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第185回 ・京都の歴史的な転換点!これまでにない発想で全国初だらけ~坂越 健一副市長に聴く

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坂: 坂越 健一 氏(京都市 副市長)
西: 西島 優希 氏(京都市 総合企画局 市長公室 副市長担当秘書)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
       (左:西島 優希 氏  右:坂越 健一 氏)
投稿日:2023/04/13

第183回 ・府営住宅とあなたの夢がマッチング~若者の視点からひもとく空き家活用 地域課題に挑戦する人を求む!

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西: 西島 良輔 氏(京都府建設交通部住宅課管理・調整係 主事)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
      (西島 良輔 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、今日はお若いゲスト(もちろん私に比べてということですが)をお迎えしております。京都府建設交通部住宅課主事という肩書の西島良輔さんです。西島さん、よろしくお願いします。
西: よろしくお願いいたします。
絹: なんとなんと、三十路になられたところという方でございます。
西: 三日前くらいにちょうど誕生日を迎えまして(笑)。
絹: 結構若い方のゲストですね。私がもう還暦過ぎですので半分以下です。西島良輔さんとの出会いは最近で、京都府建設交通部の中島さんという副部長、圧の非常に強い上司(笑)から「紹介するわ!」と紹介されたのが西島さんでした。
おいおい紹介していきますが、この度京都府さんは大変勇気のある、というか面白い仕事をされました。建設交通部の住宅課の連中、具体的に言うと西島さんたちですよね?
西: ありがとうございます(笑)。
絹: 西島さんたちが面白い仕事をされました。そのことを僕は実は感動して眺めておりましたので、それについて語っていただきます。
さて、今日の番組タイトル、西島さんにお願いしましょうか。
西: 申し上げさせていただきます。「府営団地とあなたの夢がマッチング、若者の視点からひもとく空き家活用」。
絹: ではもう一回、僕が言いますね。「府営団地とあなたの夢がマッチング?~若者の視点からひもとく空き家活用」というタイトルでお送りします。
まず、これはもう公式の公開情報ですけど、手元に資料があります。カタく言いますと「京都府府営住宅ストック公民連携活用事業」が正式なタイトルです。これを絹川くんなりに、ひらがなで超訳を試みます。間違っていたら訂正してくださいね。
西: ありがとうございます。
絹: 「活用できる府営住宅ストック」、これ要は「府営住宅の中でどれだけ空き家があるのか」ということです。京都府にはだいたい2年以上、応募がなくて、空いたままの住戸のある府営住宅が52団地あるそうです。「その中で726室が空いていて、これを何とか料理したい。民間の皆さん、知恵ある人は寄ってくれ!」と大きな声で、京都府の建設交通部の住宅課の皆さんが声を上げました。これ、僕なりの超訳ですが、どうですか?
西: もうお見込みの通りでございます。
絹: それでは今度は主人公であります西島さんの口から、制度概要とか事業概要、そもそもこれって何?というのを、ご説明していただけますか。
 

■エピソード1 府営住宅ストック活用事業とは、こういうことです

●府営住宅ストックを社会課題の解決に役立てたい
西: では若者の視点から、ちょっと柔軟にご説明させていただければと思います。今回の事業は、簡単に申し上げると、長期間応募がなかった府営住宅の空き住戸を、社会課題の解決に取り組む事業者様や各種団体の皆様に提供するものです。皆さまのノウハウや柔軟なアイデアを取り入れた利活用案をどんどん提案いただきたいと考えております。
絹: 社会課題の解決と言いますと、具体的に言いますと、何か地域の困りごと、「こうなったらええのにな、ああなったらええのにな」ということですね。例えば?
西: それこそ地域活性化、地域の魅力に繋がるような情報の発信をしていただけるような利活用であったり…。
絹: 例えば「子ども食堂をしたいんですけど、場所ないんです」「町内会の会議する場所ないけど、使えませんか」こんなのもアリですか?
西: もちろん、アリでございます。
 

●利活用の目的の縛りをかなり取っ払いました!

