公成建設株式会社は、建設業を通じて、豊かな国土づくりに邁進し、広く社会に貢献します。

まちづくりチョビット推進室
TOP > まちづくりチョビット推進室

カテゴリー まちづくりチョビット推進室

第159回 ・人とつながりのある住まいを作りたい~コレクティブ・ハウスというくらし方

ラジオを開く

浅: 浅野 哲生 氏(ねこレクティブ 代表)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
image
  浅野 哲生 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソード、特に隠れたエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のリモートゲスト紹介は、タブレットの中で小さいお顔が写っておりますが、浅野哲生さん。皆さん聞き覚えがないとは思いますが、ねこレクティブの代表です。浅野さん、よろしくお願いいたします。
浅: よろしくお願いいたします。
絹: ねこレクティブと言っても、何のことかたぶん皆さんわからないと思います(笑)。おいおいこれを解き明かしてまいります。そして本日の番組のタイトル「人とつながりのある住まいを作りたい~コレクティブ・ハウスというくらし方」と題してお送りいたします。さあ、これも難しい(笑)。では番組のタイトルについて、本日のゲスト浅野哲生さんから解説を。いきなりゲストに丸投げという形で、よろしくお願いいたします。
 

■エピソード1  コレクティブハウジングの可能性

●ねこレクティブはこんなことをしています 
浅: 改めて、ねこレクティブの浅野と申します。よろしくお願いいたします。
絹: ねこレクティブのねこはひらがなの「ねこ」、キャットです。コレクティブとねことを掛けた造語であります。
浅: 私どもは、ねことコレクティブハウスということで、ねこと人とのつながりのある住まい方として、コレクティブハウスというものを、もっともっと日本に、関西に、京都に広めていきたいなというお思いで活動を進めています。
絹: 現在、ねこレクティブチーム、私の情報ではメンバー構成約3名。この間始めてお2人とはお会いしました。
top
     ねこレクティブHPより
 

●コレクティブハウスとは

浅: はい、そうです。コレクティブハウスというものが何なのかということを疑問に思う方もいらっしゃるでしょうから、まずそこから。コレクティブハウスは賃貸住宅です。各戸は水回りが独立した普通の賃貸のような住宅なのですが、それに加えてコモンスペースがある住宅です。
絹: リスナーの皆さん、イメージしてくださいね。ここ、実は重要なのですが、分譲ではなく賃貸です。借りられます。一部屋一部屋に水回り、ひらがなで言うとお風呂、トイレ、キッチンがそれぞれ自分の部屋にあります。それプラスアルファ、他の住人さんも一緒にいられるリビングみたいな、食堂みたいな、余計な部屋がついていると。コレクティブハウス、もうちょっと別の言い方ありますか。
浅: 居住者さんが、自分たちで自分たちの暮らしを作っていくような暮らし方をしているということです。例えばさっき共用部分にコモンルームがあると申し上げましたが、そこにはキッチンがあったりします。そのキッチンで当番制でみんなの食事を作ったりします。だいたい一ヶ月に一回くらい、当番を持ち回りでやっているようです。食べたい人は申し込んでおいて、当番が作った食事をコモンルームで食べたりできる。そのような生活の一部を共同化するような生活ですね。ちょっとイメージがつきにくいですかね。
絹: 会社の寮のちょっと豪華版と言うんでしょうかね。例えば独身寮や学生寮をイメージすると、自分の個室はそんなに大きくないから、水回りなんてほとんどないよね。でも二人暮らしとか、子育て世帯とか、三人とか四人でも暮らしていて、そういう空間はあるけれども、独身寮のように食堂のようなものもあると。でも独身寮のように、寮監さんみたいな人がいて、料理人さんが作ってくれるというわけではなくて、物好きにも、月に一回くらい、食事当番を順番に回して一食430円くらいで作ってもいいわよみたいな、そういう変わった連中が集まってくる…。
浅: 変わった連中なのかどうか、ちょっとわからないですけど(笑)。
img08img09
(コレクティブハウジング社HPより
 コレクティブハウス聖蹟コモンミールのクッキングと食事の風景)
img11img10
(コレクティブハウスHPより
 コレクティブハウス聖蹟の屋上では菜園を、地上庭では樹木や草花を育てておられます)
 

●こうしたくらし方、実は1つの潮流だったりします

絹: でも変わった連中という思い込みが実はそうじゃなくて、首都圏の方では確か2000年前後からじわじわと市民権を得ている暮らし方というふうに、なんとなく感じていますが、その辺はいかがですか。
浅: 関東の方では、NPO法人コレクティブハウジング社さんというところが企画・コーディネートされているコレクティブハウスが、それこそ2000年代からいくつもできています。実際に例えば子育て世代の方も住んでいらっしゃいますし、独身の方もいらっしゃいますし、高齢者の方も住んでいらっしゃったりします。色々多世代の方々が暮らしていらっしゃるという住まい方ですね。
絹: 私も少し予習をしてまいりました。コレクティブハウジング社、CHC社という東京のチームが2000年前後から実例を積み重ねておりますが、ブックレットと言いますか小冊子を作ってくださっていたり、新聞を作っていらっしゃったりします。それを読ませていただきますと、例えば古いマンションの2フロアを、ある大家さんが買い切られて、15家族くらいが一緒に住む、そんなコレクティブハウスをおつくりになられている事例が書かれていました。普通、賃貸で大家さんと言うと、浅野さんがさっき教えてくれたコモンルーム、食堂なんてつくらないで、できるだけぎっしり入ってもらって効率重視でいったらいいのに、その大家さんは効率よりもコモンルームで住人同士が助け合うみたいなことを選ばれた。不思議なことをするなと思ったら、そっちの方がなぜか人気があって、空家にならない。大家さんにとってもいい現象が出ているようですね。
(コレクティブハウジング社 メディア掲載情報はこちら
 

●引っ越してきて、知り合いのいない寂しさがきっかけで

浅: 住まい側からしても、いわゆるワンルームなり、どこにでもあるような賃貸の住宅というのは、ご近所さんの繋がりはほとんどないですよね。京都などでも「町内会に入ってください」等、色々あると思うんですけど、本当にその町内会にも入らないでいると、地域のつながりがほとんどできないんですね。
私自身もずっと京都に暮らしていたわけではなくて、実は5年ほど前から仕事で京都に住んでいるのですが、越してきた当初は全く地域に知り合いがいなかったんですよ。
絹: 浅野さんは5年前はどこにいたんですか。
浅: 元々は兵庫県の神戸市にいたんですけど、京都に越してきて、京都には本当に友達もいないし、知り合いもいないしというなかで、休みの日に家に帰ったら、本当に一人なんですよ。話し相手もいないし、寂しいなと思っていました。そこで猫と暮らせば幸せになるんじゃないかと思って(笑)。
image (2)
絹: それがねこレクティブのそもそもの始まりの発想ですね(笑)。
浅: そうです(笑)。でも一人だとなかなか飼いづらいわけです。旅行に行って、家をあけると猫がひとりぼっちになるわけですから。だったらシェアハウスだったらいいんじゃないかと、色々さがしていたんですけど、シェアハウスって皆さんご存知ですかね。風呂、トイレ、キッチンは共同で、寝る場所だけ別に部屋があるみたいな住宅で、知らない人が一緒に住んでいると。
 

●シェアハウスもいいけれど、1人の時間も大切…

絹: なんか素敵だなと。なんか昔のアメリカの青春ドラマに出てきそうな暮らし方、だけどどうしても水回りだとかトイレだとかお風呂だとかが共用なので、人と会いたくないという時にこもりにくいという部分があるのかなあと、僕は想像しかできませんが、そんなふうに思ったりもします。
浅: そうですね。一人だと寂しいんですけど、シェアハウスって、ちょっと密すぎるなと感じていて、やっぱり一人の時間も大事だし、人との繋がりもつくりたい、そのベストなバランスって何だろうと思っていたんです。そうした時に京都府さんがコレクティブハウスを何年か前から推進する事業をされていまして、私も関東の方でコレクティブハウスに実際住んでいらっしゃる方が話をされるイベントに参加させていただいて、「あ、これだ!」と思ったんです。
(京都府HPより『京都版コレクティブハウスの推進』はこちら
 

●子育て支援としてのコレクティブハウス

絹: なかなかアンテナ高いですね。私が気が付いたのがつい最近で、今年のお正月の新聞記事で気が付いて、そういうイベントに2回ほど出席をしました。
そのプロジェクト、もともとは今の京都府知事の西脇さんの政策の柱の1つに「子育て環境日本一にしたい」というのがあるのですが、京都府の子育ての推進セクションにいる若き行政マン川崎哲嗣(さとし)さんが、その政策を具体化するためのアイデアを提案したのが始まりだとのことです。彼は北欧で生まれたコレクティブハウスという暮らし方が子育て環境を分厚くするのにいいはずだというレポートを色んな仲間と書いて、庁内ベンチャー事業に提案、それが取り上げられたと。その結果が浅野さんや僕たちが出たモデルケースを京都にもつくろうというプロジェクトだったということです。
浅: はい、その通りです。京都府が子育て支援の一環としてコレクティブハウスを推進しようということなのですが、お子さんがいる方で、例えば親御さんがどちらも出かけるとなった時に、コモンルームって誰か人がいるわけなんです。ちゃんと顔も見知った人たちがいる。そうすると「ちょっと出かけるから子どもを見ていてねと」いうこともできるだろうし、子どもたちも他の家の子どもたちとそのコモンルームで遊んでいたりできるわけです。今は兄弟姉妹がいっぱいいる家庭って、そんなに多くはないと思うので、一人っ子だとしても、コレクティブハウスに住んでいる色んな年齢の子どもたちと一緒に遊べたりするわけです。そうすると子どもたちにとっても、非常に楽しい住まい方ですし、子どもを持たれる方にとっても安心してそこで暮らせるというので、これはいいなと。実際、私がもし子育てするにしても、この環境はいいなと思って。
 

●顔の見える安心感

絹: 普通の分譲だとか賃貸だとかって、僕は本職は建設屋ですから、その手の共同住宅もお仕事として工事をしたりするんですが、私自身は2003年に自分の土地の上に五階建てのコーポラティブハウスを建てるという実験をやったんです。それをなぜしたかと言うと、自分の頭の上だとか、隣に、誰が住んでいるのかわからないような所に住みたくないと。挨拶もしないようなのは気持ちが悪いと。色々苦労はあったけれども、お陰様でうちのマンションの13家族はみんな顔見知りです。たとえ頭の上でドンドンドンと子どもの足音がしても「あ、あの子が暴れてるんや。元気やな」と苦にならないし、年に一回組合員総会をやって、かつては大バーベキュー大会とかをしたものです。カタい会議の後は、みんなで料理を一品ずつ持ち寄って、ロビーで焼きそばを焼いたり、子どもたちは花火をしたり、アイスボックスにビールを入れて、おじさんたちはそれで宴会をしたりとかね。うちの場合は分譲ですけど、それを賃貸でやろうというのが、たぶんコレクティブハウスなのかもしれませんね。
浅: そういう顔の見える関係性の中で住む安心というのが、やはりあると思います。
絹: 京都府はモデルで府が先導して、しかも建設交通部といったハードのセクションではなくて、子どもや青少年だとか、子育て環境を良くしようというセクションがそれに動き出したというのがちょっと面白いですね。
 

■エピソード2 コレクティブハウスのオンライン見学会、開催しました!

