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第179回 ・置きベンってなぁに?~まずはいっぺん座ってみようぜ!

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小: 小畑 あきら 氏(ソッカ株式会社 ジェネレーター)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
    (小畑 あきら 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、今日のゲストは実はご近所さんなんです。上京区、ブライトンホテルの正面玄関の対面にお住まいです。ご紹介いたします。“対話之町京都ヲ目指ス上京”の代表と言いますか、ジェネレーターと言いますか、小さな畑と書いて小畑(おばた)あきらさんでいらっしゃいます。小畑さんよろしくお願いいたします。
小: はい。“対話之町京都ヲ目指ス上京”の小畑です。よろしくお願いします。
絹: なんと、聞く所によると、小畑さんは昨日もこのスタジオで“KYOTO HAPPY NPO”でしゃべっていらっしゃるとか。なんかすごい偶然で、ダブルヘッダーで来ていただきました。ありがとうございます!
小: いえいえ、こちらこそ。ありがたいです。
絹: 実はリアルでは今日、初対面なんです。その前にモニター上で、ズームで、小畑さんがなさっている“対話之町京都ヲ目指ス上京”主催で解読会を体験しました。僕らになじみのある言葉では輪読会と言いますか。
小: そうですね。輪読会とか、読書会とも言いますね。
絹: 読書をネタに短い対話を、他の参加者がどういう風な事をしゃべられるか聞くことに重きを置いた読書会という、変わった手法をお取りになっています。そこで出会ったという、それがバーチャルな出会いです。
リスナーの皆さん、ごっつうおもろいことをしておられる人なんです。ということで、小畑さんがなさっている“置きベンプロジェクト”について、今日は語っていただこうと思います。ですから今日の番組タイトル、テーマについて、先ほど打ち合わせをしたのですが、小畑さん、ご自身の口からどうぞ。
小: はい、じゃあ、今日の番組タイトル、テーマ「置きベンってなあに?」ということですね(笑)。
絹: 私の口からももう一度、「置きベンってなあに?~まずはいっぺん座ってみようぜ!~」と題してお送りいたします。では、そもそも「置きベン」とは何なのでしょう。手元には素敵なチラシがあります。“オキベン ベンチ置くだけプロジェクト”という文字が踊っておりますが、まずは“置きベン”について教えてください。何が一体起こっているのでしょうか。
 

■エピソード1 置きベン? いったいなにが起こっているの?

●まずはベンチに座ってみてください
小: はい、ありがとうございます。まちづくりチョビット推進室に呼んでいただきました。まちづくりに僕はずっと関わって来なかったんですけど、なので“置きベン”というのがフライヤーと共に一人歩きしています。ラジオをお聞きの皆さん、もし京都ブライトンホテルの前をお通りの際は、ブライトンホテルの前に置いてあるので座ってみてください。ベンチのことです。
絹: ベンチ…。
小: はい、ベンチが置いてあるだけです(笑)。ベンチがホテルの向かいに置いてあるだけなので、良かったら、ちょっと座ってみてくださいということです。“ベンチ置くだけプロジェクト”という名前がついています。本当にその通りで、ベンチが置いてあるだけなので、お車で通りがかった時には、ちょっと見てやってください。
絹: これはラジオですので、言葉で説明するしかないんですけど(笑)、キリンビールの大きいビール瓶のケース、黄色いやつありますよね、それをコテンと2つ逆さにして、上に木の板を渡してあるだけですよね。
小: だけですけども、上京とか京都市内とかに置いていまして、ご高齢の方などが(僕もそのうちそこへ入っていくわけですけども)、足腰が悪くなって腰掛ける時に外れたら怪我をされますから、もうガチガチにつけてありますから、ひっくり返るというような事故は起こらないように考えています。
 

●毎週月曜日の午前中、ベンチを作っています

絹: それで先ほど教えていただいたのですが、毎週月曜日の午前中、小畑さんはご自身の事務所の前でこのベンチをつくり続けておられると。
小: そうですね。ほぼ用事がない限り、毎週月曜日の午前中、ブライトンホテルの前でコツコツベンチを作っています。ボランティアで手伝いに来てくださる方もいらっしゃいますけど、付近を歩いておられる方も「何をしてるんや?」という感じで見て行っていただいてます。
絹: “置きベン”のチラシの裏を返しますと、「座る」という大きい文字が書いてあって、「置きベンってなあに?」というところをちょっと読ませていただきます。
     “コンビニまでもう少しやけど、ちょっと座りたいなあ。
    荷物が重い、ちょっと休憩したいなあ。
    ちょっと座って、ボーっとしたいなあ。
    そんな風に思ったら、ちょうどいい所にベンチがある。
    いつでも自由に座れるベンチがまちの中にたくさんあると、
    ちょっと暮らしが良くなると思いませんか?
    ボーっとしながら、ただまちを眺めるもよし、
    通りすがりの人と挨拶を交わすだけでもよし、
    井戸端会議のようにおしゃべりもよし、
    ベンチからの眺めを味わってみてください。”
と書いてあるんです。これを最近、“ベンチを置くだけプロジェクト”を短くした“置きベン”というワードが小畑あきらさん曰く、一人歩きしていると。
 

●置きベンと子どもたちと…

小: 結構、「知っている方は知っている。でも僕は誰も知らない」みたいなね、そんなことになっていますけれども(笑)。
絹: ところがですよ。なぜ僕が小畑さんにゲストに来てほしいとお願いしたかと言うと、最近私の周りで3人の人から「小畑あきらさんて面白いよ」と聞いたんです。違う人からですよ。3人から聞いて、これは何かあるかもしれへんと、思わされてしまいまして。
で、このベンチを置こうと思い立たれたそもそもの事、情報としては第一号機はブライトンホテル京都の真ん前にあると。それから毎週月曜日の午前中は仕事がなければベンチを作っておられると。作っておられると、通りがかりの小学生が「おっちゃん、何してんのお?」と。そんなことが当たり前に起きていると。今は暑いけど、気候の良い時はベンチで宿題を始めたりすると。
小: すごいですよねえ。子どもたちは。
絹: これって、最近始まったことなんですか?
 

●置きベン、そもそもの始まり

小: そうなんです。実はこの“対話之町京都ヲ目指ス上京”という団体は、上京区民まちづくり活動支援事業の対象事業に指定していただいていまして、去年「対話の文化祭」というのをやりたかったのですが、残念ながらコロナでできなかったので、ベンチをまちに置いたらどうだろうというご意見をいただきまして、それで去年の9月から実際にベンチを置く活動をしています。
絹: 去年の9月からか。すみません、気が付かなかった。いやあ、前は通っていたんですよ。私の自宅は烏丸一条ですから、歩いて5分もかかりませんから、いやあ、しくじったなあと思ったけど、実は最近、“置きベン”の事がヤフーニュース等で大きく取り上げられたりして、色んな人の目に留まるようになっていると。注目されているんですね。なんでこんなに注目されるんでしょう?
小: たぶん皆さん、ベンチを置きたいとか、座りたいとか、潜在的に思っていらっしゃるんじゃないかと僕、思うんですよね。だって、なかなか座る所がない…。まあまあ、あるんですけどね。探せばあるんですけど。
なかなか座る所がなくなってきているようなきらいもありますし、地域でなかなかお話をする場というのも、このコロナで、特に独居の御老人とか、家の中にいなあかんみたいなことで、出歩かなくなったりしていますよね。
あとは昨今、気軽に挨拶したら、PTAのLINEで「怪しい人がいますよ」みたいなのが流れるとか、聞いたことがあったりして、挨拶1つなかなかできなくなりつつあるなと感じていたんです。
 