絹: リスナーの皆さん、例えばこういう私の思い付きで西島さんに「こんなんアリ?」と聞いたら即答が返ってきましたね。結構広いですねえ。
西: そうです。幅広に利活用の目的の縛りを取っ払っておりまして、店舗を含め営利目的の利用でも問題ありません。ただし営利目的の利用の場合は、使用料を通常の5倍いただくことになることだけご注意下さい。
絹: 皆さん聞かれましたよね、ここに京都府の狙いがそこはかとなく感じられます。できれば営利事業よりも、社会課題解決型の地域の困りごとに役立つものの方にたくさん来てほしい。でも営利事業であってもそれは別に「来るなとは言いません」と、こんな感じですよね。
西: 基本的に目的自体は何でも来てもらっても問題はありませんし…
絹: あ、ちょっと今のは超訳が過ぎて、誤訳になりましたね(笑)。すみません。だから縛りはないと。アイデア持っておいでと。協力するよという感じですね。
西: はい。今回の事業目的としましては、これは全国共通の課題となっているのですが、公営住宅は募集しても応募がない状況が増加傾向にあります。加えて入居者の高齢化が進み、コミュニティの力が弱くなっていることから、自治会の活動が思うようにできなくなっているという声が寄せられています。
絹: ここですよね。公営住宅でも空き室・空き家が増加傾向にありと。だいたいバクっと言うと、52団地で京都府さんが管理されている部屋は何万室くらいでしたっけ?
西: 127団地、14843戸を京都府は府営住宅として管理しております。
絹: ごめんなさい、僕間違って説明していました。全部で52団地だと思っていたんです。それは空き室が2年以上空いている所が52団地あると。
西: そういうことです。
 
          (京都府HPより 募集住戸一覧)
 

●空家率4.8%、住民の高齢化が進み、コミュニティの力が弱まってきて…

絹: それでだいたい空き家率は何%くらいなのでしょう。空き家が726戸とおっしゃってましたよね、5%ということですか。
西: そうですね、4.8%ほどが空き家になっております。
絹: 結構な数ですね。
西: 先ほど申し上げたような課題を何とか解決するためになんとか良いアイデアはないかと考えた結果、府営住宅の空き家を若い世代の方々に利活用してもらおうと思いついたのが、今回の事業を始めたきっかけでした。
絹: できれば若い人、子育て世代とか、府営住宅の住民が高齢化しているから、若い人とか現役世代に入ってきてねと。そうなるとうれしいなということですよね。それとコミュニティの力が弱くなったというのは、自治会の戦力が少なくなってきて、エンジンが弱くなっているということから色んな問題が派生しているようですね。
西: そうです。草刈りの人員が高齢化のため確保できないという声や、掃除の当番などもほとんど一人でやっていらっしゃるような団地もあるという声を聞いております。
絹: そうですか。これ、うまいこといくといいなあ。
 

●利活用の目的、例えば子育て支援、地域活性化、産業成長…

西: 利活用の方法として、どうせなら面白い事に使っていただきたいとの思いから、試行錯誤の結果、子育て支援はじめ、地域活性化、産業成長等、幅広い用途で利活用していただけるように、今回の事業を準備させていただきました。
絹: それで京都府のホームページに(後で皆さんに是非検索してほしいんです!)、使用できる用途というのを、例を挙げていただいています。
子育て支援では…、例えばひとり親家庭向けのシェアハウスだって、いけるんじゃないですか?子どもや若者の居場所作りとしての子ども食堂、それから学習の場だとか、いわゆるサードプレイス、居場所づくりが考えられませんかと。
それからまちづくりの推進、地域を元気にするという活動では、地域おこし協力隊の人向けの住戸や若者シェアハウスなどなど、本当に幅広い。色々京都府さんも考えましたね。
西: ありがとうございます。
 
            (京都府HPより 使用できる用途)
 

●変わったところでは“ルームファーム(植物工場)”なんてのも可能です!