●住みたい側からのアプローチに、それはそれは喜んでいただいて…
浅: 我々も実際、コレクティブハウスがどんなものか見学してみようということで、今年の9月にオンラインの見学会というものを開催しました。先ほどの話に出てきたNPO法人コレクティブハウジング社さんたちと、実際にコレクティブハウスに住んでいらっしゃる方々の生の声を聴いてみようと企画したものです。
絹: リスナーの皆さん、信じられますか?このコロナの影響で、東京の視察のプロジェクトが中止になったんです。やっぱり行きにくいと。京都府は予定していたんです。ダメになったのを、ここにいるねこレクティブの浅野さんたちが「オンラインで見学会、やる気になったらできるやろ、やってよ」と東京の人たちにねじ込んで(笑)、実現させてしまったんです。コレクティブハウジング社の人たちも協力がすごくて、聖蹟というコレクティブハウスと巣鴨にあるコレクティブハウスの2軒のコモンルームに集まって下さって、直接質疑応答だけじゃなくて、動画までつくってくださったんですよね。
浅: 紹介動画ですね。
絹: なかなかの手練れの連中やなというのがわかりましたね。
浅: もともと私たちは2020年の4月から活動を始めているのですが、最初は私一人でねこと暮らすコレクティブハウスをやりたいとネットでワーワー言っていたのですが、一人協力者が現れまして、一緒にやろうと活動を始めたわけです。私も本業は別にあって、この活動をしているわけですけれども、建築のプロでもないし、住宅のプロでもないし、どうしようかというので、東京の方にコレクティブハウジング社というのがあるよと。コレクティブハウスの企画、運営、コーディネートをやっているよということで問い合わせをしてみました。そうしたらコーディネーターさんと実際住んでいらっしゃる方の三人がかりで、こうやってオンラインで話を事前に聞いてくださったんです。その中で我々の思いとかをお伝えしたところ、私は今年31ですけれども、若い人たちが主体となって、しかも居住希望者の側からコレクティブハウスをつくりたいというのは非常にうれしいとおっしゃっていただいて…。
絹: そうですよね。行政が言ってきたのでも、私みたいな建設業者の下心があるようなおっさんが言ってきたのでもなく、純粋にこういう所に住みたいんだという人が言ってきたと。これはうれしい。
浅: もともと関東の方にあるコレクティブハウスもやっぱり事業者主導で今までつくってきたけれども、「こんな所に住みたい」「自分たちの暮らしを自分たちでつくりたいんだ」という思いを持った人たちが集まってつくるという動きが、どんどん加速していってほしいよねと思っていらっしゃったらしくて、非常に喜んでいただきました。このコロナ禍で見学会、直接はちょっと難しいけれども、オンラインでならできるし、もしやりたかったら言ってねとおっしゃっていただいて、「じゃあ、ぜひやらせていただきます」と。「我々が告知して、人を集めてやるので、是非お願いします」というふうに連絡を取って、ご快諾をいただいて、今回のオンライン見学会にこぎつけたという形です。
 

●コレクティブハウスの空気感、おわかりいただけますでしょうか

絹: 私自身もそのオンライン見学会の中に紛れ込ませていただいたのですが、本当に素晴らしい2時間半くらいの集まりでした。その企画をする人、コーディネートをする人だけじゃなくて、実際に住人として住んでいらっしゃる方々がインタビューに応じてくださいました。
もうあまり時間がないので、エピソードをそんなにたくさん紹介できないですけれども、「なんでここのコレクティブを選んだの?」というインタビューをした時に、一人の入居者の方が「パートナーがその当時、人間嫌いでやさぐれていたので、これではいかんと思って、無理やり引きずり込んだ」と。で、やっぱり人との付き合いが、やさぐれていた人の内面を癒す効果があったのかもしれないし、「コレクティブに移って、子どもが増えた」なんてエピソードもありましたしね。それから2007年に竣工した「スガモフラット」でオンライン見学会をさせてもらったのですが、これはなんと元児童館、14階建ての建物の高層の2フロアをリノベーションしていて、大人15人、子ども7人という人口構成です。それから「コレクティブハウス聖蹟」は郊外アパートのリノベーション型20戸とありますが、これも面白かったですね。
fhri_m7ra884umq1jd1mv6wvsqzpnn__
(コレクティブハウス社HPより転載
 スガモフラット居住者組合「スガモンズ」月1回の定例会の様子)
 「スガモンズ」Instagramはこちら、ブログはこちら
浅: はい。コレクティブハウス専用でつくられた建物なので、一棟丸ごとコレクティブハウスなんですよね。
9l9wgvxmlusnon9k2xsjigop1bfqiadj
(コレクティブハウス聖蹟:コレクティブハウジング社HPより転載)
絹: なかなか言葉だけで、現地を見ていらっしゃらないリスナーの方にはお判りいただきにくいかもしれませんが、コレクティブハウスの住人たちの特徴が少し聞き取れたような気がしまして、なぜか地域に滲み出すという性質がある。東京の方の町内会の青年部になぜかコレクティブの住人が参加して、「兄ちゃん、よく来たな」とすっごく喜ばれるとかね。夏祭りの裏方をやってしまうとか、手作り市をやっている人もいるとか、子ども食堂もやっていると言ってましたね。
浅: そうそう、言ってましたね。あとガレージで日本酒バーみたいなのをやっているとか。
絹: だから何か変わっていると言うか、面白いと言うか、古くて新しい、昔のニッポンてこんなこと当たり前やったんとちゃうのというのを、もう一回やり直している人たちみたいな気がしますね。
 

●ひとを大切にした民主的な運営です

浅:  その古い中にも新しいやり方というのもあって、コレクティブハウスの住人というのは一ヶ月に一回くらいミーティングをされているそうなんですけど…。
絹: 第三日曜の午前使って、定例会をやっているんですよね。
浅: 暮らしの色んなところを話し合うというところなんですが、その中でも例えば自治会などでは一世帯一人出してくださいという形だと思うんですけど、コレクティブハウスは個を大事にするというところで、一世帯一人ではなくて、大人一人ひとりが参加してくださいねと。住んでいる人たちの良いように、ルールを変えていきましょうねというやり方で、非常に民主的と言いますか、人間を大切にするような運営をされているなあというところで、昔ながらのムラ社会みたいなものとはまた違う新しい風が吹いている繋がりだなと感じました。
絹: リスナーの皆さん、今までのところ伝わりましたでしょうか。若い31歳、僕は62歳ですから、ちょうど半分の人が、人と繋がる暮らし方に可能性を見出しています。他の土地から京都に越してきて、やっぱり知り合いがいないと寂しい、暮らしにくい、ねこを飼いたくても一人では飼えないと。そこで周りの人と繋がりあうとか協力し合う、助け合うみたいなことを考え出したと。そんなことを真正面から考えている人がここにいるということに驚きませんか?僕らの世代では核家族で、自分が!自分が!私たちだけ!私たちだけ!とばかりに本当に孤立分断されて、子育ての時には、誰にも相談できずに若いお母さんが悩んでしまったり、そうやってずっとここまできたのが我々の世代です。今、揺れ戻しがきていますよ。
浅: はい、これから新しい暮らしをつくっていきたいと思っています。
絹: ということでそろそろ終わりです。これは今後追跡いたしますので、その2、その3のコレクティブハウジングシリーズ、是非ご期待ください。
浅: よろしくお願いいたします。
絹: この番組は心を建てる公成建設の協力でお送りいたしました。ねこレクティブの浅野さん、ありがとうございました。
浅: ありがとうございました。
絹: それではさよならぁ。
image
(ねこレクティブHPより)
投稿日:2020/10/21

第158回 ・知っているようで知らない上下水道局の仕事~ダブルメモリアルイヤーに思う

ラジオを開く

辻: 辻井  剛 氏(京都市上下水道局 総務部 総務課 広報企画係長)
寺: 寺田  洋 氏(京都市上下水道局 総務部 総務課 協働推進係長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
辻井、寺田係長水道局
  (辻井 剛 氏 ・ 寺田 洋 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト、お二方、上下水道局の方からお呼びしております。京の水からあすをつくる、京都市上下水道局 総務部総務課 広報企画係長 辻井剛さんです。
辻: 辻井です。よろしくお願いいたします。
絹: そしてもうお一方、同じく上下水道局 総務部総務課 協(とも)に働くと書いて協働(きょうどう)と読む。協働推進係長 寺田洋さんです。
寺: 寺田です。よろしくお願いいたします。
絹: 辻井さん、寺田さん、よろしくお願いいたします。
我々の大切な「水」を扱っているところから、今日、お二方のゲストです。では今日の番組タイトルとテーマを申し上げます。
「知っているようで知らない上下水道局の仕事~ダブルメモリアルイヤーに思う」と題してお送りいたします。
それでは辻井さんと寺田さんにお話しいただく前に、私のゲスト紹介ではちょっと物足りないということで、進行の絹川が手を抜きまして、時々やらかすゲストの他己紹介です。では辻井さん、寺田さんとはいかなる人物ぞ、短く述べよ。
辻: そうですね。一言で言うと、優しい男ですよ。実は前の職場から一緒に仕事をしていまして…。
絹: え、前の職場って、どこだったんですか?
辻: もともと区役所の方におりまして。
絹: あ、伏見ってことでしたね。「ふしざく」あれは正確には何て言いましたっけ。「伏見を肴にざっくばらん」。おもろい部署にいましたね。
辻: そうです。区役所の方でも2年ほど一緒に仕事をしていまして、その後お互い異動したんですけど、また異動先で再会ということで、不思議なご縁を感じております。
絹: はい。という寺田さん、見るからに優秀そうな方です。では寺田さん、辻井さんとはいかなる人物ぞ。
寺:  飄々と何事も前向きに仕事をこなす方で、上下水道局の広報にかかる事務を一手に引き受けている、非常に優秀な職員です。 
絹: 結構広報って、大変ですよね。
辻: ああ、色々、そうですね。
絹: ちょっと聞いたんですが、「今年は色々プロジェクトやイベントを用意したけど、全部あかんようになったんや。大分困ってます」ということをおっしゃっていました。
はい、そういう広報イベントに代わるという形で今日はラジオを通して上下水道局の知っているようで知らない仕事について、お二人に語っていただきます。
それではエピソード1、参ります。寺田さんから口火を切ってください。
 

■エピソード1 琵琶湖疏水の魅力発信

●琵琶湖疏水が日本遺産に認定!
寺: 私が協働推進係長として担当していますのが、琵琶湖疏水の魅力発信にかかる事業でして、先日大変うれしいニュースが一つございました。文化庁が所管しております日本遺産という事業があります。
絹: あんまり詳しく知りませんので、それ、教えていただけますでしょうか。
寺: 日本遺産は文化庁が所管していまして、日本全国には多数の文化財があるのですが、一定の地域内にある文化財を一体的に活用・整備し、その情報発信をまとめていこうと。そういうことを通じて文化財群の魅力を高めて、地域の活性化につなげていこうということで、色んな文化財群を認定するのが日本遺産という制度でございます。この度、私ども上下水道局が管理しております琵琶湖疏水が今年の6月に認定されたという、うれしいニュースが入ってきたところでございます。
絹: ご存じのように私の本職は建設業です。我々のような建設屋にとっては、うれしい、非常にうれしい。「これまで認定してくれんと、今頃遅いやんけ!」と言いたいくらいうれしいです。よかったです。
本当にわが京都では、疏水は大事業で先輩方から聞くところによりますと、当時の国家予算に匹敵するようなものが京都に投入されたと。当たり前に水を飲んでますけど、トイレに流してますけど、先人たちのものすごい仕事がなされたことを、特に土木系技術者は身に染みて勉強していると思います。
 

●びわ湖疏水船、ご存じですか?

