄にいっぱい使っていただくということを推奨するわけではないのですが、我々も経営の観点からきちんと収入を確保していくというのは、大きな課題であります。
絹: ちょっと言いにくそうにしておられますので、捕捉しますね(笑)。なんで皆さんに水道使ってねと言うか。便利な水道を命の水を、皆さんの元に届けて、使ったお水を下水できちんと処理するためには、先ほど申しましたように、お年寄りになった水道管や下水道管をきれいにメンテナンスする必要がありますよと。そのための費用も独立した企業体として上下水道局は計画を持っていらっしゃいますので、「だからちゃんと水を使ってもらうことも大事なんです」と、言いたそうにしておられましたが(笑)。
辻: ありがとうございます(笑)。
絹: すみません、突っ込んでしまって(笑)。だから「お風呂だって、シャワーじゃなくて、風呂入れよ」って言いたい…というのが、水道局の皆さんですか。
辻: そうですね。我々はお風呂の魅力発信ということで、ここ数年やらせていただいていますけど、もちろん水量の話もあるにはあるのですが、より水を使って有意義な暮らしをしていただきたいと思っておりまして、例えばお風呂でリラックスしていただいて、免疫を高めていただいたり、より健康的な暮らしをしていただいたりとか、キャンペーン等を通じてご提案をさせていただいたりしているところです。
絹: リスナーの皆さん、今までにないコロナ禍のなかで、やっぱり自分自身の免疫力をきちんとメンテナンスするという意味でも、お風呂に入って、ゆっくりして、きれいにして、そういうものに対する生き物としての抵抗力をメンテナンスするのに、日本古来の、日本人が大好きなお風呂をもう一度見直してみませんかという、そういうキャンペーンも上下水道局さんは張っていらっしゃいます。ぜひ、自分たちの身を守るという意味でも、再度お風呂に目を向けてみたらいかがでしょうか。
 

●我々市民が浸水対策のためにできることー雨水浸透ます、雨水貯留タンク

絹: そのほかにもまだまだお話を承りたいことがあるのですが、我々が市民の立場で協力できること、我々のインフラを守るためにもう一つどころか、たくさんあると思うのですが、雨水浸透ますとか、雨水貯留タンクについてもお話いただけますか。
辻: そうですね。先ほど雨水幹線(大きなトンネル)のお話をしたのですが、そんな大事業と併せて、各ご家庭でもできる浸水対策として、雨水を地面に浸み込ませる雨水浸透ますというものがあります。さらに雨水をためておくタンクで雨水貯留タンクというものもあります。これら雨水貯留浸透施設に対して、助成制度とかも設けていますので、そういうものをご利用いただいて、設置をご検討いただければご家庭でも浸水対策にご協力いただけるということです。
絹: お家を新しく建て直す、あるいはリノベーションをかけられるときに、我々が京都市民として協力ができることの一つが、今の仕組みです。普通、雨水が屋根に降りますと、樋をつたって、ほとんど時間差なしに直接下水に放流をすることになります。そうすると140万市民の各家の屋根から一挙にドドドっと水が来ます。それを時間差攻撃にして、例えば絹川の自宅の庭にあるいは屋根に降った水を少し下水に流す時間を遅らせようという仕組みが、雨水浸透ますです。時間差攻撃で負担を少し軽くしよう、だからそういうことをやってくれたら、新設の場合は、一基につき2万5千円の助成をさせてもらいますよというものです。我々がお小遣いの範囲内でできることもあります。さあ、どうでしょう。寺田さん、辻井さん、最後に言い残したことはあるでしょうか。
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 京の水だよりmini vol.8より
 

●びわ湖疏水船がこの秋運航します!

寺: では最後に少しPRをさせていただきたいと思います。実は最初にお伝えしていた琵琶湖疏水船についてなのですが、この秋運航が10月1日から11月30日まで実施をする予定となっております。当然コロナの対策は万全にして、皆様をお待ちしておりますので、また8月の末、31日から予約販売が始まりますので、ぜひお応募いただければと思います。
絹: なかなか予約が難しい、人気のイベントですから、これは勝手なお願いなのですが、地元の工学院高校の生徒さんたちの学習と先人の日本遺産を経験するという形で、もし少しでもそういう枠をお取りいただけるようなら、ご検討ください。
寺: 承知いたしました。また、研修等でのお申し出も承っておりますので…。
絹: いいことを聞きました。小学校、中学校の先生も聞いているかもしれませんね。辻井さんは何か言い残すことはないですか。
京都市上下水道局Twitterより
 

●上下水道局ではSNSでの発信を行っております

辻: 私は上下水道局の情報は、SNSでも発信しておりまして、フェイスブック、ツイッター、インスタと3種類ありますので、ぜひまたご覧ください。最近では動画も上げておりますので、ぜひご覧いただければと思います。
絹: リスナーの皆さん、上下水道局さんは、結構発信に力をいれていらっしゃいます。というのは、やっぱり皆さんの足元を支えるインフラ、ライフラインを支える仕事というのは、伊達や酔狂ではできないのです。大変な仕事であるとともに、危険も伴います。でも皆さんの協力がないと、皆さんの元に新鮮なきれいなお水は運ばれませんし、できることは協力という形でやっていければいいなと思っています。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。辻さん、寺田さん、ありがとうございました。
辻: ありがとうございました。
寺: ありがとうございました。
 京都市上下水道局HPよりi
 京都市上下水道局マスコットキャラクター(ホームページより抜粋)
 ホタルの澄都(すみと)くん&ホタルのひかりちゃん
投稿日:2020/08/11