絹: もっとすごいのあるでしょ。産業成長のカテゴリーで“ルームファーム”というのを見付けた時、私びっくりしました。これなんですか?
西: 基本的には室内栽培という形です。
絹: 植物工場みたいなイメージですか?
西: そうです。屋外に畑がなくてもできる農業として、現在屋内農業ビジネスが盛んになりつつあります。ちょっと費用はかかってしまうとのことですが、この栽培に適しているのがトマトなどで、カナダでは実際に温室で最も栽培されている野菜という統計もあります。
絹: 中島副部長から、この間教えていただいたのですが、「大阪の方の市営住宅だか府営住宅で、いちごを育てているおっさんがいるらしいで」と。完全に無農薬で、受粉も人間がするので、日当たりが良かろうが悪かろうが、LEDで照らすので全然問題ないと。公営住宅をそんなことに使っている人がいると。
西: 面白いですねえ。是非使っていただければと、提案をお待ちしております。
 

■エピソード2 「三方よし」を目指しています

●事業者よし、コミュニティよし、京都府よし
絹: さあ、次は三方よし、エピソードで言いますとどの辺に行きましょうか。
西: 今回の事業効果と言いますか、事業のメリットをお話させていただくと、府営住宅の利活用により、事業者の皆様、団地の皆様、そして最後に京都府と、「三方よし」というのを目指しております。
絹: 私の本業は建設業ですが、先祖は近江商人のなれの果てなんです(笑)。だから先祖は滋賀県の出身のようです。「三方よし」いいですねえ。事業者(アイデアを持って手を挙げてくれる人)にとってもよくて、それから団地、周りのコミュニティにとってもよくて、京都府も公営住宅の空き室を使ってもらえて、その上、地域課題が少し前進するかもしれない。
西: そうなんです。京都府としても府営住宅が府民の皆様の貴重な公共資産であるという認識のもと、その有効活用していただくことによって、団地ひいては地域の皆様にとって、住みよい住環境をさらに推進させていくきっかけになればと考えております。
もちろん団地としても、若い方と自治会活動に協力していただける方に府営住宅を利活用していただくことによって、自治会を支援していただき、ひいては団地、さらには地域のコミュニティの活性化にもつながればいいなと考えております。
絹: これから広くいろんな人が手を挙げて申し込んでくると思うんですけど、今、結構問い合わせが続いているんでしょ?
             (京都府HPより 「三方よし」)
 

●現在、続々とお問い合わせをいただいております

西: そうですね。ありがたいことに、問い合わせも20件ほどいただいております。
絹: 確か1月19日に広報発表されて、まだ何日も経ってないじゃないですか。それで20件くらい。僕の知り合いの、興味を持ってくれそうな人に話をしますと、「ええ!」とみんな言うんですよ。「ちょっとその資料、どこで見たらいいか教えて!」と、複数の人からそういう声を聞きますので、ひょっとしたら本当に色んな人が集まって来るかもしれませんね。
今20数件申し込みがあるなかで、西島さんから見て、これはちょっと面白いなという申し込みや、どんな傾向があるのか教えていただきたいですね。
西: だいたい多く寄せられているのが、従業員さんの寮として使用したいという問い合わせです。実は本日も「従業員の寮に使いたい」という内見の調整に行ってきまして、その帰り道にこのスタジオに寄らせていただいています。
絹: 私も実は昨日の夜、ある場所で交流会がありまして、同じテーブルに座った方が綾部で新しい工場をおつくりになったということでした。その方は毎年タイ国から従業員を十数名、雇い入れて、訓練をするための宿舎として、民間の賃貸物件をお借りになって収容していらしたそうです。でも足りないので、「この京都府さんの動き、大変興味があります」とおっしゃっておられて、そんな方が数名おられましたね。
西: ありがとうございます。実際にそれこそ外国人さん向けの寮としても使用したいとの問い合わせもいただいております。
 

●某大学の観光学とのコラボのお話も…

絹: 他に西島さんが面白いなと思った使い方はありますか。
西: 実は先日も、某大学の観光学研究科の方とお話をする機会があったのですが、大学さんが府営住宅の一室を借り、団地の自治会さんとともに地域の魅力を発信し、観光名所を案内する。その代り団地の皆さんの暮らしをサポートしたり、団地のお子さんの学習の支援をご協力させていただければといった具体的な提案もいただいています。「地域の観光振興や団地の地域活性化の双方にメリットのある事業提案について検討していきたい」とおっしゃっていただきました。
絹: すぐにイメージしにくいのですが、わかることは大学生がうろちょろする。これは間違いなさそうだと。「自治会のこともお手伝いしてね」と言わないうちに、向こうはその気にもうなっていると。そして「自治会さんと共に、その地域を好きになってもらう。“ここいいよ!来ない?”みたいな情報発信をしたい」と。これは地元の人にとってうれしいじゃないですか。
西: そうですね。地域の魅力も発信していただければ、府営住宅の利活用という枠組みを超えて、まちづくりへも繋がっていくのではないかなと思っております。
絹: これは面白いですね。観光からの接近、しかも大学からの接近。リスナーの皆さん、これは本当に若い人が来てくれたらうれしいですね。
 

