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第164回 ・人とのつながりは、しんどいけど大切や~「ことらいふ東寺」の挑戦

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増: 増田 二三夫 氏(㈱ことらいふ 代表取締役)
増: 増田 隆子 氏(まちの縁側「よっとーくりゃす」代表)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
  (増田ご夫婦:増田 隆子 氏 ・ 増田 二三夫 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。マスク越しで苦しいです(笑)!ちょっとくぐもった声で失礼します。本日はなんと10年ぶりにかつてのゲストが戻ってきてくださいました。本日のゲスト、10年前の当時は「まちの縁側よっとーくりゃす代表 増田隆子さん」という紹介をいたしました。増田さん、よろしくお願いいたします。ようこそお帰り(笑)。
増: ああ、どうも。帰ってきました(笑)。トシを取りました(笑)。
絹: そして、そのパートナーであらせられます増田二三夫さんです。よろしくお願いいたします。
増: よろしくお願いいたします。
絹: 増田さんは“株式会社ことらいふ”代表取締役でいらっしゃいます。高齢者居住の研究などに興味のある人は注目している人もおられるかと思いますが、株式会社形態を持たれて珍しい成功事例として高齢者のグループリビングを運営されておられます。さて、今日の番組タイトルですが「人とのつながりは、しんどいけど大切や~“ことらいふ東寺”の挑戦」と題してお送りいたします。それでは増田二三夫・隆子ご夫妻、エピソード1はどちらから口火を切っていただけますか?
増: お父さん、どうぞ。
 

■エピソード1 “ことらいふ嵯峨野”の実践

●“ことらいふ”の意味
増: 隆子のパートナーの増田二三夫と言います。よろしくお願いいたします。“ことらいふ”という名前、なかなか珍しい名前だと思います。これはまず古い都の古都と、ライフの生活という意味があるのですが、私どもではグループリビングと言いまして、今は高齢者中心の助け合い、支え合いながらともに暮らしていこうというのを嵯峨野の方で運営をしております。このグループリビングというのは、1人ひとりの性格や考え方、あるいは生きてきた道のりも含め、異なる人たちの集まりであるということ、その間にトライ、挑戦していこうということと、ライフの生活を掛け合わせた造語を、みんなで考えて、こういう会社の名前を付けました。
絹: 古都の暮らしかと思ったら、間にトライが隠れていたわけですね。さらっとグループリビングとおっしゃいましたが、実は大変なはずですし、うまいこといかなかった事例もいくつか聞いております。そやけど、“ことらいふ嵯峨野”は5年間…。
増: そうですね。オープンして丸5年になります。
絹: ここをおじゃましたのが5年前ですけど、あれはお披露目の時でしたか。
増: ええ、絹川さんに来ていただいて、美味しいワインをいただきました。
絹: この頃もう、右向いて左向いたらコロッと忘れてまして、そんなこといたしましたか、生意気な(笑)。でもね、冗談めかして言いましたけど、リスナーの皆さん、ほんまにすごいんですよ。5年間も続けているって。
ことらいふ嵯峨野 企業組合もえぎ設計ホームページより転載)
 

●グループリビングって、何?

絹: すみません、リスナーの皆さんの中にはグループリビングをご存知ない方もおられるかもしれません。ひらがなにしていただけると助かります。お願いいたします。
増: グループリビングは、高齢者の施設でもないし、共同住宅でもない。血縁関係もない、そういう人たちが1つ屋根の下で暮らし合う我が家、そういう中身です。
絹: “ことらいふ嵯峨野”さんの場合は、何人がお住まいになっているんですか。
増: 今、70歳から94歳まで、5人の方々です。非常に元気で、5人とも毎日朝6時に起きて、最初に廊下とかお風呂とか階段などの共用部分の掃除を皆でして、朝は仲間の方が料理を作っていただくという生活で朝が始まります。
 
絹: 5人組の方、長老が94歳、一番若い方が70歳であると。5人だけではなくて、ひょっとして“よっとーくりゃす”さんみたいに“よっとーくりゃすサポートメンバー”みたいな形で周りを支えるような方はおられるんでしょうか。
 

●地域の皆さんに温かく迎えられて

増: 嵯峨野という地域は、たまたまそこに素晴らしい物件があって決めたんですが、私たちにとっては縁もゆかりもない所で、落下傘みたいな形で降りてきたんですが、地域の皆さんが早速「こんな立派なリビングがあるのやったら、是非ここで子ども食堂をしたい」ということで、地域の方々が温かく向かい入れていただきました。毎月そこに子どもたちが集まるのですが、高齢者の方も個食よりも月1回だけみんなの顔を見て食べられるということで、多い時は100人くらいがリビングに三交代で集まったりして、本当にそこに来て地域の皆さんに支えられてよかったなと思っています。
絹: 地域の人が温かく迎えてくれて、「こんな立派なリビングがあるのなら、子ども食堂をやろうや」と声が掛かったわけですよね。これも珍しいなと思うんですけど、増田隆子さんは京都市のOGで水無瀬文子さんて、聞いたことないですか?
増: とねりこの家”ですよね、はい。
絹: “まちの縁側、とねりこの家”です。あそこが始め、地域に信用してもらうまでものすごく時間がかかったという苦労話を聞いたことがあるんです。はじめは「なんやけったいな人が落下傘で来た」と。「ちがいますねん」と言っても「新手の宗教か?」と言われたと。増田さんとこの“ことらいふ”は嵯峨野ではうまく受け入れてもらえたのは、人徳ですか?理解のある人たちだったのかな。
(とねりこの家外観 まちの縁側とねりこの家ホームページより転載)
 

●嵯峨野という地域性

増: 南区と比べてやっぱり意識が高いなというのは感じます。地域性はすごく違いますね。
絹: 増田さんたちがなさろうとしていることに対して、理解が早かった。
増: 絹川さんも来ていただいたオープンの時の竣工祝賀会で、あの狭い所に120~30人集まって、もう地域の方で大入り満員でしたから。その方がこのリビングを見て、「こんなに広いリビングがあるから、ここで何かしたい」ということで、むしろ地域の方々が…。
絹: ということは当該の嵯峨野エリアには地域の人たちが寄って何かをしたいという要望や思いはあったけれども、実際の空間がなかったと。それに対して増田さんたちの空間 “ことらいふ嵯峨野”が、「ワシとこはワシとこだけ」とばかり閉じてなくて、「どうぞ」と開いてはったわけですね。それは“よっとーくりゃす”そのものですね。5年間、今まで成功裏に続いておられる。ということは近所の方々とも仲良く続いているということを意味しますよね。
 

●“よっとーくりゃす”のこと

絹: 嵯峨野の5年間の実践から隆子さんが“よっとーくりゃす”を始められたのが10年前?
増: 13年前です。
絹: 南区の御実家、西九条ですよね。10年前はご自身で「西九条村」とおっしゃってましたが(笑)。結婚して外に出ていて、帰ってきたら街が変質していて寂しかったと。なんとかせなあかんと始めたのが“よっとーくりゃす”ですよね。“よっとーくりゃす”と“ことらいふ”似通ってるけど、ちょっと違うので、その辺の事を復習していただけませんか。
 

●“ことらいふ”の姿勢として

増: “ことらいふ”の場合は、先ほども言いましたように地域性というのがあって、ちょうど建物の空間もすごく良い空間であって、周りの方たちもそういった意識を持っておられる方も結構いらっしゃった。町内会の活動も活発で、あそこの持ち主の方も色んな方を招いておられたようです。
絹: ああ、元々の持ち主さんが…。
増: 祭りの神輿の出発場所になっていたみたいです。
絹: それはみんな知ったはりますわあ。
増: “ことらいふ”という会社が、家の中だけの生活ではなく、地域で住むということで、門戸を広く開いていた。そして定期的に色んな歌声とか、落語会とか、そういうこともやりながら…。
絹: やるべきことをちゃんと外に開かれるべく、自分たちの姿勢はこんなんやと、イベントを丁寧に打ってはったわけですね。
増: それはもう、ずっと定期的にやっていました。
絹: それは元々神輿の発信基地であって、それだけ地道な活動をされていたら、信用力はありますね。
増: それと私どもの会社の理念の中に、今まで培ってきた経験を地域社会に生かしましょうというものがあるんです。それと地域の方の要望がぴったり合ったというのが非常に大きいのではないかと思います。
絹: 高齢者グループリビングと言われていますけど、なんや若い衆が一緒に住んでいるらしいという噂も聞いたんですけど、どないですの?今も一緒に住んではるんですか。
増: いや、去年半年ほど学生さんがそこでおばあちゃんと一緒に暮らすということで頑張っておられましたが、今はもう卒業していないんです。
絹: いたはった時は可愛がられたんでしょうし、役に立ったんでしょうね。きっと(笑)。
増: 役に立ったんかな、あの子(笑)。
 

■エピソード2 “よっとーくりゃす”での実践

●“ちょっとお助け隊”のはじまり
絹: “ことらいふ嵯峨野”の5年間の実践から、今度は“よっとーくりゃす”のそばに、新たな“ことらいふ東寺”という新規プロジェクトを立ち上げられるという噂を聞きました。そこで今回ゲストに再登場をお願いしたのですが、“ことらいふ東寺”は隆子さんの御実家の近所だそうですね。その3軒の町家の地主から「増田さんとこやったら、どうぞ」と借りることになって、改修する話が動いたそうですね。
増: 13年間地域の活動を続けてきまして、1つひとつ思い返すと、地域の要求とか困りごと、それだけではなくスタッフの要求、それからやりたい事、その人たちに合った能力を引き出す活動を地道にずっと続けてきたんです。一方で、うちの町内も非常に高齢化が進んで1人暮らしの人がたくさん出て、例えば隣の人とか、向かいのお兄ちゃんお姉ちゃんに「ちょっと頼むわ」みたいなことが全くできないような状況になってきまして、町内会の役はおろか、町内会自身もやめる、縮小しているような状況がずっと続いていたんです。その中で一人ひとり、スタッフになってくれはりそうな人に声を掛けまして、今は25人くらいいるんですけど、色んな活動をやっています。
絹: リスナーの皆さん、今、えらいことをさらっと隆子さんは言わはるんです。25人、“よっとーくりゃす”という地域の居場所、コミュニティカフェ的な場所でもあります。そこのサポートメンバーが地元に25人、人に恵まれてはりますねえと言うか、それだけの方を育ててきはったと言うのか。すごいなあ。確かに生協さんの共同購入の取次ぎみたいなことをずっとされてきて、お年寄りが「字が小さいし、見えへんわ、書けへんわ」と言ったら、「書いたげよか」と言う小さいお子さんがいたり、そんな人たちの集まりなんですね、きっと。
 