●置きベン効果 誰かわからないけどおしゃべりできる

小: ところが実際“置きベン”を置いてみると、座っていて「おはようございます」と言ったら、結構皆さん挨拶していただけるんですよね。通りすがりに知らない人に「おはようございます」は言いにくいし、言って無視されたら傷つくな…みたいなのもあるんですけど、何かね、“置きベン”に座っていて「おはようございます」と言うと、皆さん会釈していただくし、「おはようございます」と言ってもらえますし、だいたい3回くらい挨拶できたら、4回目くらいはあちらの方から声を掛けて頂いたりするんです。例えばおばあちゃんとかに、他の道端で会ったり、コンビニエンスストアで会った時に、ちょっと手を振ってあげるんですよ。もうそれで友達ですね。もういっぱいしゃべっていただけるので、何か誰かわからないけど、おしゃべりができる。そんなことを体感しています。
 

■エピソード2 広がる、広がる置きベンの輪

●ご協力いただける方が増えてきました
絹: ずっと作っておられると、先ほどおっしゃっていたじゃないですか。ボランティアの人も来ると。で、小畑さんのFacebookページを覗きに行くと、「ベンチの材料、あったらちょうだい」みたいな書き込みがあったり、「良い木、いただきました!」とかって、書いてありますよね。
小: そうなんですよ。“置きベン”というのが一人歩きしていて、本当に材木屋さんとかも非常に熱心に応援していただける方もいらっしゃって、実はさっきも「ちょっと使えるかどうかわからんけど、持っていくわ」という電話をいただいたり、本当に協力して下さる人が出てきていただけて、うれしい限りです。
絹: この写真、小さいところですけど、小畑さんの事務所の前に木がいっぱい立てかけてあって(笑)。
小: そうなんですよ。すごいですよねえ。たぶん思うんですけど、「ベンチ、ええな」と思ってくれはったんでしょうね。ありがたいことです。本当に。
絹: 潜在的に、多くの人たちの心の中に「ベンチみたいなやつ、欲しいな」って、思ったはると。で、たぶん堅苦しい言い方になりますけど、ベンチが何かを象徴してるみたいに感じてしまいます。
 

●うっかり出会う場をつくりたい―地域の中の集合性として

小: そうですよね。分断・分裂した社会とよく言われますけど、本当に個々がバラバラになっていますから、何かのイベントとか、何かのグループで集団をつくるというのは皆さんやっておられると思いますけど、地域の中の集合性ですよね。うっかり集まれる場所?
絹: あ、小畑さんの使われる言葉で、初めに僕の頭に刷り込まれたのは、「うっかり参加してしまった皆さん」とかって、他の方が使う「うっかり」と小畑さんの使う「うっかり」って、違うんですよね。『ああ、そうか。自分はうっかりと小畑さんの読書会にきてしまったんや』と(笑)。リスナーの皆さん、この「うっかり」の語感、イイ感じがしません?
小: うっかりですよねえ、これは僕のオリジナルじゃないんですけど(笑)、でもなんかいいですよねえ。示し合わせて何時にどこじゃなくて、うっかり挨拶ができるとか、そういう地域の中の井戸端会議というのがね、昔あったと思いますけど…。縁側も昔あったし、バッタン床几もありましたし、ああいうものがもう活用されないと言いますか、そもそも縁側がなかったり、井戸がなくなったりということで、人と人がうっかり出会う場所の装置として“置きベン”というのは、非常に有効かなというのは、置いてみて感じていますね。
絹: 話題になっている材木屋さんが「使って」と来られるということは、私のとこにも置かせて下さいという申し出があるということですね。
小: これ、基本的に歩道に置いたら怒られるので、ご自宅の敷地内で道路に面している所ということにはなりますけれども、そういった感じで共感していただけて、置いていただけるところ、もし「うち、置きたいな」ということがあったら、「ぜひ、いっぺん座りに来てください」ということですね。
 

●“チーム上京!”さんのこと

絹: 置きベンマップみたいなものに成長する可能性があって(今、勝手な思い付きですけど)、「あれ、置きベン、ここにも置いてはるの?」みたいなことになってくると、なんか楽しそうやなあ。
小: “チーム上京!”さんというのがおられまして、過去に「座れる所を地域の中で探そう」というイベントをされていたので、置きベンに限らず座れる所があったらうれしいですよね。そういうマップも今後できたら楽しいですよね。
絹: 実はその“チーム上京!”さんもお呼びして、ここのスタジオでしゃべっていただこうと画策をしておりましたが、コロナの第7波で「ちょっと待って」みたいな感じになりましたけど、“チーム上京”の方々からも小畑さんの名前を聞きました。“チーム上京!”は、“おれんじサロンひと・まち”と、認知症カフェの参加者からスピンアウトしたとか。
あ、そうだ!小畑さんに関係あるとしたら、足立はるおさんと言って、認知症の当事者の方が地域に居場所が欲しいというので、 “チーム上京”の人たちと交流が始まって、置きベンは足立はるお邸にも置いてあるということです。
小: 実はブライトンホテルの前が第一号なんですけど、その次ですね。そういう意味では本当の第一号は足立邸に置かせていただいてますね。
 

●置きベンがつなぐ縁

絹: これもリアルではなく、バーチャルですけど、Facebookのホームページかどこかで足立はるお邸の前にベンチが置かれて、上京区で“珈琲男団”というコーヒー好きのおじさんたちが、コーヒーを淹れに行くぞということをやっていらっしゃって、ベンチの付近で皆さんとコーヒーを飲んで談笑されている写真を見たことがあります。
小: 屋台を作っておられる方もいらっしゃいますし、コーヒーをやっておられる方もいらっしゃいますし…。
絹: 屋台と言えば、上京朝カフェの石﨑さんと違いますか?
小: そうですね。皆さん、色々な活動をされている、僕は残念ながら今までそういう方たちとの繋がりがなかったんですが、置きベンが繋いでくれているという感じですね。
絹: リスナーの皆さん、先ほども申しましたが、最近私の知り合いの3人から同時に、「小畑さんって、知ってる?面白いで!」と言われたと。これはなんかあると思ったら、やっぱりなんかありました。
小: ありがとうございます。
絹: それで今その置きベンは何個くらい嫁入りしてるんですか。
小: 一応8個くらいは探せばあるとおもうんです。
絹: 既に8個も!
 