絹: これ、うれしいニュースですけど、具体的にはどのように発信していかれるんですか?
寺: 日本遺産に認定されたら、どういうことができるのかというところで、そういう情報発信にかかる事業ですとか、あとは琵琶湖疏水の観光客の受け入れを目的とした整備などを進めていきます。
絹: 近年、びわ湖疏水船というのが就航したじゃないですか。あれ何年前でしたか、割合最近でしたよね。
寺: そうですね。平成30年の3月に就航したところです。
絹: あれ、いっぺん乗ってみたいなと思うんですけど、今度のコロナ禍の前はなかなかいっぱいで乗れなかったんじゃないですかね。
寺: そうですね。昨年までの実績で言うと、毎年春と秋の観光シーズンに運航しているのですが、通算で95%以上の乗船率を誇っている、本当に人気の事業となっております。
絹: ここにある資料、市民新聞ですか。「琵琶湖疏水竣工130周年」という、なかなかレトロな雰囲気の大きな写真と共に、新聞を開きますと、疏水周辺の見どころマップというのもあって、いい資料ですね。
 京の水だよりvol.11
京の水だよりvol.11より
 

●疏水沿線の観光スポットー「琵琶湖疏水マップ」作りました!

寺: 疏水沿線は本当に色んな観光スポットが集まっている場所でございますので、そういったところを皆さんに知っていただいて、歩いて回っていただきたいという思いで作っております。
絹: 疏水沿いの遊歩道は、桜の季節にはすごくいいスポットですし、あそこは自転車を入れたら、まずいんでしたっけ?
寺: いえ、山科区内を走る琵琶湖疏水沿線は東山の自然緑地という、歩く、そしてサイクリングもできるような歩道が整備されていますので、歩いても自転車に乗っても楽しんでいただける場所になっています。
絹: 琵琶湖疏水の疏水船に乗って、上ったり下ったりするのも素敵ですが、そぞろ歩くのも素敵な場所です。そのために上下水道局さんは「琵琶湖疏水マップ」をおつくりになっていますので、ぜひ行ってくださいね。
Ea2fcAoUYAEm79-
 

●琵琶湖疏水沿線の見どころをVRでご覧いただけます

絹: そしてなんと、「VRで魅せる琵琶湖疏水」とありますが、これ一体何ですか?バーチャルリアリティーを使うんですか?
header_logo
寺: 「びわ湖疏水船」とホームページで検索いただきたいのですが、そうするとこの船に関するホームページが出てまいります。そこに「VRマップ」ということで、ページを作っておりますので、ぜひそちらをご覧いただきたいのですが、疏水沿線のスポット数十か所、40か所以上をVRでご覧いただけるような情報発信をしています。
絹: そしたらホームページから、専用の眼鏡のようなものをしなくても、いけるんですか?
寺: そうです。ゴーグルなしで、ホームページの画面で見ていただける、そのスポットの360度の周辺の春と秋のそれぞれの映像を見ていただいるようなコンテンツになっております。
絹: リスナーの皆さん、なかなか知っているようで知らないでしょう。そういう工夫もされているんです。ぜひアクセスしてみてくださいね。「琵琶湖疏水船」で検索すると、そういう40か所にアクセスできます。
さあ、まずは疏水の魅力発信ということで、寺田さんに口火を切っていただきましたが、一旦ここでおきまして、エピソード2として辻井さんにマイクをお渡ししてお話しいただきましょう。
 

■エピソード2 上下水道の仕事って?

●今年はダブルのメモリアルイヤーです 
絹: 先ほども言いましたが、今年はメモリアルイヤーなんですね。今年は記念の年です。
そこのところ詳しくお話しいただけますか。
辻: わかりました。今年はですね、メモリアルなんですが、ダブルのメモリアルということになっています。中身としては琵琶湖疏水の竣工から130年、あと下水道事業開始から90周年という、この2つの大きな節目の年になっています。
絹: そうかあ。琵琶湖疏水は130年前に先人がおつくりになって、その後40年経って、やっと下水ができたんですか。
辻: そうですね。時間差で言うと、それくらいになります。
絹: 僕は昭和の30年代の生まれですけど、その頃はまだ汲み取りと言うんでしょうか、バキュームカーと言っても、今の若い人はわからないかもしれませんが、そういうのがまだ走っていましたね。やっぱりまだまだ下水道は完備されてなかったんですね。
辻: 昭和30年度末で言うと、人口当たりの下水の普及率がまだ25%くらいといったデータもありますね。
京の水だよりmini vol.8-3
京の水だよりmini vol.8より
 

●上下水道の機能や役割、あまり意識されていないでしょうが…

絹: 上下水道の仕事は、我々の日常生活に密着しすぎていて、実はあまり知らせていません。インフラという言葉を皆さんはご存知でしょうか。便利な都市生活を過ごすために、それこそ黒子のように溶け込んでいる、自分たちの足元にある道路であるとか、ライフラインの代表が上下水道でありますけれども、電気やガスというようなものもインフラストラクチャーと称します。その大きなものをご担当なっている上下水道局、その辺についても辻井さんからお話いただけそうですね。
辻: 今、お話いただいたように、普段、皆さんの生活でなかなか意識することって、そう多くはないのかなと思うんです。特にお引越しをされた時に、水道の開栓の手続きをされたりという方もいらっしゃるかと思います。でも特に下水道、汚れた水をきれいにするとイメージされる方は多くいらっしゃるかと思いますが、他にも色々な機能があったり、役割があったりするのですが、その辺については、実はあまり知られてないのかなと思うところです。
 

●最近の豪雨への対策としてー堀川雨水幹線、呑龍トンネル…

絹: 我々、建設業者はインフラをつくったり、整備したりする黒子の仕事を、上下水道局さんと一緒にやることも結構多いです。ぜひ、みなさんの足元をどういう形で黒子たちは支えているかというのを、時々意識していただくと、上下水道局さん共々、我々はすごくうれしいと思います。
見えそうで見えてない上下水道局さんの仕事で、例えば近年、雨がどっかんどっかん降るでしょう?そんな時には下水道にはものすごいプレッシャーがかかると思うんですけど、そんな話もどうでしょう。
辻: そうですね。最近のゲリラ豪雨の降り方って、以前に比べてもすごいものになっています。ああいう突発的な雨は、昔は地面が土だったので、地面そのものに吸い込まれて消化されていたのですが、今はアスファルトですので、吸収する能力が以前に比べて下がってきている課題がございます。だからと言って溢れさせるわけにはいきませんので、京都市としましても、雨水をためる大きなトンネルや池をつくったりして、浸水被害の軽減に努めていたりします。
絹: 例えば、皆さんご存知の堀川通、あの真下あたりに、とてつもないそういう仕組みが隠されていますよね。
辻: はい。堀川中央幹線のことですね。これらの施設を雨水幹線と我々は呼んでいます。
絹: それから呑龍トンネルも着々と。もうだいぶできているんですよね。それはなぜそういうものが計画されて、工事が行われているのですか。
辻: 一つには浸水被害の軽減と言いますか、未然に町に水が溢れるということを防ぐのが大きな目的です。
 

●上下水道管のメンテナンスも我々の大きな使命です

絹: 堀川通を通ったことがある方、数年前の豪雨で、堀川通の舗装がぼこんと盛り上がっていた事件を覚えていらっしゃる方がおられるかもしれません。いきなり舗装が、大きなところでは段差が30センチ近くアスファルトがめくれあがっていたと。「バイク通らなくて良かった。大事故になるわ」というのを目撃したことがあります。それは地中に走っている雨水下水道管にものすごい量の水が集中して、それが空気を圧縮して、空気が押し上げたということを、後で大学の先生の解説を聞きましたけれども、我々の足元ではそういうことが時々起こります。市民生活を守るために、上下水道局の方々が日々メンテナンスに苦労しておられるというのは、そういうところです。
そのためには古くなったインフラをなんとかメンテナンスしなければなりませんが…。
ASCII

R0015689

辻: やはり時と共に古くなっていきますので、きちんと更新したうえで、次の世代に繋いでいくということが、私たちの大きな使命です。
絹: 今、例えば下水道管なんか、あるいは水道管もそうですが、メモリアルイヤーとおっしゃいましたよね。下水は90年と。ということは結構なお年寄りの水道管、下水道管が京都市内には埋まっているのではないですか。
辻: 場所や敷設された時期にもよるのですが、随時そういう古いものは取り換えていって、新しいものにしていくということですね。
絹: 私も詳しくはないのですが、古い水道管をイメージしていただけますでしょうか。昔は鉛でつくっていた時期もありましたし、人間と一緒で、管の中にもコレステロールが付くんですよね。それをきれいにしたり、あるいはコンクリートの下水道管だったら、重みで割れたり、木の根が侵入して割れたり、中が詰まったりして、壊れていくことがあります。そういうものも管更生工法といって、地面を掘り返さずにきれいにしていくという、そんな仕事も建設の世界にはございまして、上下水道局さんからそういう仕事が出て、地元の業者たちも日々汗を流しています。そこからの繋ぎですが、「だから水を使ってね」でしたっけ?
京の水だよりvol.12-1
京の水だよりvol.12より
 

●水を使って有意義な暮らしを送っていただきたい…

辻: もちろん無駄にいっぱい使っていただくということを推奨するわけではないのですが、我々も経営の観点からきちんと収入を確保していくというのは、大きな課題であります。
絹: ちょっと言いにくそうにしておられますので、捕捉しますね(笑)。なんで皆さんに水道使ってねと言うか。便利な水道を命の水を、皆さんの元に届けて、使ったお水を下水できちんと処理するためには、先ほど申しましたように、お年寄りになった水道管や下水道管をきれいにメンテナンスする必要がありますよと。そのための費用も独立した企業体として上下水道局は計画を持っていらっしゃいますので、「だからちゃんと水を使ってもらうことも大事なんです」と、言いたそうにしておられましたが(笑)。
辻: ありがとうございます(笑)。
絹: すみません、突っ込んでしまって(笑)。だから「お風呂だって、シャワーじゃなくて、風呂入れよ」って言いたい…というのが、水道局の皆さんですか。
辻: そうですね。我々はお風呂の魅力発信ということで、ここ数年やらせていただいていますけど、もちろん水量の話もあるにはあるのですが、より水を使って有意義な暮らしをしていただきたいと思っておりまして、例えばお風呂でリラックスしていただいて、免疫を高めていただいたり、より健康的な暮らしをしていただいたりとか、キャンペーン等を通じてご提案をさせていただいたりしているところです。
絹: リスナーの皆さん、今までにないコロナ禍のなかで、やっぱり自分自身の免疫力をきちんとメンテナンスするという意味でも、お風呂に入って、ゆっくりして、きれいにして、そういうものに対する生き物としての抵抗力をメンテナンスするのに、日本古来の、日本人が大好きなお風呂をもう一度見直してみませんかという、そういうキャンペーンも上下水道局さんは張っていらっしゃいます。ぜひ、自分たちの身を守るという意味でも、再度お風呂に目を向けてみたらいかがでしょうか。
 

●我々市民が浸水対策のためにできることー雨水浸透ます、雨水貯留タンク

絹: そのほかにもまだまだお話を承りたいことがあるのですが、我々が市民の立場で協力できること、我々のインフラを守るためにもう一つどころか、たくさんあると思うのですが、雨水浸透ますとか、雨水貯留タンクについてもお話いただけますか。
辻: そうですね。先ほど雨水幹線(大きなトンネル)のお話をしたのですが、そんな大事業と併せて、各ご家庭でもできる浸水対策として、雨水を地面に浸み込ませる雨水浸透ますというものがあります。さらに雨水をためておくタンクで雨水貯留タンクというものもあります。これら雨水貯留浸透施設に対して、助成制度とかも設けていますので、そういうものをご利用いただいて、設置をご検討いただければご家庭でも浸水対策にご協力いただけるということです。
絹: お家を新しく建て直す、あるいはリノベーションをかけられるときに、我々が京都市民として協力ができることの一つが、今の仕組みです。普通、雨水が屋根に降りますと、樋をつたって、ほとんど時間差なしに直接下水に放流をすることになります。そうすると140万市民の各家の屋根から一挙にドドドっと水が来ます。それを時間差攻撃にして、例えば絹川の自宅の庭にあるいは屋根に降った水を少し下水に流す時間を遅らせようという仕組みが、雨水浸透ますです。時間差攻撃で負担を少し軽くしよう、だからそういうことをやってくれたら、新設の場合は、一基につき2万5千円の助成をさせてもらいますよというものです。我々がお小遣いの範囲内でできることもあります。さあ、どうでしょう。寺田さん、辻井さん、最後に言い残したことはあるでしょうか。
京の水だよりmini vol.8京の水だよりmini vol.8-2
 京の水だよりmini vol.8より
 

●びわ湖疏水船がこの秋運航します!