●子育て世代の人が京都に戻ってきてくれる起爆剤になれば

絹: それと若い人と言えば、これは京都市の場合だけかもしれませんが、例えば下京区、南区あたりの保育園の園長さんにインタビューをした時にこんなエピソードを聞きました。せっかく待機児童をなくすために、保育の枠を拡大したけれども、京都市の中心市街地の土地値が上がってしまったり、マンションの値段が上がったり、家賃が上がったりするために、若い夫婦が住みにくくなって、京都市の外に流れてしまうと。だから定員割れしちゃったという園長さんが複数おられました。我々京都市の住民としては、若い人がまた戻ってきて住みやすくなるために、公営住宅が空いているのなら、安く入っていただけたらいいのになと、思いますね。今回の試みが府営住宅にとっても、若い子育て世代の方が戻ってきてくれる起爆剤になったらきっとすごいですね。
西: 今回の事業では、皆さまが公営住宅に対して持っていただいているイメージからさらに一歩進めて頂いて、全く新しい視点から公営住宅を利活用していただきたいと考えています。
 

●団地コミュニティ活性化の一案としてのコレクティブハウス

絹: その利活用のイメージというところでは、コレクティブハウジングという言葉も入っています。コレクティブハウジングは、以前もこの番組のヘビーリスナーならご存知かもしれませんが、賃貸型で助け合いが起こりやすいようなソフトウェアが内包されているものを言います。
コモンルームという名前で、ご近所さんと一緒に、共同の食堂とか共同の居間がある。そこへは誰でも入れて、料理の得意な人が「今度の夕飯当番、一食430円くらいで作っておくし、要る人は黒板に登録しておいて」なんて、会社の社員寮のような感じが公営住宅でもし起きたらいいですよねえ。その棟なりそのフロアはみんな知り合いで、「実家からミカンが届いた。良かったらコモンルームに置いとくし、自由に取っていって」みたいなことが起こると面白いと思いません?
西: そうですね。素敵な新しい住み方・居住形態ですね。
 

●見守りサービス付き高齢単身者シェアハウスとか…

絹: それと高齢者等の生活支援なんかも考えてくれたらうれしい。福祉系の事業者がやってきて、見守りサービス付き高齢者単身シェアハウスとか。サ高住に近いけれども、単身で、高齢者同士がシェアする。でも見守り機能もついているわけです。ということはそばに福祉サポートの能力のある専門家がいるかもしれないという、本当に夢のある企画であります。
リスナーの皆さん、今までのお話を聞かれてどうだったでしょうか。非常に勇気のある試みを京都府さんは展開しようとしています。もう少し補足したい事はありますか?
 

●是非検索、お電話もおまちしております!

西: 今回是非皆さんに色んな利活用の提案をしていただきたいと京都府としては考えておりますので、「京都府営住宅空き住戸」や、「京都府営住宅ストック」で検索していただければ、今回の事業をご紹介するページが出てきます。そのページに募集要項等を掲載しておりますので、興味がある方は是非ご覧ください。
絹: もう一回言いますね。検索キーワードです。「京都府営住宅ストック」、あるいは「京都府営住宅」と「空き住戸」のアンド検索をしていただくと、必ず上位にヒットします。実施要領もありますし、電話をかけていただいてもいいと思います。京都府建設交通部住宅課075-414-5366です。電話が繋がったらひょっとしたら西島良輔さん本人が出るかもしれません(笑)。
西: はい、私が出させていただきます(笑)。
絹: 西島さんが電話応対だとか問い合わせの応対で「ふーっ」となるくらい来て下さるとうれしいですね。そして私の勝手な予想ですが、京都府がこういうことをされたということで、おそらくは京都市役所も追随しようと虎視眈々と狙っていると思います。そして京都府の皆さんと京都市の皆さんが何か響き合うというか、リエゾンと言うか、イイ感じの影響を与え合う近未来が来るといいですね。
西: そうですね。
絹: 今日は若き行政マン、京都府建設交通部住宅課主事の西島良輔さんの「府営住宅とあなたの夢がマッチング~若者の視点からひもとく空き家活用 地域課題に挑戦する人を求む」という番組をつくらせていただきました。是非検索、あるいはお電話をしてくださいね。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。
どうでしたか?初めてのラジオ出演。
西: 少し緊張しましたけれども、楽しくお話させていただきました。
絹: リスナーの皆さん、わかるでしょ?見るからに、聞くからに、真面目な行政マン。彼の将来、期待大です。皆さまありがとうございました。さようなら。
西: ありがとうございました。
投稿日:2023/03/16