●“自主ベン”も発生しています

小: はい、探してください(笑)。それから“自主ベン”というのもありまして、賛同された方が「うちにあるのを自前で出します」という所もあるんです。
絹: 学生時代の早ベンならぬ、自主ベンですね(笑)。
小: なのでこういう置きベンがたくさんできたら、そこで皆さんと対話ができればいいなと思って、そういう対話というのも、広めていきたいなと思っています。
絹: ハードルが低い、参加しやすい形でものすごく上手に工夫されたものが置きベンだと感じていまして、大上段に振りかぶって高邁な理想を語る前に、ただ座れと(笑)。「一緒に座ってみませんか?」と。
こうやってお聞きしていると、非常に奥行きの深いものを感じておりまして、対話というものにこだわっていらっしゃいますし、我々がこの越し方、色々分断分断で、僕自身もハサミで色んな関係をチョキチョキされて育ってしまった。昔の僕らの御先祖さんの時と、ちょっと違うのとちゃうかと。色々暮らしにくいとか、生きにくいという言葉が出てますけど、それにはチョキチョキハサミが関わっているのと違うかと、勝手に思っていた部分があるんですよ。その辺、小畑さんも実は同じように思っておられるんだなと、ちょっとずつわかってきました。
小: ありがとうございます。
絹: その分断をベンチという非常に作りやすいと言うか、アクセスしやすい方法で、なんとか接着し直そうとかかっていらっしゃる方が、小畑あきらさん。それも“対話之町京都ヲ目指ス上京”というチームを率いてらっしゃる。
小: そうですね。まずは上京から。最終的には京都が対話の町になればいいなと思っています。
 

■エピソード3 ベンチのその次へ ~ 対話がもたらすもの

●オープンダイアローグを学んでみませんか
絹: この先、対話について一緒に学びませんか?と、ベンチの次は対話ということを標榜されております。オンラインでの読書会、結構真面目な読書会なんです。で、ちょっと聞きなれない言葉かもしれませんけど、「ひきこもり」・「まちづくり」・「自殺希少地域(自殺が少ないエリアについて)」・「支援者支援」・「対話オープンダイアローグ」・「リフレクティングプロセス」などのキーワードにピンときた人は是非、オープンダイアローグについて学んでみませんかということです。
小: 是非!「オープンダイアローグ」は統合失調症の人が対話で治るというフィンランドで30年の実績があるものです。対話については、今皆さん「対話はいいよね」という認識はあると思いますが、そういう病気が治るような対話があるわけです。そういうものを皆さんと一緒に学んで増えていくベンチで、誰かわからない人と対話ができたりしたら、さっき言われたチョキチョキ切られた私たちがちょっとずつ繋がりを回復すると言いますか、やっぱり人って、孤立すると危ないですからね。だから僕は今、日本がそっちの方に向かっているような感じもしていているんです…。
 

●住宅の形とダイアローグがコラボをすれば…

絹: そっちに向かっている片棒を担いでしまった建設業者の1人が私でした。と言うのもワンルームマンションのお仕事を頂戴したら「へえ、おおきに」と言っていますし、オートロックのマンションで、お隣さん、上階の方下階の方、どなたが住んでいるか挨拶もようしまへんというような建物も、正直つくってまいりました。それって、あんまり良くないですよねえって、建設屋が言ったら、石が飛んできそうですよね。
小: いえいえ、でも先ほど、この打ち合わせで絹川さんから聞かせてもらったコレクティブハウス、これはスウェーデンらしいですけど、オープンダイアローグはフィンランドで、リフレクティングプロセスというのはノルウェーなんです。これ、住宅の形とダイアローグというのがコラボすると、非常に強力に地域を復活させると言うか、生きやすい、孤立しないまちづくりというのを、すごく可能性を感じましたね。
絹: 今、とんでもないお話が出ております。とても30分で収まりきらない広大なテーマになってきましたので、また小畑さんにはシリーズ化するかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。
小: いえいえ、私でよければ(笑)。
 

●対話についてのイベント、10月15日に開催します!

絹: このベンチから始まる、チョキチョキから繋がると、対話と、治療的効果とか、みんなが元気になるかもしれない対話の仕方を目指すための、さらなるワルダクミのイベントを用意しておられます。この10月の15日。
小: 土曜日です。場所は西陣織会館。
絹: もうすでに会場を押さえておられるわけですね。ちょっとこれ、説明していただけますか。
小: 西陣織会館の4階、112坪のイベントホールを借りちゃいました。理由はコロナ対策、これだけ広かったらなかなか中止にはならないかなと思いました。あまりに広すぎるので、色んなゲストには来ていただくのですが、京都の上京でまちづくり・地域づくりに頑張っておられる方のプレゼンテーションの場ということですね。何かフリーマーケットみたいな感覚で出ていただける、タダで出展していただける、タダで来場していただける、そういうものを今、企画しています。
 

●森川すいめいさんも来られます!

絹: 私も屋台と言いますか、いっそテーブルで「コレクティブハウジング広めませんか?」みたいな形で参加しようと思いますし、椅子やベンチがぐるっと車座に並んでいて、そこに座って勝手に対話が始まる、「なんでも話して!」みたいなフリートークスペースが用意されています。そしてゲストがまた、綺羅星のごとく、一部の皆様にはものすごいという、僕は森川すいめいさんという精神科医を知らなかったのですが、一冊本を読んで度肝を抜かれました。すごい人です。オープンダイアローグの日本の第一人者という触れ込みです。
小: そうですね。ご本人、来られます。
絹: これまたホームページとか、関連のデータを付けておきますので、是非アクセスしてください。置きベン、手作りのベンチを置こうぜというところから始めていらっしゃる。それも去年の9月から。その方に今すごく注目が集まっています。上京区の住人であらせられます。なぜなんでしょう。我々の無意識に共通に何かチョキチョキされてきて、これ以上チョキチョキされ続けたらまずいんちゃう?というところに小畑さんの置きベンがガチっと心を掴んでしまったのかもしれません。是非、小畑あきらさん、“対話之町京都ヲ目指ス上京”このチームにご注目ください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
投稿日:2022/08/18

第178回 ・船岡山公園を中心としたコミュニティを作りたい~フラット・エージェンシー&St Monakaの挑戦(ワルダクミ)

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岡: 岡山 泰士 氏(株式会社 一級建築士事務所 Studio Monaka 代表)
今: 今津 新之助 氏(株式会社 一級建築士事務所 Studio Monaka 取締役/経営企画)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
        (左:今津 氏  右:岡山 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、今日のゲストはお若い男性お二方をお呼びしております。株式会社一級建築士事務所 Studio Monaka 共同代表 岡山泰士さんです。
岡: はい。よろしくお願いします。
絹: 岡山さんとはひょんなご縁で、前に勤めていらっしゃった設計事務所が設計された保育園を、蜂ヶ岡で施工させていただくというご縁の方なのですが、偶然再会しています。
それからもう一方、同じく株式会社一級建築士事務所 Studio Monaka の取締役でいらっしゃる今津新之助さんです。今津さん、よろしくお願いいたします。
今: よろしくお願いします。
絹: そして今津さんはSWL(SOCIAL WORKERS LAB)という所のディレクターでもあらせられます。さてさて今日はどんな話が展開いたしますか。
あ、今ちょっと悪だくみを思いついた(笑)。岡山さん、タイトル覚えています?
岡: 覚えてるっちゃあ、覚えています(笑)。
絹: ゲストづかいの荒い司会です。ゲストにタイトルコールを頼んでしまおうと思いつきました。ではタイトルをお願いします。
岡: 「船岡山公園を中心としたコミュニティを作りたい~フラット・エージェンシー&St Monakaの挑戦(ワルダクミ)」
絹: さあ、リスナーの皆さん、どんな話になりますか。乞うご期待であります。
ゲストづかいが荒いの第二弾です。他己紹介、今日のゲストお二方の人となりをリスナーの皆様に少しだけ開陳していただこうと思います。
Studio Monaka 共同代表の岡山さん、パートナーの今津新之助さんとは、いかなる人物ぞ、短く述べよ。
岡: 簡単に言うと、超絶お節介なお兄さんでございます(笑)。Monakaの組織デザインと言うか、チームのデザインをメインにやってくれている方です。
絹: 取締役/経営企画とあります。ありがとうございます。
そして今津新之助さん、今度は攻守交替であります。共同代表 岡山泰士さんとはどんな方ですか?
今: 岡山がよく言われているのは、「よくしゃべる人」なんですけれど、僕は「情に篤い人」だなと思っているんです。あとは人々の動きをつくっていくというか、関わりながら動きをつくっていくということを、本当にスーッと一緒にその人とやってしまうというのがすごいなと思って、いつも見ています。
絹: 先ほどの事前の打ち合わせの中でも、「伴走車(共に走る人)」というキーワードが出ておりましたね。そんな方なんですね。
それではお二方にマイクをお渡しして、船岡山公園を中心としたコミュニティをつくりたいというワルダクミ、エピソード1に入ります。では最初に口火を切っていただくのは、よくしゃべる共同代表 岡山さん、お願いいたします。
 