第157回 ・支え合うくらしと住まい~子育てと介護のダブルケアの経験から

ラジオを開く

熊: 熊倉 聖子 氏(NPO法人 場とつながりラボ home’s vi)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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 熊倉 聖子 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日も不慣れなZoom収録です。本日のゲストは熊倉聖子さん。われらがNPO法人場とつながりラボ home’s viのメンバーの一角である熊倉聖子さん、左京区から。よろしくお願いします。
熊: はい、熊倉です。今日はよろしくお願いいたします。
絹: スタジオで対面をせずにやるというのも、非常に新鮮ですけれども、熊倉さんは日々バンバンオンライン打ち合わせ等、慣れていらっしゃるので、どうか引っ張ってください(笑)
お願いします。
熊: わかりました(笑)
絹: 熊倉聖子さんはhome’s viという、一部では大変有名なNPO集団の方です。場づくりに特化した集団ですけれども、リスナーの皆さんもぜひ覚えておいていただきたいと思います。彼らは何かしでかします。
それでは本日の番組タイトルを申し上げます。「支え合うくらしと住まい~子育てと介護のダブルケアの経験から」これはまさに本日のゲストの熊倉聖子さんの生の体験を語っていただきます。それでは熊倉さん、よろしくお願いいたします。
手元に京都新聞2020年(令和二年)1月6日月曜日の記事があるのですが、でっかい記事の真ん中に熊倉さん、ドーンとお顔が写っていますね。
熊:  はい(笑)
今年のお正月の特集号で取り上げていただいて、ドーンと載せていただいたのはいいんですけど、最初の一文が「今日はちょっとメイクが濃いめです」から始まるっていう(笑)
絹: これはラジオですから、新聞記事はファイル共有できません。その「メイク濃いめ」から、1パラグラフだけ読ませてくださいね。新聞記事、大きいですから、見出しが大きく踊っております。
「私が変わる 時代が変わる 多世代で満つる「家」 コレクティブハウス事業を進める熊倉聖子さん」という見出しです。では第一パラグラフだけ読みます!
こんにちは。よろしくお願いします。
今日はちょっとメイク濃いめです。
すごい入り方ですねえ(笑)
熊:  オンラインだと、いつもはメイクをしないですむので、この時はリアルだったので(笑) 
絹: 京都府が進めるコレクティブハウス事業のテレビ会議。協働するNPO法人「場とつながりラボ home’s vi」(京都市上京区)の熊倉聖子さん=左京区=が明るく場を仕切る。コレクティブハウスは、入居する世帯同士が食事や掃除などの役割を分担して支え合う集合住宅。風呂や台所は各部屋にあり、共有スペースで住人たちが食卓を囲んで交流する。子育て家庭や高齢世帯など多様な人が入居することで、それぞれができることをして日常を助け合い、孤立させないような信頼関係をつくる住み方だ。「一般向けのワークショップも開き、子育てや介護をサポートし合う暮らしの仕組みづくりをみんなで考えたい」と熊倉さんは意気込む。
 

■エピソード1 くらしそのものを支え合う環境をつくりたい

●子育てと介護と
絹: これが第一パラグラフです。さて、これをきっかけとして、熊倉さん、エピソード1行きましょうか。これの取材で思い出されること、ありますか?
熊: そうですね。意気込んでおりましたね、あの時には(笑)
子育てと介護と言うキーワードが入っていたんですけど、元をたどると、私は今、3人子どもがおりまして、一番上の子が10歳、二番目が7歳、三番目が4歳で全員女の子なんですけど。
絹: 結構、今、大変な時期じゃないですか(笑)
熊: 最初の第一子を10年前に出産したんですけど、結婚した当初から義理の父の認知症の症状がちょっとずつ出ていて、一番上の子が1歳の時に、東日本大震災があったんです。そのショックなのか、一気に義理の父の認知症が悪化しまして、震災後のバタバタと、子どもの環境の心配をしたり、家もガタガタしていて、社会の不安と家庭内の不安と、初めての子育てと初めての介護で、本当にその当時の記憶がほとんどないくらいの大変さでした。
絹: 何か辛すぎて、封印しているみたいな感じですかね。
熊:  封印と言うか、何か目の前のことに必死で、記憶を辿ってもあまり覚えてないと言いますか。同居していたわけではないのですが、当時は鎌倉に住んでいて、義理の実家は東京都内にあったので、しょっちゅう呼び出されては通っていました。義母だけではみられなくなったので、私が子どもを連れて、義理の実家に住み込む形で、身の回りのお世話をしたり、子どもがいると和むかなというのでムードメイカーの役割で、嫁の役と母親の役と、何やらかにやらみたいなのが、一気に同時に押し寄せると言うか…。
それまでは舞台や演劇などのアートマネジメントの仕事を東京の方でしていたんですが、20代の頃には想像もしなかった家庭内というか、くらしの現実みたいなものが一気に自分の身に降りかかって、でもそうした時に誰も頼れる人がいない。核家族で育っていますし、介護なんかも見たことがないし、鎌倉の方には子育て仲間はいたんですが、どうしても子育て中のお母さんたちは子育て仲間で集まるし、介護の方はソーシャルワーカーさんが入ってはくれますが、「子育てしながら介護は大変なんです」みたいなことを相談する相手もいなかったり…。 
絹: 話の腰を折りますが、若くなったばあばちゃんと話している気分がしてきました(笑)
熊:  そうですか(笑)
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絹: やっぱりよく似ていらっしゃる気がします。
リスナーの皆さん。実は、私は個人的に熊倉さんの母上を存知ておりまして。介護というところでは、私は今60を超えておりますけれども、この年代はわが親の介護が問題になってくる年代でもあります。熊倉さんは子育てと介護のダブルケアというすごい経験に、当時突っ込まれましたけれども、私は今、自分の母親の介護的行動と言いますか、お休みのたびの週末に疲れ果てておりますけれども、それをダブルでねぇ…子育てとやっていらっしゃったというのは、想像に難くない!大変だったんだろうなぁ…。
 