寺: では最後に少しPRをさせていただきたいと思います。実は最初にお伝えしていた琵琶湖疏水船についてなのですが、この秋運航が10月1日から11月30日まで実施をする予定となっております。当然コロナの対策は万全にして、皆様をお待ちしておりますので、また8月の末、31日から予約販売が始まりますので、ぜひお応募いただければと思います。
絹: なかなか予約が難しい、人気のイベントですから、これは勝手なお願いなのですが、地元の工学院高校の生徒さんたちの学習と先人の日本遺産を経験するという形で、もし少しでもそういう枠をお取りいただけるようなら、ご検討ください。
寺: 承知いたしました。また、研修等でのお申し出も承っておりますので…。
絹: いいことを聞きました。小学校、中学校の先生も聞いているかもしれませんね。辻井さんは何か言い残すことはないですか。
京都市上下水道局Twitterより
 

●上下水道局ではSNSでの発信を行っております

辻: 私は上下水道局の情報は、SNSでも発信しておりまして、フェイスブック、ツイッター、インスタと3種類ありますので、ぜひまたご覧ください。最近では動画も上げておりますので、ぜひご覧いただければと思います。
絹: リスナーの皆さん、上下水道局さんは、結構発信に力をいれていらっしゃいます。というのは、やっぱり皆さんの足元を支えるインフラ、ライフラインを支える仕事というのは、伊達や酔狂ではできないのです。大変な仕事であるとともに、危険も伴います。でも皆さんの協力がないと、皆さんの元に新鮮なきれいなお水は運ばれませんし、できることは協力という形でやっていければいいなと思っています。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。辻さん、寺田さん、ありがとうございました。
辻: ありがとうございました。
寺: ありがとうございました。
 京都市上下水道局HPよりi
 京都市上下水道局マスコットキャラクター(ホームページより抜粋)
 ホタルの澄都(すみと)くん&ホタルのひかりちゃん
投稿日:2020/08/11

第157回 ・支え合うくらしと住まい~子育てと介護のダブルケアの経験から

ラジオを開く

熊: 熊倉 聖子 氏(NPO法人 場とつながりラボ home’s vi)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
IMG_1255-e1445224641150-1024x576
 熊倉 聖子 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日も不慣れなZoom収録です。本日のゲストは熊倉聖子さん。われらがNPO法人場とつながりラボ home’s viのメンバーの一角である熊倉聖子さん、左京区から。よろしくお願いします。
熊: はい、熊倉です。今日はよろしくお願いいたします。
絹: スタジオで対面をせずにやるというのも、非常に新鮮ですけれども、熊倉さんは日々バンバンオンライン打ち合わせ等、慣れていらっしゃるので、どうか引っ張ってください(笑)
お願いします。
熊: わかりました(笑)
絹: 熊倉聖子さんはhome’s viという、一部では大変有名なNPO集団の方です。場づくりに特化した集団ですけれども、リスナーの皆さんもぜひ覚えておいていただきたいと思います。彼らは何かしでかします。
それでは本日の番組タイトルを申し上げます。「支え合うくらしと住まい~子育てと介護のダブルケアの経験から」これはまさに本日のゲストの熊倉聖子さんの生の体験を語っていただきます。それでは熊倉さん、よろしくお願いいたします。
手元に京都新聞2020年(令和二年)1月6日月曜日の記事があるのですが、でっかい記事の真ん中に熊倉さん、ドーンとお顔が写っていますね。
熊:  はい(笑)
今年のお正月の特集号で取り上げていただいて、ドーンと載せていただいたのはいいんですけど、最初の一文が「今日はちょっとメイクが濃いめです」から始まるっていう(笑)
絹: これはラジオですから、新聞記事はファイル共有できません。その「メイク濃いめ」から、1パラグラフだけ読ませてくださいね。新聞記事、大きいですから、見出しが大きく踊っております。
「私が変わる 時代が変わる 多世代で満つる「家」 コレクティブハウス事業を進める熊倉聖子さん」という見出しです。では第一パラグラフだけ読みます!
こんにちは。よろしくお願いします。
今日はちょっとメイク濃いめです。
すごい入り方ですねえ(笑)
熊:  オンラインだと、いつもはメイクをしないですむので、この時はリアルだったので(笑) 
絹: 京都府が進めるコレクティブハウス事業のテレビ会議。協働するNPO法人「場とつながりラボ home’s vi」(京都市上京区)の熊倉聖子さん=左京区=が明るく場を仕切る。コレクティブハウスは、入居する世帯同士が食事や掃除などの役割を分担して支え合う集合住宅。風呂や台所は各部屋にあり、共有スペースで住人たちが食卓を囲んで交流する。子育て家庭や高齢世帯など多様な人が入居することで、それぞれができることをして日常を助け合い、孤立させないような信頼関係をつくる住み方だ。「一般向けのワークショップも開き、子育てや介護をサポートし合う暮らしの仕組みづくりをみんなで考えたい」と熊倉さんは意気込む。
 

■エピソード1 くらしそのものを支え合う環境をつくりたい

●子育てと介護と
絹: これが第一パラグラフです。さて、これをきっかけとして、熊倉さん、エピソード1行きましょうか。これの取材で思い出されること、ありますか?
熊: そうですね。意気込んでおりましたね、あの時には(笑)
子育てと介護と言うキーワードが入っていたんですけど、元をたどると、私は今、3人子どもがおりまして、一番上の子が10歳、二番目が7歳、三番目が4歳で全員女の子なんですけど。
絹: 結構、今、大変な時期じゃないですか(笑)
熊: 最初の第一子を10年前に出産したんですけど、結婚した当初から義理の父の認知症の症状がちょっとずつ出ていて、一番上の子が1歳の時に、東日本大震災があったんです。そのショックなのか、一気に義理の父の認知症が悪化しまして、震災後のバタバタと、子どもの環境の心配をしたり、家もガタガタしていて、社会の不安と家庭内の不安と、初めての子育てと初めての介護で、本当にその当時の記憶がほとんどないくらいの大変さでした。
絹: 何か辛すぎて、封印しているみたいな感じですかね。
熊:  封印と言うか、何か目の前のことに必死で、記憶を辿ってもあまり覚えてないと言いますか。同居していたわけではないのですが、当時は鎌倉に住んでいて、義理の実家は東京都内にあったので、しょっちゅう呼び出されては通っていました。義母だけではみられなくなったので、私が子どもを連れて、義理の実家に住み込む形で、身の回りのお世話をしたり、子どもがいると和むかなというのでムードメイカーの役割で、嫁の役と母親の役と、何やらかにやらみたいなのが、一気に同時に押し寄せると言うか…。
それまでは舞台や演劇などのアートマネジメントの仕事を東京の方でしていたんですが、20代の頃には想像もしなかった家庭内というか、くらしの現実みたいなものが一気に自分の身に降りかかって、でもそうした時に誰も頼れる人がいない。核家族で育っていますし、介護なんかも見たことがないし、鎌倉の方には子育て仲間はいたんですが、どうしても子育て中のお母さんたちは子育て仲間で集まるし、介護の方はソーシャルワーカーさんが入ってはくれますが、「子育てしながら介護は大変なんです」みたいなことを相談する相手もいなかったり…。 
絹: 話の腰を折りますが、若くなったばあばちゃんと話している気分がしてきました(笑)
熊:  そうですか(笑)
117230621_576182603064096_3098732502258128197_n (1)
絹: やっぱりよく似ていらっしゃる気がします。
リスナーの皆さん。実は、私は個人的に熊倉さんの母上を存知ておりまして。介護というところでは、私は今60を超えておりますけれども、この年代はわが親の介護が問題になってくる年代でもあります。熊倉さんは子育てと介護のダブルケアというすごい経験に、当時突っ込まれましたけれども、私は今、自分の母親の介護的行動と言いますか、お休みのたびの週末に疲れ果てておりますけれども、それをダブルでねぇ…子育てとやっていらっしゃったというのは、想像に難くない!大変だったんだろうなぁ…。
 

●サンドイッチジェネレーションと呼ばれて

熊: 当時はその「ダブルケア」という名前がなかったんですね。私がダブルケアをがっつりやった何年か後に横浜の大学の先生が「ダブルケア」という名前をどこかで発表されたんです。たぶん隠れたダブルケアは昔からあったと思うんですけど、なかなかそれが社会課題としては上がってきていなかったので、当時はアメリカの知人に「そういうのはサンドイッチジェネレーションと言うのよ」と。要するにサンドイッチされるということですよね。で、「サンドイッチジェネレーション」と検索をかけて、英語のサイトでその情報を知るみたいな感じだったんですよね(笑)
絹: 本日のゲストである熊倉聖子さんは、サンドイッチジェネレーションと呼ばれる経験を積まれました。震災の後で大変な経験だったと思われますが、だからこそ、このコレクティブハウス事業、京都府が進めようとしている新たな、今まであまり京都のエリアで語られることの少なかったものに興味を持たれたわけですね。
 

●子育て中の熱い公務員 川崎さんとコレクティブハウス

熊: そうですね。home’s viに私が関わり始めたのは、2年前からなんです。ちょうどその年に京都府の川崎さんという若きスーパー公務員が、同じく子育てをされている。彼はお父さんですけれども。
町内会とか自治会とか色々あるけれども、やっぱり暮らしそのものを支え合う関係をつくるのって難しいわけです。そこで彼は、まちづくりの中でどういうふうにしていけるか模索するなかで、たまたまコレクティブハウスというのを見つけられたそうです。コレクティブハウスは先ほど絹川さんがお話してくださったように、色んな形があるのですが、単身の人が住んでいたり、老夫婦が、子育て世帯が住んでいたりと、お互い助け合うような暮らしなのですけれど…。
絹: 共同住宅でアパートやマンションで一緒に暮らしていて、ちゃんと自分の個室はあるけれども、共同リビングもちゃんとあって、しかもそれが賃貸ですよね、きっと。
熊: そうです。賃貸の住宅で出入りもしやすくて、水回り等は全部別々で、でも共有空間があってという。京都はシェアハウスはすごく多くて、独身の人が入っているイメージが強いですが、子育て世帯も入って、そこの中でよい暮らしの関係性を作っていくという、元々北欧の方から始まったものです。
 

