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まちづくりチョビット推進室
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月別アーカイブ 2017年3月

第128回 ・OPEN DATAの開く近未来

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成29年3月放送分>

 

清: 清水 和孝氏 (京都市 総合企画局 情報化推進室 行政情報化推進係長)
絹: 絹川 雅則  (公成建設株式会社)
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 左絹川 右清水氏
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た、京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最前線をご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲスト紹介です。本日はお一方、京都市からお越しいただきました。京都市 総合企画局 情報化推進室 行政情報化推進係長でいらっしゃる清水和孝さんです。清水さんお願いいたします。
清: お願いいたします。
絹: 清水さんと初めてお会いしたのは、2月4日、あるすっごい濃密なイベントでお会いしたんです。その名も「オープンデータ・ロボット活用イベントin京都」、新たなICTを使って未来に繋がるイノベーションを考えましょうよというイベントだったんですけど、その進行だとか裏方だとかで大活躍されていた清水さんにお越しいただいて、リスナーの方にも「なんかこれ、すごかったよねえ」というのをお伝えしたくて、今日来ていただきました。
番組タイトルとテーマですけど、「OPEN DATAの開く近未来」と題してお送りいたします。清水さんどこから行きましょうかね。

■第一章 「オープンデータ・ロボット活用イベントin京都」おもしろかったあ!
  ●オープンデータって、いったい何?
清: そうですね。2月4日の「オープンデータ・ロボット活用イベントin京都」について、少しご紹介したいと思います。
絹: 行ったことがない、参加したことがないよという方に、「何がどう面白かったの」というのを、企画された裏方としての清水さんの立場として、少し解説を加えていただけますか。
清: 面白かったと言っていただけると、我々イベントを開催させていただいた者としては、非常に有難いと思っております。このイベントは京都市役所で、今回、オープンデータのポータルサイトを開設して、いよいよ京都市でもオープンデータを全庁的に推進していこうというなかで、市民の方、団体の方、企業の方、大学の学生さんも、こういった動きを知っていただきたいとの思いの中で、2月4日にイベントを開催させていただきました。
絹: そもそもオープンデータって、よくわからない方もおられるかもしれませんよね。オープンデータがきちんと使われるということ、あるいはそもそもオープンデータとは何なのか、少しそこを「ひらがな」にしていただけますか。
清: 一般的に、行政機関が保有する公共データのうち、いわゆる二次利用と呼んでいるんですが、色んな形でデータを使っていただくことができるというもので、さらに今まさにICTの時代ですので、機械判読に適した形で、公開したものをオープンデータと呼んでおります。

●機械判読できると、どんないいことがあるの?
絹: 今、「機械判読」というちょっと難しい言葉が出ましたけれども、電子データでも例えば、PDFファイルを貰った日にはちょっと使いにくいよねということがありますよね。それを行政の方が持たれる膨大なデータを一般の人がそれを使って活用しやすいようにする。また、データを貰ったけど、再度読み込んで加工したりして、ジャマくさくてしかたがなかったのが、CSV形式のように、そういった手間が省けるようになると、何かすごいことが起きないかしらというところがあるんですよね。
清: はい。機械が読めるというのは、今、お話に出た例えばPDFですと、人間の目で見ると非常にわかりやすい形なんですが、機械ではどこに何が書いてあるかわからないということがあります。スマートフォンやパソコンなど、色んな機械が身近に使われているかと思うのですが、そういったものでデータを活用していこうとした時に、やはり人間の目で見ただけでは使い勝手が悪いということがあります。そこで先ほどのCSVといった形式で、色んなコンピューターで扱いやすいのが、オープンデータとして適しています。

●データを徹底的に開放せよ!-京都府と京都市が相互乗り入れに
絹: 2月4日のすごいイベントを、京都府さんと京都市さんが中心になって企画されたのですが、初めの来賓あいさつで、僕、ビビりました。内閣官房からIT総合戦略室の企画調査官さんが挨拶に立たれたり、総務省からは情報流通振興課の企画官、それから早稲田大学の政治経済学術院の稲継教授、それから京都府の政策企画部の梅原副部長が、Pepperと掛け合いの漫談みたいな挨拶をされて…。既に京都府と京都市が共同してこういうことに当たろうとされている。データも乗り入れようという精神を、まさに表現されていましたね。
清: はい。本当にスマートフォンとパソコンとタブレットだけではなくて、今やロボットのPepperが人間の代わりにしゃべってくれるとか、そういう時代になってきているということで、そういった機械、コンピューターが使えるようなものを、これからどんどん出していくというのが、非常に重要なところではないかと思っています。
絹: もう一度復習させていただきます。清水さんに解説していただきましたが、オープンデータとは、官庁あるいは民間の持つデータ、情報を、民間が二次データ利用できる形で広げていこうぜ、という動きであるようです。そしてこれは先般、未来投資会議という会議が中央省庁であったそうですが、安倍総理のコメントで、「データを徹底的に開放せよ」と。それがこれからの超少子化社会、人口減少社会を乗り切っていく、1つの大事な柱になるかもしれないという意識で、中央からも、われらが京都府、京都市に対して「こういう動き、頼むぜ」というような期待を寄せられていると思ったらいいのでしょうか。
清: はい。本当にデータをどんどん開放して、もしくは公開して、皆さんに使っていただくということです。それによって日本全体の経済が活性化したり、市民の方々に使っていただくなかで、「京都って、こういうまちだよね」ということを理解していただくのに、よりデータを使ってみていただこうということかと思っています。

●事の起こりは東日本大震災でした
絹: リスナーの皆さんにイメージを持っていただくにはどうしたらいいですかね。オープンデータが皆さんに意識され出したのは、いつごろからでしたかという話がありましたよね。東日本の震災以降だということ、あれはどなたのご挨拶だったのか、稲継先生でしたっけ?
清:  そうだと思いますね。すみません、そのあたりは私も裏方でおりましたので(笑)。
絹: 東日本の震災の時に、どの道が通れるんだろう、避難所はどこにあるんだろうって、みんなでデータが共有できれば、もっと色んな人が助けられたのにねという問題意識があちこちで言われたらしいですね。
清: やはり避難所に到達するのに、災害が起こったら通れないですよねというところを、車の位置情報や実際に走っている情報をデータとして扱えば、どこの道が通れるか、そこに避難物資が届けられるということがわかってくるということです。
絹: 例えばカーナビゲーションの情報で、震災の後、走り回っているデータ、これはビッグデータと呼ばれる範疇でしたよね。それが一般の方が使えて、加工しやすいように。それと行政が持つ避難所情報、「この避難所が生きてる」、それから支援に入っているNPOが「この物資が足りない、足りている」という情報が、もしうまくリンクできるとしたら、「何が起こったのだろう、起こるのだろう」ということがわかるというイメージの仕方でいいですか。
清: そうですね。まさにオープンデータだけで全て解決するというわけではなくて、やはりビッグデータやオープンデータの避難所の場所の情報などを実際に使えば、どこに物を届けたいのか、どこで困っている方がいらっしゃるのかというようなことがわかってくるのではないかと思います。

■第二章 どんなアプリケーションがあるの?
  ●歩くまち京都アプリー例えばバス停の位置や乗り継ぎや…
絹: では京都市の行政情報をオープンにしよう、あるいはデータを集めて開いていこうというので、いくつか既にスマートフォン用のアプリケーションが開発されているそうですね。情報化推進室に異動になられる前は、清水さんは京都高度技術研究所におられたという経歴の持ち主ですから、ちょっとその辺についてお聞きします。
次世代統計アプリ」とか、あるいは「歩くまち京都アプリ」、「京都はぐくみアプリ」この辺の解説できるところと言いますか、ネタをお持ちですか?
清: 例えば「歩くまち京都アプリ」は、非常に多くの皆さんが使われているアプリです。観光客の方が、今いる場所からどこに行きたいか、どこどこのお寺へ行こうということだけがわかっているという状況のなかで、市内の移動となるとやはりバスということになるかと思うのですが、それをどのように乗り換えていくのか、乗り換える前にそもそもバス停がどこにあるのかといったものを案内していただけるアプリになります。
絹: このアプリケーションは京都高度技術研究所がやったのですか?
清: もともと国の実証実験のなかで、オープンデータというのはこういうことで使えるよねということで取り組まれているものです。
絹: ほう、わかりやすい事例としてオープンデータって、こういう活用の仕方があるのを、皆さん見ていただけます、使ってくださいという感じでやったのですか?
清: そうです。バスの位置というのは、公共のデータでしかないというところがありますので、そういったものをより使って行こうということです。実際には実証実験という形になりますので、まだまだこれから改善の余地等は出てくると思うのですが、非常に使っていただけるものになっているのではないかと思っています。

●みっけ隊アプリー道路の危ないとこ、みっけた!
絹: それともう1つ、実証実験でひっかかりましたけど、私自身も「みっけ隊アプリ」の実証実験にちょっとだけ参画したことがあります。リスナーの皆さん、覚えていらっしゃいますでしょうか。何か月前かのこの放送で「みっけ隊アプリ」の関係者にゲストに来ていただきました。京都市の建設局の藤井那保子さん以下、あれは非常に面白かったですね。
レポーティングアプリの一種ですか、市民の皆さんが「道のここに穴があいてる、亀裂が走っている、危ないよ」と気が付いたら、パチッとスマートフォンで画像情報と位置情報とコメントを載せて「ここ、直してね」と土木事務所に連絡してくださるというアプリです。あれが集約されるとすごいことが起こったわけです。
清: 市民の方が直接「こういう所が悪いよ、壊れてますよ」という情報がいただけるというのは、我々としても非常に有難いお話です。また、実際に京都市が修繕したということになれば、連絡をされた方にとっても、自分の参画した内容が行政に伝わって、自分のまちが活性化していくのを実感していただけるのではないかと思います。良い取組をさせていただいていると思っております。
絹: もしそういう市民のボランタリーな協力がなかったとなると、行政担当者が全部回って、あるいは我々のような建設業者がチェックしてとなると、当然手が足りませんよね。予算も足りない。でも地域の人が、心ある人はそうやってわが町の大切なインフラが壊れていることに気が付いたら、せめて「直してよ」と言う事くらい、言うよと。直すのに時間がかかったら「あれ、どうなったのかな」と土木事務所などのホームページにアクセスすると、「これは直しました」「これはまだです。優先順位はこちらが高いです」「京都市の予算も限りがあるので、もうちょっと待ってください」ということをやってらっしゃったんですね(笑)。
清: そうですね。やはりそこのベースになっているのは、データだと思いますので。
絹: 市民の方々がデータを寄せてくださると。だから民間がデータに参画する、それと京都市が既にお持ちになっているインフラの位置情報とか、年齢情報とかと関わるというわけです。