■エピソード1 船岡山公園の新しい在り方を考える

●それは京都市の公募からはじまった
岡: まず我々が何をしようとしているかからお話したいと思います。場所は京都市の船岡山公園という史跡になっているところです。応仁の乱の時に陣が敷かれていた山があるのですが、そこの中にあった公園管理事務所を活用しながら、公園の新しいあり方とか、使われ方とか、そこを中心に新しい関りをつくるということを、京都市の公募提案に提案させてもらって、使わせていただくことになり、今その運営のチャレンジをしている所です。
絹: リスナーの皆さん、イメージしてください。船岡山公園です。ある人に言わせると「すてき!」、また別の人に言わせると「UFOの穴場」、ある人にとっては「懐かしのデートスポット」、そして近隣の人たちにとっては「素敵な遊歩道があったり、ラジオ体操のメッカ」であったりと、色んな場所です。歴史のある場所です。そこの公園管理事務所が長らく空き家になっていたんですね。そこをどういう風に活用しようかというアイデアを募るため、京都市のみどり政策推進の公園の担当部署が公募をかけました。「誰かこれ、料理して!」、「ハイ」と手を挙げたのが、フラット・エージェンシーとStudio Monaka のチームだったというわけです。他にもライバルはいたんですか?
岡: 僕らはとりあえず盲目的に手をあげちゃったので(笑)、特にライバルとかそういうことは考えませんでした。たまたまフラット・エージェンシーもSt Monaka も船岡山公園エリア周辺を拠点にして活動していて、ちょうど我々も千本北大路(せんきた)の施設が解体されることもあって、次にどこに行こうかと考えた時に、ちょうどその公募がかかったわけです。
 

●船岡山公園のStudio Monaka の拠点に行ってきました

絹: おおー、これは壮大な偶然かもしれません。あるいは意味のある偶然かもしれません。
番組をつくるにあたり、最低一度でも現場を踏まねばと思いまして、短時間ではありましたが、船岡山公園のSt Monaka さんの拠点を、この間訪問させていただきました。その報告を短くリスナーの皆さんにさせていただきます。
どういうんでしょうか、若き設計者たちのコワーキングスペースというだけではなくて、何か若いエネルギーが渦巻いているように感じました。そして色んな相談事、ワルダクミが持ち込まれやすい場所、そしてもちろん未完成でありますし、広い、まだ使えてない倉庫なんかもあるし、パッとふすまを開けたら猫ちゃん部屋!で、猫が「にゃー」とねんねしている部屋まである。はたまたソーシャルワーカーズラボのインターン生たちも寄って、出たり入ったりするし…。
びっくりしたのは「こんなん初めてです」と今津さんもおっしゃってましたけど、佛教大学の学生たちが「フィールドワークですねん」と、「ここ、何したはるんですか?」と入ってきましたね。本当に生き生きとしたエネルギーが生まれつつある場所、そういう肌感覚がして帰ってまいりました。その場で思わず「ゲストに来ていただけませんか?」と交渉をしてしまいまして、今日に至っております。
さあ、船岡山公園で公園を中心としたコミュニティをつくりたいとのこと。その中で公園管理事務所の広さだとか構造を軽く説明していただけませんか?
 

●僕らの拠点はこんなところです

岡: 公園管理事務所自体は6年前に統廃合されて、空き家になった施設でして、だいたい200㎡くらいの鉄筋コンクリート二階建の建物です。ちょっと変わっているのは、斜面地に建っているので、1階と地下一階なのか、1階と2階なのかわからない、ちょっと特殊な構造で、道路面から見ると2階建てに見えたり、1階建てに見えたりという、そんな建物です。その建物の敷地内の奥にもう1つ50㎡くらいの倉庫がありまして、そういった空間をこれからどのように活かしていくのか実験者としてこれから運営をしていこうというものです。
絹: リスナーの皆さん、のべ200㎡、結構広いです。駐車場もありますし、車は4~5台入れられたかな。その奥にシャッターに閉ざされた50㎡の倉庫がある。斜面に建っていると。なんか、いろいろワルダクミできそうな素材や思いません?ここにどれだけの色んな人が集まって来るのか想像したら、楽しくなってきます。
 

■エピソード2 

●フラット・エージェンシーという会社
岡: 今回共同で一緒に出させてもらっているのは、フラット・エージェンシーさんという会社です。京都の北のエリアを特に拠点として展開されている((京都市内全域で展開されているのですが)フラット・エージェンシーさんとどのように繋がって、なぜこんなことになったのかについてお話したいと思います。
絹: フラット・エージェンシーさんをご存知のない方のために、短く捕捉を入れさせていただきます。私、絹川の個人的な見解ですけれども、京都の不動産屋さんの中で私が最も信頼を置くお客様と近い不動産屋さんのお1人であられます。社長は吉田創一さんといわれる方です。そしてもはや不動産屋さんの域を飛び越え始めているフシがあるチームです。
岡: 本当におっしゃる通りで、京都の北区エリアでも、例えば広場みたいな空間を空き地活用して使われていて、本当に色んな取組をたくさんされています。今回我々も一緒にさせていただくわけですが、ソーシャルな動きを北区の中でされている、本当にキープレイヤーと言えます。
絹: ここでまた腰を折ってしまいますが、少し捕捉をいたします。
リスナーの皆さん、新大宮商店街というのをご存知でしょうか。北大路大宮上ルからある商店街ですが、一時期元気のなかった商店街が、最近は妙に元気になっています。是非訪れてみて下さい。それを仕掛けたキーマンの1人が、フラット・エージェンシーさんです。
そして空き広場については、京都市高度技術研究所傘下のソーシャルイノベーション研究所SILKの連中に教えてもらいましたけど、わざわざ空き家を潰して広場にして、儲からないのに(笑)。でも広場でセンターハウスだけ残して、テストキッチンを入れて、キッチンカーなんかが停まれる駐車スペースだとか、イベントができるようにした。こういう勇気のあることをする商店街があるの?という商店街です。
 