●コレクティブハウスとは

絹: シェアハウスの話が出ましたが、誤解を恐れずにバクっと言いますと、コレクティブハウジングとかコレクティブハウスは、シェアハウスをどっちかに掛け算して、1.5~2倍にして、シェアハウスよりは中型かな、大型かなと。シェアハウスよりもしっかりしていると言うか、人数がちょっと多いかなとか、そんなイメージを持ったんですけど、間違ってますでしょうか。
52338375_2014064611976281_2929307003136245760_n
NPO法人場とつながりラボhome’s vi facebookより抜粋)
117035306_4253058948069837_6399968516260538043_n117254719_234702457624437_7362722926975925595_n
絹: ハードが固定しているんじゃないよと。例えば一軒家がいくつか集まっても、タウンコレクティブとか、コレクティブハウスって言うんだよという、そんなことですね。
熊:  ええ。実際、タウンコレクティブという形で、何世帯かのおうちが半径1㎞以内等に住んでいて、一緒に食事をしたり、ちょっと送り迎えをみたいな、いい共同体をつくってやっているという例もあります。集合住宅を建てたりするのはなかなか難しいのですが、京都でやるのなら、タウンコレクティブというのはいいんじゃないかなと。タウンコレクティブについて、もっと教えてくださいみたいな方が割合多かったりもします。今回のコロナにしても、もし自分が感染したら助けを求める先がない、誰も頼れないみたいな時に、「大丈夫?」とか、「ごはん持っていくよ」みたいな関係を、常日頃からつくっていけるという支え合いの仕組みそのものの事を、コレクティブハウスと言うんだなというのを、私もこの取組を通して学んできたところです。
絹: リスナーの皆さん。今、聞かれたところ、たぶんキモです。試験なら「試験に出ますよ」と言わなければならないくらい大切なところです。ハードに依存しない、むしろコレクティブハウスというのは、ソフト、助け合いという、ひょっとしたらシェアエコノミーとか、そんな話で、シェアエコノミーって、どっかで聞いた話だな。
熊:  シェアリングエコノミーって、ありますよね。 
絹: 熊倉教授がなんか似たような本を書いていらっしゃいませんでしたか?
熊:  熊倉教授(夫)はギフトエコノミーですね(笑) 
 

●コロナがやってきて…

絹: すいません。話の腰を折ってしまったかもしれませんが、リスナーの皆さん、想像していただけましたでしょうか。コレクティブハウスはハードな、大規模な、例えばマンションの中の2フロアをぶち抜いて、15家族が一緒に住まうというやり方もあります。東京の方で、コレクティブハウジング社が2000年から丁寧に事例を積み重ねてこられていますけれども、企業の使われなくなった独身寮なんかをリノベーションした事例もあります。それから今、熊倉聖子さんがコメントされたように、一軒家同士を500mグリッドでちょこちょこ繋ぐという、非常に地道なタウンコレクティブというやり方もあるようです。
京都で、このコロナの前にオーバーツーリズムがあちこちで言われて「困ったわね」という話があって、私の職場の下京区でもゲストハウスが雨後の筍のようにできております。それが今回の事で、立ち行かなくなるだろうと思われますが、コレクティブハウスの考え方が応用された時に、逆にそれが何か素晴らしい世界に繋がる可能性はないでしょうか。
熊: 今、本当に考えもしなかったような状態になっていて、そのゲストハウスを運営されていた方たちも本当に大変な思いをされているのかなと思います。外の人に向けて用意されていた空間を、京都のまちの中に活かしていくということが、もしかしたら今できるのかなということをお話を聞きながら思いました。 
絹: 熊倉さんたちが京都府とモデル的に実験的にコレクティブハウス事業をやろうと協働して進みはじめた時に、コロナというものがやってきて、何か逆風と言うか、水を掛けられたみたいな感じですよね。
 

●“おおきなかぞく”というコンセプト

熊: そうですよね。京都はシェアハウスも多いと思うのですが、やっぱりこういう時にどうするのかというのが…。でも逆に考えると、本当に一人暮らしで、誰も頼る人がいないということがいいのか、家族は一緒にいるわけじゃないですか。私も5人家族で住んでいますけれども、その家族の延長として、一緒に住まう人を捉える。Ciftという集団が東京にあるのですが、京都にもできて、そこは拡張家族というコンセプトでやっていますし、私自身も京都に来てから知人がほとんどいなかったので、「おおきなかぞく」という取り組みを、似たようなネーミングなんですが(笑)、多世代で、おじいちゃんおばあちゃんと子育て世帯が一緒に繋がりあうみたいな場づくりをしたりしていたんですけど。 
11988347_881256068590355_2451540526108589041_n
 

■エピソード2 京都での「つながりあう場づくり」

●「おおきなかぞく」について(左京区)
絹: その「おおきなかぞく」のエピソードをエピソード2としてお話していただけませんか。リスナーの皆さんに、コレクティブ的なソフトの部分をお伝えするのに、「おおきなかぞく」のエピソードはすごく役に立ちそうな気がするんですが、どうですか?
熊: すごく素敵な場だったので、またやりたいなと思いながら、ずっといるんですけど、今ちょっとお休みしちゃっているんです。 
絹: 「2015年、左京区で『おおきなかぞく』の集まりで、畑仕事を楽しむなどして交流する親子やお年寄りたち」という写真が、この大きな新聞記事に3枚くらい載っています。なんかいい感じで、これたぶん血縁のない拡張家族ですよね。
熊: そうですね。本当にいい場でしたね。左京区で、出会った当初は大学生で、もうご卒業されているんですけど、おばあちゃんと一緒に住んでいたその学生さんと、自主保育をやっていた子育て仲間が集まる場でした。高齢者の方たちは介護予防的にそれぞれ集まっていたり、一人で住んでいたりするんですけど、定期的にご飯を持ち寄って一緒に食べたり、畑仕事をしたり、一緒に音楽をしたり、あやとりをしたりしていました。子どもたちも知らないおばあちゃんの膝に乗って、ニコニコしているとか…。どうしても親子だけだと煮詰まってワーッとか言ってしまうけれども、おじいちゃんとかが「ああ、元気でいいねえ」とか言ってくれると、縦横斜めの関係で、風がふっと吹いて、心が軽くなるような時間だったんですよねえ。 
117312550_301547927717461_3220787387919757183_n17632463_1289494291099862_5360256362964213943_o1939506_928370690545559_8721660680541989199_o
17622097_1289494254433199_4445080185382147383_o981209_928370620545566_2555966636235168801_o
  (おおきなかぞく facebookより)
絹: 二番目のお子さんをお産みになった京都で、そういうことを始められたと書いてありますね。記事に。
熊: 二番目が生まれてすぐに京都に引っ越してきたので、二番目は小さかったです。
絹: で、自分の祖父母と地域の人をつなぐことをしたいと大学生が語ったって、これがさっきおっしゃっていた大学生ですね。
熊: そうです。
絹: なかなかの学生!
えらいなコイツ!!
だって自分のおじいちゃんおばあちゃんと地域をつなぐって、いい仕事をしたんですねえ。彼でしたっけ、彼女でしたっけ?
熊: 彼女ですね。もう本当に素敵な女性で。
絹: 今はどうされているんですか?
熊: 今は京都にいなくて、山形県の方で、そこでもすごく活躍されているんです。
117385567_3506513562744683_6142547373921296819_n116874427_621293208518705_2570415547352987705_n
 

●スーパー公務員川崎さん × home’s vi

絹: これって、今日の番組のテーマであります「支え合うくらしと住まい」というか、コレクティブハウジングと言うか、本当にその辺の中心概念と言うか、拡張家族と言うか…。京都府の西脇知事の政策目標のなかに、「子育て環境日本一の京都府にしたい」というのがあるんです。それを具現化しようとしたのが、さっきの熊倉さん曰くのスーパー公務員の川崎哲嗣(さとし)さんについて、熊倉さんの印象をちょっとお話しいただけませんか。
熊:  アツい人ですね。本当にアツい人で(笑)
私と同年代。本当に素敵な方で、ご自分の子育ての経験から、「これが京都のまちに役に立つんじゃないか」という思いで、ご自分で色んな不動産屋さんを回ったり、営業活動をやったりとか。やっぱり建物の話なので、本当は府営住宅なんかにできるのが一番なのかなと思ったんですけど、それもなかなか今すぐというわけにはいかないので、どこか事業者さんだったり、有休の物件を持っているオーナーさんが「じゃあ、こんな所使ってみて」と。東京のコレクティブハウスもそんな形で動いているので…。 
絹: 補足を入れされてください。その川崎さんというアツい行政マン、京都府庁の中に、府庁内ベンチャーという提案を拾い上げる仕組みがあるそうです。そこに川崎さんが発想した「コレクティブハウジング・支え合うくらしと住まい」というものが入賞して、その結果こういうプロジェクトが生まれたというふうに側聞しております。間違いないですか。
熊: そうですね。その立ち上がり方も、「ああ、なんか京都府って、素敵だな」と思ったんですね。そこから子育て支援の事業が立ち上がって、home’s viに声がかかったのは、コレクティブハウジング社さんのコーディネーターとしての役割を、川崎さんがご覧になっていて、ハードだけではないということを理解されて、それを京都でできるのはどこかなと探された時に、home’s viに白羽の矢が当たってですね(笑)
人と人の関係をつなぐというか、みんなが、いろんな人が一緒に住まう、そして関係をつくって助け合うというのは、なかなか難しいことです。家族でも難しいのに、他人でそういうことがどこまでできるのかという…。
絹: 残り1分になってしまいましたので、私にマイクをもらって、無理やり力業でまとめに入ります。いいですか?
熊: はい、どうぞ(笑)
 

●コロナ禍ですが、コレクティブの動き、ご注目ください

絹: リスナーの皆さん、今まで聞いていらしていかがでしたか。京都府の中にアツい行政マン川崎さんという人がおられました。コレクティブハウジングが京都府の「子育て環境日本一」を具現化する一つのやり口ではないかと、home’s viに声を掛けました。コロナで大変な状況ですけど、このコレクティブの動き、支え合うくらしを求める行政マンと民間の協力関係、潰したくないですよね。また、こういう番組をつくることで、賛同者を増やしていきたいと思っています。よろしくお願いします。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。熊倉さん、ありがとうございました。
熊: はい、ありがとうございました。
117228399_300568718030305_5998763872888924197_n
投稿日:2020/07/20