●子ども食堂、ほんとはジジババ食堂(笑)もやってます

増: そうです。だからもう1人ひとりに声を掛けて、1人ひとりのことを考えながら、ずっとやってきました。ものすごく地味な事なんですけど、生協の共同購入は一週間に一回必ず来られる、顔を合わせる、そこで顔を合わして、荷物を渡すだけやなしに、色んな話をする。地域の情報が入って来る。その情報に基づいて色んな事をしてきたんです。例えば、栄養失調で倒れられたおじいちゃんがおられたので、お年寄りの食事状況をちょっと聞くと、非常に劣悪な、お弁当を取っておられて、それを三食に分けて食べるとかね。栄養失調の方がすごく多くなっているんです。それで本当は子どもやないけど、子ども食堂をつくったわけです。それで子どもも呼び寄せてね。
絹: 子ども食堂に来るのは、子どもだけとちゃうと。
増: 違います。ジジババ食堂なんです(笑)、本当はね。子どもの数は少ないんですけど。それから最近やっぱり注目されるのは、“ちょっとお助け隊”。それは先ほど言いましたように、近所の方の助けがなくなってきた、声掛けができないような、そういった状況の中で、例えばブレーカーが落ちたと。一晩中ずっと暗い所にいはったわけです。それで「なんとかして」ということで、そういうような状況になっているわけです。
 
(こども食堂 ことらいふホームページより転載)
 

●“ちょっとお助け隊”最初はボランティアでしたが…

絹: “ちょっとお助け隊”、ニアリーイコール25人の“よっとーくりゃす”のサポートメンバーが相談に乗ってあげはるわけですね。
増: というよりも、うちの方に情報が入ってきて…。
絹: 「増田さん、こんなんで困ってるねん」という第一報が入るわけですか。
増: はい。でも今は包括センターから入って来るんです。施設とか。
絹: 地域支援包括センターでしたっけ。公的な所からですね。
増: そうです。どんどんどんどん入ってきます。だから15分200円です。最初ボランティアでやっていたんですけど、ボランティアですると依頼者がものすごく遠慮をされて、ビールとか何やかんや持ってきはるんです。だからもう15分200円。
絹: 逆にそうした方が気楽やわと。
増: 気楽ですしね、15分200円はものすごく貴重なんです。例えば「洗濯物がちょっと屋根にかかったから取って」とか、夏になったら「簾かけをしてくれ」と。今は「ゴミ出しができないので、してくれ」とか、色んな事があります。それがどんどんどんどん忙しくなってきているんです。
絹: リスナーの皆さん、聞かれました?知らなかったでしょう?南区の片隅で13年間、こういうことを地道に続けてこられた方々です。さあ、それがです。“ことらいふ嵯峨野”に続く“ことらいふ東寺”という新しいプロジェクトを立ち上げようとしておられます。そのことについてお話しいただけますか?
 

■エピソード3 “ことらいふ東寺”の挑戦

●お助け隊が出張?
増: 昔から一緒に住むということは、1つの選択肢だと思っていました。お年寄りだけじゃなくて、今、若い人の家もお金もないという中で、相談は結構入っているんです。だから一緒に住もうと。それと今はもううちの近所はお年寄りが多いので、若い人を勧誘しようということで、第二のグループリビングを考えました。1つ、嵯峨野と違うのは、地域の中での助け合いがあるということです。嵯峨野の方の色んな用事があるとすると、年に何回か私の所が派遣しています。
絹: ほう、お助け隊を出張させてはる?
増: そうです。だからそれは必要な事だと昔から思っていたんです。
絹: “よっとーくりゃす”と“ことらいふ”がええ感じでミックスされていくんですね。
増: 進化してきたんです。お父さんどうぞ(笑)。
 
 

●“ことらいふ東寺”のサロンでやりたいことー地域食堂・地域居酒屋…

増: 実は私は京都生協に三十数年間勤めていて、不動産の開発の関係の仕事もしていまして、昨年は4人、大家さんから「家を取り壊すので出て行ってくれ」といったことがありました。そんな経緯で町内の空家の所に4人のお年寄りと1人はまだ若い40代の方に来ていただきました。そのうち1人は今度“ことらいふ東寺”に入居していただくことになりました。“ことらいふ東寺”というのは、単に入居者(今度4人が住むわけですけど)だけと違って、それプラス長屋風と言うのを考えています。“ことらいふ東寺”のサロンでぜひやりたいのは、地域食堂と言うんでしょうか。地域で特に一人暮らしの毎晩お弁当を取っている方は、そこで温かいご飯をみんなと一緒に食べてもらうようなサロンです。
絹: 共同の、みんなの台所みたいな感じですね。
増: そして月に2回くらいは、安くてうまい居酒屋もやろうかと(笑)。
絹: なるほど。そういう形でご夫妻のタッグを組まれて13年、そして15年とやってきたことが新たな形で船出しようとされています。でも事前の打ち合わせで、「もう、しんどいわあ」「あかん」と思われたことが、二度や三度ではなかったと。それからラジオに一緒に出るのも、「ラジオでケンカしたらどうしよう」と、ものすごく心配してはったそうです。(笑)それも乗り越えてまた新たにやろうとされているわけですが、5月にシンポジウムなどもできたらいいよねと語っておられましたが、そのことについても構想と言うか、野望と言うか語っていただけませんか。
 

●自分に何ができるのか考えてみて、そこに色んな仲間が集まってきます

増: それは何かと言いましたら、本当にしんどいんです。新しい事を立ち上げるということは。お金もすごくかかることなので、だけども色んな工夫と皆さんの努力と知恵でなんとかできるのと違うかというふうに、それを私たちは発信したい。自分に何ができるのかという夢から出発してもいいんです。だからそこを諦めないで追及してほしいし、色んな仲間や色んな人たちが集まってできるのではないかと。で、今はやっぱり色んな意味でも好機やなと思いますので、是非とも皆さん頑張ってください。
増: 私どもがやっている“ちょっとお助け隊”もそうなんですけど、やっぱり地域の方々にちょっとお助けすると「ありがとう」という笑顔で応えていただく。その笑顔と「ありがとう」が何よりも次の励みになるのかなと思います。そういうまちになっていったら、やっぱり地域が変わっていくのではないかと思っています。
絹: リスナーの皆さん、実際にここ13年15年と地道に地域で、そして南区と嵯峨野で実践を積み重ねてこられたご夫妻の言葉だけに重みがあるように聞こえませんか?そしてさらに好機であると隆子さんはおっしゃいました。と言いますのは、同じ思いをしている人たちが京都の中に、南区にお一方、山田木工所の山田さんと言う方、それから山科区にてんぷら屋さんの笑人(わろうど)の盛武さゆりさん、この方も地域の子ども食堂のネットワークの一角を支える方です。同じ思いの方が同時多発的に助け合おう、集まろうという動きすらあります。行政もサポートしてくれるはずですし、京都府も動き始めております。ぜひ、皆さん、ご注目を。この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市・景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。お二方、ありがとうございました。
両名: どうもありがとうございました。

 

投稿日:2021/03/12

第163回 ・3つのLって何のこと?京都が変わり始めてまっせ!~地域で暮らしながら学ぶ

ラジオを開く

杉: 杉山 有紀 氏(京都市都市計画局住宅室 住宅管理課)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
  杉山 有紀 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。さて、本日のゲストをご紹介いたします。杉山有紀さんです。お気づきのようにお若い女性です。肩書は少々長うございます。京都市都市計画局住宅室 住宅管理課の杉山有紀さんでいらっしゃいます。よろしくお願いします。
杉: はい、杉山です。よろしくお願います。
絹: まだ今日会って三回目くらいです。杉山さんの上司がおもろいおっさんでね(笑)。岩本剛さん。もうだいぶ前にこのチョビット推進室のゲストに「まちづくりの最終形って何?」というようなタイトルで出てくださった方と再会しまして、「絹川さん、ワシよりも有紀出して!」と仰って、今日の御出演が決まりました。
杉: はい、ありがとうございます。
絹: そんな不思議なご縁に導かれての、本日のタイトル、ちょっと謎みたいなんですよ。「3つのLって何のこと?京都が変わり始めてまっせ!~地域で暮らしながら学ぶ」と題してお送りいたします。では今日のゲストの杉山有紀さん、そもそも3つのLって何か、ひも解いていただけますか。
 

■エピソード1 そもそも 3つのLって、何?

●市営住宅の困りごとと学生さん
杉: 3つのLって何のこと?と書かせていただいたのですが、これは私たち住宅管理課で行っている3Lアパートメントプロジェクトというプロジェクトのお話です。何かかっこいい名前ではあるのですが、何の話やということだと思います。これは大学生に市営住宅で暮らしてもらって、住民として地域の自治会活動に参加してもらうというプロジェクトになっています。私たちが市営住宅を管理している側になりまして、そのつながりで市営住宅の単身部屋に学生さんに入ってもらうようになります。
絹: 京都市って、市営住宅が結構たくさんあるはずですよね。
杉: 88ありますね。
絹: お、さすが本職パッと出てきたね。88か所もある。僕がパッと思い浮かぶのは、洛西ニュータウン、あれは市営住宅ですか?
杉: そうですね。あとニュータウンで言うと、洛西ニュータウンのほかは向島とかもありますね。
絹: 向島もでかいですね。そして素人であります我々が思い浮かぶのは、ああいう市営住宅を管理されている方が、抱えておられる困りごと、あるいは地域が抱えておられる困りごととして、「空いているのちゃうの」とか、「高齢化してお年寄りが増えて、若い人が少ないんとちゃうかなあ」とそんな想像を働かせるのですが、それと関係ありますか?
杉: そうですね。市営住宅、若い人もいらっしゃるのですが、お金をためて持ち家を買うために出ていかれる場合もありますし、どうしても元々住んでいらっしゃる方の高齢化というのも進んでいますので、自治会活動をされている中でも役員の担い手不足で悩んでおられるという声を伺っております。その声を受けて、私たちの方でも何かできないかと考えまして、学生に入居してもらうのはどうだろうという案が出てきました。この学生というのが、京都市の人口の一割を占めておりますので…。
絹: リスナーの皆さん、今大事なポイントが出てきました。京都市の総人口約142万人、それの一割と言うと、14万人から15万人の学生さんが京都にいはると。京都はそれがすごい特徴で、日本中で一番学生比率の高い街ではないかとすら言われているそうですね。 さあ、そんな中で住宅管理の担当をされている有紀さんたちが色々考えられました。それを象徴する手元資料をちょっと紹介してもいいですか?
杉: ありがとうございます。お願いします!
 

●掲載された京都新聞から

絹: 実は隠れて予習しているんです(笑)。 令和2年3月8日月曜日の京都新聞です。見出しが「伏見の市営住宅に龍大生、連携事業1年、自治会活動暮らして学ぶ」とあって、「大学生が市営住宅に住んで、自治会の一員として地域活性化に一役買う。伏見区竹田の田中宮(たなかのみや)」「自治会と地元の龍谷大学、市の連携事業3Lアパートメントが始まって今年で一年を迎える。全国でも珍しい試みで、龍大生3人が行事や防災などの活動に加わって地域に溶け込みつつある。」これが去年の3月の新聞記事です。
3L APARTMENT ホームページより転載)
 

●市営住宅に暮らす学生さん、増えています!

