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第191回 ・地域と元気で楽しくする~地域のおしごと博物館ってご存じですか?

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鈴: 鈴木 千鶴 氏(一般社団法人未来コンシェルジュ 代表理事)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
         (右:鈴木 千鶴 氏  左:絹川)

 

絹: 皆様こんにちは。そしてこんばんはかもしれません。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。一般社団法人未来コンシェルジュという団体を率いていらっしゃる代表理事鈴木千鶴さんをお迎えしております。鈴木さん、よろしくお願いいたします。
鈴: よろしくお願いします。
絹: 鈴木さんは、ご本職は有限会社鈴木モータースさんの代表取締役でいらっしゃるとともに、色んな肩書をたくさんお持ちです。たくさん過ぎて覚えられないのですが、確か中小企業家同友会の女性部会長をなさっているのと…。
鈴: 三年目になります。
絹: それから男女共同参画市民公募委員。
鈴: そうです。女性経営者としてやはり女性が生き生きと輝ける社会の実現に市民の立場で参加させていただいています。
絹: ですからね、ネットで調べると色んな所でお名前を発見しちゃうんですよ。
鈴: 本人はあまり検索してないもので、わかってないですけど(笑)。
絹: そして西京区で地域活動を本当に地道になさっています。鈴木さんと私の出会いはごくごく最近でしたね。あれはなんという勉強会でしたっけ?“未来力会議”?
鈴: 京都市には中小企業を応援する部署がありまして、そこが2017年頃から“未来力会議”をやっていたのですが、去年からもっともっと経済的なお祭りを中小企業自らがやっていこうということで、“未来の祭典”が始まりました。今年が2年目なのですが、そのお勉強会で絹川さんにお会いしたと思います。
絹: 内緒でこそっと真面目な勉強会にも時々出ているんです(笑)。
鈴: そうですね、とっても難しいお話でした(笑)。
絹: さて、本日の番組タイトルですが、「地域を元気で楽しくする~地域のおしごと博物館ってご存知ですか?」と題してお送りいたします。
“地域のおしごと博物館”というイベントが最近あったんです。西京区の桂駅エリアで、10月7日土曜日に開催されたこのイベントをそっと覗きに、申し込みもしないで、突然現れてしまいました。
鈴: びっくりいたしました。
絹: 私もそこで起こっている出来事にびっくりしてしまいました。すごいんです。ではエピソード1、地域のおしごと博物館、西京区桂駅エリアで行われた10月7日のイベントについて、それからなぜこういうことをお始めになったのですかということを、ゲストの鈴木千鶴代表理事からお話しいただきます。
 

■エピソード1 “地域のおしごと博物館”って、そもそもなに?

●子どもたちがおしごと体験をします
鈴: この地域のおしごと博物館の一番の大きな特徴は、本当にある地域のお店に小学生がやってきて、おしごと体験をすることです。今、日本中でおしごと体験ブームです。商業施設のおしごと体験もあれば、大きな〇〇プラザというような所で、何百人を収容するようなおしごと体験もありますが、やっぱり嘘ものと言うか、作り物でしかありません。一方で、地域にはずっとそこでお仕事をされている地域企業が様々ありますので、半径500m、これは学区的な考え方もありますし、子どもの足で歩いて7~10分で移動できる小さな範囲で、本当のお店で子どもたちがおしごとを体験しにやってくるというものです。
絹: 「なぜ500mなんですか?」と、先ほどお聞きしたところ、即答されました。「子どもの足で7分なのよ」と。実際に10月7日に現地、桂駅の西側の辺に集合場所があったので、始めにそこに集まられて、A.B.C.D.E.Fと6つのお店にそれぞれのチームに分かれて歩いて行かれました。ショットガンフォーメーションのように、散って行かれました。
鈴: 拍手で見送ります。
 

●ほんまもんを体験するということ

絹: 私はいったいどのチームに付いて行ったらいいんやろうと、きょろきょろしておりましたが、そういうことです。地域のおしごと博物館って、最初にお聞きになると、内容をご存知ない方は、皆さん“キッザニア”を想像されるのではないでしょうか。それを鈴木さんの言葉で言うと、「あれすごく素敵で、お金もかけて企画もよく練れているけれども、ちょっと本物とは遠いわね」と。そういう感じもお持ちになっているのでしょうか。
鈴: そうですね。DJブースがありますが、今この三条寺町にラジオ局があって、ここに子どもたちが来てほんまもんを体験する方が、より地域の、京都市の子どもさんたちには良いことだと思います。
絹: リアルとバーチャルとは違いますよと。バーチャル体験よりも、もうちょっとリアルに寄った方の地域版がやりたいわねというところから始められたんですか。
 