●子育てアプリー定期検診やイベント情報や…
絹: さあ、もう1つ行きましょうか。「子育てアプリ」を教えてください。
清: 「子育てアプリ」は様々な部署で子どもさんに関わる色んな情報、定期検診であるとか、お子様に関するイベントなど、それぞれバラバラで出されているのを、自分の住んでいる行政区でどういった事が行われているのかをまとめて知って頂くのに、非常に役に立つアプリではないかと思っております。
絹: これ、実は僕知らなかったんです。もう子育て世代からだいぶ歳を取っていますから。でもお母さん方には役に立つアプリかもしれませんね。
清: そうですね。「子育てアプリ」は、今そういった形で京都市としてアプリを提供させていただいているんですが、色んな情報については、これからこのオープンデータポータルサイトに載せていきますので、それを使って子育て以外の環境であるとか、交通であるとかにも使っていただけるようになるかと思っています。

●データは二次利用(複製、再配布、加工、編集等)も商用利用も可能です!
絹: 持ってきて頂いた資料に“京都市オープンデータポータルサイト「KYOTO OPEN DATA」開設!11月30日”とありますが、ぜひリスナーの皆さん、ここに一度アクセスしてみていただけませんでしょうか。
清: 実際に使うのも無料で、持っているデータもオープンデータということで、手軽に使っていただけるものです。
アクセスして問題があることもなく、何か取られるということもないので、お気軽に使っていただければと思います。ただ、使われる際には京都市の出典であるということを表記していただく必要があります。
絹: 要するに仁義だけ、出典を明記さえすれば、二次利用、複製、再配布、加工、編集大丈夫よ、と。それどころか商用利用も、ビジネスに使ってもらってもいいよと。太っ腹な感じです。
清: 逆に使わない方が損なのではと思いますので(笑)。
絹: 現在公開されているデータですけど、平成29年1月25日現在のものですけど、222件の情報が公開されているそうです。ファイル数では8,000弱。例えば観光データというところを見ますと、地下鉄時刻表、市バス時刻表、観光施設情報、それから位置データは避難所、AED設置場所、公共施設、また各種統計データは、人口動態調査。これから一般市民の方が「もっとこういうデータがオープンにならないの?」という希望も言っていいんですよね。

●オープンデータのコンシェルジュデスクとお考えいただければ
清: このポータルサイトにお問い合わせというところもつくっておりますので、そこに皆さんのご希望の点であるとか、こういう活用ならもっとできるよねというところも教えていただければと思っております。ポータルサイトにデータだけが載せてあるということではなくて、「このデータを使ってこんなことをしてみたよ」という活用事例であるとか、「このデータを使って、こんなアプリができました」というようなアプリ一覧も載せさせていただいております。
絹: いいですねえ。オープンデータに関するコンシェルジュデスク的なものだと思えばいいですかね。
清: そうですね。そこを見ていただいて、自分ならこんなことができるよね、というふうに思っていただくのが一番いいかなと思います。
絹: さて、時間もだいぶ押してまいりましたが、もう1つ2つオープンデータの導く近未来をイメージしていただきやすいエピソードを、行きましょうか。

■第三章 近未来を、ちょっと覗いてみましょう
  ●鯖江市のこころみーHana道場
絹: 鯖江市、これは福井県ですね。何かここはオープンデータシティと呼ばれているそうですね。
清: データシティ鯖江」ですね。
絹: この間のイベントに鯖江から来られた方がすごく面白いコメントをされていたんです。「鯖江市では3Dオープンデータを使ってリアルに鯖江市上空を、例えばドローンで飛び回るようなアプリケーションが、その気になれば3分でできる仕組みをつくっているよ」と。オープンデータ伝道師の福野泰介さんという36歳の方が熱く語っていらっしゃいましたよね。そういうデータを鯖江では他にもオープンにされていて、「市内には渡れる橋が420橋あるけれども、その中で一番年上の橋は何歳?」と聞くと、「91歳」と答えが出てくるそうですね。構造物の寿命が50~60年とすると、「うわ、すごい古い」というのが、一般の方にすごくイメージできますよね。それから防災活用できるように、消火栓の位置とか…。
そのオープンデータ伝道師の方から、「IchigoJam:イチゴジャム」というすごく安いパソコンを使って、子どもたちにプログラミング道場の「Hana道場」というのをやっていらっしゃるというのを聞いたんですが、その辺について少し…。
清: 「Hana道場」は私は存じ上げてないのですが、この「イチゴジャム」というのは、私がパソコンを始めて触ったのが、高校時代なんですが、その時は非常に高額なパソコンだったわけですけど、今、それと同じ性能のものが実は100円のCPUでできてしまうという(笑)、そういうものでございまして。
絹: とんでもない進化ですね。
清: コンピューターが安いので、どんどん安い物を使いましょうよという思想と、実際に昔にあったパソコンと同じようなスペックで、昔触っていた我々世代が、子どもたちに教えることもできるということで、新しい小学生とか、子どもさんたちに、別の世代が教えていくということで、地方創生で、取り組んでおられるとお聞きしております。

●プログラミングと子どもたちの成長と
絹: 「Hana道場」って、そのプログラミング道場では1日に1つのプログラムをつくるぞというような教育がなされていて、なんと小学校1年生でプログラミングにはまっている子どもたちが現れていると。そういうアプリケーションを使って、例えばイノシシ被害を里山で減らすために、檻を使った罠猟師さんの効率を上げるためのプログラムができたりしたそうです。去年17頭しか獲れなかったのが、今年は91頭獲れたよとか、どんな仕組みなんですかねえ。
清: そうですね(笑)。プログラムをつくっているのは、お子様であったり、色々な方々ですので、本当にいろんな発想、アイデアでつくられているかと思います。その色んな発想の元になるのがデータだと思うので、そういったものでつくっておられるかなと思います。
パソコンを触って、自分で何かつくって、何かを動かすことによって、「何かをやってみよう」というモチベーションにもつながって来るかと思いますので、子どもさんたちがそういう風に思われると、「じゃあ次、何か新しい事をやってみよう」「これで何か次、面白いことができないかな」とどんどん発想が膨れ上がっていくのではないかというふうに思っています。
絹: 2020年には小学校でもプログラミングの必修化が予定されている。少子化、あるいは超少子化社会日本の地方都市で今までと同じような生活、便利さを享受しようとすると無理が来るところがある。行政の能力にも予算にも限界がある。それを行政が持つ、民間が持つオープンデータの情報を加工する、それも一般の方と知恵を出し合って一緒に、老いも若きもアプリケーションをつくりだして、生活をサポートしあおうよという動きにかもしれません。ちょっと超躍しすぎですか(笑)。

●近未来はデータと共に動くことで変えられる
清: オープンデータというのがキーワードになっていますので、少し技術的なところがあるかと思うんですが、元々はオープンガバメントですとか、最近ではオープンガバナンスと言われています。
オープンガバメントというのは開かれた行政ということで、ICTを使ってどんどん行政の持つ情報などを市民の方に知って頂こうというものです。昨今ではオープンガバナンスと言って、そういったデータとか情報など、行政の持っている資産をどんどん活用しながら、市民の方も企業の方も地域活動とか、経済活動のなかで変わっていこうというような動きが出てきているのではないかと思っています。
絹: リスナーの皆さん、今日はオープンデータ、ロボット活用というところに本気で汗をかいて、工夫している京都市の総合企画局の清水さんにゲストとして語っていただきました。近未来は本当に我々がデータと共に動くことで変えられる。そんな気がします。その中ではやはり行政と民間の我々がいかに手を結ぶか、そんなところが大事になってくるのかもしれません。
いかがでしたでしょうか。リスナーの皆さん、ぜひオープンデータポータルサイトを覗いてみてください。清水さんたちの足跡が見えるかもしれません。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、および京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。
投稿日:2017/03/31

第127回 ・全国女子駅伝 走路整備の舞台裏~大雪と戦う裏方さんたち

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成29年2月放送分>

長: 長尾 由規夫氏(京都市建設局 西部土木事務所 所長)
名: 名越 正揮氏 (公成建設株式会社 土木G所長)
絹: 絹川 雅則  (公成建設株式会社)
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左 長尾氏 右 名越氏

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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲスト、男性お二方をお呼びしております。お一方目はメインゲスト、京都市の西部土木事務所から。西部土木事務所って、皆さんご存知でしょうか。西部土木事務所の所長さんでいらっしゃいます長尾由規夫さんです。長尾さん、よろしくお願いします。
長: こんにちは。京都市建設局 西部土木事務所 所長の長尾でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
絹: はい、よろしくお願いします。そして、もう一方、長尾さんよりはちょっと若い、だいぶ若いか(笑)。37歳の、わが公成建設のエースの一人であります、名越正揮マネージャーです。
名: 公成建設 工事部土木グループの名越正揮です。よろしくお願いいたします。
絹: 少し前になりますが、皇后杯の第35回全国女子駅伝、覚えておられますか。
雪の中で、寒い中で、選手たちが雪まみれになって、走っている姿をテレビにかじりついて見ておられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。その舞台裏で「もう、イヤ…」という緊張感のなかで、そこを支えておられた影のプロデューサー、黒子さんたちを今日お呼びしました。駅伝を成立させるための準備段階がいったいどのようなものなのかというのを、西部土木の長尾所長と、その指示を受けて、実際に動き回っていた公成建設の名越さんとのお二方に語って頂きたいと思います。
 
■第一章 皇后杯 第35回全国女子駅伝、ご覧になりましたか?
●あれは大変な日でした
絹: お2人、大変ご苦労様でした。
両名:ありがとうございます。
絹: 私は暖かいところで(申し訳ないです)、テレビで駅伝の選手が走っていかれるのを見ていただけなんですけど、まずあの駅伝の前日から、大変でした。大雪警報が出たのは、あれは何時頃でしたかね。
長: 1月14日の4時16分に京都市内は大雪警報が発令されましたね。
絹: ねえ、警報が出てしまったんですよね。さあ、駅伝をやることは決まっている。もう選手も京都に大挙して入っておられる。できないようにならないか、心配しはったんとちゃいますか(笑)。
名: 正直、中止になるかとは思ってたんですけど。
絹: 中止になる、ならないの判断は誰がするんでした?
長: 事務局の京都新聞社の方でされると聞いていました。