●サンドイッチジェネレーションと呼ばれて

熊: 当時はその「ダブルケア」という名前がなかったんですね。私がダブルケアをがっつりやった何年か後に横浜の大学の先生が「ダブルケア」という名前をどこかで発表されたんです。たぶん隠れたダブルケアは昔からあったと思うんですけど、なかなかそれが社会課題としては上がってきていなかったので、当時はアメリカの知人に「そういうのはサンドイッチジェネレーションと言うのよ」と。要するにサンドイッチされるということですよね。で、「サンドイッチジェネレーション」と検索をかけて、英語のサイトでその情報を知るみたいな感じだったんですよね(笑)
絹: 本日のゲストである熊倉聖子さんは、サンドイッチジェネレーションと呼ばれる経験を積まれました。震災の後で大変な経験だったと思われますが、だからこそ、このコレクティブハウス事業、京都府が進めようとしている新たな、今まであまり京都のエリアで語られることの少なかったものに興味を持たれたわけですね。
 

●子育て中の熱い公務員 川崎さんとコレクティブハウス

熊: そうですね。home’s viに私が関わり始めたのは、2年前からなんです。ちょうどその年に京都府の川崎さんという若きスーパー公務員が、同じく子育てをされている。彼はお父さんですけれども。
町内会とか自治会とか色々あるけれども、やっぱり暮らしそのものを支え合う関係をつくるのって難しいわけです。そこで彼は、まちづくりの中でどういうふうにしていけるか模索するなかで、たまたまコレクティブハウスというのを見つけられたそうです。コレクティブハウスは先ほど絹川さんがお話してくださったように、色んな形があるのですが、単身の人が住んでいたり、老夫婦が、子育て世帯が住んでいたりと、お互い助け合うような暮らしなのですけれど…。
絹: 共同住宅でアパートやマンションで一緒に暮らしていて、ちゃんと自分の個室はあるけれども、共同リビングもちゃんとあって、しかもそれが賃貸ですよね、きっと。
熊: そうです。賃貸の住宅で出入りもしやすくて、水回り等は全部別々で、でも共有空間があってという。京都はシェアハウスはすごく多くて、独身の人が入っているイメージが強いですが、子育て世帯も入って、そこの中でよい暮らしの関係性を作っていくという、元々北欧の方から始まったものです。
 

●コレクティブハウスとは

絹: シェアハウスの話が出ましたが、誤解を恐れずにバクっと言いますと、コレクティブハウジングとかコレクティブハウスは、シェアハウスをどっちかに掛け算して、1.5~2倍にして、シェアハウスよりは中型かな、大型かなと。シェアハウスよりもしっかりしていると言うか、人数がちょっと多いかなとか、そんなイメージを持ったんですけど、間違ってますでしょうか。
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NPO法人場とつながりラボhome’s vi facebookより抜粋)
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絹: ハードが固定しているんじゃないよと。例えば一軒家がいくつか集まっても、タウンコレクティブとか、コレクティブハウスって言うんだよという、そんなことですね。
熊:  ええ。実際、タウンコレクティブという形で、何世帯かのおうちが半径1㎞以内等に住んでいて、一緒に食事をしたり、ちょっと送り迎えをみたいな、いい共同体をつくってやっているという例もあります。集合住宅を建てたりするのはなかなか難しいのですが、京都でやるのなら、タウンコレクティブというのはいいんじゃないかなと。タウンコレクティブについて、もっと教えてくださいみたいな方が割合多かったりもします。今回のコロナにしても、もし自分が感染したら助けを求める先がない、誰も頼れないみたいな時に、「大丈夫?」とか、「ごはん持っていくよ」みたいな関係を、常日頃からつくっていけるという支え合いの仕組みそのものの事を、コレクティブハウスと言うんだなというのを、私もこの取組を通して学んできたところです。
絹: リスナーの皆さん。今、聞かれたところ、たぶんキモです。試験なら「試験に出ますよ」と言わなければならないくらい大切なところです。ハードに依存しない、むしろコレクティブハウスというのは、ソフト、助け合いという、ひょっとしたらシェアエコノミーとか、そんな話で、シェアエコノミーって、どっかで聞いた話だな。
熊:  シェアリングエコノミーって、ありますよね。 
絹: 熊倉教授がなんか似たような本を書いていらっしゃいませんでしたか?
熊:  熊倉教授(夫)はギフトエコノミーですね(笑) 
 