第182回 ・都市計画の見直し(案)を読み解く~わかったようでわからない都市計画の見直し(案)をひらがな化できますか?

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山: 山口 耕平 氏(京都市都市計画局都市企画部都市計画課 特別用途地区・まちづくり条例 担当係長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
        (山口 耕平 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。そしてこんばんは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストですが、ラジオカフェのご近所さんからお招きしております。京都市都市計画局都市計画課から、担当係長の山口耕平さんをお招きしました。山口耕平さん、よろしくお願いします。
山: よろしくお願いします。
絹: 私と山口さんの出会いは、まだ最近なんです。直接会ったのは2~3度くらいですね。
山: そうですね。年末くらいから。
絹: リスナーの皆さん、結構大きな変化が都市計画と呼ばれる分野で起こっているんです。そのことを勉強したくて、山口さんの上司である平井部長(僕が勝手に京都市のエースかなと思って尊敬もしている方なのですが)のところに行きまして、「今回の都市計画の大きな見直し変更、一般市民の方(私も含め)専門家ではない人たちにとって、ちょっとわかりにくいかもしれません。ラジオカフェで番組つくれませんかね。」とお聞きしたら「いいよ」と言ってくださって、しばらくたって「俺が行くより、うちの若い衆を出すから、頼むわ」とご紹介いただいたのが山口耕平さんです。では山口さん、自己紹介をお願いします。
山: 都市計画課で係長をしています山口と言います。市役所でも十数年働かせて頂いていまして、都市計画課に来ましたのは、去年の4月で、それまでは建築指導部というところで、建物の申請等の業務をしていました。去年の4月に来て、この見直しを引き継いでやっているという形になります。
絹: 今日の番組タイトルをどうしようと、実は打ち合わせをしておりました。タイトルの決定にもちょっと苦労しましたけれども、「都市計画の見直し(案)を読み解く~わかったようでわからない都市計画の見直し(案)をひらがな化できますか?」と題してお送りいたします。冗談めかして言いましたが、すごく分厚い資料が手元にはあります。でも一般の新聞やテレビの報道では本当に一部分切り取ってしか報道されてないような気がしまして、私の希望としては山口さんにその背景、パンチラインを、ひらがな化して解説いただけませんかと、無茶ぶりしました(笑)。リスナーの皆さん、すごく大きな変化が起ころうとしているんだよということをご注目ください。
 

■エピソード1 そもそも京都市は今、何をしようとしているのか

●今回の見直し案、目的は高さの緩和ではありません
山: まず都市計画という言葉について、ご説明したいと思います。色々あるのですが、一番大きいのは道路や鉄道、公園などをどこに配置するかというところや、どこにどんな建物が建てられるかということも決めています。今回その見直しをしようとしているのは、建物の建てられる場所や大きさについて変えようとしているということです。テレビや新聞では高さの緩和がされるということが注目されているのですが、実は目的は高さの緩和ではないということをご説明できればと思っています。
絹: 大事ですね。リスナーの皆さん、気を付けなければならないのは、所謂マスメディアでは本当に一部だけ切り取って伝えることが多いよと。そういうことを山口さんの口から説明していただこうとしています。
 