●皇后杯 全国女子駅伝のコース
絹: 皇后杯の事務局というのは、京都新聞社主催ですか。陸連とかそういう方も関係されて、京都市さんとしては、会場の走路を提供するというか、万全に準備するということだったんですね。
まず一般常識から教えていただけますか。駅伝とか、マラソンとかやられる時、まず皇后杯女子駅伝のスタートはどこでしたか。
長: 西京極の総合運動場でございます。
絹: 西京極から宝ヶ池でしたっけ。これ、ラジオですので、地図を見せるわけにはいきませんので、ちょっと難しいかもしれませんが、駅伝のコースをリスナーの皆さんに思い出していただくために、どんなルートだったか、ちょっとご説明いただけますでしょうか。
長: 西京極スタジアムを12時30分にスタートして、国道9号を経て、西大路五条から北上いたしまして、ずっと右京区を…。
絹: 西京極スタジアムから出て、五条通、9号を東へ行きますと。そして西大路から左に曲がって北上、ずっと駆け上がっていくわけですね。これで一番上はどの辺でした?今出川まで行って、北野天満宮を通り抜けて…。
名: 金閣寺の方までですね。
長: そして船岡山の前を通過してですから。
絹: そしたら北大路まで北上するわけですね。
名: 堀川通まで行って、それから南へ下がっていますね。
絹: 斜めに上がっているのは、紫明通ですね。
長: そして烏丸通に当たって、烏丸通を南下して丸太町まで来て。
絹: 御所の南の端を東へ。そして次、北上していくのはどこですか。
長: 丸太町東大路ですね。東大路を北上し、また今出川に当たって、次は白川通まで出ていきます。
絹: 北白川の辺を国際会館まで行くと。
皆さん、イメージしていただけましたか。しゃべるのだけでも大変です(笑)。この駅伝の走路のうち、西部土木さんが分担される範囲はどこからどこまででしたか。
長: 大きく分けて二か所ございます。一つは西大路の五条から北野中学までの区間の西大路通を、まずメインで持ちます。そこから北部土木管内を経由して、御所の南側の丸太町通に入るとまた西部土木管内になります。
絹: リスナーの皆さん、ここで土木建設関係の一般常識あるあるでございます。
この駅伝の走路の整備のために出張られたのは、今日のゲストの長尾所長率いる西部土木、それから北部土木と左京土木事務所という、それぞれ3つの土木事務所です。京都市の出先の機関でございますが、我々のインフラ、道などを整備する役割をお持ちの役所の機関ですけれども、普段ほぼ黒子という形で、人知れず活動されているチームなんです。土木事務所の3つの北部、西部、それから東部が活躍されました。長尾さんの西部土木は五条通から北野中学までのエリアと、御所の前の丸太町通の区画を、それでも3分の1以上ありますよね。
長: そうですね。それくらいございますね。
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皇后杯コース地図 公式HP引用http://www.womens-ekiden.jp/course/map.html
 
■第二章 皇后杯 全国女子駅伝―前日
●駅伝スタート32時間14分前、大雪警報発令!
絹:  さあ、それでは時系列的に追っていきましょう。
スタート32時間14分前、えらい緊張感が漂ってまいりました(笑)。女子駅伝走路の舞台裏。
大雪警報が発令されてしまったのが、本番前日の1月14日なんと朝4時16分、スタート時間の32時間14分前、土木事務所に集合がかかっているんですね。
長: そうなんです。今、京都市の建設局では大雪警報が発令された場合には、関係のある土木事務所について、所長・次長の2名が速やかに参集するという形になっています。大雪警報が発令されたら同時に参集することで、市民、区民の皆さんの安全と安心を確保していきましょうというのが、趣旨でございます。

●警報発令だからこそ、管内パトロールも重要です
絹: リスナーの皆さん、役所なら土曜日は休みやと思っているでしょ。前線の役所の人たちは関係ないんですよ。所長と次長さん、長尾所長と堀田次長が土木事務所に土曜日の7時半、集まっておられます。そして国道162号の中川トンネル付近、これは所長ご自身が道路パトロールに出かけられたんですね。
長: 今回の雪の特徴としては、朝の4時16分に大雨警報が発令されて以降、積雪が確認されるまで、かなりの時間がございましたので、私と堀田次長とで1回目の道路パトロールを、お昼の2時40分くらいから、国道の162号を確認しに行った後に、日吉美山線の方も併せて確認に行った次第でございます。
絹: 名越さん、府道日吉美山線という言い方は一般の方はピンとこないかもしれませんね。
名: そうですね。路線名で言っても、なかなか伝わらないかもしれないですね。
絹: どの辺って、イメージしたらいいですかね。
名: 清滝トンネルがあるんですが、地域的に鳥居本という言い方をしたりもしますけど、平野屋さんという鮎の有名なお店があって、そこからスタートしまして、六丁峠を通りまして、JRの保津峡駅を経由して、水尾の集落を回りまして、その先が越畑という集落があります。
絹: いわゆる愛宕山の宕陰地区と言われているあたり、水尾の里、越畑、棚田のエリア、その辺まで。これ、駅伝コースよりもよっぽど長いですよね。この日吉美山線の方が。普段から分掌範囲と言いますか、守ってくださっているエリアなんですね。それと共に162号も五条通からどの辺までですか。
長: 中川トンネル(中川集落があるんですが)のあたりまでを西部土木が持っておりまして、そこからは北部土木、京北・左京山間部土木という3つの土木事務所が、国道162号を管理させていただいています。
絹: ですから、いくら女子駅伝皇后杯の前日だからと言っても、普段から守って下さっている京都日吉美山線、国道162号線の中川まで、宕陰まで、越畑まで、放っておいたらいいというものではないと。
長: もちろんそうです。
絹: ここのところ、皆さん覚えておいてくださいね。駅伝コースよりも長いし、広いんです。ありがとうございます。

●六丁峠でブリザードを確認!!
絹: それで所長がパトロールに出かけられて、「こら、いかん!」と思われたことがあったんですよね。
長: そうなんです。パトロールは2時45分にスタートして、国道162号の中川トンネルまで大きな混乱や積雪を確認できなかったのですが、もう一方の日吉美山の方に行く時に、六丁峠(平野屋さんからあがって間もなくのところ)でブリザードと言いますか、吹雪いている状況が確認しました。この時間帯でこういう状況になっているのであれば、明日の12時30分のスタートまで大変な積雪が予想されるであろうと、その時に確信しました。
絹: リスナーの皆さん、今、長尾所長はブリザードという言葉を使われました。南極ではなく京都市内ですよ。でもそういう峠道などに行くと、本当に吹雪いている。これは駅伝に多大な影響が出るだろうという見立てを立てられた。
そして、「さあ、準備をせなあかん、こら、やばい」というので、集合をかけられたわけですか。

●公成建設チームとのタッグのもとに
長: そうですね。日ごろ、土曜日・日曜日、夜間については、緊急業者の公成建設さんにお世話になっているんです。そこでチーフの名越さんと、この日の夜から次の日の朝までの対応について、綿密に打ち合わせがしたかったので、休日ではありましたが、事務所の方にお越しいただいて、対応を相談しました。もちろん金曜日までにも、「土曜日・日曜日の対応はこういう風にしようね」という調整はしていましたが、やはり緊迫度合いが、この段階でずいぶん違いましたので。
絹: 「これはちょっと冗談やないぞ」と、普段の体制でいけないかもしれないという危機感をお感じになったと。ですから名越さん、「西部土木に出ておいで」と呼び出しがかかったわけですね。
名: そうですね。
絹: 西部土木って、場所どこやったっけ。
名: 四条の天神川の南西あたりですね。
絹: これは一般の市民の方にはなじみの非常にない場所ですけど、我々には、あるいは名越マネージャーなんかは、よく通っている場所です。わが社、公成建設のように、土木事務所に緊急・休日時に対応する年間契約を結んでいる地元企業が複数あるんですね。そういう方が京都市さんの土木チームとタッグチームを組んで、いざという時には出られるように、普段から段取り打ち合わせを続けております。
さあ、普段と違う打ち合わせが始まりました。

●なんとしても雪を残さず、走ってもらおう!
長: そうですね。何より危機感を持っていたのは、日ごろの162号と日吉美山の体制だけでも、今回の大雪では大変だったところに、やはり皇后杯、35回の女子駅伝を安全にかつ円滑に走路を整備していくという大きな使命がございましたので。
絹: そうですよね。普段のプラスアルファで、しかもアスリートが走るわけだから、自動車が走れるような整備よりももっと雪をきちっと除けておかなければならないということですよね。
長: 本当にその通りで、車が走るわけではございませんので、それもアスリートの方が、それぞれの都道府県の期待を背負って走られるわけですから、安全には万全を期す必要がございます。
絹: スタッドレスタイヤなら少々雪がかぶっていても、走りますよね。普通の陸上のランニングシューズにはスパイクなんかついてないですよね。カーブなんか、結構なスピードで曲がり切らずにステンと転んでケガをされたらどうしようかって思われました?
長: もうそれが一番心配で、名越さんとも雪を残さないような形で、アスリートの方々が安心して走ってもらえるような走路をつくろうなというのは、打ち合わせで言っていたんです。

●ひたすら融雪剤を撒きつづけて
絹:  で、まず何をされたんですか。融雪剤というのを、撒かれたんですか。それも普段よりたくさん撒かなければならなかった?
名: そうですね。双ヶ岡の高架の下に山ほどある塩カルが全てなくなった状態でしたね。次の日には。
絹: 双ヶ岡の高架橋の下にそういうストックヤードがあるんですか。
名: 塩カルだけが置いてあるんです。
絹: 塩カルと言うと、正式には融雪剤。塩化カルシウムですね。白い色をした…。
名: 丸い粒状のものです。
絹: 誤解を恐れずに言うと、コーンフレークの白いやつ(笑)。ちょっと違うか。
名: その丸いやつという感じですか。
長: ちょっと違うかもしれませんが、粒状のものです。
絹: それがいつも何袋、そのストックヤードにあるんですか。
名: 600~700袋くらいは常時置いていまして。
絹: それ全部、撒き切った?
名: そうですね。数えているだけでも500は軽く撒いていますね。
絹: 融雪剤は手で撒くんですか?機械撒きですか?
長: 普段はマンパワーで、手で、スコップで撒いていたんですが。
絹: 我々の先輩方は、あれを撒くと腕がパンパンになるという逸話はよく聞きましたけど。
名: 顔もべとべとになりますので。今回はちょっとたまたま散布機をリースすることができましたので、それを使用して散布をさせてもらいました。
絹: 融雪剤の塩化カルシウムはよく効くものですか?
名: そうですね。ただずっと降り積もって来る雪に対しては、なかなかちょっと威力がないのかなと。アイスバーンになっている状態で撒くと、じわっと溶けていきますので。そういうのには効果的かなと。

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塩化カルシウム散布機械

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塩化カルシウム散布中の様子

 
■第三章 皇后杯 全国女子駅伝―当日!
●全国女子駅伝の開催を確認―午前7:10
絹: 双ヶ岡の高架橋のストックヤードの600~700袋を全部撒ききるくらいまで。さあ、撒ききれました。当日、1月15日の7時10分と、ここに記載がありますけれども、駅伝のスタートまで5時間半前、駅伝開催が確認と。予定通り12時半にやるぞという連絡が事務局からやってきました。またぞろここで緊迫感がやってくるという、緊迫の5時間前。走路パトロールに長尾所長以下は走られます。どうでした?この時は。
長: この時は3回目のパトロールに出ているわけですけど、スタート前5時間30分で、西大路通に積雪がまだ確認できていると。これについては、我々所長、次長は相当危機感を感じました。
絹: 間に合うんやろかと。
その時名越さんは?
名: まださらに雪も降っていましたので、ちょっとどうなるのかなというのはありましたね。