第156回 ・小川通今出川上ルに怪しげなお寺を見つけました~社会実験寺院寳幢寺の挑戦

ラジオを開く

松: 松波 龍源 氏(寳幢寺 僧院長) 
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
rectangle_large_type_2_bbf4268c5bcfc8908bca7b1294444bc9
        松波 龍源 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストでありますが、チョビット推進室では二番目の宗教者のご登場になります。これがあれよあれよといううちに決まってしまいました。今日のゲストは松波龍源さんです。松波龍源僧院長、よろしくお願いいたします。
松: よろしくお願いいたします。
絹: 松波さんとの出会いと、プロフィールをこちらで勝手に調べた下資料に基づいて、少しだけ皆さんにお話しします。
松波龍源さん、プロフィール
出身地はお父様は石川県、お母様は熊本県、だから石川と熊本のハーフでいらっしゃいます。活動地域は京都府。1978年生まれ。学生時代に武道と仏教に出会われて、生涯の道とすることを決意されました。なんと武術の境涯を深めるために、単身中国北京に渡られて、5年間の武術修行を行われました。この辺がぐっと私、鷲掴みにされたところでございます。帰国後、ご縁を得られて仏門に入られます。真言立宗総本山西大寺。これは奈良ですよね。
松: そうです。
絹: あのでかい西大寺にて、四度加行(しどけぎょう)、伝法灌頂(でんぽうかんじょう)を受法。様々な伝統的伝授を受けると同時に日本仏教のみに囚われず、ミャンマーやチベットなどの高僧に師事をされます。それだけじゃなくて、山岳修行や霊地巡礼などの修業をお積みになっておられます。お若い方なんですが、21世紀の日本と世界にフィットした仏教修行の在り方を模索されている宗教者であるというご紹介が、手元の資料にあります。僧院長、こんな紹介でいいですか?
松: なにか過分なご紹介ありがとうございます。恥ずかしいです。
絹: 釈尊や弘法大師さまの後を追って行かれつつ、今の日本に無理のない仏教を追いかける活動のなかで、瞑想法もご提唱になっているということですので、その辺も後ほど触れていただきたいと思います。
松: はい、ぜひ。
絹: 大切なことを忘れておりました。本日の番組のタイトルと言いますか、テーマをこれから申し上げます。京都の方が聞いておられるので土地勘はあるでしょうね。「小川通今出川上ルに怪しげなお寺を見つけました~社会実験寺院寳幢寺の挑戦」と題してお送りいたします。それではエピソード1「そもそも実験寺院とはなんぞや」あたりから語っていただけますか。
 

■エピソード1 そもそも実験寺院とはなんぞ 

 

●一般家庭の出身なので、私のお寺はありません

松: もともと僕は普通の一般家庭の出身で、お寺の子というわけではありません。自分で望んで、興味をもって仏門に入ったのですが、一方で私のお寺というのはないんですね。
絹: 初めておじゃました時に、その小川通の今出川上ル、お寺っぽい雰囲気じゃないですものね。
松: そうです。もともと西陣織の会社の跡地をお借りしてやっております。
絹: それも「結構安くで、広い場所、借りられたんです」とおっしゃっていましたね。
松: そうなんです。大家さんが本当に素晴らしいご理解のある方で、非常に親切に相談に乗っていただけました。
絹: 実は恐々ですけど(笑)、数度、私は既におじゃましております。
111111
 

●出会いはミャンマー仏教 

松: ありがとうございます(笑)。もともと仏教に触れたのは大学院生の時が初めてで、しかも日本仏教ではなかったんです。
絹: ミャンマーの仏教だったと書いてありますね。
松: そうなんです。大学は大阪外国語大学という、今はもうないんですけど、そういうところのビルマ語学科というところにいまして、そこでミャンマー仏教の研究をやっていたんです。
絹: またマニアックな…。
松: すごくマニアックですよね。それでミャンマーに調査で行きますと、あちらの国では仏教というのが完全に生活の中に溶け込んでいるんです。GDPでは日本の30分の1程度ですから、当然豊かではなくて、モノはなかったり、お金もないんだけれども、何かみんなが生き生きして幸せそうに見えたんです。それはなぜかというと仏教の世界観で彼らは生きている。すごく親切だし。
振り返って日本も、一応仏教国ということになるのだと思うのですが、仏教というものが、人々のリアルな生活にあまり役割を果たしていないんじゃないかというふうに感じたんですね。
 

●絹川の仏教修業―親父に騙されまして…

絹: なんかわかる気がします。ちょっとだけ自分の過去を語らせていただきますと、20代の頃に私、親父に騙されて、お寺に閉じ込められたことがあるんです。一週間ほど。
松: なんかすごい体験ですね(笑)。
絹: 九州のお寺だったんですけど、うち、建設会社でしょ。で、京都に道場を建てさせて頂いて、親父は忙しくて本山にご挨拶に行けなくて、「ご挨拶に行ってこい」と九州まで、学生時代に行ったんですけど、檀家総代の方と親父と話ができていまして、「コイツ、一週間ちょっと痛めつけてもらえませんか」と言って、そういう話ができていたところへ、フラッと行ってしもたと。で、もう、読経三昧、作務三昧、「わかるまで帰さない」という目にあいまして、でも修業の若いお坊さんと一緒だったので、休み時間に「こんなんでええんかな、仏教は」みたいな話を、やっぱり学生ですから熱く語っていたという、そんなアホな経験がございます(笑)。
松: なかなか貴重な体験ですね。それは。
絹: 最後はものすごく追い詰められますので、天狗の鼻をポッキリ折っていただいて、涙を流しながら「自分は虫けら以下でございます」というようなところまで、ご住職が追い込んでくださいまして、「帰っていいよ」ということで、無事に生還しましたけれども(笑)。
 

●仏教の精神に触れる機会のない日本

松: そんな感じで、お寺の中に普通の人が入っていって、なんらかの仏教にかかわる体験をすることって、観光で行って仏像とか伽藍を拝観する以外に、今の日本って、ほとんどないと思うんです。
絹: レアですよね。私みたいな騙されて行くって、なかなかそれも珍しいですよね。
松: 極めてレアなケースだと思うんです。なので仏教が言っている、本当は何をお釈迦様が伝えたかったのかということに、触れる機会なんて、自分で興味をもって、それこそ学校とかで勉強しない限り、小学校、中学校、高校でも習わないですしね。なかなかそういう機会がないというのは、問題と言うか、もったいないなあとすごく思っていたんです。
 

●寳幢寺、こんな意味を込めています

絹: その「怪しげなお寺、寳幢寺、実験寺院」ですけど、寳幢寺という字もラジオですから、どんな字を書くのか、リスナーの方には伝わらないと思いますので、寳幢寺の漢字の書き方を教えていただけませんか。
松: これが難しいんですよね。検索するのに変換しにくいと言いますか(笑)。寳幢寺の「寳」は宝物の「宝」です。
絹: 旧字体ですよね。
松: 旧字体を使っていますが、普通の「宝」でも大丈夫ですけど、「幢」が問題で、巾偏に童と書くんです。
絹: 僕、実は事前に予習して調べました。なんか仏様の軍隊の旗印という意味があるらしいと。
松: そうなんです。「旗」という意味がありまして。
絹: 仏様の軍隊で、僧院長自身が単身、武道修行を5年中国へ乗り込んでいるというので、なんかそこらへんが関係があるのかなと。
松: 「旗」って、シンボルですから、「ちょっと変わった仏教というものが、ここにありますよ」という旗を掲げようと。筵旗を掲げて意気を欲すみたいな、そんなイメージですね。
 

●みんなでつくりあげる実験寺院としてーわからないからやってみよう

絹: なるほど。で、実験寺院の実験たるところは、どの辺にあるんですか。
松: まず今まで日本になかった形をやってみたい。それはミャンマーとかチベットでは当たり前の形だと思うんですけど、お坊さんたち(出家者)と、普通の在家さんの、一般社会の人たちの役割をちゃんと分けて、お坊さんたちはお金ということには関わらない。寄付だけで運営をしていく。そして一般の地域の人たち、今はインターネットで全世界と繋がりますから、我々に関わってくれるすべての人たちと、ここに関わっているすべての出家者が、みんなでお寺の在り方を決めていく、つくっていくということをやってみようと。そんな感じで実験という言い方をしています。そういう意味で、宗派にもこだわりたくないし、国にも囚われたくない。21世紀の日本、この京都という所で、できうる形の、フィットする形の仏教がどんなものなのかわからないです。わからないので、やってみようという意味が込められています。 
 333333
  (一般社団法人 日本仏教徒協会Twitterより抜粋)

 

絹: リスナーの皆さん、今の実験寺院の在り方というのも、本当に入り口からちょっと中を覗いたくらいのところなので、なかなか想像をしていただきにくいと思うのですが、これから僧院長が具体的なエピソードを語ってくださいますので。けったいなおもろい事をしはるんですわあ(笑)、ねえ。
松: そうですね。結果的にそうなってしまったという感じなんですが、面白いですよね。
絹: ではそろそろエピソード2でもって、実験寺院の実験とは、具体的にどんなことをされたのか、リスナーの方々に想像してもらいましょうか。
 

■エピソード2 実験って、具体的にどんなこと? 

 

●「取引」から離れたい

松: まず一つ大きな実験の柱として、我々は「取引」というところから、ちょっと離れてみようということをやっています。完全に「お布施」と呼ばれる寄付です。皆さんからの見返りを期待しない。「100円あげるから100円の価値のあるものをください」というトレードの世界から少し離れまして、「あなたにこれをもらってほしい」と。それをお互いが交換して(交換があってもなくてもいいんですけど)、それを造語ですけれども「喜びを送りあう」と書いて「喜贈」と呼んでいます。
 

●「喜贈」ということ

絹: 「喜捨」じゃなくて、「喜贈」であると。捨てるんじゃなくて、贈るんだと。
松: プレゼントのし合いと言いますか、贈り物が交わされていく、そこに喜びが生まれていくというような世界観があってもいいじゃないかと。もちろん等価交換の売買、取引というのは、社会のシステムなので大事なのですが、それだけではしんどいじゃない?という考え方ですね。そうじゃなくて、喜びをプレゼントしあって、理解し合える人たちが、価値を増大させていく、喜びを増やしていくということができないか、これがまさに実験だと思っています。
絹: 今のお話からイメージするのは、「お裾分け」という、日本の懐かしい言葉だとか、「シェアリングエコノミー」というカタカナの言葉とか…。
松: そうですね。「ギフトエコノミー」とか、そんなことも言われていますが、まさにそうだと思うんですね。
絹: その辺の言葉にも、何か一朝事あるごとに、今回は武漢コロナ肺炎の洗礼を浴びたわけですけど、従来以上に助け合いと言うか、喜贈と言うか、そういう流れができるのではないかと、そんな仮説を持ちました。
松: 私もそう思いました。それを2500年前からインドでおっしゃっていたのが、お釈迦様ということになるのかなと感じています。
絹: そう思ったら、すごい早いですよねえ、お釈迦様。
松: 本当に天才としか言いようがないなと思うんですけど、本当に不信感だと思うんです。私がこれを持っておかないと私が必要な時に使えないから、あなたにはあげませんよというね。そうではなくて、みんながみんなを助け合うという関係だから、あなたが今必要で、私は大丈夫なら、あなたにあげますよ。それが回っていけばいいじゃないという考え方ですね。
 

●20世紀型のエゴイズムの終焉

絹: 私の周りにちょっとずつそういう人が増えつつあるような気がしているんです。実は。
松: それは素晴らしいことだと思います。
絹: なにか世の中の流れが、少し逆転しつつあるみたいな、そういう人たちと知り合うことが個人的には増えてきております。
松: 世界全体的に見ても、環境破壊とか人種差別の問題でもめていますけれども、20世紀型のエゴイズムという在り方が、人間という種としてもう限界なのかなと。そういうタイミングが来ているのかなという気がしますので、どうなっていくんだろうというのは楽しみだなと思っています。
 