杉: 今、ご紹介いただきました伏見区にあります田中宮市営住宅、こちらに龍谷大学の学生さんに暮らしてもらっていまして、現在は3名だったところから6名に増えておりまして…。
絹: 増えてるやん。ということは先細りじゃなくて、ちょっとずつ広がりつつあると。うれしいじゃないですか。
杉: そうなんです。うれしいことです。元々住んでいた3名の学生の口コミで広がっていったり、後は募集を見て、「全然地域と関わったりしたことなかったけど、興味をもってやってみたいな」と思ってくれた子が参加して、だんだん広がってきているものになります。
絹: 実際に僕は取材していないから門外漢としての想像ですけど、実際に住んでおられる人たち、若い学生さん6人も来てくれたら、すごくうれしいのと違うかしら。
杉: やっぱりパッと明るくなったよねというような声は聴きますね。学生さんたちが自治会活動に参加してくれているだけで雰囲気が変わるという声を頂いています。
 

●学生さんの入居、実は地元の要望でした

絹: 新聞記事には、田中宮市営住宅でも入居約80世帯のうち、高齢者を含む世帯はおよそ半数以上で、防災面などの不安を抱えていたり、単身者用の部屋が空いていることをなんとか活用しなければと、自治会の方から京都市に学生の居住を要望された、とありますが。
杉: そうなんです。元々、田中宮市営住宅には龍谷大学の学生さんがボランティアで一時的に入ったりして、学生とのつながりがあったんです。で、「来てくれている学生たちがずっと住んでくれたらもっと地域とも深く関わってもらえるのに、どうにかそういう仕組みってつくられへんのやろか」というような相談もありまして…。
絹: リスナーの皆さん、その田中宮市営住宅の位置関係ですけど、皆さん土地勘はありますか?近鉄の竹田駅よりもちょっと南…。
杉: 歩いて10分~15分くらいの所ですね。
絹: それから京阪で言うと墨染の駅から西に向かって15分くらい歩いてという感じですか。国道の赤池から歩いて10分くらいかな。そんな感じの位置関係です。城南宮さんの南のほうですね。
 

●「暮らしながら学ぶ」を実現するために

杉: この取組みとしては入居している学生さんが自治会の役員として地域の自治会活動に参加していくというもので、「暮らしながら学ぶ」というのを大きなテーマにしています。
絹: 大学側も全面的に協力されているみたいですね。
杉: そうなんです。地域に学生が入って、それで終わりではなく、大学、自治会、地域、そして京都市、他にも色んな関係機関が集まって学生や地域をサポートできる体制を取っています。
絹: 別の新聞記事には「空き部屋になっていた単身用の部屋、1DK約29㎡を使っている」とあります。入居費管理費は計24800円。これは手ごろですよね。
杉: そうですね。近隣の学生が一人暮らしをするようなお部屋の家賃からすると安く設定されていると思います。
絹: 僕はそんなに詳しいわけではないですけど、例えば息子がワンルームマンションに入ろうとすると5万くらい確保しないといけないのではと…。
杉: そうです。4~5万円くらいがこのあたりの相場とは聞いています。
絹: 学生の経済的負担を軽くするために、事前に京都市がお風呂を改修したり、エアコン、冷蔵庫、家電製品も設置したと。もう至れり尽くせりじゃないですか。
杉: そうなんです。もう身一つで入ってもらえるという状況ですね。
絹: でも地元の方から「学生さんによかったら入ってほしい」という声が京都市に届いて、それを京都市が丁寧に拾わはった。これもなかなかちょっと美しいじゃないですか。
杉: ほんまですか!
絹: それもちゃんとそういう声が届くんですね。
杉: やっぱり頂いた声をどうにか私たちも実現できないだろうかというのは考えてまいりますし、その中でも特に田中宮については、単身部屋が空いたまま、次の募集を待っているような状態だったので、条件としても整っていたというところはあります。
絹: 大学に通うだけでは経験できない色んな世代の住人との関わりを通じての学び、それも京都で学生生活を送る上での大事な学びではないのかと大学でも思われたわけですよね。
杉: 大学の学内では学べないような関りを、市営住宅をフィールドとして学んでもらえる良い機会になるのではないかというところで、龍谷大学さんに賛同いただいたという次第です。
3L APARTMENT ホームページより転載)
 

●3つのL の答えです

絹: さあ、そこで謎のタイトルの答えが出てきます。
杉: ついに申し上げます(笑)。3つのLというのが「local」「life」「learning」という3つの単語の頭文字を取っております。これが「地域に暮らしながら学ぶ」という3Lアパートメントプロジェクトを表している要素になっております。
絹: 「local」「life」「learning」、地域で学んでくれと。
 

■エピソード2 熱くて優しい自治会長さんのこと

●田中宮に自治会を立ち上げる
絹: さあ、次のエピソードです。なんか面白い自治会長さんがいたはるらしいですな。
杉: そうなんです。自治会長さんがとてもインパクトがあると言いますか、個性的な方でして…。
絹: 新聞記事でお坊さんみたいにつるんとした人が作務衣を着て…。結構恰幅のいい人、この人?
杉: そうです(笑)。第一印象はちょっとこわもてな感じもある人なんですが、実際話してみると義理と人情で、とっても優しい熱い方なんです。
絹: お名前は?
杉: 岡田俊秋会長です。
絹: 岡田俊秋自治会長。これは平成31年の時点で御年62となっていますから、今はもっと上ですね。
杉: 63歳ですかね。そもそも田中宮市営住宅には自治会がなかったのですが、平成24年度に自治会を自ら立ち上げられた方です。
絹: どうやら熱い方のようですね。
(左側 : 岡田俊秋自治会長 3L APARTMENT ホームページより転載)
 

●ふれあい祭り、子ども食堂、ソフトボール大会…みんなの喜ぶ顔が見たい

杉: とても熱い方で、地域のことをすごく考えておられて、「ふれあい祭り」という地域のお祭りとか、子ども食堂や、ソフトボール大会など、色んな行事を実施して、「子どもたちの喜ぶ顔が見たい!」「地域の人が喜んでいる顔が見たい!」という気持ちで活動されている方です。学生の事もすごく気にかけて下さっていて、コロナ禍ということもあり、昨年はアルバイトができない学生がいたんですけど、「大丈夫か?」「食えてるか?」と、とてもこまめに声を掛けて下さっていました。自治会としても住人の皆さんに対して色んな策を練っておられて、実行されていて、とても優しくて熱い方です。
絹: 3Lアパートメントのフライヤーと言いますか、三つ折りパンフレットがあります。その中を見ますと、岡田自治会長の人となりを表す、「田中宮名物、岡田会長の粕汁」というのがあって、会長が蔵元から仕入れてくる美味しい酒粕を使って手製の粕汁を振舞ってくださいますと。これまで粕汁が苦手だった方も絶賛と書いてあります。
杉: 冬と言えば会長の粕汁で、めちゃくちゃ美味しいです。
(田中宮名物、岡田会長の粕汁 3L APARTMENT ホームページより転載)
絹: それとともに子ども食堂をやっていらっしゃるんですね。周辺の子どもたちにお声かけをして、学生と一緒にご飯を食べますと。時には夜に地域の大人たちが大人食堂って…。食堂って言ってますけど、当然アルコールとか出そうですよね(笑)?
杉: そうですねえ(笑)。色んなものが出てますね(笑)。
絹: いやあ、面白いですね。それから「ふれあい祭り」。地域で途絶えていた夏祭りが十数年ぶりに復活。
杉: 毎年秋に行っていまして、これが一番、田中宮市営住宅自治会の行事の中では大きな行事になっています。ちょっと今年度はコロナの影響で、規模を縮小しての実施という形で、外ではできなかったんですけど。
絹: それはしょうがないですよねえ。
杉: ただそれも入居している学生が中心となって、「今年もぜひやりましょう」ということで、たくさん動いて実施してくれました。
 
  (第5回ふれあい祭り 2020.10月開催 3L APARTMENT ホームページより転載)
 

■入居している学生さんのこと

●「地域に入ってやってみたい!」
絹: それでは住んでいる学生さんの様子について、教えていただけますか。
杉: 入居している学生は、今は6名なのですが、とっても真面目ないい子たちで、地域のために自分たちも何かしたい、何ができるやろかということを、すごく考えて、志を持って入ってきてくれているんです。
絹: なんかちょっと美しすぎません?僕、以前はね、学生さんは地域にかかわらないとか、ほっといてみたいな、スマートフォンの中身だけ、ネットの世界に没入してというイメージがあって…。ああ、でも運動部とかガンガンやっている人はやっていたよなあ。
杉: 私も最初は失礼なんですけど、そういうイメージを持っていまして、学生さんで地域に入ってやりたいなんて、やる気を持ってくれている子がいるんやろかと思ってたんです。ただ実際、こうして募集してみると、みんな「やってみたいです!」「入ってみたいです!」と言ってくれる子もいて、今年も入居募集はもう既に終えたんですけど、1つの枠に何人もの学生さんが応募してくださって…。
絹: リスナーの皆さん、今のところ赤線引いてくださいね!枠よりも多くの人が応募してきたと。ということは、龍大生のある部分は大学に近いし、条件もいいし、地域のお手伝いもしてという希望があるわけや。
杉: そうなんです。「地域に入って僕もやってみたいです!」と言ってくれるのは、本当にうれしかったですね。
 

●3.11以降、学生気質が変わった?

絹: 3.11って、もう何年前になるんでしょうかねえ。
杉: 2011年ですよね。
絹: そうすると10年ですよね。あの頃から被災地に入る学生さんとかが増えて、何か学生気質が変わってきたような、そんな気も少ししているんです。言葉を選ばずに言うと、「恥ずかしげもなく世のため人のために動く」という人が、少し若い人の中ににょきにょき出ているような気がせんでもないのですが、その辺有紀さんの年代はどう思います?
杉: 私が学生の頃は、そこまで地域にとか、誰かのためにとかいう人、もちろんいたとは思うんですけど、目立ってそういうイメージってなかったですね。
絹: そういう人口比率がちょっとアップしてきた気がしません?3Lアパートメントプロジェクトなんかに関わっていると。
杉: 今の学生さんを見ていると、本当にそうで、龍谷大学の学生さんだけじゃないのかもしれませんが、関わっている学生も自分たちで変えたい、何かをしたいということで、すごく自発的に動くということをしていて…。
 

●住んでいる学生同士もすごく仲がいいんです

絹: 頂いているメモを見ますと、「彼らは何か志を持っているような気がする」というコメントと、住んでいる龍大生同志も仲が良くて、一緒に飯を食ったり、部屋に集まったり、寮みたいな雰囲気も、その田中宮市営住宅にはあるようで。あ、学生さんが集まっているフロアって一緒なんやね。
杉: フロアが同じ階で、隣り合わせになっている部屋もあるので、フラッとみんな集まって一緒にご飯食べたりして、同じ階に住んでいる仲間なので終電とかも気にせずにいられますし…。
 

●学生を守るためのルールが設定されています

絹: でも、一定トラブルを防ぐために、田中宮の一般の住民は彼らの部屋を訪ねるのはやめようというのは、マナーとしてあるみたいですね。
杉: 学生たちも住民さんの部屋の中には入らない、また住民さんも子どもであっても学生の部屋には入らないということを、岡田会長が徹底してされています。
絹: それはやっぱり岡田会長の学生を守ろうというご配慮なんですか?
杉: そうです。この事業を始めるにあたって、学生を守るための方法としてルールを設定されています。
絹: そっかあ。なかなか深いですねえ。さて、時間が残り少なくなってきましたので、これからどうなっていくのだろうという予告編と言うか、展望も含めて、コメントしていただけますか。
(集団登校する小学生の見送り 3L APARTMENT ホームページより転載)
 