●融雪剤の散布が効いてきた、これはいける! ―午前10:20
絹: 所長がなんとかこれでいけるんとちゃうかと思いだされたのは、何時くらいですか?
長: 10時20分くらいですね。開始の2時間ちょい前に3回目の融雪剤の散布が効いてきて、ようやく走路に雪がなくなってきて、アスファルトの状態が確認できてきた頃です。
絹: アスファルトの黒い色が出てきたと。
長: というのが確認できてきた時に、私はうれしくて市役所の本部の方に、西部管内はいけるぞという報告をした記憶があります。
絹: それが2時間前。ただしそこでは終わらなかったんですね。まだもっと安全を期そうと、まださらに直前まで作業を続けられたと。

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西大路五条交差点付近


●さらなる安全のため、路肩の雪も除雪
長: そうなんです。走路として走って頂けるのは、ここで確信をしたんですが、より安全にアスリートの方々が雪でスリップしないようにと思ったので、路肩と言いまして、道路の端っこに残っている雪がずいぶんございまいした。融雪剤というのは、車道に撒くイメージがあるので、ここが今回一番苦労したところで、路肩の雪というのは、人海戦術しかないんです。車両はなかなかそこには入れないので、人が1つずつ取っていく、もしくはホイルローダーと言いまして、西部土木が持っているショベルカーですけれども、それをそこまで移送させて、除雪していくという選択を取りました。
⑱(修正版)
       ホイルローダーでの除雪作業の様子
絹: ホイルローダー直営班出動という命令をされました。役所の方も総出で、そして我々も名越チーム以下、出てくれていました。
駅伝のスタートが12時半、北行き路肩の除雪を完了して、それから南行き路肩の除雪を開始が、なんと30分前。そしてすべての除雪が完了して、撤収という時には、もう駅伝が始まってました(笑)。

●裏方気質というもの
絹: 皆さん、象徴的なエピソードを1つ、ご紹介したいんですが、名越の上司にあたる藪田土木部長が心配してテレビ放映を見ておりました。ところが彼は駅伝の選手の走られる姿は一切見ないで、足元だけじーっと見ていたと(笑)。「ああ、雪をきれいに除けてる」とそれだけ。ことほど左様に舞台裏を支える人たちというのは、そういう性質を持っておりまして、京都市の方々ももう大変ご苦労されて、土木事務所に出入りする我々、地元の建設関連企業も、名越さん睡眠時間削っているよね。
名: そうですね(笑)。
絹: 皆さん、今日はちょっと視点を変えまして、華やかな女子駅伝、もちろん駅伝の選手の方々、雪まみれになって、あれは帽子を被らないとやってられないくらい大変な雪の中を走られました。しかも京都チームが優勝!ねえ、けが人なかったですよね。何よりでしたね。
長: ただ今回、我々西部土木の所員、直営班に集合をかけた時に、エピソードが1つございまして、なかなかみんなが寝られない状態だったと。家にいても、いつ所長から電話がかかってくるか、ラインで参集を指示されるかで、もう4時、5時から起きて待っていたという、大変うれしい事を聞かされて、よかったなと思っています。
絹: リスナーの皆さん、実は物事には全てスポットライトの向こう側には、こういう準備を、段取りをする人たちがいる。特に行政の方々は当たり前のように、こういうことをなさいます。それが一般市民の方々にはなかなか見えづらい。そういう行政の方々と一緒に動くのが我々、地元の建設関連の会社であります。そういう者たちの頑張っている姿が、もし目に留まりましたら、「ご苦労さん」と一声かけてやっていただけるとありがたいと思います。
長: もう西部土木の職員は全員喜んで「ありがとうございます。」と言わせてもらいます。
絹: ということで、今日は女子駅伝の舞台裏、陰で支えてくださるプロデューサーたちのエピソードをご紹介させていただきました。
さあ、また京都で色んな行事があります。大文字駅伝、ございます。その時も裏方さんはがんばります。ご苦労様です。
長: 京都マラソンもございます。
絹: ということで、今日はしめさせていただきます。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、および我らが京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。ありがとうございました。
両名: ありがとうございました。
投稿日:2017/02/28

第126回 ・子ども食堂はマジックワード~出会いを生み出す子ども食堂

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成29年1月放送分>

杉: 大場 孝弘氏(公益財団法人 京都市ユースサービス協会
京都市山科青少年活動センター 所長)
絹: 絹川 雅則 (公成建設株式会社)

 

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大場氏
京都市山科青少年活動センターホームページ http://ys-kyoto.org/yamashina/
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲストです。お一方、大変熱い方で、先日、人を介してお会いした時に、意気投合してしまった方です。公益財団法人京都市ユースサービス協会 京都市山科青少年活動センター(愛称:やませい)の所長をなさっています大場孝弘さんです。よろしくお願いします。
大: よろしくお願いします。
絹: そして本日のテーマ、タイトルですが、「子ども食堂はマジックワード~出会いを生み出す子ども食堂(やませいの挑戦あるいは悪だくみ)」(笑)と題して、本日の番組を進めさせていただきます。

■第一章 子ども食堂とは
●山科青少年活動センターって、何をするところ?
絹: 大場さん、子ども食堂、タイトルにもございましたが、マジックワードだそうですね。
大: たぶん今年に入ってから、『子ども食堂』という言葉を聞かれる機会が、すごく増えていると思うんです。それだけではなくて、「『子ども食堂』のことを考えましょう」というお声を掛けると、毎月毎月色んな方からお問い合わせを受けます。私どもで宣伝をしたりするんですが、これだけ色んな方から次から次へと多種多様な方がお見えになるというのは、ちょっと珍しい事だなと思っています。そういう意味でも突然のブームのように、今『子ども食堂』が注目されていると感じています。
絹: そもそも『子ども食堂』とは、というところに入る前に『山科青少年活動センター』って、「オレ行ったことねえよ」という人に、短くどんなことをなさっているところか、教えていただけますでしょうか。
大: 名前が長いので、いつもは、特に利用されている青少年の方は『やませい』とおっしゃるのですが、私どもの施設は、京都市が施設を建てまして、今は13歳、つまり中学生年代から30歳までの方を主な対象とした青少年の余暇施設としてあります。それ以外にも一般の方がお使いになったり、色んな事をされますが…。
絹: 13歳から30歳と、限られているでしょ。だから堅苦しくて、閑古鳥が鳴いていて、ひょっとしたら施設としてはあくびをしている所かなという、私の勝手な思い込みがあったんですけど、この間おじゃましたら、ぎょうさん人がいたはりましたね。
大: そうですね。延べ数で言いますと、年間で6万人くらいの方がご利用になりますね。こういう風な活動センターは、京都市内に7か所あるのですが、山科は特にご利用の方の9割くらいが、山科醍醐地域の方というかなり特徴的な施設でもあります。
絹: 地域性が強いと。しかも外環状線、地下鉄東野駅から歩いて5分くらいですか。
大: 10分弱ですね。西友のちょっと西の方になるというふうに見ていただいた方がわかりやすいかもしれません。
絹: 渋谷街道よりもちょっと南ですね。そこで色んな方が6万人も集われる『やませい』、『山科青少年活動センター』ですけれども、『子ども食堂』をなにやら、作戦を立てて動かしていらっしゃるという噂を聞きつけて、私は取材に参りました。
『やませい』で起こっております『子ども食堂』について、リスナーの方に教えていただけないでしょうか。

●子ども食堂のそもそも
大: 『子ども食堂』というのは、2年くらい前から全国に広がり始めていますが、もともと東京で始められました。その名付け親の方は、「子どもが一人でも来られる食堂」、つまり子どものための食堂というわけではなくて、そこには色んな世代の方がいらっしゃるなかで、お子さんがいらっしゃってもいいけれども、という形で始まっているのが『子ども食堂』なんです。
一方で、私たちの施設では、もともと中学生、高校生、大学生年代の若い方たちが結構ご利用になります。そういう皆さんと色々お話をしていると、食事など、色んなところで結構困った事を抱えていらっしゃるお子さんがいっぱいいらっしゃって、何か応援できることがないかなと考えていたところでした。特に食というのは大事な事なので、それをできるようにということで、中でカフェみたいな形で、晩御飯にはならないけれども、ちょっとおなかの足しにはなるようなことをやりましょうかということでやってきた経過があります。
絹: 『やませい』は良い設備をお持ちですね。イメージしていただきやすいのは、昔、小学校や中学校で家庭科の授業をやった調理実習室、あんな感じの良いのをお持ちなんですね。
大: もともとは勤労青少年のための余暇施設という形で始まっていたので、その時に講習会として、料理教室を結構頻繁にやっていた関係で、あの施設が残っていました。そのままだとちょっと広すぎるということもあって、その一部をカフェのカウンターに改装して、カフェとしても使えるようにさせていただいています。
絹: 本当に興味をひかれた方は、ぜひ一度覗きに行っていただければと思います。居心地のいい場所、そして活気のある空気、テニスコートでは若い人たちがテニスに興じ、勉強会なども提供されているという空間です。そして最近私の周りでも『子ども食堂』というキーワードを時々聞きます。
例えばうちの会社は山科に独身寮があるんですけど、そこに最近着任してくれた寮監さんが面白い方で、服部さんと言いますが、なんでも大場所長のところにちょくちょく出入りしているそうですね。

●寮監さんと子ども食堂
大: はい。まちの中に一枚貼ったポスターをご覧になって、「ぜひ私も何かやってみたい」と飛び込んで来られて、初めは本当にびっくりしたんです。そこで何か自分で開きたいという方はよく来られるのですが、「こういう場所があるので、一緒に何かできないか」というお声を掛けていただいて、それがとてもびっくりしましたね。
絹: その一枚貼ってあったポスターというのは、どんなポスターですか?
大: 「山科で子ども食堂をやりますが、一緒に何かやりませんか」というお声掛けのポスターでした。
絹: 「作戦会議に行きませんか」のあのポスターですか?
大: そうです。
絹: うちの独身寮の寮監さんは、そういう非常に頭の柔らかい人で、「独身寮だから社員の若い子しか使っちゃいけないという常識を少し緩めてみませんか」と思っているようです。もちろん料理もうまいんですね。
実はここに『やませい』さんのホームページからダウンロードしてきたんですけど、
子ども食堂に関心のあるみなさんと作る食堂
ひとあし早いクリスマス食堂
12月19日月曜日、夜の6時から8時まで
料金は300円。
『やませい』でやります!来ませんかというものですが、これもちょっとお話しいただけませんか。
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大: 実はこのメニューは服部さんのご提案で、実際にチキンをうまく料理していただきました。その時、色んな方がお手伝いに来られるんですけど、レシピを公開されて、たぶんその方たちもおうちに帰ってクリスマスのチキンを作られたんじゃないかと思うんですけど(笑)。
今回はセンターをご利用になっている中高生の子達ががっつりと食べられるようにしたいということで、チキンをメインのプレートにして、それ以外にスープなど、色んなものも入れながら提供させてもらっているという形です。