●橋渡しはSILK(京都市ソーシャルイノベーション研究所)

岡: そうなんです!僕らからすると、すごくソーシャルな領域で活躍されていて、不動産屋さんと言っていいのかわからないくらいの活躍をされている方と、今回船岡山公園というきっかけがあって、ご一緒させてもらうことになりました。
というのもその前段で、SILKさんというソーシャルイノベーション京都というチームには、これから面白くなっていくソーシャルな企業を、京都市内でマッピングするプログラムがあって、ちょっと前に僕らも取り上げてもらいました。それを見てもらっていたと思うんですけど、今回新しい公募があるなかで、「こんな物件がある!」とたぶん彼らの中でもピンときたんでしょうね。フラット・エージェンシーと若手のソーシャルなことをやっている所が繋がって、公園をやったらおもろいんとちゃうかと思ったみたいです。で、「今回、こんな公募が始まったけど、どう?」とお声掛けいただいて…。
絹: ソーシャルイノベーション研究所の引き合わせ。なるほど。それでその面白い企業のマッピングを手伝っていたとおっしゃいましたね。それは例えば千年先も残っていてほしい企業だとか、また別のチームかもしれませんが、ホワイト企業対象選別だとか、そんな風にブラックの反対側の企業さんをマッピングしようということですね。うちはホワイトではなく、だいぶグレーなので(笑)、マッピングしてもらえないと思いますが。ありがとうございます。面白いなあ。
岡: そんな中、これまでもフラットさんとは繋がりはあって、例えばフラットさんがやっている修学館という面白いシェアハウスだったり、なんとなく薄い繋がりはあって、いつかいつかとは思うものの、なかなか出会いがなかったのですが、今回「船岡山公園にこんなんがあるよ」ということで、お引き合わせいただいて、そこですごく話が盛り上がったんです。
 

●建築家は社会の営みをつくるもの

岡: 自分たちもこの段階においては、ソーシャルなことはしていきたいし、建築家としても社会の営みをつくるというのはすごく重要な宿命だと思っていたので、公共の場を運営していったり、可能性を広げて行ったりするのは、僕たちの仕事だと思っているところはあったわけです。
絹: リスナーの皆さん、今、すごく大切な事を岡山代表はさらっと語られました。建築家は社会をつくる営みをつくるものだと。ハードをつくるのみにあらずと。こういう思いで建築設計をしている人というのは大切かもしれません。
社会をつくる営みというのは、説明しにくい、平仮名化しにくいのですが、役に立ちたいと…。今、カタカナ用語でソーシャルという言葉を使われましたが、実はソーシャルという言葉は、我々のように還暦過ぎの人間にはわかりにくい言葉ではあります。これを敢えて無理やり平仮名化しますと、「世のため人のためになりたいという思い」をカタカナ化するとソーシャルという、この翻訳、間違ってます?
岡: 間違ってないと思います。僕らが建築家の視点から見ると、建築はただかっこいいものができて、それがあればいいというのではなく、その中にある生活や活動や関係がそこで生き生きと生きることで建築が活かされてると思っていて、それをちゃんとデザインしたいと思っています。もちろん箱だけつくれば、それは生まれるかもしれないけれども、そうではなくて、そういった場を一緒につくっていけるような建築家でありたいし、そういったことを含めた事が建築家の職責であると思っているんです。
絹: 深いなあ。そしてコミュニティデザインという言葉が出ました。取締役である今津新之助さんは、SOCIAL WORKERS LAB のディレクター、あるいは創業者でもあり、専門はコミュニティデザインですか?
今: そうですね。人と人との関係づくりとか、そういうことはやってきたのかなとは思います。
 

●皆さんは福祉と言うと、何を想像されますか?―SOCIAL WORKERS LABO の活動のこと

絹: 今津さんがSOCIAL WORKERS LAB を率いてらっしゃるという形で、中心メンバーであって、しかもStudio Monaka の取締役でもあると。その辺り、SOCIAL WORKERS LAB とはそもそも何ぞやのところから、少しコメントいただけるとありがたいです。
今: 皆さんは福祉と言うと、もしかすると障がいをお持ちの方やお年寄りの方とか、お子さんに関わることだと思われやすいのではないかと思います。でも福祉はもうちょっと広い概念で捉えられるのかなと思っていまして、僕たちが日々生きるうえでベースとなっている生活そのものが福祉と言ってもいいのではないか。別に福祉と言わなくてもいいんですが…。いわゆる福祉を学んでいる京都の大学生とか、全国の大学生の皆さんだけではなくて、これからまちづくりとか、自分たちの日々の生活をよくしていきたいとみんな思っていると思うんです。SOCIAL WORKERS LAB では、そういう人たちが現場に関わっていくことを通して、福祉という概念を拡張したり、まちづくりに取り組んでいったり、自分自身を形づくっていったりという機会をつくりたいと思いまして、大学生とか若い世代と一緒にやっている活動になります。
絹: 一回ではさらっと翻訳しにくい動きですけれども、今津さんが語られた言葉のなかで、すごく大切な事があります。
まちづくり。これも以前「まちづくりという言葉は嫌いだ」と自分自身で言っていた時期もありまして、でもまちづくりはハードのみにあらず、人と人との関係性を紡ぐものもまちづくりの範囲にあるというふうに、やっと60過ぎてわかってきました。
福祉は誰にとっても自分ごとです。狭い今までの福祉のところから、この若い人たちは福祉という言葉を周辺領域、特にまちづくり領域にお拡げになっているフシがあります。そういう方が設計事務所と、SOCIAL WORKERS LAB 共に率いていらっしゃって、船岡山公園という史跡の公園を中心としたコミュニティをつくるんだと。ということは、今以上にそこに人が集まって来ることを目指していらっしゃる。それが京都市の狙っていることであると。
「公園が公園で遊んでいる(要は誰も遊んでいないこと)」という悪口を言われないように、公園を核にしたコミュニティが生まれ出るとするならば、これから船岡山公園で起こりうる近未来というか、どんなことが起こったら素敵だなと思っていらっしゃいますか。
 

■エピソード3 公園の仕組みづくり これからのこと

●公園内にキッチンカーを出したいけれど…
岡: 今まず進めていること、ハード的な事でもソフト的な話で言うと、どうやったら公園を使えるかという仕組みづくりをどんどん進めて行っています。公園を使いたいけれども、どう使ったらいいかわからないという声がたくさんあると思うんです。
例えば「公園の中にキッチンカーを出そうと思ったら、そういった申請がいるの?」という疑問があると思うんですけど、通常やろうと思っても、公園内で営利目的の活動はできないんです。それをしようと思っても、まずできないということに対して、今、社会実験中ということもあり、我々と一緒に組むと公園の中で色々な営利事業ができるというように、要は公園がただ公園という場ではなくて、色んな商いとか、生活の源をつくる場にできるということです。そのための導線づくりみたいなものをしていて、これまでなら二週間くらいかかる申請を、三日程度で出せるような実験的な運用を始めています。
そうすると「明後日の天気が良いから、この辺りにお店を出してみようね」みたいなことを、まずはキッチンカーを皮切りに、次のステップは“小商い”と枠を広げていって、少しずつ公園の中で何かができる状況をつくっていくという仕組みづくりを今始めています。
絹: 面白い!今津さんの口から今のところに補足はありますか?
 