●大根300本プロジェクト

絹: さて、では具体的なエピソードで、例の「大根300本プロジェクト」教えていただけませんか。
松: それは滋賀県の守山にあるラトナファームという農家さんなんです。今井さんという方が一人でやっておられるんですが、彼はうちによく瞑想をしに来てくださるんです。珍しいですよね、瞑想をする農家。
11111111
絹: 珍しいですね(笑)。
松: 非常にまじめな方で、原則無農薬で、本当に野菜を自分の子どものようにかわいがりながら育てておられる農家さんなんですけれど、彼が今の日本の流通システムがちょっとしんどいということをおっしゃっていたんですね。どれだけ頑張って手をかけて大根を作っても、やっぱり1円でも安く、安く、安くと言われてしまう。しかもちょっとでも傷が入ったり、規格に合わないとゴミとして廃棄されてしまう。それって、レストランの食べ残しというレベルじゃないですよね。畑で植わっている数千本の大根の何分の1かは、出荷されることもなくゴミになってしまう。それを彼は非常に悲しいとおっしゃっていて、この冬も大根がたくさんできたのだけれども、やっぱり何百本単位で廃棄になってしまう。食べるのには全く問題がないのに、流通・販売の問題で、農家としてはどうしようもないと。それを捨てるには忍びないし、この世界に一矢報いたいという思いもあるしということで、出荷できない野菜をお寺に全部寄付しますと。
絹: 本堂にずらっと並んだ300本はそれだったわけですね。
 222222
松: そうなんです。それをお手伝いも兼ねて、うちによく遊びに来てくれる京都大学の学生さんたちと一緒に大根を抜きに行くところから行かせてもらい、持って帰ってきました。せっかく農家さんが喜贈していただいたわけですから、我々はそれをお寺という立場で社会に喜贈しようと考えました。そのまま差し上げてもよかったのですが、せっかくなので私が一本一本疫病封じの梵字を書きまして、病気封じの御祈りをし、お守りとして祈祷した大根を差し上げますよということです。赤字になっても構わないと思いましたので、送料も我々もちで、北海道でも沖縄でも発送しますと言ったところ、絹川さん始めとして色んな方々が興味をもって下さいました。喜贈ということに共感してくださり「それならばこれを役立ててください」とお金やら、別の食べ物やらを置いて行って下さったわけです。それで完全に成り立ってしまったと言いますか。
92779233_2618050215136940_8868321659023523840_o
絹: ほう、物々交換的に「ちょっとこれも置いて帰りますわ」と言う人がいっぱいいたんですか。
松: ありましたね。
絹: ちょっと聞きかじりましてね、面白いなと思って、恐々おじゃまして、5本ほど梵字が書かれた大根を頂いたんです。それを知り合いだとか、うちは建設会社なので独身寮がありますから、独身寮の寮監さんに「疫病除けのお祈り付きだから、大根おろしにでもして料理して食べて」と。それから山科のこども食堂を運営されている方にも使っていただいて、もちろん我が家でも一本頂戴しましたし。おかげさまで霊験あらたかというとちょっと怪しいですけど、うちの会社、今のところ感染者は出ずに過ごさせていただいております。現場もほとんど止まらずに。ありがとうございました。
松: 何よりです。  
絹: で、すぐになくなったんですよね。
松: そうなんです。300本はさすがに何本かは腐らせてしまうかもと、最初は思っていたんですが、割とあっという間に、葉っぱまでもらっていただきまして(笑)。
絹: 僕がこの社会実験寺院寳幢寺さんに注目したきっかけは、この不思議な大根300本プロジェクトというエピソードでした。
22222222
    

●いわば仏教の見本市みたいな… 

絹: この他にも、まだまだこの続きは何をどう実験していかれるのか予想がつきません。でも僧院長の周りには色々面白い人が集われるようで、居候のような大学院生だとかおられるんですよね。
松: いますね(笑)。
絹: そのうちミャンマーからの修行僧も受け入れられるかもしれませんし。
松: はい、それは言っておりまして、ミャンマーとかチベットとかタイ、スリランカと繋がりをもって、うちに常駐してもらい、いわば仏教の見本市みたいな感じで、うちに来たら世界中の仏教が一通りレビューできますよと。例えばスリランカの坊さんが気に入ったら、スリランカ仏教を教えてもらえますよということはしたいですね。それは資金さえあれば、今すぐにでもできそうかなとは思うのですが。
 

●本堂は色んな方が色んな事に使ってくださっています

絹: というような野望も計画も持っていらっしゃいますし、それだけではなくて、本堂には何やら武器のようなものも置いておられますし、あの本堂は武術修行の場にもなりそうですし、フリーダンスのような動画も見たことがありますが。
松: そうですね。色んな方が色んな事に使ってくださいます。100平米ありますから、工場跡地ですので広いので。
絹: リスナーの皆さん、普通のお寺ではありません。だからやりたいことを僧院長や奥さまや事務長や大学院生の居候だとかにご相談されると、色んな事が起きる可能性の高い不思議な場所だと思います。
 

●オンライン瞑想のこと

絹: それとオンラインで瞑想の指導と言いますか、最近、少しだけしていただいた経験があるのですが、僧院長が医療関係者と色々試しておられる事も少しだけ紹介していただけますか。
松: 日本仏教の弱点みたいなものかなと思ったのが、この瞑想の修業ということです。儀式などは素晴らしいものがあるのですが、個人的に瞑想をして自分の境涯を高めていくということが、少しおざなりにされがちだった歴史があるのかなという気がしています。そのあたりをチベットやミャンマーから補って、21世紀の日本という忙しく大変な社会にフィットする形で再構築できないかと考えています。例えば「毎日一時間座禅しなさい」と言われても無理じゃないですか。できたらいいんですけど、ちょっと辛いと思うので、そうではない形で、理想的ではないかもしれないけれども、これぐらいだったら効果はあるだろうというものを、つくって出していかないとと思ったわけです。「一時間も座禅しなければならないのなら、できないわ」となると、興味を持った人に残念ですよね。そういう形で研究をしまして、一つ自分なりの形というものをつくりあげまして、それを認めていただき、わかるかたにはわかってくださったわけです。病院のお医者さんや心理カウンセラーの方々からは結構評価していただいて、一緒にコラボして何かやっていこうということはおこなわれています。本堂で瞑想指導をやっていたのですが、コロナウイルスの問題で、なかなか集まってもらうのも難しくなっているので、できるのならオンラインでやってみようかと始めかけているところです。
絹: この試みも大変面白い。興味を惹かれます。というのも当まちづくりチョビット推進室におきましても、数回前のゲストが岸本早苗さんとおっしゃいまして、ハーバード大学の大学院でマインドフルネスとマインドフルセルフコンパッションの修業を積まれた方です。私自身も興味がありまして、その方から習ったことがあります。
リスナーの皆さん、小川通今出川上ルに何やら怪しげなお寺・寳幢寺、社会実験寺院がございます。ここには何かがあります。怪しげに思えても怪しくありません。もしよろしければお訪ね頂きたく思います。ちょっと変わっていますけど、いい、面白い人たちが集っておられます。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。松波僧院長ありがとうございました。
松: どうもありがとうございました。

 

投稿日:2020/06/23

第155回 ・畑をキャンパスにみんなの夢を描く“エクボファーム”ってご存じですか?~農業という表現方法

ラジオを開く

102829148_988746354909881_4420995809856716800_n
※田んぼ作り〜つかの間の休憩〜

 

竹: 竹内 雄哉 氏(鳥取大学 農学部 2回生)
絹: 絹川 雅則 (公成建設株式会社)
※本収録は、新型コロナウィルスを考慮しまして、Web会議ツールを使用しています。

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードを御紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
リスナーの皆さん、実はちょっと今日は緊張をしております。生まれて初めて自宅から「Zoom(ズーム)」を介しての収録ということに挑戦しております。勝手が違いますので、音が割れたり、BGMが僕に聞こえなかったり、色々トラブルを感じながらの収録ですが、よろしくお付き合いください。
それではゲスト紹介から参ります。今日のゲストはお若い方です。なんとズームを介して距離を飛び越え、鳥取大学からのご参加です。鳥取大学農学部2回生 竹内雄哉さん(休学中)、どうぞ竹内さん。
竹: はじめまして。よろしくお願いいたします。今、鳥取大学の農学部を休学しています。「畑をキャンパスにみんなの夢を描く」を目標に、“エクボ”という農業を通した自己実現団体、学生団体をつくっています。
絹: はい。ありがとう。竹内さんという若い鳥取大学の学生さんと、実はリアルで会ったことがないんです。オンラインのミーティングで一昨日出会って、意気投合しちゃった。そういうことでご登場です。今日の番組タイトルは、「畑のキャンパスにみんなの夢を描く“エクボファーム”ってご存じですか?~農業という表現方法」と題してお送りします。ちょっと何やら面白そうでしょう?なんだかBGMが聞こえないから、調子が出ないけど、スタジオから離れるとこういうトラブルもあります。では、竹内さん、エピソード1から参りましょう。
 

■エピソード1 “エクボ”ってなに?

●“エクボ”にしたわけ
竹: コンセプトは「畑をキャンパスにみんなの夢を描く」なんですけど、なんでまず“エクボ”という名前を付けたのかというところからお話ししたいと思います。“エクボ”になっている状態って、自分のやりたいことを好きなように表現しているのと、純粋無垢な少年少女のような状態なのかなという…。
絹: なんかかわいい表情みたいな感じですよね。
竹: そうですね。本当はここに農業というものも含めたいと考えたりしたんですが、でも僕らの本質は農業じゃなくて、農業を通した自己実現というか、自分たちのやりたいことを表現するというところなので、“エクボ”という名前を付けて、農業を通して将来役立つこととか、自分の成長につながることをやっていければと思っています。
 

●耕作放棄地を開墾することから始めました

絹: リスナーの皆さんに補足説明であります。竹内雄哉さんのフェイスブックページを覗きました。そうしたら「2018年10月耕作放棄地からのスタート」という文言がありました。おそらく“エクボファーム(EKUBO FARM)”というのは、僕が勝手に想像するんですが、この耕作放棄地が土台になっているんですね。
竹: 最初が耕作放棄地を開墾するというところから始まったというので。
絹: 大変だったでしょう?
竹: そうですね。もう本当に手付かずの耕作放棄地で、セイタカアワダチソウという草があるんですけど、僕の背より一回り大きいくらいのヤツが立っていて、それをなぎ倒しながら開墾するのは結構大変でしたね。
絹: 広さはどのくらいあったんですか。
竹: 広さは、農家の人には3反と言えばわかると思うんですけど、ちょっと細かい計算方法がわからないので…。
絹: 今、手帳の便利メモで、その反の面積を見ると、1反は300坪、1反は991㎡という感じですね。ですから3反なら900坪で、かける3.3㎡で…でかい!それを一人で開墾したの?
101951310_254427079217923_8011583212272746496_n
※ひと刈り行こうぜ!