●子ども食堂に寄せる思い
絹: リスナーの皆さん、『子ども食堂』って、何か堅苦しいイメージを持たれている方がいらっしゃるかもしれません。子どもの貧困という、ある種重たい話題、課題、キーワードではありますけれども、大場所長はそういう事を感じさせずに、どうやら『子ども食堂』へのハードルを下げようとしていらっしゃるようにも思えてまいりました。
大: 子どもの貧困という問題と一緒に『子ども食堂』が語られていて、そういう事に特化しながらやっておられる所もあるんですが、そういう所は無料で食事が提供される所が多いんです。でも私たちの所に来ているお子さんたちを見ていて感じるのですが、「タダで食べ物をあげるからおいで」と言われて、そこに行くのって、結構自分の中で躊躇があるだろうな、恥ずかしかったり、イヤだろうなと思えるところがある。それだったら色んな事をやりながら、ひょっとしたら安い料金だとか、何かその中でお手伝いをして、一緒に入れる方がいいのかなと思ったわけです。できれば簡単にいろんな人が入れる仕組みの中に、困った子もいてもいいなという感じの広がり方が、実は一番うれしいなと思っています。

●子ども食堂ネットワークをつくりたい
絹: 『子ども食堂』だけじゃなくていいよと。
それと『やませい』の大場所長の構想の中には、山科子ども食堂ネットワークというか、まず10か所つくれればいいなと。もう実例がいくつか生まれているそうですね。
大: どこか一か所が頑張って子どものために10日間食堂を開こうとすると、ものすごく大変なんです。それよりはちょっとそういう気持ちをお持ちの方同士が集まって、月に一回だけ、とにかく無理のない範囲でやりましょうという場所が、もし区内に10か所増えたら、それで「月に10回、子ども食堂がありますね」という形になる。そうなった方が、色んな人が関われるし、入りやすいし、皆さんの負担も少なくて、色んな人が関われる、そんな場所が広がった方がいいかなと思っています。そういうやってみたい方に私どもの方に来ていただいて、ちょっと経験を積んでいただいて、実験もしてもらって、輪を広げていただくみたいなことを、今願っています。
絹: その中の一人が、うちの独身寮の寮監さんの服部さんだったと。で、実は大場所長にアポを取ってもらうのに、服部さんに電話してもらったんですよね。
大: そうなんです(笑)。

●今まで会えなかった色んな人がやってくる!
絹: さあ、ではタイトルに戻ります。「子ども食堂はマジックワード~出会いを生み出す子ども食堂」。大場さんはこのように語られました。
『子ども食堂』ということを標榜すると、今まで会えなかった色んな人が『やませい』に寄って来られるんですと。
大: 本当にびっくりするんですけど、たぶんこれまであまり出会えないような方、それこそ服部さんもある意味ではそういう方ですけれども、「施設を提供しますよ」などと言ってこられる方はほどんど今まで出会ったことがないですし。
絹: 建設会社の独身寮って、昼間空いているので、食堂はあるし、厨房は当然ありますよと。食材もなんとかちょっとぐらいは余っている物がありますし。と言うのは、うちの会社の職員で家庭菜園をやっているやつもいるし、実家の宮津に帰れば、農薬のかかってない大根などの野菜や、「チヌ釣ってきました」と寮へ持って帰って来る人もいるし。ということを、服部さんはどうも思っていたみたいですね。
大: 実際に、山科の中で、例えば家庭菜園をされていて、今まで配っていた食材が余っているからというので、「使いませんか」とお声を掛けていただいたり、この前は肉屋さんが来られたり、つい最近は趣味で釣りをしている人が「魚がいっぱい釣れるから、それを使わへんか」と相談に来られたり、本当にいろんな方がどんどんお越しになる。
絹: そしたら魚の捌き、三枚おろし教室なんてのも出来るかもしれませんね。
大: そうすると「なくて困るな」と言うと、「私、知ってるよ。そういう人。」とか、「うちの誰かに頼むわ」と言って飛んできてくれたりと、色んな事がどんどんどんどん広がっていく。ちょっとこの広がり方は本当に不思議だなと思うくらいで。たぶん子どもというのと、食堂というのがくっついているというのは、すごいネーミングだなと、私は思います。
絹: だから大場さんはマジックワードだとおっしゃるんですね。
大: はい。この1年、半年くらいで、本当にたくさんの方とお出会いさせていただいたし、それだけではなく「自分も開きたい」とお声を掛けていただいたり、材料を提供したいということとか、色んな方がどんどんお見えになります。

●子ども食堂と地域の居場所
絹: 私が『子ども食堂』というキーワードに出会う前は、『まちの縁側』あるいは『地域の居場所』、『サードプレイス』という言葉を追いかけていた時期がありまして、コミュニティカフェだとか、コミュニティ食堂など、人には家庭と職場と、男でしたら飲み屋以外に羽を休める場所とか草鞋を脱ぐ場所が必要だという思いがあったんです。実は探してみたら、日本にはいっぱいそういう場所をつくっていらっしゃる方が『住み開き』と称して、それこそ週に1日だけは自分の居間を地域に開けましょうとやってらっしゃる。
「お茶とお漬物くらいしかないけれども、よければどなたさまも」とやってらっしゃるご婦人がおられたり、コミュニティガーデンとして、「庭をいい具合にできたから、見に来て!興が乗ったら、そこでバーベキューでもしようか」というようなおじいさんがおられたり…。そういう人たちの存在って、すごくありがたいなあと思って、訪ね歩いていた時期があります。
今回、大場所長の山科エリアでの子ども食堂のネットワーク構想、それはもう確実に居場所ですね。
大: そうですね。もともと青少年活動センターというのは、2000年くらいから若者の居場所を標榜し、どこにも所属しにくい、人との関わりが難しい困っている方たちの助けになればとやってきたところがあるので、どこかそこに繋がっているところはあるのかなと思いますね。

■第二章 地域通貨『べる』のこと
●誰かの役に立って、得る通貨
 絹: さあ、その大場構想、子ども食堂ネットワークの中に、他とは違うちょっとユニークなものを見つけました。山科地域だけで通用する地域通貨『べる』というものについて、ちょっとご説明をお願いします。
大: これは「食べる」とか「遊べる」とかの「べる」でして、『るるぶ』に近いのかもしれませんが(笑)、そんな形で前のスタッフがつけたんです。
元々はセンターの中で若い人たちが誰かの役に立ってお礼としてもらうもの、そのクーポンを『べる』という形にしていて、そのクーポンをできれば地域の中で色んな場所で使えるようになるといいなという思いで始めているものです。
絹: 地域通貨というものを、ご存知のない方のために、念のために申し上げますと、『子ども銀行券』をイメージしてもらうと(誤解を生むかもしれませんが)、わかりやすいかもしれません。『肩たたき券』や『お手伝い券』のようなもので、『やませい』に出入りする元気な中高生が地域のお手伝いをする。例えば「蛍光灯を替えた」とか「庭の草引きをやった」としたら、例えば50べる、100べるとかいうのを、「ありがとう。これ、お金じゃないけどお礼だよ」と裏書きして、地域の高齢者とか大人からその子がもらう。それを持って『やませい』に帰って来ると、「それでカレーでも食うか」、あるいは「子ども食堂でご飯食べる?」あるいは「エスプレッソコーヒー飲んでいけよ」という仕組みなんですよね。
 大:  はい。ですから先ほど『子ども食堂』の話をした時にしていましたが、タダの所へ行くというのは、結構敷居が高いと思います。自分が誰かの役に立って、喜んでもらって、そこで得たもので自分で行くということがある方が、『子ども食堂』としても楽しいし、その子にとっても自信になるかな。それがうまくくっつくと、結構これは面白いんじゃないかなというふうに、今思っているんですけどね。

●困りごとを抱えた子が相談できる地域にしたい
 絹:  これはすごくユニークで、大事な事を思いつかれたな、すごい発想だなと感心して聞いたんですけど、ちょっと重たい話になりますが、やはり青少年を多くそばで見ていらっしゃった大場さんですから、色んな困りごとを抱えた子たちもいるよと。
この間お会いした時に、「ぎりぎり大変な状態にならないとSOSを出さない子たちがいる。だから周りの大人に困ったことがあったら相談できるような、そういう地域であるにはどうしたらいいか、その発想から『べる』に行きついた」とおっしゃっていましたね。
 大:  たぶんそれが子ども食堂ともつながっているんですが、どうしてもそういうしんどいお子さんたちは、周りに助けてくれる大人がいないという、しんどい面があるんです。人との関係がやはり薄い。そういう意味では、「親も含めて色んな大人が信じられない」と思っていることがいっぱいあって、そういう傷ついた体験をいっぱい持っているので、そうじゃない大人や先輩がいるよという体験をしてもらうには、出会ってもらう必要があるんです。
それには子ども食堂もいいですし、『べる』で何かやって、「ありがとう」と言ってもらって、何かを得る。それを持っていったら「ご苦労さんやね」と言ってもらえるような経験、つまり「自分を助けてくれる大人がいるんや」という経験を小さい時に積んでおいてもらったら、ちょっと小さなことで困った時に、「ちょっと困っているんやけど、相談に乗ってくれる」と行けるのではないか。それがたくさん重なっていくと、本当にとことん困る前に、早目に行って誰かに相談して、全部は解決しないけれども、少しは和らいだり、改善の道が見つかるみたいなことになるといいなと思っているんです。

●地域の中に、もっと人間浴できる場所をつくりましょう
 絹:  まさに精神的な耐性と言いますか、「柳に雪折れなし」みたいな腰の強い心根を、若いうちに育てられないか思ってらっしゃる。この仕組みを使って、子どもたちを地域の大人たちが見守る仕組みがつくれないかということを、発想されたようです。
これは『やませい』ワード、大場さんの造語だと思いますが、すごい言葉をこの間教えていただきましたね。
 大:  これは元々近くで一緒に活動されている人からお聞きした言葉なんです。「地域の中に、もっと人間浴できる場所をつくりましょう」というものです。森林浴よりも、今必要なのは人間浴かもしれないと。本当にいろんな関係の中に、その人がいるということが、どれだけ大切で幸せなことかということを、今ほど必要だと思うことはないので。
 絹:  海水浴ならぬ、森林浴ならぬ、人間を浴びると書いて、人間浴。いいですねえ。直接いきなり深い話はしないけれども、なんか顔を見て、「あのおっちゃんは料理得意や」と。「あのおっちゃんは釣りが得意や」と。「あのおばちゃんは家庭菜園やったはる」、「あのお姉さんは保母さんOB?」とかって、色んなタレントが周りにいて、それぞれが何かあったら、「おう、声を掛けろや」という、こっちを向いてくれている人が『やませい』の近所に…。「あれ、山科エリアでうろちょろしてたら、また会ったね」と道で挨拶できる。それだけでも違いますね。
 大:  本当にそういう人たちをたくさん知っていること、それこそお互いの名前を知っているとか、名前で呼ばれるという関係の中に、もうちょっといた方がいいかなと、今すごく思うところです。