●京都市では子育て世帯の流出、オフィスの不足が深刻です

山: その背景なのですが、それも結構報道されているのですが、京都市では人口が減っており、特に子育て世帯が流出しているということ、それから(これはあまり報道されてないかもしれませんが)オフィスが結構不足しているという問題が起こっています。それで住む所働く所が足りないという状態が今起こっているということです。
絹: これを聞いて、1人の京都市民としてちょっと悔しいなと思うんです。私事で恐縮ですが、私の息子も京都市民から亀岡市民になってしまいました。うちの会社の社員さんなども、滋賀県で庭付きの住宅を買いたいという人が多かったりして、何かやっぱり京都市の中心部や京都市内が子どもを育てたりするのに、ちょっとしんどいと思っている人がいるようです。土地の値段が高かったり、マンションの値段が高くなりすぎていたりと、そういう理解でいいですか?
山: そうですね。人口が減っている理由については、京都市は色々あるとは考えているのですが、やはり元々京都と言うのは土地が狭いこともあり、その関係でマンションやオフィスはもっとつくりやすくしていかないといけないよねというのが課題としてあるかなとは考えています。
そういう問題に対応するために、京都に今必要な機能や建物は、これまでよりももっと建てやすくして、それを誘導していこうとしているのが今回の見直しのスタートになっています。
ただ、ここでしっかりとお伝えしておかねばならないのは、これは京都市の中でも京都の景観の守るべき骨格というのがあって、それは絶対に守っていきましょうということを前提に今回の見直しをしているということなのです。
 
      (※京都市HPより 京都市の年代別社会動態グラフ(日本人のみ))
 

●新景観政策は守ったまま、見直しを進めているのです

山: 骨格というと言い方が難しいのですが、京都は盆地の地形になっているので、中心部では御池通などはある程度高い建物を建ててもいいのですが、そこから山に近づくにつれ、だんだん建物の高さを低くしていくという考え方が京都にはあります。それは平成19年の新景観政策で始まったものになるのですが、今回それから15年経って、新景観政策を守ったまま今回の見直しを進めているというのが、しっかりお伝えしておかねばならないことかなと思っております。
絹: 私はご存知のように職業が建設屋でございます。平成19年に始まった新景観政策について、必ずしも大賛成していたわけではない業界の1人です。すごく厳しくなって、仕事がやりにくくなったという印象が強い、特に不動産、建設関係です。でも今回そのことを見直していくというのは、例えば大文字が見えなくなろうが、有名ないい雰囲気の古いお寺の周りに何が建とうが知らんというのではない。京都の景観や都市格はやはり今回の見直しでも守りたい、石にかじりついても守りたいという気持ちは持ちつつ、そうではない部分で大きな見直しがあるということですね。
 

●都市機能と住環境のバランスをしっかり見ながら

山: 少しややこしいのですが、15年前の新景観政策で決めた事自体を変えるものではなくて、あくまでもそれは守ったままで、バランスをとりながら見直していくということなのです。
絹: なにか報道だけ聞いていると、「あ、京都市、方針変えた?」という風に誤解している人たちもいるけれども、元々の方針は「俺たちは間違ったことを言うてへん!」と。だけど今人口の減少だったり、若者、子育て層が流出していたり、オフィスが足りなくなったりするのに、今できる見直しを色々考えた、それをまず見てくれと。
山: そうですね。元々新景観政策自体も、時代と共にちゃんと進化していくものだという言い方をしています。ですので今回の見直しも、景観もあるけれども、先ほど申し上げた建てた方がいいもの、そこにあるべき機能(都市機能という難しい言い方をするのですが)と、それを建てた時の周りの住宅への影響(今お住まいの方の住環境へ影響)という、景観と都市機能と住環境のバランスをしっかり見ながら検討していきました。
 

■エピソード2 例えば外環状線沿道、こんな風になればと考えています

●山科駅から六地蔵駅までの外環状線の沿道、ちょっとイメージしてみてください
絹: 今の流れで、象徴的なエリアで、山科の外環状線沿いのことにそろそろ切り込んでいただけませんでしょうか。
山: 今回の見直しは全市的にということでさせていただいていて、今ご指摘いただいた山科の外環状線沿道、山科だけではなく伏見も含めて東部方面という言い方をしているのですが、山科駅から六地蔵駅までの間の外環状線の沿道について、これまでよりも建物を少し建てやすい形、大きさも少し大きくできるように変えているんです。
絹: リスナーの皆さん、イメージしてくださいね。山科駅から外環状線で椥辻駅、醍醐駅を通って六地蔵駅とずっと南へ行く、この外環状線の線上について、少し考え方を変えていくんだよとのことです。さて、そのこころは。
 