●コロナがやってきて…

絹: すいません。話の腰を折ってしまったかもしれませんが、リスナーの皆さん、想像していただけましたでしょうか。コレクティブハウスはハードな、大規模な、例えばマンションの中の2フロアをぶち抜いて、15家族が一緒に住まうというやり方もあります。東京の方で、コレクティブハウジング社が2000年から丁寧に事例を積み重ねてこられていますけれども、企業の使われなくなった独身寮なんかをリノベーションした事例もあります。それから今、熊倉聖子さんがコメントされたように、一軒家同士を500mグリッドでちょこちょこ繋ぐという、非常に地道なタウンコレクティブというやり方もあるようです。
京都で、このコロナの前にオーバーツーリズムがあちこちで言われて「困ったわね」という話があって、私の職場の下京区でもゲストハウスが雨後の筍のようにできております。それが今回の事で、立ち行かなくなるだろうと思われますが、コレクティブハウスの考え方が応用された時に、逆にそれが何か素晴らしい世界に繋がる可能性はないでしょうか。
熊: 今、本当に考えもしなかったような状態になっていて、そのゲストハウスを運営されていた方たちも本当に大変な思いをされているのかなと思います。外の人に向けて用意されていた空間を、京都のまちの中に活かしていくということが、もしかしたら今できるのかなということをお話を聞きながら思いました。 
絹: 熊倉さんたちが京都府とモデル的に実験的にコレクティブハウス事業をやろうと協働して進みはじめた時に、コロナというものがやってきて、何か逆風と言うか、水を掛けられたみたいな感じですよね。
 

●“おおきなかぞく”というコンセプト

熊: そうですよね。京都はシェアハウスも多いと思うのですが、やっぱりこういう時にどうするのかというのが…。でも逆に考えると、本当に一人暮らしで、誰も頼る人がいないということがいいのか、家族は一緒にいるわけじゃないですか。私も5人家族で住んでいますけれども、その家族の延長として、一緒に住まう人を捉える。Ciftという集団が東京にあるのですが、京都にもできて、そこは拡張家族というコンセプトでやっていますし、私自身も京都に来てから知人がほとんどいなかったので、「おおきなかぞく」という取り組みを、似たようなネーミングなんですが(笑)、多世代で、おじいちゃんおばあちゃんと子育て世帯が一緒に繋がりあうみたいな場づくりをしたりしていたんですけど。 
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■エピソード2 京都での「つながりあう場づくり」

●「おおきなかぞく」について(左京区)
絹: その「おおきなかぞく」のエピソードをエピソード2としてお話していただけませんか。リスナーの皆さんに、コレクティブ的なソフトの部分をお伝えするのに、「おおきなかぞく」のエピソードはすごく役に立ちそうな気がするんですが、どうですか?
熊: すごく素敵な場だったので、またやりたいなと思いながら、ずっといるんですけど、今ちょっとお休みしちゃっているんです。 
絹: 「2015年、左京区で『おおきなかぞく』の集まりで、畑仕事を楽しむなどして交流する親子やお年寄りたち」という写真が、この大きな新聞記事に3枚くらい載っています。なんかいい感じで、これたぶん血縁のない拡張家族ですよね。
熊: そうですね。本当にいい場でしたね。左京区で、出会った当初は大学生で、もうご卒業されているんですけど、おばあちゃんと一緒に住んでいたその学生さんと、自主保育をやっていた子育て仲間が集まる場でした。高齢者の方たちは介護予防的にそれぞれ集まっていたり、一人で住んでいたりするんですけど、定期的にご飯を持ち寄って一緒に食べたり、畑仕事をしたり、一緒に音楽をしたり、あやとりをしたりしていました。子どもたちも知らないおばあちゃんの膝に乗って、ニコニコしているとか…。どうしても親子だけだと煮詰まってワーッとか言ってしまうけれども、おじいちゃんとかが「ああ、元気でいいねえ」とか言ってくれると、縦横斜めの関係で、風がふっと吹いて、心が軽くなるような時間だったんですよねえ。 
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  (おおきなかぞく facebookより)
絹: 二番目のお子さんをお産みになった京都で、そういうことを始められたと書いてありますね。記事に。
熊: 二番目が生まれてすぐに京都に引っ越してきたので、二番目は小さかったです。
絹: で、自分の祖父母と地域の人をつなぐことをしたいと大学生が語ったって、これがさっきおっしゃっていた大学生ですね。
熊: そうです。
絹: なかなかの学生!
えらいなコイツ!!
だって自分のおじいちゃんおばあちゃんと地域をつなぐって、いい仕事をしたんですねえ。彼でしたっけ、彼女でしたっけ?
熊: 彼女ですね。もう本当に素敵な女性で。
絹: 今はどうされているんですか?
熊: 今は京都にいなくて、山形県の方で、そこでもすごく活躍されているんです。
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●スーパー公務員川崎さん × home’s vi