●サポートする側も支えながら、支えられ…
絹: 大学生の話も教えていただきましたけれども、結構今の大学生、学生ローンを抱えちゃっているよと。
大: 「奨学金という名の学生ローン」と言われていますが…。
絹: 例えば立命館大学が100円食堂をやったりしていますが、そういう子たちと学生さんたちとは、全く通奏低音は一緒だなと。『やませい』のサポートスタッフ側で、大学生がいてくれたりとか、地域の方たちの手となったり足となったり、動いてくれたらすごく素敵ですよね。
大: たぶんそうやってサービスをする側でもあるし、子どもたちに対応しながら、子どもたちと遊びながら遊んでもらえるというか、そのこと自身もその人自身の役立ち感を持てるし、自信にもつながると思うので、本当にお互いさまでお互いを支える部分が結構あるなと思っています。

●コミュニティカフェで、大学で、注目される子ども食堂
絹: 大場さんに教えていただいた、今既に動き出している『子ども食堂』の例、例えば『おむすびの会』、それから『笑人(わろうど)カフェどんげね?』というのが、実際に動いていらっしゃったりして、徐々にこの大場構想は現実味を帯びてきております。
そしてこのチョビット推進室のゲストにも出てくださった『京都市未来まちづくり100人委員会』という、勝手連みたいな、「京都のためにほっといても汗をかくぜぇ」みたいな、変な人たちの集まりだったんですが、そういうOBたちが『山科GOGOカフェ』だとか、『左京朝カフェ』だとか、そういう区役所をキーステーションにして、色んな交流をしている場があります。そんな所にも大場さんは顔を出しているとおっしゃっていましたね。
大: ええ、そこで時々「子ども食堂、子ども食堂」と言っているので(笑)、結構そこで知って頂いて、後でご連絡いただく方もいらっしゃいます。
絹: 橘大学の准教授の小辻さんという方が理事長を務めておられるNPO法人があるのですが、そのNPO法人の主たる研究テーマは、京都にある居場所を調べ上げて、マッピングデータをつくるというもので、小辻さんはそれぞれインタビューして、行きたい人が行けるような、そういう活動をしてらっしゃる方です。実はその小辻准教授の結婚披露宴で、彼の上司にあたる教授たちが、僕の隣のテーブルに座られたんです。そこで「絹川さん、こんなん知ってる?」とゴソゴソと出してこられたフライヤーが、オレンジ色の子ども食堂の作戦会議みたいなやつだったんです。それをうちの寮監さんである服部さんに渡して、それがきっかけですので、橘大学も色々頑張っているみたいですね。
大: 本当に近い所でもあるので、今でも色んな形で、大学生の方も含めて関わりを持たせていただいているので、是非ともこれからも色んな形でお願いしたいですし、もうちょっとあの人たちが加わってやれるところがありそうな気がします。

●ネットワークをもっともっと広げたい
絹: はい、では年初の抱負と言いますか、平成29年は『やませい』の大場所長は『子ども食堂』がどんなふうになったらいいと思っておられますか?
大: 本当に山科の中に『子ども食堂』が色んな形でできること、そのために「私、やってみたい」とか、「手伝いたい」という方がいらしたら、一度お声を掛けていただけると有難いと思います。
絹: はい、『やませい』あるいは『子ども食堂』・山科という検索ワードで、必ず引っかかります。愛称『やませい』、京都市山科青少年活動センター所長の大場さんをお招きして、今日の特集「子ども食堂はマジックワード」と題してお送りいたしました。皆さま、ぜひ覗いていただけませんか。あるいはサポーターで何か差し入れていただけたらうれしいです。
大: ありがとうございます。お待ちしております。
絹: それではそろそろ終わりです。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。今日は大場さん、ありがとうございました。
大: ありがとうございました。
投稿日:2017/02/15

第125回 ・空き家に悩むすべての人へ ~地域住民たちが自ら作ったガイドブック「空き家の手帖」ってご存知ですか?~

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成28年12月17日放送>

菅: 菅谷 幸弘氏(六原自治連合会事務局長 六原まちづくり委員会委員長)
寺: 寺川 徹氏 (寺川徹建築研究所 六原まちづくり委員会)
杉: 杉崎 和久氏(法政大学教授)
絹: 絹川 雅則 (公成建設株式会社)
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打合せ風景
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 左から杉崎氏、寺川氏、菅谷氏
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲストはお三方お呼びしております。まずはほぼ常連さんに近い法政大学の杉崎教授、この方は我らがまちセン、京都市景観まちづくりセンターの職員の時代に私と知り合いました。そして五条西洞院のわが社、公成建設のご近所さんでもあらせられます。よろしくお願いします。
杉: はい。よろしくお願いします。
絹: そしてお二方目、六原自治連合会の傘下に六原まちづくり委員会という、すごいメンツの委員会がありますけれども、そこの委員長さんをなさっています。菅谷幸弘さんです。
菅: はい、菅谷でございます。よろしくお願いします。
絹: よろしくお願いします。そしてその六原まちづくり委員会の委員さんで、ご本業は一級建築士さん、建築家です。寺川徹建築研究所さん、宇治で事務所を開いておられます。寺川徹さんです。
寺: 寺川です。どうぞよろしくお願いいたします。
絹: 今日の番組タイトルは、「空き家に悩むすべての人へ~地域住民たちが自ら作ったガイドブック『空き家の手帖』って、ご存知ですか?」と題してお送りします。この素晴らしいブックレットのご紹介と、その後についてインタビューしていきたいと思います。
いつものように、進行者が手を抜くために、他己紹介をさせていただきます。杉崎さん、菅谷委員長はどんな方ですか。短く述べよ。
杉: 何ていうか、「もう、どこまで先が見えているんだ」と思えるような、そういう視点でまちづくりに関わっていらっしゃいます。まちづくりというと、つい身近な事を考えがちですけど、先の先を常に見通して活動されているという印象があります。
絹: はい。それでは今度は菅谷委員長、寺川徹さんはどんな方ですか。
菅: はい、今は右腕以上の存在で、まちづくり委員会の中ではなくてはならない、そういう方です。
絹: ありがとうございます。それでは寺川さん、杉崎さんって、どんな人ですか。僕はよく知ってますけど(笑)。短くお願いします。
寺: まちづくりの事を上から目線ではなくて、草の根レベルで、ものすごく真摯に考えて活動される素敵な大学教授さんです。
絹: いやあ、いい切り口ですねえ。上から目線ではない先生。さすがです。はい、ありがとうございました。今日はこういうお三方でお送りいたします。しばらくお付き合いください。

■第一章 『空き家の手帖』
  ●そもそも『空き家の手帖』って、なんですか?
絹: なんでこういうものができたのか。すごい事だと思うのですが、ひょっとしたらまだご存知ないリスナーの方がおられると思いますので『空き家の手帖』って何ですか?というあたりから解説をしていただけませんでしょうか。
寺: 六原まちづくり委員会で、様々な空き家の対策を取ろうと委員会をやっているなかで、空き家の所有者の方がよく悩んでおられることに対する対処策をまとめました。
そもそもは、会議をしていて空き家対策の会議のメンバーに専門家が多くて、たくさんの知識は持っているわけです。そこで例えば空き家を貸したいけれども、貸したら返って来ないと思っている人が多いので、そういう誤解を解きたいということと、「空き家にしていても誰にも迷惑はかからないでしょ」という意見も空き家の所有者の方は持たれているんですが、本当は空き家を放置しておくことによって、そこに住める人を押し出しているような感じにもなって、人口減にはからずも加担しているというところもあるんです。そういう空き家を「取りあえず置いておくのではなくて、人に貸すなどして、人口減対策にも協力してください」ということを広めたいという思いで、作った冊子になります。
絹: リスナーの方々に想像力を働かせていただくために、ちょっとだけこの冊子の中から言葉を紹介させていただきます。ラジオは見えませんからね。行きますよ!
“空き家の放置は危険です。”
最初に崩れた、結構傷んだ空き家の衝撃的な写真とともにこのキーワードが踊っています。
“気が付かないうちに柱や天井が腐ります。”
「わあ、天井が抜けているわ」という写真があります。
“手遅れになる前に活用しましょう。”
これが扉です。それからしばらく続いて、
“実は空き家は色んな使い方ができます。”
「あんまりお金をかけてないけど、ピカピカやないけど、居心地よさそうに改修したはるわ」という写真が、事例が続きます。
そして色々活用のノウハウ、それから「片付けが、空き家防止の第一歩」という第5章が続きます。実はこれ、学芸出版社から出る前に、私家版として出ていて、自費出版ですか?
菅: そうです。自費出版で3,000部を地域に配布させていただきました。皆さんに空き家がどういうものか、活用するにはどういう方法があるか、困った時に対処できる内容がその中に書かれているという冊子を作って、お配りしたわけです。
絹: 私家版のうちの1冊が、わが手元に来ていました。今回、ご案内いただいて、5章が増えているのに気が付いていませんでしたけど、いい感じにまた新しい本になりました。リスナーの皆さん、これ値打ちありますよ。
すみません、菅谷さん、補足をお願いします。
菅: 空き家をどれだけ流通させるかという取組みをずっとやっていたんですが、自走型で動き出してからは空き家がなかなか動かない壁にぶち当たっていまして、でも地域には将来空き家になる家(予備軍という位置づけにしているんですが)が多数見受けられる。それならば今現在の間に、空き家にならないために、予防的な活用などを住んでいる方にお示しすることで、空き家になることを少しでも減らしていけるんじゃないかということで、その本を活用していただけたら有難いと思っています。
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■第二章 私たちの活動のこと―自走式まちづくり
  ●片付けと空き家問題
絹: この『空き家の手帖』の巻末の方を見せていただきますと、六原まちづくり委員会さんが2014年以降にどんな活動をしていたのかという活動記録があります。これ全部読むと大変ですけれども、でもすごく地道にかっちりと取り組んでおられます。
一例を挙げさせていただきますと、学区内における空き家啓発活動と称しまして、住民向けの空き家問題セミナーを開催されております。愛称が『住まいの応援談』(フレーフレーの応援団じゃなくて、語り合うの「談」)で、2014年の3月、第1部は六原学区の防災まちづくりに関する大学院生の発表、第2部は『空き家の手帖』完成記念発表披露会、第3部は京都市の空き家条例の解説、それからタタタっと飛んで、これは味があるなと思ったのは、2016年の2月、第1部は和尚さんによる仏壇のたたみ方セミナー(笑)、一瞬笑いますけど、実は大変なことで、ここで見て僕は感心しました。やっぱり空き家の当主はこの辺を悩んではるんですよね。
菅: 当初、私たちも片付けというところを見落としていたんですけど、動かない理由にやはり物が片づけられないから、空き家を流通できないという問題が色んな所で見受けられて、やはり片づけをしていかないと流通に繋がらない。「その中に仏壇があるから、どうしようもできない」という話などもお聞きするなかで、じゃあ、仏壇のたたみ方みたいなものをと、地域におられるお寺の副住職にお願いして「仏壇をたたむというのはどういうことなのか」という話をしてもらって、地域の人に理解してもらおうと考えたわけです。
絹: 今、菅谷委員長が語られたのは、84ページ、「仏壇があるので家を貸したり売ったりできません。」という部分です。
“他の物を全部片づけたとして、仏壇どうするの。さすがに処分できひんやろ。”
“こっちの家に持ってきたらどう?”
というお母ちゃんの提案に対して、
“あんなでかい仏壇、この小っちゃい家のどこに置くつもりや”と。
そこで、和尚さんが、
“仏壇はね、お寺に預ける事も可能です。ご相談ください。”と。
むちゃくちゃ寄り添ってますよね。これは感心しました。
東山区は空き家率が確か高い…。