●3Lアパートメントプロジェクト、市営住宅以外にも、全国にも広げていきたい

杉: ちょっと私の野望みたいなところも含めての話になるのですが、現在、これは田中宮の市営住宅で行っているのですが、他の市営住宅にも広げていきたいなと思っていますし、それだけではなく市営住宅以外の自治会にも広げていきたい。やっぱり地方から出てきて下宿している子もたくさんいると思いますし、そういった一人で住んでいる学生も地域に関わっていって、サークル活動の一環のように、地域をフィールドとして学生の自由な発想や感性が活かせる場をつくっていけたらと思っています。
絹: そのあたりを運営協議会の事務局長を受けていらっしゃる三木俊和さんあたり、“まちとしごと総合研究所”あたりと話をしてみたいですね。
杉: そうですねえ。これは30分では全然収まらない話なので。
絹: その有紀さんの野望が、京都市だけでなく、全国にもね。
杉: 全国にも広がって、新しい自治の形になってほしいなと。
絹: その前に、京都府さん、なんで京都市さんの真似、できないのと。あ、ひょっとしたらもうされているかもしれませんけど、府営住宅もあるものね。僕は建設屋ですから、民間の立場から田中宮で起きるような共同住宅、3Lプロジェクトが起こりうるようなマンションだとかアパートとかをつくってみたいですね。
杉: 実際に入居学生の中にも、不動産だったり、ハードの部門で3Lみたいなことができないかと思ってくれている学生も住んでいるので、是非学生の声もお届けできたらなと思います。
絹: いやあ、彼らと悪巧みしたいねえ!
杉: 是非、しましょう!
絹: そのためのプラットフォームなんかも、実は京都府の方々と作り始めているんです。ですからそんな話も、連携プレイをしていけたらと思います。リスナーの皆さん、今までの話、お聞きになっていかがだったでしょうか。京都市の住宅室、市営住宅を管理している部門が何やら悪巧み、それも非常に大切な悪巧みを始めて一年以上経っています。これが広がると京都市はより暮らしやすく、学生が元気になる、そんな気がしませんか。一回で終わるような話ではないので、第二弾、第三弾と続けてまいります。またプロモーションビデオもおつくりになっていますので、できた時点でお知らせいたします。この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市・景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。有紀さん、ありがとうございました。
杉: はい、ありがとうございました。

 

投稿日:2021/02/26

第162回 ・大学生のためのアプリ KYO-DENTってご存知ですか?~開発学生のプロジェクトメンバーに直接聞いちゃおう!

ラジオを開く

大: 大久保 忠重 氏(京都市総合企画局総合政策室 大学企画係長)
小: 小尻 真希 氏(京都市総合企画局総合政策室)サポート
園: 園山 倫太朗 氏(京都文教大学 総合社会学部2回生)
松:  松本 彩 氏(佛教大学 社会学部現代社会学科2回生)  
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)

 

大久保 忠重 氏) (園山 倫太朗 氏)    (松本 彩 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は、当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストはお三方をお招きしております。まずお一方目は京都市総合企画局総合政策室大学企画係長の大久保忠重さんです。
大: 大久保忠重です。よろしくお願いいたします。
絹: よろしくお願いいたします。それからスタジオの外に、やはり京都市からサポートスタッフとして小尻さんに来ていただいています。今日はお声は出されないかもしれませんが。
それからお若いゲストが2人おられます。園山倫太郎さん、よろしく!
園: よろしくお願います。
絹: 島根出身、京都文教大学2回生。今回のプロジェクトチームのリーダーを去年務めたと。
園: おこがましい限りです(笑)。
絹: それからコロナの影響で、スタジオの中に入れる人数を制限していますので、ゲストですけど、もう1人松本彩さんという学生さんもおられます。おーい!
松: はーい!
絹: あとでまた登場します。というゲスト紹介です。
今日の番組タイトルは「大学生のためのアプリ KYO-DENTってご存知ですか?~開発学生のプロジェクトメンバーに直接聞いちゃおう!」と題してお送りいたします。それではエピソード1に入っちゃいましょう。口火は大久保さんから切っていただきましょう。「そもそもKYO-DENTってなんぞや?」行きましょう!
 

■エピソード1  そもそもKYO-DENTってなんぞや 

●京都ならではの大学生のための学びのアプリ、リリースしました! 
大: KYO-DENT、大学生のためのアプリということで、今年の3月にリリースされたものになるのですが、京都市には38の大学があって、15万人の学生さんが学んでおられます。これはいずれも政令都市ナンバー1の数でして。
絹: 京都市民の数、減り気味ではありますが、昔習ったのは140万人、一時は150万人、すると何人に1人が学生さんになるんですか。
大: 10人に1人ということになります。多いです。東京よりもはるかに多くて、学生さんが活躍しているまちということになります。その学生さんに少しでも充実した学生生活を送っていただきたいと、この4年間で京都でしっかりとした思い出を学んでほしいということで、このアプリを開発させていただきました。この京都、例えば世界遺産で学べる授業であったり、今年からは京都鉄道博物館で学べる授業など色んな授業もありますし、地域の町内会さんとかに学生が出向いて、色々交流を深めてもらったりなど、大学のキャンパス以外にも学びを深めるツールがたくさんあります。ところがそれがなかなか伝わっていない、学生さんが知らないということで、それがきっかけで今回このアプリを開発して配信をさせていただいております。
絹: いい試みですねえ。僕らの学生時代って、自分自身もう60を超えていますので40年近く前ですけど、なかなかそういう授業はなかったですものね。
(※京都市ホームページより【広報資料】「大学のまち京都・学生のまち京都」公式アプリ KYO-DENT(キョーデント)配信について※キャンペーンは終了しております)
 

●大学生の皆さんにアプリのもろもろ、考えてもらいました

大: ありがとうございます。京都ならではの学びというところを、どんどん深めているのが私どもの仕事でして、ただ学生のためのアプリなので、大学生に実際に機能とかデザインも含めて考えていただこうということで、先ほどご紹介した園山さんとか、松本さんを中心にプロジェクトメンバーを立ち上げて、今回KYO-DENTの中身を議論いただいたというのが、開発の経緯になります。
絹: 口火を大久保さんに切っていただいたところで、次なるバトンは倫さんですか?
 

●横のつながり、縦のつながりを広げたい

園: 倫さんです(笑)。その当事者としての意見を、ちょっと話させていただきます。
このアプリをつくった目的としては、やはり京都って、市民の10分の1学生がいるにも関わらず、横のつながりがまだうまくできていなくて、大学それぞれの孤立した環境にあるなと自分自身感じていました。また、様々な企業さんがおられるにも関わらず、縦のつながりもあまりできていないなと思ったので、このアプリ開発プロジェクトが立ち上がったことで、横のつながりと縦のつながりをより広げていくためのアプリとして、自分は位置付けています。
絹: それで偶然、すごい迷惑なコロナさんが来てしまって、その中でよけい横のつながりがブチブチに分断されているなかで、ひょっとしてこのアプリを開発されたタイミングって、バッチリ違います?切れているつながりをつなぎなおすのに、いい時期につくってくださいましたよね。
大: そうですね。対面での活動が制限されているなかで、こういったアプリを通じて配信できるというのは、強みかなと。こういうコロナ禍の中では、このアプリは非常に使えるのかなと。学生さんが自分で動けないなかなので、そういった中でも色んな取組みがされており、私どももしていますので、それを届けるツールがこの3月にできたというのは、僕らの心強いものになっていますね。
園: 学校に行かないと、本当にこういう情報を得ることができなかったのが今までだったのですが、アプリとして手元で持ち運ぶことができるようになると、そこから情報を得ることができるようになるので、大変今に合ったものかなと思います。
絹: しれっと大久保さん、今ここに座っておられますが、隠れていい仕事をしていらっしゃいますね。
大: 園山君と松本さんのお陰です(笑)。ほんまに。
園: アプリの機能は、大学生が色々と話し合うことができる掲示板の機能があったり、これまでの学習の積み重ねを記録する機能があったり、大学生なので飲食店などのクーポンが使えるものであったり、歴史の長い京都には文化施設が多いので、そういう所にも安く入れるような機能もついています。
 

●このアプリをきっかけにプロジェクトが立ち上がれば…

絹: さっき、このアプリの本質的なこと、横のつながりができるといいよねと、それから地域とのつながりができるといいよねという話を、打ち合わせでしていましたが、資料に「みんなの掲示板」機能と書いてあります。僕がインタビュアーとして興味があるのは、この掲示板機能がうまく使われると、面白いことが起きるのではないかなと、そんな予感がするんですけど。
園: 横のつながりをもっと増やしていきたいという思いがあるので、学生同士が課題とか、「こういうところを、もっとこうしたらいいのでは」といった議論を活発にできたことの延長線上に、もし何かのプロジェクトが立ち上がったりしたら…。
絹: ここに「大学の枠を超えた、学生だけの居場所とかコミュニティをつくるのに、このアプリがきっかけになるのでは」と書いてありますね。今のミレニアム世代よりも更に先のZ世代の連中は僕らと違って、オンラインでこのアプリがきっかけになって、「おーい、こんなプロジェクトやるけど、集まれ」なんてやりかねないね。
大: この京都の学生だけが使えるというところがミソになっていまして、ツイッターなんかは全世界に発信されるんですけど、京都の学生だけがこのアプリの掲示板に投稿できるように制限を設けています。
絹: いいですね。コミュニティサイズと言うか、スモールシティ京都に特化できると言うか。「あ、すれ違ったアイツ、アプリで会ったヤツとちゃうか」みたいなそんなこともあるかもしれませんね。
倫さん、こういうことにプロジェクトリーダーとして携わって、どの辺がワクワクした?
 
  コトカレ ホームページより転載)
 

●最初の0から1をつくるということ

園: やっぱりこうやって学生同士がつながってプロジェクトを立ち上げることができれば、どこまでできるかわからないですけど、もしできたら、すっごい面白い事が起きる。と言うか、そこから大学のプロジェクトとか、サークルに終わらず、その後の人生においても自分がやりたいことをできるように、やりたいことをそのまま延長線上としてできたらいいなという思いがあるので、それを自分たちがつくる、最初の0―1をつくるというのは、すごいうれしかったですね。すごいワクワクしました。
絹: 今、良いことを言いましたね。0―1をつくるって。倫太郎さんは結構欲張りで、大学の枠を超えていくことを良しとするタイプの人のようです。この辺りはなかなか見どころありと、おっちゃんは思います。
さあ、13分になりましたので、一度外におられる彩さんに交代しましょうか。後で「ちょっと喋らせろ」という時はサインをくださいね。バタバタと交代しますからね。
園: 了解です(笑)。
 

■エピソード2 KYO-DENTのコンセプトとおススメいろいろ

●せっかくの京都。ちょっと覗いてみませんか?
絹: では選手交代で、同じくプロジェクトチームのメンバーであります松本彩さんに声を出していただきます。軽く自己紹介を!
松: はい。佛教大学社会学部現代社会学科2回生の松本彩と言います。よろしくお願いいたします。
絹: 彩さん、エピソード2は何から行きます?やっぱりこの扉ですね。
松: はい。このKYO-DENTのメインとなるポスターの画像を見ていただきたいのですが、是非これを聞いていただいている皆さんも検索して見ていただきたいと思います。
この黄色いポスターの中にスマホが扉になって、「せっかくの京都。ちょっと覗いてみませんか?」という言葉と共にある画像なんですけど、これがすごくこのアプリのコンセプトにぴったりで、やっぱり自分自身もそうだったのですが、大学に入って何をしたらいいんだろうとか、何かきっかけが欲しいとか、そういう人たちって、意外とたくさんいると思うんです。そういう人たちにとってこのアプリがきっかけになれば、たった1つのスマホから大学の色んな選択肢の幅が広がればという気持ちで、このアプリを作ったし、このポスターを作ったんです。
 
絹: リスナーの皆さん、ラジオで画像を想像するのって、無茶言うなという話ですが、イメージしてください。黄色いA4のポスターのところに、KYO-DENT 2020.3.26リリースというタイトルのチラシがあると。背景は黄色い無地なんですけど、その真ん中に扉を開けるところをイメージしてください。扉はスマートフォンなんです。スマートフォンにノブがついていて、それを回してカチャっとやると次なる世界に行くよと。このKYO-DENTは「Kyoto」と「student」を縮めた造語?
松: はいそうです。「Kyoto」「student」を掛けており、京都の学生に使っていただけたらということで、この名前にしました。
絹: 松本彩さんは、アプリのコンセプトと言うか、明示しているものは扉だということに、一番ワクワクされていますね?
 