●地元への愛着づくり ― 次世代を育てるために

鈴: はい。半径500mの学区、地元の地域を知るということが、保護者さん、小学生にとっても大事でして、小学生の時の想い出がやはり一生に宝物の始まりだと思っています。そこから地元を知って、地元に愛着を覚える、故郷の愛着づくりにもつながっている。そこがないと大学生になってから地域を勉強しても遅いと考えています。
絹: ここがどうやらキモです。半径500m限定のこころ、それから先ほどすごいキーワードを頂きました。「次世代を育てる要素が入ってないとまちづくりじゃない」ということと、それから地域への愛着。
鈴: はい、ふるさとづくり。
絹: それが基本でしょうと。
話は飛んでしまうかもしれませんが、自分自身はもう還暦を超えていますけれども、昭和の育ちで、小学生以降の教育、小、中、高、大とその中でやっぱり欠けていたなと思うのは、やはり地元に対する愛着です。僕らの時代は「愛国心」だとか、「地域好きやねん」とか、「日本て大好き」とかって言うと、「お前、右翼か!」と。
鈴: ダメでしたものねえ(笑)。
絹: 「ちゃうやろ!真ん中や、それが」と、今なら言い返せるんですが、当時幼い時は何か言い出しにくかった記憶が蘇ってまいりました。
で、我々が中小企業を経営して、社員さんたちと一緒に働いていく者の基本として、やはり「地域が好きでないとだめじゃない」という思いが、どうやら鈴木代表の胸には色濃くあるようですね。
鈴: そうですね。帰国子女とか、お父さんが全国転勤がある等、様々な事情がありますけれども、たまたま転勤で住んでいる地域であっても、そこに思い出とか、愛着とか、お友達関係とか、そういった思いや経験がその子どもの一生をつくっていくと思っています。ですから住めば都ではないですが、その地域を知ることは大事だと思っています。
 

■エピソード2 “地域のおしごと博物館”、ちょっと覗いてみましょう

●引率し、説明するのは、地域の高校生や大学生です
絹: 鈴木さん、10月7日のプログラム、少し具体的にリスナーの皆さんに想像していただくためのヒントをいただけませんか?最初にまず何が起こりましたか?
鈴: 保護者さんが必ず連れてきてくださいとお願いしています。小学生さんを一人ずつ大切にお預かりするのですが、もう1つ最初にお伝えしておかねばならないことがあります。引率して歩くとか、60分間の凝縮した体験内容になっているのですが、それを運行するのは地域の高校生と大学生なのです。ここが一番大きな関りをつくっているところなのです。
絹: それを目撃して、実はすっごい驚いたんです。集合場所はジェイネットハウジングさんという桂駅の西側近くの不動産屋さんで、そこに入りきれないくらいだったので、2か所に分けて集合をかけておられました。まず最初にきれいなガムテープ
に、ニックネーム(今日呼んでほしい名前)を太いマジックで書いて、記録のための写真を撮ります。「その写真に自分が写ってもいいという子は緑のガムテープ、顔出しNGの子はピンクのガムテープに書いてね」と最初にそのルールを説明されます。その説明をしているのも高校生です。
そしてもう1つ驚いたのは、そのリーダー、小学生を集めてそういう説明をしながら、アイスブレイクをやっているわけです。初めて会った子で、お互いに友達同士ではないかもしれないし、高校生と数時間でも一緒になる子たちの緊張を溶きほぐすためのアイスブレイキングです。このプロセスを、未来コンシェルジュの皆さんが宿題として出されたんですよね。「アイスブレイキング、自分で考えておいで」と。上手でしたねえ。
鈴: そうですね。様々、ネットで検索したらしいですけれども、やはり初めての小学生と仲良くなるということは、コミュニケーション能力を試すというか、チャレンジだと思っています。なかなか入れない小学生もいますし、1人の子ばかりが前に出てやるような小学生もいます。その子どもたちをどういうふうに順番を変えたりしながら、入り込めるようにするかというようなところから、高校生の体験、チャレンジが始まっています。
 