絹: これって、今日の番組のテーマであります「支え合うくらしと住まい」というか、コレクティブハウジングと言うか、本当にその辺の中心概念と言うか、拡張家族と言うか…。京都府の西脇知事の政策目標のなかに、「子育て環境日本一の京都府にしたい」というのがあるんです。それを具現化しようとしたのが、さっきの熊倉さん曰くのスーパー公務員の川崎哲嗣(さとし)さんについて、熊倉さんの印象をちょっとお話しいただけませんか。
熊:  アツい人ですね。本当にアツい人で(笑)
私と同年代。本当に素敵な方で、ご自分の子育ての経験から、「これが京都のまちに役に立つんじゃないか」という思いで、ご自分で色んな不動産屋さんを回ったり、営業活動をやったりとか。やっぱり建物の話なので、本当は府営住宅なんかにできるのが一番なのかなと思ったんですけど、それもなかなか今すぐというわけにはいかないので、どこか事業者さんだったり、有休の物件を持っているオーナーさんが「じゃあ、こんな所使ってみて」と。東京のコレクティブハウスもそんな形で動いているので…。 
絹: 補足を入れされてください。その川崎さんというアツい行政マン、京都府庁の中に、府庁内ベンチャーという提案を拾い上げる仕組みがあるそうです。そこに川崎さんが発想した「コレクティブハウジング・支え合うくらしと住まい」というものが入賞して、その結果こういうプロジェクトが生まれたというふうに側聞しております。間違いないですか。
熊: そうですね。その立ち上がり方も、「ああ、なんか京都府って、素敵だな」と思ったんですね。そこから子育て支援の事業が立ち上がって、home’s viに声がかかったのは、コレクティブハウジング社さんのコーディネーターとしての役割を、川崎さんがご覧になっていて、ハードだけではないということを理解されて、それを京都でできるのはどこかなと探された時に、home’s viに白羽の矢が当たってですね(笑)
人と人の関係をつなぐというか、みんなが、いろんな人が一緒に住まう、そして関係をつくって助け合うというのは、なかなか難しいことです。家族でも難しいのに、他人でそういうことがどこまでできるのかという…。
絹: 残り1分になってしまいましたので、私にマイクをもらって、無理やり力業でまとめに入ります。いいですか?
熊: はい、どうぞ(笑)
 

●コロナ禍ですが、コレクティブの動き、ご注目ください

絹: リスナーの皆さん、今まで聞いていらしていかがでしたか。京都府の中にアツい行政マン川崎さんという人がおられました。コレクティブハウジングが京都府の「子育て環境日本一」を具現化する一つのやり口ではないかと、home’s viに声を掛けました。コロナで大変な状況ですけど、このコレクティブの動き、支え合うくらしを求める行政マンと民間の協力関係、潰したくないですよね。また、こういう番組をつくることで、賛同者を増やしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。熊倉さん、ありがとうございました。
熊: はい、ありがとうございました。
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投稿日:2020/07/20

第156回 ・小川通今出川上ルに怪しげなお寺を見つけました~社会実験寺院寳幢寺の挑戦

ラジオを開く

松: 松波 龍源 氏(寳幢寺 僧院長) 
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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        松波 龍源 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストでありますが、チョビット推進室では二番目の宗教者のご登場になります。これがあれよあれよといううちに決まってしまいました。今日のゲストは松波龍源さんです。松波龍源僧院長、よろしくお願いいたします。
松: よろしくお願いいたします。
絹: 松波さんとの出会いと、プロフィールをこちらで勝手に調べた下資料に基づいて、少しだけ皆さんにお話しします。
松波龍源さん、プロフィール
出身地はお父様は石川県、お母様は熊本県、だから石川と熊本のハーフでいらっしゃいます。活動地域は京都府。1978年生まれ。学生時代に武道と仏教に出会われて、生涯の道とすることを決意されました。なんと武術の境涯を深めるために、単身中国北京に渡られて、5年間の武術修行を行われました。この辺がぐっと私、鷲掴みにされたところでございます。帰国後、ご縁を得られて仏門に入られます。真言立宗総本山西大寺。これは奈良ですよね。
松: そうです。
絹: あのでかい西大寺にて、四度加行(しどけぎょう)、伝法灌頂(でんぽうかんじょう)を受法。様々な伝統的伝授を受けると同時に日本仏教のみに囚われず、ミャンマーやチベットなどの高僧に師事をされます。それだけじゃなくて、山岳修行や霊地巡礼などの修業をお積みになっておられます。お若い方なんですが、21世紀の日本と世界にフィットした仏教修行の在り方を模索されている宗教者であるというご紹介が、手元の資料にあります。僧院長、こんな紹介でいいですか?
松: なにか過分なご紹介ありがとうございます。恥ずかしいです。
絹: 釈尊や弘法大師さまの後を追って行かれつつ、今の日本に無理のない仏教を追いかける活動のなかで、瞑想法もご提唱になっているということですので、その辺も後ほど触れていただきたいと思います。
松: はい、ぜひ。
絹: 大切なことを忘れておりました。本日の番組のタイトルと言いますか、テーマをこれから申し上げます。京都の方が聞いておられるので土地勘はあるでしょうね。「小川通今出川上ルに怪しげなお寺を見つけました~社会実験寺院寳幢寺の挑戦」と題してお送りいたします。それではエピソード1「そもそも実験寺院とはなんぞや」あたりから語っていただけますか。
 

■エピソード1 そもそも実験寺院とはなんぞ 

 

●一般家庭の出身なので、私のお寺はありません

松: もともと僕は普通の一般家庭の出身で、お寺の子というわけではありません。自分で望んで、興味をもって仏門に入ったのですが、一方で私のお寺というのはないんですね。
絹: 初めておじゃました時に、その小川通の今出川上ル、お寺っぽい雰囲気じゃないですものね。
松: そうです。もともと西陣織の会社の跡地をお借りしてやっております。
絹: それも「結構安くで、広い場所、借りられたんです」とおっしゃっていましたね。
松: そうなんです。大家さんが本当に素晴らしいご理解のある方で、非常に親切に相談に乗っていただけました。
絹: 実は恐々ですけど(笑)、数度、私は既におじゃましております。
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●出会いはミャンマー仏教 