●大学生になったものの、何をすればいいのか…

松: そうですね。自分自身がこのアプリ開発プロジェクトが扉となったというか、大学生になって、最初何をすればいいのか、何かやってみたいけど、4年間ってあっという間で何をしたらいいんだろうという時に、アプリ開発プロジェクトのポスターを見て、それがきっかけになって、ここに飛び込んでいったんです。その飛び込むきっかけがこのアプリ開発だったので、アプリの中で何かできないかなと思ったのがこういう形でした。それこそアプリの中に色んな学生団体だとか、色んなプロジェクトだったり、色んな京都の学生のための情報が詰まっていて、みんながたくさんある中から選択肢として選べるというのが、このアプリの魅力だと思います。
本当に自分で選択肢を見つけていくって、すごく難しいんですよね。でもたくさんの選択肢が、行政の方たちが私たちに提供してくださるのを一気に見られるというのは、すごくメリットがあるなと私自身思いますし、本当に学生に使ってもらいたいなと思っています。
絹: リスナーの皆さん、お気づきですか?松本彩さん、すっごく力が入っていますよ(笑)。
それでね、利用対象が大学コンソーシアム京都加盟大学に在籍する学生で、しかもこれはニクいなというのは、日本語・英語2か国語対応と、やるじゃないですか。それから構成メンバーは8大学から12名、うち2人が留学生、京都医療科学大学、産業大学、京都大学、文教大学(さっきの倫太郎さんですね)、同志社大学、佛教大学(これが彩さん)、立命館大、龍谷大学ということですね。
ちょっと質問ですけど、プロジェクトチームの活動は12月で終わってますけど、まだまだお2人、このアプリの行く末に関わろうという気持ちはありますか?
松: ありますね。やっと出来上がったところと言うか、ここからまたたくさんの学生の方が使ってくださって、またどんどん改善点が見えてきているところなので、それを自分自身も開発メンバーとして見届けたいところがありますし、最後まで責任をもってやり遂げられたらなと考えています。
 

●安心して使えるアプリです!おススメは…

絹: すばらしい。そしてすごく色んな機能を持っているアプリケーションのようですが、松本彩さんが一番好きな「この機能がお勧め!」みたいなところを紹介していただけませんか。
松: 「京のコト機能」というので、学生向けの情報配信をしている機能があるんですけど、京都市さんだったり、大学コンソーシアム京都さんなど、学生向けのニュースを配信しているんですけど、やっぱり大人の方たちが配信してくださる情報であり、なおかつ行政なので、安心して見られるというところも魅力的で、自分たちで情報を取捨選択していくのって、結構難しいんですけど、安心と言うのは学生にとってすごくいいかなと。
絹: ある程度、総合企画局を中心に、それぞれの部局がスクリーニングして、いい加減な情報は排除して「これいいね」というものが配信されるということですね。
例えばうちの会社、公成建設の「インターンシップでネクスコの高速道路の城陽高架橋の工事を見に行きませんか」とか…。
あるいはバードマンラリーって聞いたことある?鳥人間コンテスト。あれのプラットフォーム、発射台をうちの会社で40年以上つくり続けているんですけど、「その現場、本番前に見ます?」みたいな情報をもし総合企画局に寄せたら、ちょっと見て、「この情報、やめとこか(笑)」なんていうプロセスがあるんやね(笑)。はい、すみません(笑)。どうぞ。
松: このアプリを最初に開発した時に、難しいと感じたのが、行政のアプリだけど学生が魅力的に感じるというのが、意外と結構難しくて、ただそこをいいとこ取りしたんじゃないかなと感じていて、学生が何か情報を求めていて、でも安心した情報を行政だから得られるというところで、これはやっぱり一番使いやすいのではないかなと思っています。
 

●お得情報の発信もあります!

絹: もう1つ、好きな機能は何ですか?
松: お得情報を発信している機能がありまして、「お得!機能」というものなのですが。
絹: おお、やっぱり女の人のお得情報って、うちの嫁さんも好きそうやわあ。
松: キャンパス文化パートナーズ制度とか、学割とか、学生の間にせっかくだから京都をたくさん見て知りたいけど、やっぱり学生なのでお金があんまりかかるのも…というのがここで色んなものを使っていただいて、京都を満喫していただけたらというので、ここは推していますね。
絹: ここでもう一度倫ちゃんに入ってもらいましょうか。
大: じゃあ僕が出て、倫ちゃんに代わります。
 
  (キャンペーンは終了しております)
 

■エピソード3 アプリ開発者としてお伝えしたいこと

●KYO-DENTをきっかけに、新たな一歩を踏み出してください!
絹: さあ、それではリスナーの皆さん、エピソード3という形で収束に向かいますが、さっき2人に喋ってもらって、本当に短い時間だったけど、アプリケーションを紹介してもらいましたね。他にもう少し、リスナーの皆さん、あるいは学生さんに伝えたいこと、地域のおっちゃんおばちゃん、じいさんばあさんに伝えたいこと、それぞれ一言ずついただけませんか。
松: やっぱり私自身がそうだったのですが、大学生活何をしたらいいだろうとか、何を始めたらいいだろうと、すごく皆さんこれから不安になるでしょうし、2回生や3回生の方でも、何かやっていれば良かったかなとか、そういうことがたぶん色々あると思うんです。このKYO-DENTがきっかけとなって、何か踏み出してみようと思えたらいいなと、そういうきっかけがたくさん詰まったアプリだと思うので、これを見てきっかけにして、何か大学生活を踏み出していただけたらと思っています。
 
 

●KYO-DENTを通して、地域の方々とつながりたい

園: 今言っていただいた学生目線としては本当にそうで、後悔して欲しくないです。たった4年間なんですよ。人生の中で。だから僕たちは一年生の時からこういうことに関わる事ができたんですが、早めに色々な事が知れるアプリにしていきたいと思うのと、やはり地域の皆さんとも関わっていきたい、縦のつながりも本当に増やしていきたいと思っているので、人口が減っていく、高齢化していく社会の中で、いかに学生が地域の中に入り込んで、色々共助することができたらなと思っています。
絹: 倫太郎さんは良いキーワードをくれました。共助、共に助け合うと書いて共助と読みます。このアプリケーションを学生さんに伝えるだけじゃなくて、私たちのようなおっちゃんおばちゃん、じいさんばあさん、長く地元にいる大人たちがいかにこのアプリにアクセスして、これを扉にして学生さんたちとつながるかというようなことも大切になってくるね。
園: そうですね。本当にそう思います。僕も地域で色々やっているので、このアプリを通して、このアプリは学生のためなんですが、色々なルートを使えば関わる事ができると思っているので、そういうふうに幅を広げていきたいと思っています。
 

●KYO-DENTと思い描く未来

絹: もしすごくこのアプリが有名になって、色んな事が起こるとして、近く起こりうる未来みたいなことを短く「きっとこんなことが起こるぜ」みたいなことあるかな?
園: 今さっき、僕が0-1という話をしたんですけど、本当にまだ1なんですね。リミッターはないと思っているので、100がゴールとは限らないんですけど、どんどんみんながつくりあげていく過程で色々なプロジェクトが起こって、そういうのが社会課題となっていることであれば、色んな大学の学生と関わる事ができるので、プロジェクトが起業に代わって、起業から事業としてうまくランニングしていくことができるようなことが生まれていくのではないかなと思っています。
絹: いいですねえ。それじゃあ、最後私がまとめを引き取るとして、今、勝手な思い付きですけど、河原町御池にQUESTIONビルという新しいビルがあります。あそこにStudents Labというプラットフォームみたいな学生のたまり場もできています。
園: 行きました!
絹: QUESTIONビルとこのアプリが連携する未来が、なんとなく妄想として私の頭に沸いております。それからコミュニティステップスというでっかい階段教室みたいな面白いセミナールームがありますが、あそこで夜な夜なアプリを介して、リアルとオンラインで学生と地域の人たちがミーティングしているという未来もなんとなく妄想されてきます。
リスナーの皆さん、いきなりよくわからない話をしてしまいましたが、学生たちにきっかけを渡して、京都市の総合企画局 大学政策担当の皆さんは面白い仕事をしています。このスマートフォンが扉になっているという絵に象徴されるように、学生たちはひきこもるのではなく、京都のまちに一歩二歩と踏み込む思いを持っておられます。その受け皿として京都市民はいかに受けるか。これは京都の先人たちがずっとしてきたことです。若い人たちを大事にすることで、新しいものを歴史の上に積み重ねる。それが我がまち京都のはずです。是非KYO-DENT、アプリケーションをダウンロードのうえ、ご協力を賜りたいと思います。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。倫さん、彩さん、そして大久保さん、小尻さん、ありがとうございました。
全: ありがとうございました。
(KYO-DENTアプリケーションのダウンロードは上記よりお願い致します!)
投稿日:2021/01/21

第161回 ・さとのやま保育園ってご存知ですか?~ヤキニク屋が作った保育園って何?

ラジオを開く

遠: 遠藤 久子 氏(さとのやまほいくえん 園長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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      (遠藤 久子 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は、当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストはお一方、妙齢のご婦人をお呼びしております。京都北山、焼肉の南山さんからお越しいただきました「さとのやま保育園」園長先生、通称えんちゃん、遠藤久子さんです。よろしくお願いします。
遠: よろしくお願います。
絹: 遠藤さんには「さとのやま保育園の今」ということを、後々ひも解いて頂きます。
今日の番組のタイトルですが「さとのやま保育園ってご存知ですか?~ヤキニク屋が作った保育園って何?」と題してお送りいたします。
遠藤さんにお話しいただく前に、ちょっと私、露払いをいたします。「さとのやま保育園」、実は2年前に取材に行ったんです。企業主導型保育園に挑戦されて、当時の社長さんが楠本貞愛(くすもと ていあい)さん、たぶん年回りは私くらいか、少し上くらいで、すごく感じのいい方で、企業が主導する保育園をやりたいということに惹かれて取材をして、2年経ってしまいました。その後どうなっているのか、2年ぶりに最近おじゃましまして、遠藤さんとも再会しまして、「なんで楠本貞愛会長じゃなくて、私なんですか?」と聞かれましたけど(笑)。
ではマイクをえんちゃんこと、遠藤さんにお渡しして、エピソード1に移りたいと思います。ご存じの方はご存知、でもまだご存じでない方のために、「ノートルダム小学校の北側に、保育園ってあったん?」という話をお送りします。
 

■エピソード1  そもそも「さとのやま保育園」てなに?