 

 

●ツイッターで仲間を集めました

竹: 最初は一人で始めたんですけど、これを一人でやるのはきついなと。と言うか、一人でやっていると楽しくなくて、じゃあ人を呼んで一緒にやろうと。
絹: そんなの、「えー!なんでそんなんやらんなんの?」と言われなかった?
竹: 僕は最初に「一緒に畑、やってみない?」という感じから「草刈りしないといけないけどね」ということを言ったら、ツイッターで今までかかわりのなかった鳥取大生の人から連絡が来て、「一緒にやりたい」と。
絹: ああ、ツイッターで反応があった。若い人って、感じですね。鳥取大生って、たくさんいるの?
竹: 全部で6000人くらいいると思うんですけど。
絹: 6000人いる!でも全部が農学部ではないよね。
竹: 全部が農学部生ではないですね。
絹: そのツイッターで反応してきた人は農学部生?
竹: 農学部生でした。
絹: 今、ちょっとだけ期待したのは、農学部以外の人が入ったら面白いのにとか。
竹: 僕の理想はそうです。
絹: すみません。突っ込みばっかり入れて。エピソード1続けてください。
竹: “エクボ”をつくったというのは、結果的にできちゃったというのがあるのですが、それこそ「一人でやっていると楽しくないよね」というところから始まって、「じゃあみんなで一緒にやったら楽しいんじゃね?」というところから人を集めて、チームになって…。
絹: 今、さらっと「人を集めてチームになって」と言いましたけど、それが大変じゃないですかね。人を集めるのが。でも結果的にうまいこと集まったわけですね。
竹: まあ、なんか意図せず畑をやりたそうな人を探して、友達から「そういう人がいるよ」とか話を聞いたりして、少しずつ集まってきたような感じですね。
101939142_259330721986367_4105630521818611712_n
※集落のお祭りウグイつきにてコイとったぞ〜!

 

 

●こんな感じのエクボチームです

絹: 今、“エクボ”チームは何人くらい?
竹: 今は運営しているみたいな感じなのは、僕を含め4人くらいですね。
絹: コアメンバーが4人。で、コアメンバーじゃないけれど、声を掛けられたら「行くぜ」みたいな人は?
竹: グループが何個かあって、作業だけ楽しみたいというニーズがある人のグループと、“エクボ”から派生してできた八百屋さんをやりたいというグループがあって、そのグループがそれぞれ10人以上くらいはいますね。
絹: 結構な大所帯に育ちましたね。
竹: そうですね。今まで身内だけわかっていればいいという感じだったんですけど…。
絹: 2018年の10月でしょ?そこからだから1年半くらい経っているね。その“エクボ”の1年半、山あり谷ありについて、象徴的なエピソードを教えてください。
竹: 山あり谷ありというよりも、そこまで大きなことをしていないから、大きな失敗もなかったというのが正直なところなんですけど。
 

●ラップ米のこと

絹: でも3反、900坪、セイタカアワダチソウという自分の背丈よりも高いヤツをなぎ倒して、最低限畑っぽくしなければいけないでしょ。で、何か作れるところまでいったの?
竹: 去年はラップ米を作りました。友達がラップをしているので、それを田植えの時に聞かせて植えました。田植えというのは、昔、早乙女みたいな感じで、歌を歌いながら田植えをするという文化があって、「それをラップにしたら楽しいんじゃね?」というところから、去年はその畑を水田に変えて、田植えをみんなでした感じですね。
102404490_3043911985835063_7818136579590848512_n
※ラップを聞かせて育てたラップ米、順調に育ってます!

 

絹: 田植えに参加した人は何人くらいいた?
竹: 僕を含め6人、その他収穫とかで関わってくれた人がトータルで12人くらいです。
絹: ほう。ひょっとして世界を救う担当が竹内雄哉さんで、ケンタロウさんが世界を変える担当のラッパーのほうやね。
竹: そうですね(笑)。まあ、そういう名目で(笑)。
絹: シェアハウスしている同居人のケンタロウさんがラッパーなんですね。
竹: そうですね。
絹: そうしたら歌を聞かせて、稲を育てて、もう収穫まで行きついたんですか?
竹: 収穫まで行ったんですけど…。農家さんの人たちが聞いていたら恥ずかしいところなんですが、1反で米って、だいたい500㎏以上、普通は穫れるんですけど、僕たちは5㎏しか穫れなかったという結果で(笑)。1粒20円くらいするんじゃないかという高級米ができちゃったんですけど(笑)。
101924094_329245451398291_1453854568659025920_n
※ラップ米を棚干し!
 

●日常の中に農業があるという暮らし方

絹: で、“エクボ”のそういう活動をする子と、畑をキャンパスにする子とで、作物をつくるのが実は目的じゃないんだよと。何かやりたいことを見つけて繋げていくということが“エクボ”チームの存在意義と言うか、目標だったんですよね。
竹: そうですね。
絹: その中で何か見えてきたものがありますか?
竹: 農業という表現方法というところで、タイトルにもあると思うんですけど、農業って、すごく自由だなと感じているんです。ちょっと地域の人との関わりというのは必要になってくるんですけど、何をしてもいいし、何をしても怒られないというのが、すごくいいなというところで、僕は農業を通して自分らしさみたいなものを表現できればなと思っているんです。例えばアーティストみたいにライブをするとか、そういうことではなくて、農業が一つのアイデンティティみたいな形で、日常の中に農業があるという暮らし方を、僕はしたいなと思っていて…。僕もここはまだ言語化ができてないので難しいところではあるんですけど。
絹: ここでリスナーの皆さんにちょっと介入解説をしたいと思います。今日のゲストの竹内さんと初めて出会った夜に、竹内さんはこういう言い方をしました。
「言語化能力が不足しています。自分は」と言うから、「じゃあラジオに出ろよ」と誘ったんです。すごく面白いことを考えていて、何かやらかそうとしていて、実際にできてる。でも言葉にする整理の作業中。そういうことを私に語ってくれた若者でした。ごめん、竹内さんにマイクを返します。
 

●単純作業のなかで、内なる世界を見る

竹: やっていてすごく思ったのは、作業一つひとつはすごく単純で、草取りとか、畝を立てるとか、すごく単純な作業なんです。その単純な作業中何をするかというと、考えることしかできなくて、その時に考えるきっかけになるのは、例えばムカついたことであったり、悲しいことであったり、うれしかったことであったり、感情から湧き上がってくる思考、思い出みたいなものを考えるんです。作業中。
絹: 畝立てやって、田植えやって、セイタカアワダチソウをなぎ倒して、本当はやってはいけないけど、野焼きもやるのかもしれないし、ごみを出したりする単純な作業のなかで、目の前のことじゃなくて、頭の中では別のエピソードがわさわさ沸いてきたりして、そういうプロセスを経験したんですね。
竹: そうですね。まあ、いわゆる瞑想みたいな、内なる世界を見ていくというか。
絹: わかるような気がする。お坊さんが着る作務衣の作務で、お掃除しているなかで、座禅を組んでいるのと似たような感じになるよみたいなことかな。
竹: そうですね。
絹: 何かそこで気が付いたこと、ありますか?そういう感じ方をしたのは竹内雄哉さんだけ?ほかのメンバーも、作業を手伝ってくれた人も、コアの4人のメンバーの方も、似たような感想を持った方はおられましたか?
竹: そこは僕が見つけた農業に対しての答えと言うか…。なのでまだメンバーに聞けてないというのが現状で。
絹: でもそこは深めて、他のメンバーに投げかけてみると、面白いテーマですよね。60過ぎのおっちゃんは、非常にその辺面白いと思います。というのは、僕自身もずっと座禅だとか、瞑想、マインドフルネス瞑想というのかな、そういう訓練を、興味をもってやり続けていますので、実は研究テーマの一つなんです。面白いなあ。
 

■エピソード2 なぜ農業をチョイスしたのか

●しんどかった時、自然が好きな自分を思い出しました
絹: さて、エピソード2に行きましょうか。なぜ農業をチョイスしたのか。
竹: なぜ農業を選んだのかというところで、僕はすごく自由に憧れていたと言うか、自由になりたかったという思いが昔からあったんです。それはなぜかというと、中学校の時、校則が厳しくて、「あれやっちゃいけない、これやっちゃいけない」とか、宿題ができてないことで先生にお伺いを立てなければいけない、何かそういう気を遣うことがすごく苦痛で、そういうことがあって、中学の時は不登校になっていたんです。そんな時に、ふと外から金木犀の香りがして、「自然が好きだなあ」ということを思い出して、高校は農業高校に行こうみたいなことを考えて、高校は農業高校に行きました。
絹: 農業高校から鳥取大学って珍しいことじゃないの?
竹: 僕の高校では初めて行ったみたいな感じではありましたが、まあどうなんですか、わからないです(笑)。
絹: 僕の勝手な、おっさんのイメージだけど、鳥取大学って結構入るのが難しい学校じゃないの?
竹: そこは言い回しが難しいですけど、どうなんでしょう。
絹: 大学受験でたくさんの大学に落ちた数十年前の経験があるものですから(笑)。すみません、続けてください。
竹: 農業高校に行って、農業の実習とかするじゃないですか。そうした時に自分らしくいられたというか、誰の目も気にせずに作業に没頭できたということがあって、それがすごく気持ちいいし、心が穏やかだったんですね。
絹: やっぱり土に近いとそうなるんだよね。土に近いと農だけじゃなくて、山に近いとそうなるような気がするし、海に近いとそうなるような気がする。
竹: 今までは外の刺激ばかりに目をむけていたんですけど、そこから自分てどうしたいのかなと思い始めて、内側に目が向き始めた気がします。
 

●作ることが目的ではなく、自分らしくありたいから

絹: なぜ農業をチョイスしたのかは、なかなか言葉にするには難しいですね。
竹: 作るのが好きとかそういうことではないから、すごく難しいですね。
絹: でも農業高校から農学部に進んで、農業の専門家になるつもりですか。
竹: いや、そこをはっきり図るために休学している感じで。
絹: それを聞いて、そんなに単純でないな、この男はと。何か休学の間に誰も考えつかなかったことを農業で、あるいは畑でやろうと、水田でやろうとしているのかなと。単にお米を、ラップ米を作ることが目的の人ではなさそうみたいなことを、勝手におっちゃんは感じたんですが…。
竹: 何かを作るということを目指しているのではなく、それを作った先に自分たちがどうなるかという、自分たちが一番やりたい表現ができているかというところが、やっぱり重要で、「自分らしくありたい」そこを僕は目指しています。
103059428_249051616361040_6979743596018663424_n
※山の恵みアケビ✨
 

●農業つながりで出会えたらいいね

絹: このまちづくりチョビット推進室のごくごく最近のゲストに、中村光宏さんという、京都の伏見で米作りの近郊農家の若いラガーマンがいるんです。この方は米作りをしながら、田んぼ泥んこラグビーもお手伝いしていたり、伏見の竜馬商店街を元気にするのに力を尽くしたり、それから外国に餅つきを輸出して、外国でぺったんぺったん、みんなでこねて食べようぜみたいなことをやっていたりと、変な米作り農家なんです。そんな人の存在を聞いて、何か思うところはありませんか。
竹: そうですね、会ってみたいなと思いますね。
絹: 同じようにこのラジオで、お米について熱く語ってくれたんですけど、引き合わせたいような気がしますね。中村光宏さんと竹内雄哉くんと。ズームで京都・鳥取ナイトなんてできそうですね。
竹: できそうですね(笑)。
絹: リスナーの皆さん、今日初めてのトライアルでしたけれども、どうでしたでしょうか。鳥取大学のすごい面白い、農・畑・水田…。これを何か違う形で昇華させようとしている若者がおられます。中学の時に不登校と自らおっしゃいましたけれども、そういう方が内面に向き合いながらやるということが、何か私にとっては魅力的です。ぜひ、この方の存在をどこかで意識してもらえたらと思います。フェイスブックページとか、紹介してよ。
竹: 活動自体はツイッターでやっているので、@ekubo_farmで調べてもらえれば、僕のツイッターが出てくると思うので…。
絹: リスナーの皆さん、ぜひ検索よろしくお願いいたします。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。初めてのズーム、ありがとうございました。竹内さん、ありがとう!
竹: こちらこそ、ありがとうございました。
投稿日:2020/06/05
PAGE TOP