松: ありがとうございます(笑)。もともと仏教に触れたのは大学院生の時が初めてで、しかも日本仏教ではなかったんです。
絹: ミャンマーの仏教だったと書いてありますね。
松: そうなんです。大学は大阪外国語大学という、今はもうないんですけど、そういうところのビルマ語学科というところにいまして、そこでミャンマー仏教の研究をやっていたんです。
絹: またマニアックな…。
松: すごくマニアックですよね。それでミャンマーに調査で行きますと、あちらの国では仏教というのが完全に生活の中に溶け込んでいるんです。GDPでは日本の30分の1程度ですから、当然豊かではなくて、モノはなかったり、お金もないんだけれども、何かみんなが生き生きして幸せそうに見えたんです。それはなぜかというと仏教の世界観で彼らは生きている。すごく親切だし。
振り返って日本も、一応仏教国ということになるのだと思うのですが、仏教というものが、人々のリアルな生活にあまり役割を果たしていないんじゃないかというふうに感じたんですね。
 

●絹川の仏教修業―親父に騙されまして…

絹: なんかわかる気がします。ちょっとだけ自分の過去を語らせていただきますと、20代の頃に私、親父に騙されて、お寺に閉じ込められたことがあるんです。一週間ほど。
松: なんかすごい体験ですね(笑)。
絹: 九州のお寺だったんですけど、うち、建設会社でしょ。で、京都に道場を建てさせて頂いて、親父は忙しくて本山にご挨拶に行けなくて、「ご挨拶に行ってこい」と九州まで、学生時代に行ったんですけど、檀家総代の方と親父と話ができていまして、「コイツ、一週間ちょっと痛めつけてもらえませんか」と言って、そういう話ができていたところへ、フラッと行ってしもたと。で、もう、読経三昧、作務三昧、「わかるまで帰さない」という目にあいまして、でも修業の若いお坊さんと一緒だったので、休み時間に「こんなんでええんかな、仏教は」みたいな話を、やっぱり学生ですから熱く語っていたという、そんなアホな経験がございます(笑)。
松: なかなか貴重な体験ですね。それは。
絹: 最後はものすごく追い詰められますので、天狗の鼻をポッキリ折っていただいて、涙を流しながら「自分は虫けら以下でございます」というようなところまで、ご住職が追い込んでくださいまして、「帰っていいよ」ということで、無事に生還しましたけれども(笑)。
 

●仏教の精神に触れる機会のない日本

松: そんな感じで、お寺の中に普通の人が入っていって、なんらかの仏教にかかわる体験をすることって、観光で行って仏像とか伽藍を拝観する以外に、今の日本って、ほとんどないと思うんです。
絹: レアですよね。私みたいな騙されて行くって、なかなかそれも珍しいですよね。
松: 極めてレアなケースだと思うんです。なので仏教が言っている、本当は何をお釈迦様が伝えたかったのかということに、触れる機会なんて、自分で興味をもって、それこそ学校とかで勉強しない限り、小学校、中学校、高校でも習わないですしね。なかなかそういう機会がないというのは、問題と言うか、もったいないなあとすごく思っていたんです。
 

●寳幢寺、こんな意味を込めています

絹: その「怪しげなお寺、寳幢寺、実験寺院」ですけど、寳幢寺という字もラジオですから、どんな字を書くのか、リスナーの方には伝わらないと思いますので、寳幢寺の漢字の書き方を教えていただけませんか。
松: これが難しいんですよね。検索するのに変換しにくいと言いますか(笑)。寳幢寺の「寳」は宝物の「宝」です。
絹: 旧字体ですよね。
松: 旧字体を使っていますが、普通の「宝」でも大丈夫ですけど、「幢」が問題で、巾偏に童と書くんです。
絹: 僕、実は事前に予習して調べました。なんか仏様の軍隊の旗印という意味があるらしいと。
松: そうなんです。「旗」という意味がありまして。
絹: 仏様の軍隊で、僧院長自身が単身、武道修行を5年中国へ乗り込んでいるというので、なんかそこらへんが関係があるのかなと。
松: 「旗」って、シンボルですから、「ちょっと変わった仏教というものが、ここにありますよ」という旗を掲げようと。筵旗を掲げて意気を欲すみたいな、そんなイメージですね。
 

●みんなでつくりあげる実験寺院としてーわからないからやってみよう

絹: なるほど。で、実験寺院の実験たるところは、どの辺にあるんですか。
松: まず今まで日本になかった形をやってみたい。それはミャンマーとかチベットでは当たり前の形だと思うんですけど、お坊さんたち(出家者)と、普通の在家さんの、一般社会の人たちの役割をちゃんと分けて、お坊さんたちはお金ということには関わらない。寄付だけで運営をしていく。そして一般の地域の人たち、今はインターネットで全世界と繋がりますから、我々に関わってくれるすべての人たちと、ここに関わっているすべての出家者が、みんなでお寺の在り方を決めていく、つくっていくということをやってみようと。そんな感じで実験という言い方をしています。そういう意味で、宗派にもこだわりたくないし、国にも囚われたくない。21世紀の日本、この京都という所で、できうる形の、フィットする形の仏教がどんなものなのかわからないです。わからないので、やってみようという意味が込められています。 
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  (一般社団法人 日本仏教徒協会Twitterより抜粋)

 

絹: リスナーの皆さん、今の実験寺院の在り方というのも、本当に入り口からちょっと中を覗いたくらいのところなので、なかなか想像をしていただきにくいと思うのですが、これから僧院長が具体的なエピソードを語ってくださいますので。けったいなおもろい事をしはるんですわあ(笑)、ねえ。
松: そうですね。結果的にそうなってしまったという感じなんですが、面白いですよね。
絹: ではそろそろエピソード2でもって、実験寺院の実験とは、具体的にどんなことをされたのか、リスナーの方々に想像してもらいましょうか。
 

■エピソード2 実験って、具体的にどんなこと? 