●もっとここに若い世代が住みやすいまちをつくりたい

山: 「ここにもっと若い世代が住みやすいまちをつくりたい」というのが、そのこころになります。
絹: 先ほどの山口さんの言葉を借りますと、「地下鉄が通っていて、その地下鉄と連携して外環状線沿いに色んな建物があり、あるいは賑わいがあって、安心して子育て世帯や若い人たちが歩きたくなるような建物や施設群が誘導されてくる、そのような都市計画の見直しをやってみたんだと。
山: 今まででしたら、単純に大きく建てたり高く建てたりできるよという変更をすることが多いのですが、今回は高く建てるためにはちゃんと歩道を広げてもらったり、一階にお店を入れてもらったりなど、条件をつけさせて頂いていて、そういうものについては少し大きくつくってもいいよというルールにするんです。ですからそういうお店ができたり、歩道が広がったりといったことを実現していこうと考えています。
絹: 地下鉄との連携ですね。歩いて楽しい、そんな都市。東部方面の外環状線の沿道と書いてありますね。賑わいと潤い溢れる地域コミュニティや文化の創造拠点、言葉にすると難しいかもしれませんが、でも若い子育て世帯の人が、暮らしやすくて、住んでいて楽しいと言えるエリアになるといいよねという願いが込められた都市計画決定の変更であると。
山: そういうことですね。
絹: 条件を満たす場合には、高度地区、無制限に?
山: これも結構「無制限」というのがかなり色々話題にはなっているのですが、元々31mの高さの規制がありました。これがだいたい10階建てくらいになるんです。ただその高さの規制があるなかで、結構ぎゅうぎゅうに建っていると言いますか、外環状線の沿道にせり出して、今、建物が建っている状態なんです。つまり外環状線の歩道があって、そこから建物がすぐあるような状態で、なかなか歩きやすい感じがしない。それを今回高さを31mよりは高く建てられるようにする、無制限とあるのですが、実際は費用的な問題や法規制の問題でいくらでも建てられるというものではないのです。今よりは自由に建てていただけるようにすることで、もう少し下がって建ててもらって、お店を入れてというようなことをすることで、外環状線沿いがもっと楽しい、暮らしやすいエリアにしていくということですね。
 
        (※国土交通省HPより 絵で見る都市計画)
 

●御池通をイメージしてみてください

絹: リスナーの皆さん、イメージして頂きやすい例として、京都市のメインストリートの1つである御池通、何か歩きやすいですよね。あれはなんでかと言いますと、歩くスペースが広いからなんです。
山: そうです。そして御池通も一階にお店を入れないといけないという山科と同じルールが実はあります。それで一階にショールームとか、ハンバーガー屋さんとか、コーヒー屋さんなどが入っているということですね。
絹: 何か御池通をそぞろ歩いている、そこから三条通に下りていく、「三条通がそれ以前よりなんだかすごく良くなったね」みたいなことを感じた時期がありましたよね。ああいう歩いて楽しいという、あの時の感覚を外環状線沿いにも欲しいなと誰かが思ったのかもしれませんね。
本当に今回の、用途地域や容積率、高度地区等の見直し案は盛りだくさんで丁寧に説明しているとすごく大変なので、今無理やり大づかみに無理をお願いして山口さんに解説をしていただきました。次、解説をプラスするとしたら何ができますか。
 

■エピソード3 京都市の都市計画、もっと広く知っていただきたい

●パブリックコメントのご意見からー高さ規制と騒音問題
山: 今回のパブリックコメントでいただいたご意見をご紹介したいと思います。私が直接ご意見を伺いに行った中ですごく印象的だったお話です。五条あたりのマンションに住まれている方なのですが、マンションの天井が非常に低く、以前住んでいた大阪のマンションに比べて、上の階の音が響くということで、たぶん床の構造が高さ規制で薄くなっているせいじゃないかということでした。実際に上階にはお子さん連れのご家族が住まれていて、音が響く旨をお伝えしたことがあるようなのですが、その関係でその方が引っ越されたと。そういう意味で高さ規制ということが(その人は賛成なのですが)、子育て世帯が住みにくくなっている事もあるのかなというお話をされていました。それを聞いてすごく私も難しいなと思いながら、やはりどちらも大切なことだなと印象深かったですね。
絹: 今のお話を補足いたしますと、高さ制限がかかっている所で、共同住宅を設計したり建設したりすると、部屋の内々の高さをある程度犠牲にして、要は天井が低い建物を頑張ってつくることになります。防音対策としては、ボイドスラムという空気の円柱と言いますか、茶筒の親分みたいなものが床の中に入れて、音が響かないようにするわけです。ただその工法を採用すると、床の厚みが厚くなってしまいます。たぶんその方は建築の知識のある方だったんですね。そういう厚い床の工法を取れないから、ひょっとしたら上階の音が大阪のマンションに住んでいた時よりも伝わってきたのかもしれないと想像されたと。
山: そうですね。その人のちょっと感覚的なところがあるのですが。
絹: でも高さ制限があまりなければ、天井の高いおうちに住めるかもしれないなというのは、あるかもしれないですね。
山: そこのバランスですよね。京都の守りたいものと、環境の。
 