●「向こう三軒両隣」のうちの一軒以上は空き家という現実
菅: 22%くらいです。
絹: 京都女子大の井上えり子先生が、そういう調査を綿密にされていたのはいつ頃でしたかね。杉崎さん。国交省の何かでしたかね。
杉: 僕はその時京都にいないんです。ごめんなさい。
菅: 平成18年くらいからですね。その取り組みがあって、19年20年くらいに六原学区の中をくまなく調査されて、そのデータを地域の人にお伝えするというワークショップをしたりしました。
絹: たぶん、僕その頃のどれかの回で、東山区役所で開催された時に出席していて、井上えり子先生の存在や、こんな地道な調査がなされていることを知って、あの時覚えたのが空き家率22%というのはどういう数字かということでした。22%というのは「向こう三軒両隣」のうちの一軒以上は必ず空いている状態、と言われてびっくりしたんです。
空き家の対策と言いますか、今空いていて危険家屋を何とかしようというところから、防災まちづくりという視点から、たぶん六原の皆様はスタートされた。それを行政からのサポートだとか、専門家派遣という仕組みで、「一緒にやろうよ」という声がかかったんですね。

●防災と空き家対策
菅: 最初は空き家の流通が先でした。ただ、私たちの地域も密集市街地で細街路が非常に多い地域でして、防災の問題もそこには必ず横たわっています。空き家というのは一軒一軒の点なんですけど、やはり地域全体を面で見た時に、空き家と防災というのはすごくリンクしていて、一緒にやらないと意味がないみたいなところから防災が新たに加わって、今も活動を続けているという流れですね。

●空き家予防という考え方
絹: 皆様の色んな地道な活動のなかで、初めは空き家の流通から発したことだけれども、「流通の事例を1つひとつ積み上げていくことよりも、予防をしないとあかんのとちゃう」と意識が変わってきたと、さっきおっしゃっていましたね。
寺: 六原学区の空き家の取り組みは、そもそもは行政事業としてスタートしているわけです。ただ行政事業というのは2年間の年限がありましたので、行政事業の後も取り組みを続けようとやっていくと、どうしても成果が出ないというところで、3年目でぶち当たっているわけです。
自走しだして1年目。空き家の取り組みを一年活動して、何軒流通させられたかだけで成果を問うていると、「自分たちでやっている限りは、結局やってもやりがいがない」というところで、何かあきらめのような部分も、実は出てきていました。そこで「考え方を変えませんか」ということを井上先生がおっしゃってくださって、「成果主義ではなくて、予防することも、5年10年の長期で見れば、空き家を減らすことに必ず繋がるので」ということで、1年1軒流通できなくても、もういいじゃないかということで、予防に振ったという感じですね。
絹: いやあ、井上えり子先生のそのコメント、泣かせますね。
菅: 肩の荷が下りましたね、その時。
絹: 先ほど、杉崎先生の他己紹介での「上から目線じゃない研究者」という言葉がありましたが、井上えり子先生にも共通するところかもしれませんね。
菅: 確かにそうですね。

●六原まちづくり委員会の立ち上げ
絹: 先ほどの事前打ち合わせの時に、「自走式まちづくり」という言葉を初めて教えていただきましたけれども、これはたぶん六原用語の1つかなと思いますけれども、これも井上先生が発せられた言葉を皆さんが取り上げられたんでしょうか。
菅: そもそも行政事業というのは、行政が予算を付けて行政マンが来られて、コンサルの方が来られるというような流れになってしまうのですが、終わると当然行政の方は来られませんよね。コンサルの方も当然来られません。それに付随する費用も出ません。それでピシャッと終わってしぼんでいくなんていうのは、もう多々あると思うんですけど。
絹: よくある、ありがちなパターンですよね。
菅: でもその空き家の問題というのは、これからもますます増えるということを考えると、せっかくこういう土壌ができているのに、これをうやむやにしてしまうのは、非常に忍びないなという思いもありましたので、何とか今の枠組みを継続してできないかということで、六原まちづくり委員会を立ち上げて、外部の方々にも協力をお願いして、今も来ていただいているというところです。

■第三章 六原という地域―高いコミュニティ力と今後の課題と
  ●積みあがってきた六原の土壌
絹: 「せっかくこういう土壌が出来上がっているのに」とおっしゃったところを、もう少しお願いできますか。専門家がたくさんいてくださる、それから井上先生に代表されるような調査が地道になされて、データが蓄積している。そのほかにございますか。
菅: 例えば空き家という1つの問題は、1年2年で解決できるような問題ではなくて、やっぱり地域にずっと横たわっていく問題なんです。その地域の人たちの意識の中に問題意識がないと、ますます増えていくだろう。そういう意味では、地域の方々に口やかましいくらいに色々訴えることが、予防に繋がっていくんだろうなとは考えているんです。
絹: 寺川さん、もうすでに六原地域では「手をかけよう」みたいな、あるいは「片付けするのを、1人で抱え込まなくても一緒にやらへん?」みたいな雰囲気が、浸透しつつあるという感じになっていますか。
寺: そうですね。やはりまちづくり活動なので、何かをして急にドーンということはないのですが、“徐々感”というのは感じています。例えば、そろそろこの空き家の所有者さんに話に行こうかなと思っていた物件があったのですが、気づいたら流通に自ら持っていかれていたケースなどもあります。
本当は僕たちが何も活動しなくてもいいのがゴールですから、自分たちで手柄を取りたいのではなくて、自分たちがいなくても勝手に動くようになるというのを目指しているので、そういう意味ではゆっくりとした意識の変化は感じられたりはします。
絹: ひょっとしたら六原まちづくり委員会さんが仕掛けた漢方薬が、じわじわと効いているのかもしれませんね。
杉: そうですね。あと1つ思うのは、さっき調査という話がありましたね。調査も専門家や中心の人たちだけではなくて、既存の町内会の人たちも割り当てみたいなのがあって、みんなが参加して、現状を調べるという仕組みをつくられているんです。ですから各地域には交代しながら毎年1人ずつ、この空き家の取り組みに関わる人が出てくるわけです。そうするとその人が所有者さんだったりすると、それがきっかけになるという仕組みにもなっているんです。

●「コミュニティ力がすごい」と評価いただきます
絹: そういうことをお聞きしますと、この六原自治連合会と言いますか、六原のエリア、かなりコミュニティとしては成熟度が高いところではないですか。
菅: 私はその地域にしか住んでないので、他の地域と比較できないんですけど、外部から来られた方が口をそろえておっしゃっていただくのが、「コミュニティ力がすごいな」という風な評価はいただきます。
絹: ひょっとしたら他地区、他エリア、他都市から「ちょっとおじゃまします。お話聞かせてください」みたいなことがあるんじゃないですか。
菅: 今年だけで視察、何件受けましたっけ?
寺: 6~7件でしょうか。
絹: 確かそれ、『空き家の手帖』のどこかお尻の方に記載があったように記憶しています。あ、2015年度6件で約120人視察受け入れ。2016年度は8月時点までですけど3件で45人お客さんが来てはりますと。すごいですね。
ご存知ない方にお伝えしたいんですけど、わが京都の東山区六原というエリアは面白い動きが静かに進行しています。そしてこの動きは、たぶん同様の困りごとを抱えておられて、解決策に行き詰っていらっしゃる方、例えば私です(笑)。一筋の光明をいただいた気分でおります。

●同じ困りごとを抱えた人たちへ
絹: 全く個人的なプライベートな話ですけど、私の母が上京区で住まいしております木造の二階家がございます。父が母のためにつくった家ですけど、昭和40年代の竣工です。最盛期は6人で一緒に暮らしておりました。父が死に、息子たちが独立し、母は一人暮らし、80数歳、片付きません。外から見ると瀟洒な一軒家、ええ感じに見えないことはない。でも内側はゴミ屋敷度が着実に進行しているという状態で、ものすごく悩ましい。空き家予備軍という用語があるかどうかは存じ上げませんが、確実にわが実家は空き家予備軍であります。
京都市の空き家担当部署の方に「京都市の空き家条例は素晴らしいですけど、本当は空き家予備軍対策も、ひょっとしたら福祉の関係の力も得て必要ではないでしょうか」と、こういう番組を通じたり、役所で議論したりしたことがあります。だから私にとってこの『空き家の手帖 私家版』とそれから今度の学芸出版社版とは、本当にうれしい文献なんです。本当にありがとうございます。
片付けが空き家予防の大きなファクターと言うか、大黒柱の1つかもしれないという書き方をしてくださっていますでしょ。今、そういうことをはっきり言語化していただいたことが、まずはうれしかったということと、今この『空き家の手帖』が出版されて、地域でどんなことが動こうとしていますか。今後の課題も含めて、何か皆さん一言ずつありましたら。これからの六原、あるいはこれからの空き家予防、あるいは先ほど寺川さんがおっしゃったようなポジティブな事例など、他にありますでしょうか。

●六原でも民泊が増えてきました…
菅: 今の大きな課題は、私たちの地域に小中一貫校が統廃合で地域にできたんです。東山開睛館と言うんですが、私たちの地元にあります。
絹: なぜかわが社が施工担当したという(笑)、偶然もあります。
菅: お世話になりました。
私たちの思いは、そこに集う子育て世代の人たちに本来入ってきていただいて、空き家の活用ができれば、非常にいいなと。そうすると今の若年層の人口増加につながり、地域に活気が出てくる。そういうつもりのまちづくりをしているんですけど、今は観光で民泊施設が非常に多くできつつあって、そういうところに根こそぎ刈り取られていっている。
絹: ちょっと心配…。
菅: 大いに心配ですね。例えば不動産価値が急激に上がったりして、流通に回ると今までの1.5倍とかの高値になってきていて、本来来てほしい人たちが手出しができないような金額になったりしているんです。
絹: それは気がかりですね。民泊需要と言いますか、観光客受け入れのお皿が必要なことはわかりますけど、でも若年の方たちが来てくださることの方も忘れてはならないというか、そういう意味では京都府が仕掛けておられる次世代型下宿ソリデール事業というのを、注目なさっていますか?