●行き先は、不動産屋さんや工務店、整骨院に花屋さん、ケーキ屋さんも…

絹: 小学生のチームがだいたい6~7人?
鈴: 一企業4名から引き受けられたら参加できるというルールがあるんです。ですから小さなお店でも店主と奥さまが2人ずつお引き受けになって、4名引き受けられるとなったら、参加資格があるので…。
絹: そして当日の10月7日は“ジェイネットハウジング”さんは不動産屋さん、“松本工務店”さんは大工さん…。
鈴: はい、6名でした。
絹: それから“りん整骨院”さんも行かれたし、“佳花園”というお花屋さんも行かれたし、“ポーラエステシラン”、“アランシア”というケーキ屋さん…。
鈴: いつも一番人気がケーキ屋さんになります。
絹: それぞれに分かれて行く前に、アイスブレイクをやって…。
鈴: 場を馴染ませるという。
絹: お互いに自己紹介をしあいっこもありましたね。それで分散して、先ほどの半径500mのこころです。小学生が7分くらいで行きつく範囲内にあるお店に散って行かれました。
 

●例えば工務店のプログラムは…

絹: そして私は松本工務店さんに。ご存知のように私は本職は建設屋ですので、どうしても工務店に寄ってしまいます。
ここでのプログラムをご紹介したいのですが、まず代表理事は松本工務店さんのプログラム、ご存知ですよね。ざっと松本さんとこの社長さんと大工さんたちがどんなに丁寧にプログラムの準備をされていたか、お伝えいただけたらうれしいです。
鈴: 二人組になって取り組むとのことで、材料もちゃんと全部刻んでおられて、印もついている所に、子どもたちが小さな家を完成させる。大きな金づちを持ってトントンと入れていく、そういった工程を体験されたと思っています。
絹: 私はそれを見て、本当に感心したのですが、犬小屋と言うにはもっと大きいサイズの、10センチ角くらいの柱で構造材(梁や柱や棟)それぞれに接合部が、ちゃんと専門用語で名前がついてあって、それを「順番はこうやで」と。掛矢という木の小槌の大型のものでこんこんこんと入れて、棟上げまでやらせるわけですよね。
「指叩いたら、大変やで」と言いながら、解体まで体験させる。僕はそれを見ていて教科書にかかれた絵で「これは柱、これは棟、これは梁と言うのよ」と説明するのと、一本一本コンコンと組み上げるのとでは全然違って、頭の中にスッと入るわと思いました。
で、小学生たちがもう楽しくてたまらないという顔をしていて、それをお母さんが後ろからじっと見ていらっしゃる。なんかいい雰囲気のワークショップでした。
 

●地元の企業の応援にも、社員教育にも、愛社精神にも…

鈴: おしごと体験は小学生だけを育てているのではなくて、中小企業の応援も大きな要素として入っているんです。ですから松本工務店さんを応援するという要素が入っておりますので、保護者さんに見て頂いて、また家を建てる時、是非地域の松本工務店さんにオーダーが入ればいいなというふうに思っていますし、松本工務店さんもこうした体験をするに当たって、社員さんと普段とは違う会話や時間をお過ごしいただいたと思っています。それが社員教育でもあります。で、社員さんにとっても、自分の勤めている会社が、「小学生に対してこんなことをする会社なんだ」というのは、働き甲斐にも繋がっているし、愛社精神にも繋がると思っています。
絹: 桂駅エリアにある松本工務店さんの会社まで歩いていきました。そしたら入り口の所に“地域のおしごと博物館”という旗がかかっています。いいデザインの、いいロゴの。そして作業場に入って行きますと、木工機械が何台か置いてあって、材料が置いてあって、長机が子どもたちを迎えるためにセットしてあって、保護者の人が座る観覧席みたいなパイプ椅子も用意してあって、きれいに掃き清められてあってと。わあ、歓迎されているんだなと、工務店さんの作業場って、こんなんかという感じで子どもたちが入ります。
今、社員教育の一環でもあると代表理事が言われましたけど、子どもたちにどんな出迎え方して、「大工のおしごとってこんなんよ」と伝えようと、一生懸命打ち合わせして、丁寧に準備しておられたんだろうなと思いましたね。
鈴: 1つ面白いエピソードがあります。これも工務店系だったのですが、「社員はいつも仏頂面で仕事をしているのに、子どもにはこんなええ笑顔で接しられるんや」と。とっても大きな社員の財産ができたというアンケート結果を頂いたことがありました。
 

●事業継承のきっかけに

鈴: それと鈴木モータースも参加したことがあるのですが、息子さんに手伝わせるきっかけになるので、事業継承の今日は初日になったというような、うれしいご意見もいただきました。
絹: なんかちょっと背中がゾクッとしませんか?多くの企業経営者が後継者について悩んでいます。色んな職人さんの後継者がいなくて、あるいは中小企業の後継者がいなくて、M&Aで企業が売りに出されるような現象が、ひょっとしたら日本全体の体力を奪うことにならないか。私もそういう心配をする者の1人ですけれども、どうやら鈴木代表理事率いる一般社団法人未来コンシェルジュの皆さんはその辺にもターゲットを当てていらっしゃるようです。
さあ、リスナーの皆さん、もう一度この地道なイベントについて、知っていただきたいなと思って、今日はゲストに来ていただいたのですが、10月28日に北区エリアでなさるもう一度こういうイベントがございます。このことについて軽く解説をお願いできませんでしょうか。
 