●公園を開きたい ― 地域の皆さんと一緒に

今: 岡山はそういう枠組みや面白い企画をどんどんやっていく人なんですけど、僕の方からは今まで4月5月6月と第3日曜日に公園開きのイベントのようなことをさせていただいているんですけど、船岡山公園は楽只学区と紫野学区の本当にすぐそばにある公園なので、そこで暮らしているお父さんお母さんとか、おじいちゃんおばあちゃんとか、色んな方が集まってこられます。
そういう方々は公園をもっと良くしたいとすごく思っていらっしゃって、でもどういう風にして関わったら良いのか、今まで思いはあるけど、実際に自分たちが公園を良くして行けるとはなかなか思えなかったわけです。でも一緒になってやっていこうという方々がたくさんいらして、それがすごくうれしいなと思いますし。僕たちは事務所を貸してもらって、そこの公園を開こうとしているんですけど、地域の皆さんと一緒に頑張っていきたいなと思っています。
絹: 今津新之助さんの口から大切なキーワードが語られました。今、私の耳に残ったのは、公園を開いていきたい。“住み開き”という言葉があります。自分の家を自分の家族だけで住んでいるのではなく、ある時間を限って、玄関先を開けたり、縁側に人を招いたり、はたまた一番簡単なのは玄関の脇にベンチを一個置いて、夏の暑い時に麦茶のポットを置くだけ。それでも“住み開き”になります。要は「来ないで」じゃなくて、「来てもいいよ」と。
そして今津さんのコメントの中でもう1つ大事だったのは、「公園を近所の人たちがもっと良くしたい思いがあって、相談する先やどうしたらいいのかわからなかった」そういう人が寄ってきて知恵を拾うというソフトを、この方たちは丁寧につくりこもうとしていらっしゃるフシがあります。
実は船岡山公園の近所に知り合いがいるんです。“小商い”という岡山さんが語られたキーワードに関してですが、就労支援施設で作るような手芸品とかがあるじゃないですか。「絶対“小商い”の所にそういうのを入れることを考えて」ともう既にリクエストされています。80歳のおばあちゃまがね。
岡: ありがとうございます。
絹: そういうことを相談する先が、チャンネルとして船岡山公園の元の公園管理事務所に、Studio Monaka の拠点として開かれていくということです。何か言い残したことで、一言ずつ言いたいというのはありますか。
 

●船岡山公園、ぜひ見にいらしてください 何か変化が起こっていますよ…

岡: 公園の中に“小商い”の場であったり、倉庫の場所をこれから“小商い”の挑戦場にしたり、建物の中を少しずつコワーキングで使えたり、一般的な人が使えるように準備をしています。これからリースをしていきたいと思っているので、公園にちょこちょこ遊びにきてもらうと、日々変化が起こっていくので、もしよかったら「何をやっているのかな」という感じで船岡山公園に遊びに来てもらったら、とてもうれしいなと思っています。
絹: それを許される場所のような運営をされていくつもりでありますね。
今: 日々、皆さんと一緒に公園を良くしていければなと思っています。今日は絹川さんがすごくわかりやすく僕たちの言葉を開いていただいて(笑)、とても楽しかったです。ありがとうございました。
絹: リスナーの皆さん、いかがでしたか。船岡山公園で若い人たちがフラット・エージェンシーさんと共に、京都市と共に、ワルダクミを仕掛けて行っていらっしゃいます。ぜひぜひお訪ねください。そして第3日曜日、公園開きのイベントが着々と仕掛けられているようです。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。岡山さん、今津さん、ありがとうございました。
両: ありがとうございました。
投稿日:2022/06/02

第177回 ・賃貸住宅の行方~空き家研究の専門家 井上えり子教授来たる!

ラジオを開く

井: 井上 えり子 氏(京都女子大学 家政学部 生活造形学科 教授 博士(工学))
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
     (井上 えり子 氏)
絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、今日のゲストのご紹介であります。大学の先生です。リスナーの皆さん、「女坂」ってイメージできますか?京都女子大学からお越しいただきました。京女の家政学部生活造形学科教授、工学博士でいらっしゃいます。井上えり子教授です。いらっしゃいませ。
井: こんばんは。井上です。よろしくお願いします。
絹: 先生のプロフィールを頂いておりまして、専門領域は建築計画・住宅計画となっています。都市部の空き家問題や団地における住戸リノベーションの設計手法などにお詳しいとお聞きしました。先日、番組の打ち合わせに久方ぶりに京女に足を踏み入れて、女の子ばかりなので、目がクラクラ致しました(笑)。
私と先生との出会いは、だいぶ前になると思うのですが、東山区において空き家調査を地道に続けていらっしゃる研究者の方がおられ、井上えり子先生とおっしゃるということを友達から聞き及んでおりました。当時は東山区における空き家率は、向こう三軒両隣のうち、必ず一軒以上(22%プラスアルファ)は空き家だという事実を聞いて、愕然とした覚えがあります。そういう調査を、今もなおやっていらっしゃる井上えり子教授です。よろしくお願いいたします。
井: よろしくお願いいたします。
絹: さて、今日の切り口ですが、どのあたりから参りましょうかということで、この番組はヘビーリスナーの方はよくご存じなのですが、人づかいが荒い(笑)。別名ゲストづかいが荒いとも言います。今までゲストにタイトルコールをお願いしたことはなかったのですが、ちょっとお願いできますでしょうか。今日の番組タイトルとテーマを、先生のお口からどうぞ!
井: はい(笑)。タイトルは「賃貸住宅の行方~空き家研究の専門家 井上えり子登場!」です(笑)。
絹: 本人に言わせてしまうか(笑)。今日のテーマは「賃貸住宅の行方~空き家研究の専門家 井上えり子教授来たる!」と題してお送りいたします。
さあ、何がこれから語られるのでしょうか。きっと皆さんのご存知のない事実が少しずつ明らかにされると思います。私も興味津々です。
 

■エピソード1 僕が知らないでびっくりしたこと

●実は賃貸集合住宅の空き家率が一番高かった…
絹: 賃貸集合住宅における空き家、それから戸建て住宅における空き家、京都市の色んな行政体も「空き家が増えて大変や!どないしょう」とおっしゃっていますが、「実はエアポケットのような所があるのよ」と先ほどおっしゃっていただきました。そのことから口火を切っていただきましょう。
井: 空き家問題というのは、リスナーの皆さんも最近よく耳にされていることと思います。国も「空き家特措法」という法律をつくり、各自治体も一生懸命取り組んでいるのですが、国や自治体が取り組んでいる空き家は、基本的に戸建ての個人の所有者が持っておられるものを対象としています。しかし空き家の中で一番数が多いのは、賃貸集合住宅(空き室率になりますが)であるというのが本当のところです。ではなぜこれまでそこに手を付けないで来たのでしょう。賃貸ということは事業者がいるわけです。それは個人の場合もありますし、会社の場合もありますけれども、行政としてはそれは企業努力で何とかするべきものという発想でずっと来たんです。当然税金を使ってやるわけですから、行政の立場としてはそこに公金は入れられませんよということだと思います。ですのですごく一生懸命、空き家対策を自治体あげてやっているのですが、賃貸の方が手つかずになっているところが、前々から問題だなと思っていました。
 