●今回の見直し案について、市民の方から大変高い関心をいただいています

絹: 今回の都市計画の見直し案について、869通、2445件の意見が寄せられたというので、市民の方から関心が高かったんですね。
山: そうですね。以前、4年くらい前に行った時の意見数のだいたい2~3倍はご意見をいただいていたので、そういう意味ですごく注目していただいたなと思っております。
絹: その分析、解析のため、一回読むのに8時間以上かかったと。それを何回も繰り返して、へとへとになっておられたのが、ここにおられる山口さんです。
山: いえいえ(笑)。
絹: でも京都市の担当の人はそうやって、皆さんどんな意見を持っているのかなというのを丁寧に読み解こうという努力は続けていらっしゃいます。ですので一般の方々には専門的すぎるような用語が使われているホームページの資料などもありますが、なぜこういう見直しがなされようとしているのかを、ひらがな化して読んでいただけると、これに携わった方々はありがたいなと思われるかもしれません。
 

●京都市には元々高さ制限のないエリアもあります

絹: それとあと1個だけ。元々高さ制限がないエリアでも、今回の見直し以前から京都市にはあるのよと。僕、意識してなかったんですけど。
山: そうですね。あまり京都市内の方もご存じないんですけど、京都駅よりもっと南に行った十条通と鴨川と国道1号に囲まれた辺りや、鴨川より南側の京セラのビルのあるあたりのちょっと南側周辺も、京都市では「らくなん進都」と言って、産業を集積する地域として、その辺りは元々高度地区と言って高さの規制がなかったりします。
 
  (※らくなん進都整備推進協議会HPより 「らくなん進都」エリアマップ)
絹: そういう場所だって、ちゃんと京都市は計画しているんですよと。
山: そういうことは京都市外の方はもちろんご存知ないし、京都市内の方も実はあまりご存じない方が多いこともあるので、そのあたりもしっかりわかっていただけるようにしていかねばとも思っています。
絹: ですから広報というのは大切ですね。今回の有識者委員会でも京都市の都市計画が厳しすぎるという印象を持っている人が多いよというところから、実際にいろんなことを考え始めたということも教えていただきました。
山口さん、今日話してみられてどうでした?ご感想など一言。
山: まさに最後にお話させていただいた通り、やはり都市計画って色んな方に知っていただくことが一番大切だと思うので、実際に進めて行くにあたって、今日こういう場をもたせていただいて、非常によかったなと思っています。
絹: ありがとうございます。本当にこれは29分の番組で説明するのは無茶ぶり過ぎる話で、そんな注文を出してすみませんでした。
でも、リスナーの皆さん、とっても大切な変化が起きようとしています。そしてそのこころは、外環状線に代表されるように、賑わいと若年層、子育て世帯の人たちが住みやすくなる建物群に来てほしいということ。そして若い人たち、子育て世帯の人たちが住みやすくなる京都市になんとか変化させようと、都市計画の専門家の人たちが考えていらっしゃること、伝わってまいります。京都市の行政の方々は一生懸命仕事をしても、自らの仕事を喧伝することをしないのが通例です。こうやって一生懸命フラフラになりながら仕事をしている人たちを見付けたら、「ご苦労さん」と一声掛けてあげていただけたら幸いです。
ということで今回は少し硬いお話になりましたが、京都市のホームページなども是非ごらんください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。それでは皆さん、ありがとうございました。山口さん、ありがとうございました。
山: ありがとうございました。
投稿日:2023/02/02
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