 

●「取引」から離れたい

松: まず一つ大きな実験の柱として、我々は「取引」というところから、ちょっと離れてみようということをやっています。完全に「お布施」と呼ばれる寄付です。皆さんからの見返りを期待しない。「100円あげるから100円の価値のあるものをください」というトレードの世界から少し離れまして、「あなたにこれをもらってほしい」と。それをお互いが交換して(交換があってもなくてもいいんですけど)、それを造語ですけれども「喜びを送りあう」と書いて「喜贈」と呼んでいます。
 

●「喜贈」ということ

絹: 「喜捨」じゃなくて、「喜贈」であると。捨てるんじゃなくて、贈るんだと。
松: プレゼントのし合いと言いますか、贈り物が交わされていく、そこに喜びが生まれていくというような世界観があってもいいじゃないかと。もちろん等価交換の売買、取引というのは、社会のシステムなので大事なのですが、それだけではしんどいじゃない?という考え方ですね。そうじゃなくて、喜びをプレゼントしあって、理解し合える人たちが、価値を増大させていく、喜びを増やしていくということができないか、これがまさに実験だと思っています。
絹: 今のお話からイメージするのは、「お裾分け」という、日本の懐かしい言葉だとか、「シェアリングエコノミー」というカタカナの言葉とか…。
松: そうですね。「ギフトエコノミー」とか、そんなことも言われていますが、まさにそうだと思うんですね。
絹: その辺の言葉にも、何か一朝事あるごとに、今回は武漢コロナ肺炎の洗礼を浴びたわけですけど、従来以上に助け合いと言うか、喜贈と言うか、そういう流れができるのではないかと、そんな仮説を持ちました。
松: 私もそう思いました。それを2500年前からインドでおっしゃっていたのが、お釈迦様ということになるのかなと感じています。
絹: そう思ったら、すごい早いですよねえ、お釈迦様。
松: 本当に天才としか言いようがないなと思うんですけど、本当に不信感だと思うんです。私がこれを持っておかないと私が必要な時に使えないから、あなたにはあげませんよというね。そうではなくて、みんながみんなを助け合うという関係だから、あなたが今必要で、私は大丈夫なら、あなたにあげますよ。それが回っていけばいいじゃないという考え方ですね。
 

●20世紀型のエゴイズムの終焉

絹: 私の周りにちょっとずつそういう人が増えつつあるような気がしているんです。実は。
松: それは素晴らしいことだと思います。
絹: なにか世の中の流れが、少し逆転しつつあるみたいな、そういう人たちと知り合うことが個人的には増えてきております。
松: 世界全体的に見ても、環境破壊とか人種差別の問題でもめていますけれども、20世紀型のエゴイズムという在り方が、人間という種としてもう限界なのかなと。そういうタイミングが来ているのかなという気がしますので、どうなっていくんだろうというのは楽しみだなと思っています。
 

●大根300本プロジェクト

絹: さて、では具体的なエピソードで、例の「大根300本プロジェクト」教えていただけませんか。
松: それは滋賀県の守山にあるラトナファームという農家さんなんです。今井さんという方が一人でやっておられるんですが、彼はうちによく瞑想をしに来てくださるんです。珍しいですよね、瞑想をする農家。
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絹: 珍しいですね(笑)。
松: 非常にまじめな方で、原則無農薬で、本当に野菜を自分の子どものようにかわいがりながら育てておられる農家さんなんですけれど、彼が今の日本の流通システムがちょっとしんどいということをおっしゃっていたんですね。どれだけ頑張って手をかけて大根を作っても、やっぱり1円でも安く、安く、安くと言われてしまう。しかもちょっとでも傷が入ったり、規格に合わないとゴミとして廃棄されてしまう。それって、レストランの食べ残しというレベルじゃないですよね。畑で植わっている数千本の大根の何分の1かは、出荷されることもなくゴミになってしまう。それを彼は非常に悲しいとおっしゃっていて、この冬も大根がたくさんできたのだけれども、やっぱり何百本単位で廃棄になってしまう。食べるのには全く問題がないのに、流通・販売の問題で、農家としてはどうしようもないと。それを捨てるには忍びないし、この世界に一矢報いたいという思いもあるしということで、出荷できない野菜をお寺に全部寄付しますと。
絹: 本堂にずらっと並んだ300本はそれだったわけですね。
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松: そうなんです。それをお手伝いも兼ねて、うちによく遊びに来てくれる京都大学の学生さんたちと一緒に大根を抜きに行くところから行かせてもらい、持って帰ってきました。せっかく農家さんが喜贈していただいたわけですから、我々はそれをお寺という立場で社会に喜贈しようと考えました。そのまま差し上げてもよかったのですが、せっかくなので私が一本一本疫病封じの梵字を書きまして、病気封じの御祈りをし、お守りとして祈祷した大根を差し上げますよということです。赤字になっても構わないと思いましたので、送料も我々もちで、北海道でも沖縄でも発送しますと言ったところ、絹川さん始めとして色んな方々が興味をもって下さいました。喜贈ということに共感してくださり「それならばこれを役立ててください」とお金やら、別の食べ物やらを置いて行って下さったわけです。それで完全に成り立ってしまったと言いますか。
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絹: ほう、物々交換的に「ちょっとこれも置いて帰りますわ」と言う人がいっぱいいたんですか。
松: ありましたね。
絹: ちょっと聞きかじりましてね、面白いなと思って、恐々おじゃまして、5本ほど梵字が書かれた大根を頂いたんです。それを知り合いだとか、うちは建設会社なので独身寮がありますから、独身寮の寮監さんに「疫病除けのお祈り付きだから、大根おろしにでもして料理して食べて」と。それから山科のこども食堂を運営されている方にも使っていただいて、もちろん我が家でも一本頂戴しましたし。おかげさまで霊験あらたかというとちょっと怪しいですけど、うちの会社、今のところ感染者は出ずに過ごさせていただいております。現場もほとんど止まらずに。ありがとうございました。
松: 何よりです。  
絹: で、すぐになくなったんですよね。
松: そうなんです。300本はさすがに何本かは腐らせてしまうかもと、最初は思っていたんですが、割とあっという間に、葉っぱまでもらっていただきまして(笑)。
絹: 僕がこの社会実験寺院寳幢寺さんに注目したきっかけは、この不思議な大根300本プロジェクトというエピソードでした。
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●いわば仏教の見本市みたいな… 