絹: 私はご存知のように本職は建設屋なのですが、さっきまでそんなことも実はわかってなかったんですよね。家を建てたり、集合住宅をつくったり、学校をつくったり、道路だとかトンネルだとかもやりますけれども、空き家が増えて、新しいのを建てなくていいようになったら建設屋は商売あがったりやと心配していたわけです。でもそんなことよりも集合住宅で、賃貸は、特に民間のものに対しては、行政は「俺たちは口出さねえ」みたいな感じで今まで来ていて、実は空いているのはそっちのほうがデカいんだよと。でも企業体とおっしゃいましたが、行政だって賃貸住宅持っていますよね(笑)。
井: ですから公営団地の空き室問題というのも実は深刻なんですね。
絹: まちなかを車で走っていて、改良住宅と言われる所に出くわすと、ふっと車を停めて、どれくらい空いているんだろうと見ると、自分の肌感覚ですけれども5%~10%くらいですか。このフロアで空いている所にはお名前が入っていないしみたいな、その感覚はほぼ合っているでしょうか。
井: そうですね。改良住宅に限らず、10%程度、それは公営住宅だけではありませんが、URのような組織も含めて、私の感覚でも10%くらいは空き室があると思います。
絹: 井上先生は住宅計画や建築計画などがご専門で、研究テーマが空き家ですから、私のような素人ではなくて「私の感覚では」とおっしゃいましたけれど、研究者としてのデータに基づいて語っておられますので、たぶんそれは信用できると思います。私のような素人の感覚でもそれに近いということでしょうか。
井: ただちょっとだけ付け加えさせていただくと、以前はUR都市機構の団地などは10%程度あったと思うのですが、最近は企業や大学と産学連携のプロジェクトをやっていまして、それが功を奏して、今URさんは下がってきているという状況です。
絹: いい流れですねえ(笑)。
    (総務省統計局「平成 30 年住宅・土地統計調査 P2」より)
 

■エピソード2 京女×UR プロジェクトとは

●フィールドは洛西ニュータウン、URの団地です
絹: エピソード2は、以前はURで10%くらいの空き室率だったのが、だいぶ空き室が減って来た現象の立役者のお1人が、ここにおられる井上先生かもしれないというお話です。これはなぜなのでしょう。「京女×UR」というプロジェクトを、京女の方々とURが一緒になさっているとお聞きしました。今年で10年ですか?
井: 10年目です。
絹: それも実証フィールドと言うか、活動領域は洛西ニュータウンであるとのことです。ちょっとそこへ触れていただけませんか。
井: URの事をご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、昔は住宅公団とか、住都公団とか言っていたところで、今は賃貸しか扱っておりません。賃貸を管理するのが主な仕事で、洛西ニュータウンに4団地持っているのですが、以前は10%程度の空き室率がありました。それを学生が若い人向けに住戸をリノベーションする、設計し直すということで、空き室を減らすという活動です。特にURが持っているような団地は、古い団地にありがちな中層のエレベーターのない(階段室型というのですが)、5階まで階段を歩いて昇っていくという団地なんですね。
絹: そうですねえ。何か昭和の匂いがプンプンする、エレベーターなし、中階段みたいな感じの。
 

●空き室率、3%まで下がりました

井: ですから4階、5階の空き室率が特に高いわけです。高齢者だとなかなか入って下さる方がいらっしゃらないので、若い家族をターゲットにして、若い学生がそこを設計するわけです。そういう若い家族が入りたいと思いそうな間取りを設計して。そこがだんだん空き室率が減ってきていて、たぶん今3%くらいまで下がっているとお聞きしました。
絹: 皆さん、聞かれました?今さらっとすごい数字が語られました。以前、URの洛西ニュータウンの4団地では10%あった空き室率が、京女×URプロジェクトにおいて、学生さんたちが若い人が4階や5階に入りたいと思えるようなリノベーションの設計をして、10年で3%台に下がったと。
井: ただ学生が設計したものはだいたい100戸くらい供給されているのですが、そこだけだとそんなに下がらないのです。若い家族向けに学生が間取りを考えると、広いリビングだったり、1つひとつの空間が割合大きめにゆったりつくるんです。若い家族はそれを見て「あ、素敵!」と思ってくださるのですが、ある程度年代が上の方は、「暖房費が高くなるんじゃないか」などとおっしゃる場合がある。私はそういう方には「そうですよね。URさんのこれまでの間取りは、学生が設計したほど華やかではないけれども、そこは満たしていると言えます。ですからそういう方はそちらに入られたらどうですか?」と言って、URさんのこれまでの間取りも埋まっていくみたいな感じですね。
絹: なんか好循環が生まれていくみたいな。
井: そうなんです。色んな選択肢が増えたので、URさんの間取りも見直しされるようになったと、それが大事なんだなと、私は思っています。
絹: 100戸の学生さんたちの事例が呼び水となって、旧来のデザインの良さが違う層に、ベテラン層に受けたと。面白いですねえ。それで結構効いていると。で、URさんは京女×URだけじゃなくて、無印良品とも提携されているようですね。
井: 大阪の方では無印さんはたくさん出されてますね。
絹: UR、旧住都公団の洛西ニュータウンの中では面白いことが起きている。皆さん、ご存知でしたか。何か捨てたもんじゃないと言うか、希望がもてますよね。
井: もちろんURさん独自の色々な工夫も重ねられての数字なんですけど(笑)。学生だけということでは全然ありません。
絹: 学生さんたちのリノベーションデザインが1つの起爆剤になったということですね。
              (UR都市機構 HPより抜粋)
 

■エピソード3 公営住宅の空き家対策の試み

●3L APARTPENTプロジェクト - 田中宮市営住宅
絹: URはそうだけれども、洛西ニュータウンの中には府営住宅も市営住宅もありませんでしたっけ。そっちの方の動きは何かキャッチされていませんか。
井: 例えば京都市さんは同様にリノベーションの住戸をつくられたりしておられるということは伺っています。
絹: 実は僕もちょっとそれをつかんでおりまして、京都市の都市計画局の住宅室の連中、最初に僕がキャッチしたのは田中宮市営住宅の事例でした。地元の自治会の会長さん、たぶん僕と同じような60ぐらいのおじいさんが、「龍谷大学が近いし学生さんが来てくれたらいいのにね」とつぶやかれたのを京都市の住宅室の人が丁寧に拾ったわけです。結果、龍大の学長さんと京都市長が握手することになりました。龍大の学生さんに3年間にわたって低家賃で田中宮市営住宅に入ってもらって(たまたまそこの学生たちの多くが公共政策の連中だったこともあり)、「学びはキャンパスの中だけじゃないよ」とばかり、自治会活動に参加してもらったり、例えば小学生の集団登下校の見守りや、夏祭りのお手伝いをしながら地域を学ぶ。彼らは自治会活動にすごく力を発揮して、成功裏に推移しているという3L APARTMENTプロジェクトという事例(第165回放送参照)です。
 