●さとのやま保育園は焼肉屋がつくった保育園です
遠: はじめまして、「さとのやま保育園」園長のえんちゃんです(笑)。「さとのやま保育園」はたぶん日本で1つかなと思うんですが、焼肉屋がつくった保育園です。たぶん色んな企業さんが保育園をつくっているとは思いますが、きっと焼肉屋はうち一軒かなというところですね。
絹: その確率、めちゃめちゃ高いと思います。なんで2年前、楠本貞愛社長はそう思われたんでしょうねえ。
遠: その当時、焼肉南山の職員が結構結婚が多くて、子どもを出産して、当時の社長である貞愛社長が従業員の子どもを子守しながら、従業員に働いてもらっていたという時期が結構あったようで、たまたま従業員の焼肉パーティーを3階のテラスでやった時に、子どもたちが走り回っていて、その姿を見て、「もう絶対にここは子どもが走る姿が一番似合う」と社長が思ったようで。
絹: 手元資料で、京都移住計画の人たちが作ってくれた「食を通じた社会づくり」という記事を読んでいるんですけど、南山さんのレストランの日本家屋の移築したやつ、茅葺の屋根のいい感じのレストランの隣にビルがあるんですよね。4階建てのビルの、「さとのやま保育園」はその3階にある?
遠: 3階と4階です。
絹: だから北山通に面して、ビルの3階と4階に保育園があるんですよ。
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京都移住計画ホームページ「食を通じた社会づくり(前編)」より転載)
遠: その子どもたちの姿を見た時にそう思って、保育園を設計してくださった方が新潟にいるのですが、その方が代表と出会った時に、貞愛代表が思う保育園のコンセプトとすごく近い保育園が鹿児島にあるよということを聞いて…。
 

●お手本は、鹿児島の「ひより保育園」です

絹: 白水さんの保育園、なんていう保育園でしたっけ。
遠: ひより保育園」です。鹿児島にある。
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(鹿児島県霧島市にある「ひより保育園」ロゴ ホームページより転載)
絹: フットワークが軽い社長さんやから、飛んで行かはったらしいですね。
遠: そうです(笑)。それを聞いてすぐに鹿児島の「ひより保育園」さんに見学に行かせてもらって、子どもたちが楽しく料理していたり、楽しく作ったものをみんなで食べていたりということに、代表がものすごく心を打たれて、「私、この保育園やる!」となって、やると決めてから半年間、ずっと走り回っていました。
絹: めちゃめちゃ早いんですよ。鹿児島のその「ひより保育園」を見てそこから半年でつくってしまうんですものね。当時、その話を聞いて、私、口あんぐりしていました。それから視察に行かれた「ひより保育園」の子どもたちの表情がまた…。小さな子どもたちが料理のボウルでまぜまぜしていたり、お味噌を仕込むのを子どもたちが保育士さんたちと一緒にやっていて、にっこにこしている写真がいっぱい載ってるんです。それを当時の社長は見て、「これだ!」と思われたんでしょうねえ。
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「ひより保育園」ホームページより転載)
遠: そうですねえ、もう「これだ!」という思い、1つですよね。
絹: それで2年前に京都北山南山の隣のビルにつくってしまわれましたと。あっという間に。当時その副園長格で白水さんという若い男性が鹿児島の「ひより保育園」から時々出張してきていましたよね。彼の話をインタビューしたのを覚えているんですけど、彼も保育の専門家ではなかったんですよね、確か。それで今日のゲストで来てくださっている、えんちゃんこと、遠藤久子さんも保育士資格を持ってなくて園長になっちゃったんですよね。
 

●実は私、保育士の資格持っていません

遠: そうです。そうです。私は元々北海道出身なんですけど、北海道に住んでいた時に1年間だけ保育園で働いていたことがあったんですけど、ちょっと違う経緯があって、保育業界から離れたんですけども…。
絹: 手元資料によると、北海道旭川市に住んでおられた頃、保育園で働いていたことはあるけれども、そのあとはサーフィン大好き、横乗り系プロショップのオープニングスタッフとか、スポーツ系のところに行っちゃうですよね。で、店長さんとして15年くらい働かれて、結婚をして京都に来られて、それでまたスポーツショップに入られて、すごい売上を上げた経験もあるんでしょ?
遠: そうなんです。へへへ。
絹: だから腕があるんですよ。
遠: 好きなんです。
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絹: それでまた、今度は全く違う「さとのやま保育園の園長をやってよ」と当時の楠本貞愛社長に口説かれて、「いや」と言わずに「やるわ」と言ったのはなぜですか?
遠: 「ひより保育園」の白水園長が「僕も保育資格ないよ」と言うのを聞いて、「ええー」と。保育の世界ではこういうことがあるんだという保育のベテランさんが何年もかけて取得して園長さんになるんだなというイメージがあったので…。
絹: ですからえんちゃんこと、遠藤久子さん自身が型破りのレアケースですよね。さとのやま保育園自身が、焼肉屋さんがおつくりになった企業主導型保育園としてはほんとにレアケース、今日は非常に特異点のゲストがここに来られています。
 

●おかげさまで園児の数はどんどん増えています

絹: 企業主導型保育園のサポーター営業まで、業務は多岐に渡りますと。親子入園面談からスタッフの採用までって、全部これ、遠藤さんが関わっていらっしゃいますよね。
遠:  はい。全てが初のお仕事で。
絹: よう2年間できましたね。
遠: そうですね。もう走り続けています。
絹: 漏れ聞きますと、初年度よりも今3年目ですけど、子どもさんの数、増えているというじゃないですか。
遠: 11人スタートで、今34名になりました。
絹: リスナーの皆さん、ここのところ聞き逃さずにちょっと耳をそばだてていただきたいのですが、それって、周りの地域の人たちが「ええー、焼肉屋さんがそんなんをつくって、保育園できるの?」という評価ではなくて、「ここ、ええわ、おもろいわ」と言うてるのの裏返しでしょ?園長先生に聞きたいのは、親御さんたちのつぶやきをいくつかお耳に届いているじゃないですか。そんなのを1つ2つ紹介していただけませんか。
 

■エピソード2 さとのやま保育園の今 ~ ちょっと変わった保育園です

●0歳から食材に触れています
遠: やっぱり食をすごく大切にしているんですけど、「お家ではあんまり上手に食べさせてあげられないけど、さとのやまの食材を使った給食食べていたら安心」みたいな声だったり…。
絹: ということは、本当に食材なんかも安心・安全であったり、美味しかったり、ひょっとしたら一緒に作ったりするのかしら。
遠: そうです。0歳から食材に触れて、3歳くらいになるともう包丁を持って、0歳から5歳までみんなそうですけど、みんな自分たちが食べる給食のお手伝いを活動に取り入れながら…。
絹: 今、さらっとすごいことをおっしゃいましたよ。3歳児が包丁を持ってと。おままごと用のプラスチックの包丁では、どうもなさそうですね。
遠: 本物のよく切れる包丁ですね。
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さとのやま保育園 Facebookより転載)
絹: それ、親御さんによっては「なに危ない事させてるのよ!」と言うような人も…。
遠: いますね。
絹: でもそういう人もいるけど、全体的には「ええやんか」という声が多いわけでしょ。
遠: そうです。多いですね。逆にお家だとお母さんはハラハラして、一緒に包丁を持って食材を切るなんて、「やめて!」となってしまう。お家ではなかなかできない事を、保育園の仲間と楽しくやる活動を通して、楽しんで調理していますね。
 

●旬のものを食べて元気になる

絹: 今、こういうエピソードを聞かせていただきますと、「さとのやま保育園」は焼肉屋さんがおつくりになった保育園だけあって、「食べて元気になる」ということにすごくこだわっていらっしゃる節がありますね。
遠: そうです。春夏秋冬、季節を通して旬のものを体に取り入れるということをすごく大切にしているんです。旬なものというのは栄養がいっぱいなので。そういうところで免疫力や抵抗力もものすごく高くなるので、去年はインフルエンザになった子が一人もいなかったんです。そういうのもすごくうれしいなって。本当に食べたもので体がつくられているんだなと思います。
絹: 旬なものを食べると抵抗力がついていいと読んだり聞いたりしますけど、実際にそれを平場でやり遂げているというか、インフルエンザが去年は1人もでなかったと、これもさらっとえらいことを言うてはるなと(笑)。
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京都移住計画「食を通じた社会づくり」記事より転載)
 

●今日やることは園児が話し合って決めます

絹: それで手元資料にまた目を落としますと、“初めに九州の鹿児島のひより保育園に行った時に、驚いた”とあります。当時の楠本貞愛社長も、もちろんえんちゃんこと、遠藤先生も「ひより保育園」に行っているでしょ?
遠: はい。何度か研修に行っています。
絹: 一番驚いたこととして…。仮に保育園や幼稚園をイメージします。先生が前に立って、「今日は〇〇のお遊戯します。はい、みんな並んで」というイメージを持ってしまうけど、一番驚くのは“今日何するか、保育士の先生が決めない”と、書いてあるんです。朝の会で子どもたちが話し合って決めていると。「今日は何する?」「〇〇やりたいな」と自分たちの考えを子どもが発言する姿を見られて、ショックを受けて帰ってこられた。
遠: そうなんです。びっくりしました。
絹: ということは、京都の「さとのやま保育園」でもそれは踏襲されているんですか。
遠: そうです。本当に私たちが大切にしているのは、子どものペースを大切にするということです。それを全員でやっているんですけど、大人が先に「〇〇するからね」とか、モノを用意して「これをやります」と、そういうのが決まってしまっているのは、どうしても大人主導じゃないですか。
絹: 教育学の専門家が今の話をお聞ききになったら「おおっ」というふうになるんじゃないでしょうか。実は最新なんです。僕は大学の一般教養くらいしかないですけど、今、日本でなされているような、カリキュラムを組んできちんとお行儀よく座ってというのではなく、モンテッソーリ教育だとか、フリースクールだとか、カリキュラムを作らない、子どもたち、生徒たち、学生たちが学びたいことを自分で学ぶ、それを教師が手助けするというものです。初めはカリキュラムがないからヨタヨタしているけれども、卒業する頃にはものすごいスピードで進んで、カリキュラムのある普通の学校よりも生徒たちの学習レベルが高くなるという学校が、世の中には、特に海外に多いらしいですね。それの保育園版じゃないですか。まさに。
遠: はい。がんばっています。
絹: ですから本当にすごい実験を2年間続けてやっていらっしゃるところが、目の前に、北山通にあります。遠藤さん、もう少し日々さとのやまで起こっているエピソードをご紹介いただけませんか。
 

●大人が働いている姿を見せる

遠: 焼き肉屋のつくった保育園というところで、一番素敵なことは、保育園があるビルの地下1階には「ギューテロワール」という肉職人を育てる施設があって、実際に普段焼肉で出すお肉を、毎日切っている場所でもあるんですけど。
絹: はい、私も行きました。普通、南山さんは、一頭の牛をご自身の所で精肉と言いますか、切り分けて、それは普通は舞台裏でやられることだけど、ちゃんとガラスの見える所で、子どもたちがそれを見て、「あ、牛が、こういう風にお肉になるんだ」と見える空間があるんですよね。
ギューテロワール
(「ギューテロワール」の様子。京都北山 南山 ホームページより転載)
遠: そうですね。そこがすごく大切なんですけど働く大人を子どもたちが近くで見れるという、そんな環境がすごく素敵だなと。私も保育園やってみて思うんですけど、普段お父さんお母さんの働いている姿って、なかなか子どもたちは見られないと思うんです。自営業なら見えるかもしれないんですけど。そういうなかで色んな大人が真剣にお仕事をしているところを見られるというのが、もっともっと大人になった時に、選択肢として出てくるとうれしいなって。
絹: 楠本貞愛会長(当時の社長)の思いとして、バックステージもスポットライトを当てて、子どもたちに見せちゃおうと。あんたたちが食べているのは、こういう作業で生まれてきているんだよと。で、子どもたちの目があったら、職人さんたちも「どや!」みたいな気持ちになるじゃないですか。
遠: なりますね(笑)。
絹: 僕はお話を聞いていて憧れてしまいました。やっぱり我々の建設現場でもなかなかわが子たち、小さい子たちにその姿を見てもらうことは難しい。でもなんとか見てほしいという思いは一緒ですものね。
 

●「さとのやま食堂」開催しています!