絹: この他にも、まだまだこの続きは何をどう実験していかれるのか予想がつきません。でも僧院長の周りには色々面白い人が集われるようで、居候のような大学院生だとかおられるんですよね。
松: いますね(笑)。
絹: そのうちミャンマーからの修行僧も受け入れられるかもしれませんし。
松: はい、それは言っておりまして、ミャンマーとかチベットとかタイ、スリランカと繋がりをもって、うちに常駐してもらい、いわば仏教の見本市みたいな感じで、うちに来たら世界中の仏教が一通りレビューできますよと。例えばスリランカの坊さんが気に入ったら、スリランカ仏教を教えてもらえますよということはしたいですね。それは資金さえあれば、今すぐにでもできそうかなとは思うのですが。
 

●本堂は色んな方が色んな事に使ってくださっています

絹: というような野望も計画も持っていらっしゃいますし、それだけではなくて、本堂には何やら武器のようなものも置いておられますし、あの本堂は武術修行の場にもなりそうですし、フリーダンスのような動画も見たことがありますが。
松: そうですね。色んな方が色んな事に使ってくださいます。100平米ありますから、工場跡地ですので広いので。
絹: リスナーの皆さん、普通のお寺ではありません。だからやりたいことを僧院長や奥さまや事務長や大学院生の居候だとかにご相談されると、色んな事が起きる可能性の高い不思議な場所だと思います。
 

●オンライン瞑想のこと

絹: それとオンラインで瞑想の指導と言いますか、最近、少しだけしていただいた経験があるのですが、僧院長が医療関係者と色々試しておられる事も少しだけ紹介していただけますか。
松: 日本仏教の弱点みたいなものかなと思ったのが、この瞑想の修業ということです。儀式などは素晴らしいものがあるのですが、個人的に瞑想をして自分の境涯を高めていくということが、少しおざなりにされがちだった歴史があるのかなという気がしています。そのあたりをチベットやミャンマーから補って、21世紀の日本という忙しく大変な社会にフィットする形で再構築できないかと考えています。例えば「毎日一時間座禅しなさい」と言われても無理じゃないですか。できたらいいんですけど、ちょっと辛いと思うので、そうではない形で、理想的ではないかもしれないけれども、これぐらいだったら効果はあるだろうというものを、つくって出していかないとと思ったわけです。「一時間も座禅しなければならないのなら、できないわ」となると、興味を持った人に残念ですよね。そういう形で研究をしまして、一つ自分なりの形というものをつくりあげまして、それを認めていただき、わかるかたにはわかってくださったわけです。病院のお医者さんや心理カウンセラーの方々からは結構評価していただいて、一緒にコラボして何かやっていこうということはおこなわれています。本堂で瞑想指導をやっていたのですが、コロナウイルスの問題で、なかなか集まってもらうのも難しくなっているので、できるのならオンラインでやってみようかと始めかけているところです。
絹: この試みも大変面白い。興味を惹かれます。というのも当まちづくりチョビット推進室におきましても、数回前のゲストが岸本早苗さんとおっしゃいまして、ハーバード大学の大学院でマインドフルネスとマインドフルセルフコンパッションの修業を積まれた方です。私自身も興味がありまして、その方から習ったことがあります。
リスナーの皆さん、小川通今出川上ルに何やら怪しげなお寺・寳幢寺、社会実験寺院がございます。ここには何かがあります。怪しげに思えても怪しくありません。もしよろしければお訪ね頂きたく思います。ちょっと変わっていますけど、いい、面白い人たちが集っておられます。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。松波僧院長ありがとうございました。
松: どうもありがとうございました。

 

投稿日:2020/06/23
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