●障がい者グループホーム - 向島ニュータウン 洛西ニュータウン…

絹: 向島ニュータウンで、愛隣館という障がい者福祉法人のグループホームが空き室で運営(第166回放送参照)されたというのが、確か僕が知った第一号事例でした。第二号事例が洛西ニュータウンでも間もなく発進するらしいです。障がい者グループホームで、それもリノベーションです。
京都市やるな!!と実は思っていまして、頑張れと応援しています。ちょっとずつそうやって、京女×URのようなものを市営住宅や府営住宅でも似た軸線上でリノベーションして、空き室率を減らしていこうという人たちは行政の中にもおられるみたいですね。
 

●丁寧につくれば100年もつはずなんです

井: 団地のハードな部分が40~50年くらいでダメになるという思い込みもあったのですが、調べてみるともう少し寿命が延びそうだというふうになってきたんですね。ですのでリノベーションして、もうちょっと長く使おうというような流れにだんだんなってきているかなと思います。
絹: 工学の専門家が言われるのでこれは確かです。私も本職は建設屋ですので、我が家でやった実験住宅(愛称:センテナリオ)は、13家族によるコーポラティブタイプの5階建て住宅です。建設会社であり企画者の私は、100年から120年はもたせてみせますと豪語していますから(笑)。
井: ちゃんと丁寧につくれば、本当にそういうふうにもつんですよね。
絹: RC(鉄筋コンクリート造)のコンクリートの住宅でも理想的に設計・施工を丁寧にすれば、100年120年もつんです。公営住宅は50年しかもたないという思い込みは少し捨ててもいいんじゃない?というトライアルが始まっているんですね。何かちょっとうれしいなあ。
   (センテナリオ:絹川の自宅を含む13世帯の実験住宅)
 

■エピソード4 賃貸住宅の行方

●これからは賃貸住宅の時代?
絹: さて、先ほども申しましたが、18年前に私は自宅の土地をもとに、実験住宅をつくりました。まだ40代でしたので理想に燃えて、自分で共同住宅をつくるなら向こう三軒両隣の関係性を持ちたい。顔も知らない、あいさつもしないなんてのをつくってたまるもんかと考えたわけです。その理想とするところは、ご近所さん付き合いが自然に生まれて、助け合いが生まれたり、子育て支援が生まれたり、「実家からみかんを送って来たし、お裾分け」みたいなのが当たり前に起こるような、そんな建物群なんですね。
公営住宅、賃貸住宅の行方でそういうふうなものって、流れとしてできませんかというのが、私の問題意識なんですけど、先生はそのあたり、どう思われますか?
井: まずそもそもこれだけ空き家問題が深刻化してくると、多くの人が空き家所有者って、結構責任が重くて、「維持管理していかなければいけないんだ」となってくると思うんです。そうなってきた時に、それってちょっと大変だから持たなくていいんじゃないかという選択肢が出てくるだろうと。つまりこれからって、賃貸住宅の時代なのではないかと私は思っているんです。
絹: かつては自分で家を持ってこその一人前というような、昭和の時代がありましたが、先ほど先生とお話していたのですが、若い人たちは車すら持たないよねと。シェアリングエコノミーというんですか、お墓だって海に散骨したり、タワーマンションみたいなお墓だってあるよと。
 

●もっと賃貸住宅のバリエーションが増えるべき

井: ただ賃貸住宅に行きたいという人が多くなったとしても、今ある賃貸住宅の形というのは、これまでずっと持ち家政策を国が取って来たので、一時しのぎの住宅と言いますか、とりあえず住んで、最終的には持ち家みたいな感じで提供していることが多かったので…。
絹: 期待される、本来持つべき賃貸住宅の性能、あるいは居心地の良さ、楽しさ、安心感みたいなものが、専門家の目から見てちょっと足りないんじゃないのと。
井: 足りないと思います。ですから、これからもっともっと賃貸住宅のバリエーションが増えていかなければいけないと思っているんです。それは間取りとか広さもそうですけど、もう1つはサービスとして例えばサブスク的な毎月同じ金額を払えば、あちこちに住めますよみたいな。最近そういうサービスが出てきていいるんです。
絹: 多拠点居住ですね。ノマド(旅人)のように、若い人があちらこちらで仕事をしたり、生活をしたりするというパターンですね。
 

●アドレスホッパーと呼ばれる人々

井: そうです。私はその住宅のサブスクに興味を持っていて、ゼミでこの話を学生にしたら、学生はむしろ実際にそういうライフスタイルの人の方に興味があると言って、去年卒論でそれを調べたんです。
絹: いよいよ来ました!そこを聞きたかったです。
井: アドレスホッパーと最近は呼ばれている人たちなんですけど、その人たちが利用するサービスの中で、アドレスという会社があって、そこの人たちが結構地域とのコミュニケーションと言いますか、地域と繋がりを持ちたいと思っている方たちが多いということがわかりました。どうしてなのかと思ったら、その会社は「家守(やもり)」という制度があって、その家守という管理者みたいな方が利用者と地域をつなぐような役割をするという制度だったんです。ですから多拠点居住と言うと、何か旅人のように来て、無関係に去っていくみたいな、地域に根付かない人というイメージですけど、彼らはそうではないということが調査でわかって、興味を持ったんです。
調査ではすごく彼らが社交的な性格で、地域の人たちともどんどんコミュニケーションを取っていくようなタイプの人たちなので、「元からそういう性格ですか?」という質問をしたら、「実は元はそうではなかった」という人が結構多くて、「じゃあ、どうしてそうなったのか?」と聞くと、「家守の人と接するうちにそうなった」とか、「アドレスを利用している他の利用者と接しているうちにだんだんそうなった」ということだったんです。
 

●コミュニケーション能力は育つもの

井: 私がそれで学んだのは、コミュニケーション能力というのは、生まれながらのものではなく、育つんだと。学べるんだと。それが一番の調査の中での私の学びでした。
絹: このお話を聞いた時に、私はすごく興奮をいたしました。先生の一番初めの仮説は、「ノマド的に多拠点居住をする人は人づきあいが苦手な人じゃないか?」という思い込みがあったけれども、学生の卒論を呼んで、討論をして、全く違うことに気が付いたとおっしゃいました。「家守」、どこかで似たようなシステムがあったような…。そうだ、ユースホステルに何かそういうお節介なおじさんやおばさんがいて、そういうところで若い人が訓練を受けて、進化していくみたいなのにちょっと似ているなと思いましたね。
井: なるほど。私、実はそういう人たちは地域の中にもいると思うんです。今、なんとなく町内会って、行政の下請け機関みたいな感じで、色んな役があって、それをやらなきゃいけないと必死で、それ以外のことができないですけど、その役がもっと減ったら、地域の中のそういう世話好きな人が、若い人を育てたりといった余裕が出てくるんじゃないかと思うんです。
絹: 色んな所にある空き家をお世話する「家守さん」みたいな地域のお節介さんが、スポットライトを浴びて登場して来たら、京都の色んな問題点が解決しちゃうかもしれないですね。
井: 何かそういうことがあるんじゃないかという魅力が、そのアドレスという会社の家守さんたちにはあるなと感じました。
絹: 非常に面白いところに来ました。またこの続きは何度かシリーズ化したいと思います。リスナーの皆さん、空き家、賃貸住宅の行方、空き家の専門家語る!の回でした。京女の井上えり子教授ありがとうございました。また来てくださいね。
井: ありがとうございました。また是非お呼びください。
絹: さよならあ。
投稿日:2022/05/09
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