絹: 今、「ギューテロワール」という南山さんの本社ビルの地下にある所をご紹介いただきましたけれども、ここでのイベント、直近で行われることについて、少し園長先生にお話しいただけませんか。
遠: 毎月第二第四土曜日の11時半から1時までなんですけど、普段私たち大人も子どもも、美味しくいただいている給食を、地域の皆様にも食べていただきたいなと思って、「さとのやま食堂」を開催しているんです。その時には食育チームが作ったお惣菜も並べて、是非お家でも食べていただきたいなというのと…。
絹: 「そこへ行きたい!」「さとのやま食堂へ行きたい!」と言ったら、どうしたら行けますか?
遠: お電話でご予約になるのですが075-711-7511までお電話ください。
絹: 今、こういうご時世ですから、完全予約制です。
遠:  そうなんです。ちょっと席数を減らさせていただいています。
絹: 事程左様に、さとのやま保育園さんは地域に開かれているようです。地域の方たちに「来てね」と。それから12月26日から30日は南山歳末感謝祭でしたっけ。これは地域のお店がマルシェを開かれる?
 ヒトヨシストア
(詳しくはヒトヨシストアインスタグラムへ)
遠: 7店舗のお店が集まって商品が並びますので。またお肉もお安く買える期間になっています。
絹: 第二第四土曜日は特価の日。地下の「ヒトヨシストア」に行かれると、なかなかいいかもしれません。実は取材のために南山さんに1~2度ご飯を食べに行きました。やっぱりこういう子どもたちを育てる保育園のスタッフがそばにおられるというレストラン、なんかちょっと違うなという雰囲気がありました。落ち着いているというのか、本当に色んなものを大切にされているなということがレストランの、あるいはシェフの、あるいはフロアスタッフの行動からも、それから茅葺のあのしっとりした佇まいからも伝わってくる気がいたします。
リスナーの皆さん、是非、「焼肉屋さんがつくった保育園って、どんなんだろう」とご興味のある方はお調べいただき、そして「さとのやま食堂」、これは一見ではなく、一食の価値はありそうです。ぜひ予約のお電話をして、買い物にもいいかもしれません。ということで、終わりの時間になってしまいました。今日は楽しかったです。ありがとうございました。
遠: ありがとうございます。
絹: この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。えんちゃんこと、遠藤久子さん、ありがとうございました。
遠: ありがとうございました。さようなら。
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投稿日:2021/01/14

第160回 ・京都信金さんの新しい建物QUESTIONってご存知ですか?~様々な人の「?」が集まる場所

ラジオを開く

森: 森下 容子 氏(京都信用金庫 QUESTION 館長)
柳: 柳井 秀哉 氏(京都信用金庫 QUESTION)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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 (森下 容子 氏 ・ 柳井 秀哉 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介から参ります。お近くから来ていただきました。新しいビル“QUESTION”の館長、森下容子さんです。
森: 今日はよろしくお願いいたします。森下と申します。
絹: そして同僚と言いますか、部下と言いますか、奴隷?(笑)
森: いやいや、同僚です(笑)
絹: 柳井秀哉さんです。
柳: 柳井と申します。よろしくお願いいたします。
絹: ここは京都三条ラジオカフェ、三条通寺町かどのスタジオからお送りしておりますが、QUESTIONさんのビルは歩いて3分?5分?
森: 3分くらいでしょうか。河原町御池の南東角です。
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QUESTION Facebookより転載)
絹: 燦然と輝くQUESTIONビル。これが今、私がすごく心惹かれる場所なので、おいおいQUESTIONビルなんぞやというところをお2人に解き明かしていただきます。
そして番組タイトル、テーマを申し上げます。「京都信金さんの新しい建物QUESTIONってご存知ですか?~様々な人の「?」が集まる場所」と題してお送りいたします。
さて、ゲスト紹介の第二弾、例のごとく進行の絹川が手を抜きます。ではまず柳井さんに、メインゲストの森下館長って、どんな人ですか?その人となりをリスナーの方たちに短くお伝えください。
柳: はい、他己紹介と言われて、ちょっと恥ずかしい部分はあるのですが…。今日はラジオということで、気合が入って、ピンク色の服装で来ていただいてまして、QUESTION始まって以来の女性館長ということで、僕たち9名の長としてバイタリティ―溢れて、率先して第一線で僕たちを引っ張っていっていただいております。思ったことは全部、上にも言っていただいて、僕らはすごく助かっております。
絹: 怖そうですねえ(笑)。
柳: 僕らには優しいんですけど、上には結構言っていただくので、有難いです。
絹: 上の管理職にすると怖いかもねという(笑)。今の短い紹介の中でも1つ大切な情報が取れました。QUESTIONのスタッフ、京信さんのプロパースタッフは9名であると。9名のチームがあの大きなビルを動かしているということを、リスナーの皆さん覚えておいてくださいね。
それでは今度は、森下さん、同僚、部下、奴隷(笑)の柳井さんとはいかなる人物か、短く述べよということで、よろしくお願いします。
森: 柳井さんはもちろん京都信用金庫の職員でもあるのですが、2年前から経済センターに出向もしておりまして、今QUESTIONでやろうとしていることを、先陣を切って1年間、外で経験をしてきた実力者でもあります。
絹: ああ、経済センターで僕が初めて柳井さんにお会いしたのを、僕は忘れていて、柳井さんは覚えたはった…。
柳: 覚えてました。はい。
森: 柳井さんは起業家の方や学生のアツい思いをくみ取ることができる方で、さらに剣道の達人でもあるということで、チームのリーダー的な存在で頑張ってくれています。
絹: 棒を持たさないようにしましょうね(笑)。無事、ゲスト紹介が終わりましたので、エピソード1に入っていきたいと思います。
 

■エピソード1  そもそもQUESTIONって?

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●このプロジェクト、4年前から始まりました
森: 河原町御池に、この11月2日に新しくQUESTIONというビルを京都信用金庫のほうでオープンをさせていただいきました。まだ1ヶ月経っていないという状況なのですが、元々はその場所に京都信用金庫の河原町支店がございまして、4年以上前になるのですが、老朽化に伴って建て替えをするということになりました。一時麩屋町の方に移転をして営業をしているさなか、そこの場所で新しい京都信用金庫としての取組みをしたいということになりました。どういうビルを建てるのかというところから、結構信用金庫の中のプロジェクト的に進められてきました。
絹: 先ほど事前の打ち合わせの時に、4年前の時に柳井さんはいなかったという話をしていましたけど、4年って、プロジェクトにしたら結構長いプロジェクトですね。
森: そうですね。私も4年前にはそのプロジェクトには参加していなかったのですが、その当時の若手の職員が河原町御池という場所にどういったビルを建てたいのか、どういったコミュニティを生む場所にしたいのかというところから話し合いをしまして、今の形の原型ができています。
 

●銀行とコミュニティづくり

絹: リスナーの皆さん、お気づきになりましたか?今、森下さんのコメントの中にQUESTIONビルの性格を象徴するような言葉が1つ混じっていました。「どういうコミュニティをつくりたいのか」と。銀行マンの口にする言葉とはちょっとかけ離れているなと、今、びっくりしたんです。「コミュニティをつくりたいか」と若い行員さんたちが話しているわけですよね。
森: 金融業なので、もちろんお金をお預かりしたり、お金をお貸しするということが本業ではあるのですが、今はやっぱり預けるとかお貸しするだけではなくて、人と人とか、事業と事業を繋げるような事が金融機関にも求められていますし、その決済機能だけではなくて、信用金庫がお客様と伴走して課題解決をしていく課題解決機能というのが、やっぱり今は未来型の地域金融機関として求められていることなので、それを体現していく場所としてQUESTIONができているというところです。
絹: 私にはショッキングな発言と言いますか、自分は金融機関は何たるかということについて、常識にものすごく縛られているなと。「あれ、なんか違う」みたいな、「すごい何かをやらかさはるんちゃうか」みたいなワクワク感があって、お2人に是非ともゲストにと思った次第です。まだ2~3度しか会っていないんですよね。リアルで2度、オンラインで1度ですけど、でも面白い。さあ、その私が「なんかすごい」「面白い」と思っているのは何なのでしょうということで、そのQUESTIONの成り立ちについて続けていただけますでしょうか。
 

●QUESTIONのコンセプト

森: QUESTIONというのは、ビルの名前からしてそうなんですが、1人では解決できない問いや課題に対して、様々な分野の人が集まって、みんなで寄ってたかって、その問いや課題の答えを探しにいく場所というのをコンセプトにしています。「何かを始めたいという気持ちを持っていても、なかなか勇気をもって行動することができない」そんな言葉をよく私たちも耳にするのですが、QUESTIONはそれぞれの問いや課題を互いに持ち寄って、そんな思いをぶつけあいながら、課題を解決できるような場所にしたいなということを考えています。
絹: 実現できたらすごいじゃないですか。でも一般のリスナーの方はイメージが想像しにくいかもしれませんので、例えばどんな問いが持ち込まれるのか、あるいは持ち込まれたのか、それを聞いてくださる方たちというのはどんな人たちがいるのか。そのテーブルを囲んで、寄ってたかって「ああでもない、こうでもない」というような知恵者がそんなにいるの?等々、様々な疑問がわいてきますが、それを柳井さん引き取っていただけますか?
 