■エピソード3 地域を育てて地域に生きる「地育地生」のために

●10月28日、“地域のおしごと博物館”開催します!
鈴: もう来週になりますが、来週の土曜日に開催いたします。今度は10企業が集いまして、様々な企業がまた体験をいたします。これもまたとっても良い内容をご用意いただいています。今現在、4つが満席となっているのですが、残りまだ残席受付中ですので、ホームページの方でご紹介もさせていただいています。ぜひぜひご覧いただきたいと思います。
絹: ホームページで検索掛ける時は、“地域のおしごと博物館”と検索するのがいいんですね。
鈴: はい。ホームページがございまして、ご紹介しています。
絹: 実は10月28日の北区エリアの“地域のおしごと博物館”に参画される企業に、私の尊敬している企業があります。吉田創一社長率いる“フラットエージェンシー”さん。「ほんとに不動産屋さんか?」というくらい不動産の枠を超えて、地域づくり企業と言うべき企業です。その方がいったいどういう形で小学生を受け入れるプロブラムを社員さんと組まれるか、知りたくて知りたくて仕方がないのですが、僕、当日別の用事があって行けないんですよ。また後日談、是非聞かせて下さいませ。
鈴: 吉田社長ともその未来力会議で最初の頃からお出会いしておりまして、今回初めて“TAMARIBA(たまりば)”カフェさんを拠点に、60名の定員を引き受けます。保護者には必ずお1人ついてきてもらっていますので、120人は確実に“TAMARIBA(たまりば)”カフェさんに集合いたします。やっとここまで開催できたかと私にとっても記念の開催となります。
今回12回目になりまして、これを達成しますと、京都市で開催していないのが東山区、右京区、上京区の残る3つとなりますので、もしこれを聞いていただいて、「やりたいわ」という所がありましたら、是非手を挙げていただきたいと思っております。
 

●地蔵盆のようにすっと継続して、そして京都中に広げたい

絹: 小学生に地元の企業やお店の仕事をバーチャルではなく、リアルに体験していただくという、本当に珍しい企画です。それを率いるのが高校生であったり、大学生であったりすると。そういう体験の場を支える、丁寧に準備する大人がその背景で静かに見守っていらっしゃる。これはすごいという気がいたします。そしてこれが広がって行くといいですよねえ。
鈴: そうです。本当に地蔵盆のごとく、そこにずっとこのイベントが継続していくことを願っております。そして暖簾の形になっているこのフラッグが、京都中にかかるといいなと思っているところです。
絹: 私がキーワードとしてアンダーラインを引いているのは、「半径500m限定のこころとは」、「次世代を育てる要素が入っていないとまちづくりではないと思います」という鈴木代表のお言葉、それから「これから小さく多発がキーワードだと思います」とおっしゃったこと。「大きなイベントではなくて、こじんまりしたものを同時多発的にやっていくのがアフターコロナの我々の在り方かもしれませんね」ともおっしゃっていましたね。
 

●こじんまりしたものを同時多発的に

鈴: 売上、社屋の大きさ、借金の大きさが値打ちだみたいな時代から、コロナを経て、やっぱり「地域に根差した」とか、「小さく、その中で楽しく」というようなことがキーワードになっていくと思っていますので、地域を育てて地域に生きる、「地育地生」という四文字熟語を作っているところです。
絹: 「地産地消」じゃなくて、「地育地生」、なるほど。
鈴: 全てのことにおいて皆さんが「地域を育てるのは自分たちだよ」と。文部科学省ではないし、国でもない。やはり中小企業家ができる地域活動だと思います。
絹: 「地域を大切にして、地元を愛さずして、どこが中小企業経営者やねん!」と。
鈴: 決して興味のないことでされる必要もないと思うんです。いっぱい課題はありますので、地域資産、地域課題を元に、地域活動を是非小さな中小企業家が小さく起こしてもらいたいと思います。
絹: リスナーの皆さん、いかがでしたか。本当に地元に対する思いが強い中小企業家同友会の女性部会長さん、鈴木千鶴さんをお迎えしました。
この番組は心を建てる公成建設の協力と我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
投稿日:2023/10/26
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