●こんな人たちがあなたに寄り添います

柳: はい!問いというところで、最初のコンセプトでいくと、起業家さんの課題であったり、何か問題を持ってきていただかないといけないかなというところを想像されると思うのですが、僕らも最初はそうだったんですけど、そこの問いに関しては「なんでもいいよ」ということで、母性で受け止めようということになっています。
で、その問いと言うか課題を持ってきていただいて、私たちコミュニティマネージャーが京都信用金庫で9名、あとはインターン生ですね、現役大学生の2回生3回生が中心になるのですが約5名、あと実は京都信用金庫以外にも外部で関わっていただいているパートナーの方がおられます。株式会社ツナグムさまということで、移住促進をされている団体であったり…。
絹: 田村さんたちですね。
柳: あ、そうです。田村さんです。であったり、NPOグローカル人材開発センターというところで、企業と学生さんの有機的なつながりをやられているところだったり、様々な京都信用金庫以外の外部団体も関わっていただいております。
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㈱ツナグム notoサイトより転載)
絹: 確か、今そうやってパートナー企業の皆さんがツナグムさんに、グローカル人材開発センター、それからクロステック・マネジメントさんなど、その他にも周りに40社くらいでしたっけ?
柳: 一番関わりの深いコアパートナーは私どもも含め4社、それ以外に外枠でパートナーという立ち位置でオペレーションまでは伴わないものの伴走していただく方が4社ほどございます。そのまた大枠にアソシエートパートナーということで、起業家の方を中心に専門家集団ですけど、約50社、協賛と言いますか、サポートいただいています。
絹: あ、増えていますね!
柳: そうですね、はい。200社が目標で、ご協力していただける先を私どもの方でお声掛けをさせていただいている状況です。そのような方々が問や課題のある方々に寄り添っていただいて、一緒に具現化と言いますか、アクションに移せるようなサポートをする場が、QUESTIONかなと思っております。
   

●必ずしも行動に移さなくてもいいんです。気づきを、出会いを、見つけに来てください

柳: ただ、アクションに移せなくてもいいかなと思っておりまして、そのなかで「やっぱりやめとく」となっても何か気づきに代わったり、その中でアソシエートパートナーの方と一般の方とが出会う場が創造できれば、私たちは1つの成果かなと思っております。
絹: 出会いの場でもある。それからコアパートナーが4社、そしてパートナー、アソシエートパートナーと、三重の円をイメージしていただけましたでしょうか。9人のコミュニティ・プロパー・マネージャーは京信マンです。そのそばに学生インターン、その外に三重線の円をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。我々一般人は1人で抱えているにはこの問題はデカいと。でもなんとかしたい。これ解決したら京都が住みやすくなる、息苦しさがちょっとマシになるかも…、でも行政に相談するのもなあというのが、もしあったら勇気を出して、「これ私の“?”ですねん」と言って、森下さんや柳井さんに相談したとしましょか。そうすると何が起こるんですか?
 

●まずは「QUESTION POST」という手もあります

森: 私たち運営しているのが、京都信用金庫、ツナグムさん、グローカルさんなどと一緒に協力しながら、その周りにいらっしゃるパートナーさんやアソシエートパートナーさんと一緒に課題解決のためのプロジェクトをつくったり、仲間集め、共感者集めということでセミナーを実施したりといったこともできますし、まず何か人に聞いてほしいというような事があれば、「QUESTION POST」というのがありまして、そこに皆さんご自身の課題とか問いとか好奇心等を投げていただきましたら、48時間以内に何かしらお答えをお返ししますということで、今、取組をさせていただいております。
絹: 私、本職は地元の建設屋ですので、自分の会社を運営するだけでも色んな課題を抱えています。それだけじゃなくて、ラジオのパーソナリティ的な事もしたり、あるいは(だいぶ前に終わりましたが)京都市未来まちづくり100人委員会の事務局もしていたことがあります。あの当時の事を思い出すと、一般市民から百数十名の人を公募で毎月集められまして、色んな課題について自由に話し合ってプロジェクト化していくという実験を京都市の総合企画局が行い、ノウハウを蓄積いたしました。これの民間版、さらにその企業寄り、学生寄りかもしれないなと。たぶん自分はそういう100人委員会で議論した記憶があるので、それで引っ張られたのかもしれませんね。その時は行政とどうするか、総合企画局の方が市民の課題に対して、「では〇〇局の〇〇さん、アドバイザーで入ってよ」と市民の中に呼んできて、法的な事、公的な事、一緒に助け合えることができないかみたいなことで、岡崎公園の辺りがすごく素敵になったことにお気づきではないでしょうか。あれは100人委員会の岡崎ホールディングスというチームが下絵を描いたものに、肉付けされたものだというふうに私は理解しています。一般市民のアイデアがかなり入った計画でありました。そういうものが今、京都では動きますので、十分そういう素地はあると。
   

●市民主導のまちづくり、ポートランドがお手本なんです

森: もちろん行政のお力というのは、すごく強いものだと思いますし、市民の声を聴かれる、情報が集まって来るということもあるかと思いますが、QUESTIONの方でも本当に一個人の方であったり、学生の方であったり、もちろん中小企業の方であったり、そこで働かれる従業員の方であったり、そういった色々な、様々な方のQUESTIONや課題に市民レベルで一緒に解決していきたいという、まちづくりという意味で、うちの理事長の榊田もよく言うのですが、ポートランドを見本にしているんですけど。
絹: すみません、ポートランドってどこでしたっけ?
森: アメリカなんですけど、アメリカ人が一番住みたい街ランキングでポートランドが選ばれた事があるような街でして、まちづくりの中で本当にタウンミーティングというのが市民レベルで行われて、行政主導というよりは、市民で自分たちの住みたい街をつくっていきたいというまちづくりをされるソーシャルな街があるんですけど…。
絹: ということはQUESTIONビルは京都版タウンミーティングの受け皿になるかもしれないということですね!
森: そうですね。そういう場所にしたいなと思っています。
絹: 偶然なんですけど、この小さなラジオ番組の名前が「まちづくりチョビット推進室」なんですね(笑)。昔からまちづくりという言葉に惹かれながらも反発を感じながらも、また惹かれていると。やっぱり自分たちが愛するまち京都を何かいいものにしたいという人とお近づきになりたいわみたいな感じですね。
 

●「QUESTION POST」はオンラインでも可能です

絹: さあ、もう少しイメージを固めていただくために、「QUESTION POST」でしたっけ、例えばこんなものが投げられましたよというご紹介は可能ですか?
柳: そうですね、細かいところまではともかく、ご紹介はできるかなと思っております。「POST」の方は会員の方が課題や問いを投げていただく場となっているのですが、実はオンラインで投げていただけます。なかなかリアルでは現場に来れないけれども、お仕事の合間にネットで書き込んでいただいて、それをお答えするという形です。その第一号は、1人ではちょっとなかなか解決できない、テーマを決めたいということだったので、そのテーマに対して学生さんも一緒にアサインしてもらえませんかというお話をいただきまして、なかなか一般の方で学生さんと繋がる機会というのはあまりないかなと思うんです。そんななか、学生さんも一緒に考えようよというのが第一号で今、プロジェクトとして生まれております。
 

■エピソード2 QUESTIONビルのこと

●5階で学生さんたちが対話の機会を待っています。
絹: そしてこの間始めて視察と言いますか、QUESTIONビルにお邪魔させていただいた時に、グローカル人材センターの人たちがいらっしゃる場所は5階ですかね、あそこはなんと呼べばいいんですか?
柳: STUDENTS LABになりますね。
絹:  学生さんがたくさんおられて、そこへ絹川さんみたいなおっちゃんが来て、色々話をしてくれはったらええんですわと。そういう出会いを学生さんは求めているし、課題を持った大人が寄って、学生と語り合うという場に育つといいですねみたいなことを、グローカルの方と田村さんがおっしゃってましたけど、私の翻訳の仕方が度を過ぎていますでしょうか(笑)。
柳: いえ、間違っておりませんね。そうなんですよ。学生さんが社会人と出会うというのも1つですけれども、学生さんも中小企業の社長さんであるとか、サラリーマンで活躍されている方と対話する機会があまりないと思うんです。そこで学生さんもその対話を通じて、何か気づきであったり、出会いが生まれる場所になればいいので、是非5階でアツく語っていただければいいなと思っています。
5階
(QUESTION(京都信用金庫)Facebookより転載)
 

●「コミュニティステップス」ではイベントやセミナーをたくさん開催していきます!

絹: 階段教室というと変ですが、京都市役所の方に向いて、ひな壇のような階段のような、すごい素敵な空間がありますね。あれはなんとお呼びになっているんですか。
柳: 名称が「コミュニティ・ステップス」になっています。
絹: 階段だからステップスですね。僕はこの間その上の方に座らせていただいて、階段の下の方の所にご講演をされる登壇者が座られて、オンラインとリアルと両方で発信されていましたね。
柳: ご参加いただいたのが、ちょうどイベントだったのですが、様々な方をお呼びしてこれからも実施していくつもりです。で、ちょうどリスナーの方でしたら、外からQUESTIONを眺めていただければ、その大階段が見ていただけるかなと思います。
絹: 森下さんと柳井さんたちが、もう息も絶え絶えになりながら、「QUESTIONは60%くらいの完成率ですけど、とにかく倒れるまでやります!」みたいな形で、どんどんどんどん夜な夜な悪だくみのイベントを発信し続けているという感じが見て取れますけど。
森: オープニングが11月だったので、11月12月にかけてコミュニティステップスを使った形が多いかと思いますが、イベントやセミナーをたくさん実施していきたいなと。そこで色んな方に参加をしていただいて、QUESTIONをまず知っていただきたいなというのもありますし、そこに参加していただくことで、今まで出会うことのなかった人たちが出会っていただいたり、知らなかったことに気付いていただいたり、そういった機会をたくさんつくっていきたいなと思っているので、京都で、京都府外でも活躍されている方をたくさんお呼びしてトークセッションという形でイベントをさせていただいております。
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(QUESTION(京都信用金庫)Facebookより転載)
 

●ノルマ撤廃―京都信用金庫の思い

絹: 私が初めて参加させていただいたQUESTION Nightには京都信用金庫の榊田理事長もお座りになっていました。実はひそかに尊敬していまして、なんかすごいと。コメントをノートにちょっとだけ書き取ったんですが…、
『「京信さんがやるビルって、これほんまに儲かるんでっか?」と言われるんです。でもね、銀行のミッションは完全に変化しています。京都の中小企業の役に立つことをやりたいし、やらねばならないし、世の中をより良くして役に立つことにこだわりたいんです。あちらもこちらもソーシャルに心が動く仕事ができるかというのを、銀行マンと銀行の中で話をし続けて、もう何年も前にノルマは撤廃しました。』(以上 榊田理事長のコメント引用)
ということでした。うわっと思いましたね。
柳: 私がちょうど営業に出ている時に、ノルマが撤廃されまして、本当にノルマがなくなって、お客様との対話の時間というのがすごく増えまして、よりお客様に寄り添って営業ができて、結果的にはお客様に満足度というのは高くなったのかなとは思いますね。
絹: リスナーの皆さん、30分でまとまるようなテーマではないんです。でもね、河原町御池のQUESTIONビルというのを、ぜひぜひ覗いてみてください。課題を抱えて何とかしようという連中が、特に若い層も、それ以上の層も、集まる傾向がある、ひょっとして京都の特異点と呼ばれる場所になる可能性を十分に秘めています。眼が利いている人は行政の人も既に注目をしておりますし、若い人は入り浸っているような学生さんもいます。ということで、もう一回タイトルを申し上げますと「様々な人の「?」が集まる場所QUESTION」ぜひご注目ください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。森下さん、柳井さん、ありがとうございました。
森: ありがとうございました。
柳: ありがとうございました。
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投稿日:2020/12/03
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