●次世代型下宿事業「京都ソリデール」
菅: この間、私たちのまちづくり委員会に関わって頂いている不動産のコンサルティング協会の方から、その情報をいただきまして、一軒にその情報をお届けしようというところです。
絹: この番組のハードリスナーの方でしたら覚えていらっしゃるかもしれません。アクティブシニアという言い方はあまりよくないかもしれませんが、元気な高齢者で単身あるいはご夫妻のところに若い人を下宿に送り込むという「京都ソリデール事業」(ソリデールはフランス語で連帯の意味)を京都府が立ち上げまして、add SPICEの岸本千佳さんが、その次世代型下宿事業を手掛けていらっしゃいます。この六原にもこういう人たちが来てくださるといいですね。
菅: そうですね。私たちも東京の方に、講演に行った時に、高齢者の住まいに若い人が住むという取組が、既に東京の方で展開されつつあって、それはいいヒントやなと資料を持ち帰った記憶はあるんです。
絹: 本当に我々に一筋の光明となる本を出版してくださってありがとうございます。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、われらが京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りしました。ありがとうございました。
一同: ありがとうございました。
投稿日:2016/12/28

第124回 ・次世代下宿「京都ソリデール」事業 ~アクティブシニアの皆様へご提案  大学生と同居・交流する古くて新しい住まい方~

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成28年10月22日放送>

椋: 椋平 芳智氏(京都府建設交通部住宅課副課長)
小: 小西 由紀氏(京都府建設交通部住宅課技師)
石: 石本 彩乃氏(京都府建設交通部住宅課主事)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
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まちづくりチョビット推進室!
Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO.
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとのご紹介や、最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
 
■序章  はじめに
絹: さて、本日ゲストは、お三方来ていただいております。男性お一人、かなりゴツい体形の方です。それから女性、技師がお一人、主事がお一人です。
では、ご紹介します。京都府建設交通部住宅課、椋平芳智さんです。
椋: 椋平です。よろしくお願いします。
絹: それから小西由紀さん、技師さんの方ですね。
小: よろしくお願いします。
絹: さらに石本彩乃さん、主事さん。
石: よろしくお願いします。
絹: さっきもちょっと意地悪をしていたんですが(笑)、技術屋さんの小西さん、椋平芳智副課長の人となりを短く述べよ(笑)。
小: いつ寝ているのか、わからない人です。
絹: お、えらい動き回ってはるんですね。
小: うーん、ずうぅっと職場にいます(笑)。
絹: いや、わかる気がします。綿密な資料を作っていただきました(笑)。
石本さん、小西由紀さんはどんな人ですか。
石: つっこみが冴えわたる、かわいらしい方です。
絹: ほう、つっこみが。じゃあ、あなたはボケの方?
石: いや、私は傍観者です(笑)。
絹: はい、では順番で言うと椋平さん、傍観者の石本さんて、どんな人です(笑)?
椋: 観察力の鋭い、かわいい方です。

●京都府の新しい住宅施策が始まりました!
 絹: はい、ありがとうございます。この番組のリスナーの方ならよく聞く他己紹介をやっていただきました。ゲストの方の人となりの一端が透けて見えたらうれしいです。
さて、こんな形で始めさせていただきます。本日は大変うれしいゲストです。というのは、私自身の問題意識で悩んでいることを、京都府さんが乗り出してくださった。その新しい住宅施策、次世代下宿「京都ソリデール」について、ゲストの椋平さんと小西さん、石本さんに教えていただこうという企画であります。
今日、番組タイトルは椋平さんたちにつけていただきました。椋平さん、タイトルをまず発表をお願い致します。
椋: はい、「アクティブシニアの皆様へご提案  大学生と同居・交流する古くて新しい住まい方」。これをタイトルにさせていただきます。
絹: 長い!(笑)けど、アクティブシニアっていう言い方を、好まれない高齢者の方もおられますが、元気なお年寄り、要は介護が必要なレベルじゃない、まだまだ元気よと。そういう方に「大学生と一緒に住まへん?」ということの提案なんですね。
ではざっと事業内容要約からお願いします。
椋: はい、このタイトルをつけさせていただいた理由にもかかわってくるのですが、今日お話する「次世代下宿京都ソリデール」は、高齢者宅の空いているお部屋に、大学生が低廉な(安い)居住費負担で入居していただいて、そこで高齢者と大学生が朝晩のあいさつや、リビングでの会話などの交流のある生活をしていただこうとするものなのですが、この事業がご自宅に空き室があって、大学生と同居・交流する生活に関心のあるアクティブシニアの方がいらっしゃることがスタートとなるから、このタイトルとさせていただきました。
絹: はい、ありがとうございます。リスナーの皆さん、京都ソリデール、京都府の次世代下宿事業って、覚えてくださいね。これはひょっとしたらひょっとする、面白いです。
ソリデールって、なんか外国語っぽいサウンドですよね。何語ですか?
小: フランス語です!
絹: ということは、フランスと欧州で色々事例があるよということなんですね。
椋: はい、そうです。

■第一章 次世代下宿「京都ソリデール」事業とは?
   ●「京都ソリデール」はこんな事業です
 絹:  では、事業の内容についてご説明いただけますか?
椋: はい。まず高齢者の方ですが、例えばファミリー向けのキッチンや台所を備えておられて、お部屋が3室、4室とある住宅に、お一人とかご夫婦で暮らしておられると、現在使用されていない空き部屋があるのではないかと。例えば、以前は子ども部屋で使用しておられた部屋、または現在使用していない離れ、そして2階の部屋はほとんど使用していない方もいらっしゃるというふうにお聞きしております。
次に大学生ですが、1人暮らしをされている方は、ワンルームマンションなど、一人暮らし用の小さなキッチンやユニットバスで生活されていて、隣近所との交流や地域の活動に参加されていない方や、遠方の実家から2時間程度かけて通学されている方もいらっしゃるとお聞きしています。
そこでこの質の高い高齢者宅の空き室に、京都の大学生が低廉な居住費負担で入居していただいて、高齢者と大学生が、朝晩のあいさつやリビングでの会話などの交流のある生活や、そして時には高齢者といっしょに地域の活動に参加してもらえたらという取組が、この次世代下宿「京都ソリデール」事業なんです。
絹: はい、ありがとうございます。ご存知のように、私の本業は地元の建設業者です。ですから建築のお仕事で、ワンルームマンションなんかのお仕事も請け負います。仕事でやる時は、「へい、おおきに」とさせていただくんですけど、やっぱりかつて経験した時は、ご近所で「あんまり…」「ちょっと反対」みたいな空気になることがあります。というのは、やっぱり今、ご説明があったように、ワンルームマンションのステレオタイプなイメージかもしれませんが、「近所と交流がない」とか、「顔が見えない」ということがあるからだと思われます。
椋: そういうことはお聞きしますね。
絹: 全てのワンルームマンションがそうだとは言いません。もちろんすごく頑張っていらっしゃる管理人さんとか、オーナーさんもおられまして、素敵なところもあるんですけど、こういう問題意識をなんとか解決したいというお気持ちがあるわけですよね。
椋: そうなんです。

●こんなことを目指しています
絹: さあ、さらなる事業目的について、詰めてもらいましょう。これ、よう考えたら「ソリデール事業」って、名前がついていて素敵なんですけど、懐かしい匂いがしますよね。
椋: その通りです。
絹: 昔は当たり前に、ワンルームマンションなんてない時代なら、こういう事がよくあって、まかない付き下宿、大学生が一緒にご飯を食べていたとか、ありそうですよね。
椋: そういう方が多くいらっしゃったとお聞きしています。
絹: 大学生がワンルームマンションより安く住めたらいいなというのと、うちのおふくろなんかもそうなんですけど、蛍光灯が替えられなくなってきたとか、高い所に脚立で上がって落ちて救急車で運んだとか、もし若い人が一緒に住めたら…というのはありますね。
椋: この事業の目的を説明するのを忘れていたのですが、まずこちらから質問をしたいんです。
ワンルームマンションに住んでおられて、朝夕の挨拶をする人もいなくて、隣に住んでいる人が誰かわからなくて、地域との交流もない生活を4年間された人と、同居する高齢者と日常の挨拶や会話をして、近隣の方とも顔見知りで、交流のある生活を4年間した人と、いずれも大学生ということで想定していただいて、どちらが京都に愛着がわく可能性が高いと思われますか。
絹: なんか、皆まで言うなみたいな感じですね(笑)。
それは当然、京都ファンと言いますか、ひょっとしたら逆にそういうのが嫌になってしまうかもしれませんけど、京都を好きになってくださる可能性は、絶対後者であって、ワンルームで交流なしに巣立つ人より、「じゃまくさいけど、年寄りの相手も近所とのつきあいもするぜ」みたいなタイプを、もし自分が就職の人事担当部長でしたら、間違いなく選びますね。
椋: ありがとうございます。今回の事業の狙いは、後者の近所の方とか、高齢者の方とか顔見知りになる生活をしていただいて、一方で高齢者の方の安心や安全につながったり、大学生の生活費負担の低減などの側面も持ちながら、京都のファン、大学生には京都に愛着を持ってほしいという狙いで今回の事業を進めております。
と言いますのも、ここ京都でも人口減少、そして少子化が問題になっています。合計特殊出生率という言葉がございますが、これが全国ワースト2位という状況が、ここ数年続いています。
絹: そんなにすごかったですか。
椋: そうなんです。東京に次いで、全国で2番目に、女性の方が生涯に産まれる子どもの数が少ないという状況になっておりまして。

●ちょっと余談ですが
絹: そういえばわが社でも、独身者比率が上がってきています。
椋: 晩婚化、そして出生数が低くなるという、色んな問題があるとお聞きしております。
絹: なんか話がずれてしまいそうですけど、今日は女性のゲストがお2人、京都府の技術者として、主事として来ておられます。京都府は職員の女性比率が高いですよね。地元の建設業界と合コンを仕掛けなあかんのかな(笑)。
変な話ですけど、実は切実な問題も含んでいまして、技術職の男性というのは、遠隔地へ行ったり、天候に左右されますので、長い時間現場で指揮をとらねばならないので、休みが少なくて、女性と出会う機会が本当に少ないんです。だからまた、番組が終わったら相談に乗ってやってください(笑)。すみません、話を戻します。
椋: あ、戻す前に、建設業協会でもドボジョと言うんでしょうか、土木を仕事とする女性の方を増やしていこうという取組をやっていらっしゃいますけど、京都の建築技師は最近多く採用されている傾向がありますので、ドボジョの方とか、うちの建築の女性の方とか…。
絹: この頃ね、ドボジョという言葉と、建築小町という言葉が出ているそうですね。うちの中でも建築系の技術屋さんで、6年生の女性が一人、3年生の女性が一人、ようやくテストケースで根付いてきてくれています。また、土木系の女性の技術者は、うちは残念ながらいないんですけど、たぶん行政の方から増えていくと思われますね。期待しております。すみません、元に戻りましょうか(笑)。

●先進事例―フランスでは
絹: この取組は、ソリデールという響きがフランス語っぽいねという話が出ていましたので、どこかに参考にされたフランスの事例、あるいは欧州の事例があるんですね。
椋: はい、おっしゃる通りです。同様の取組はヨーロッパで始まりまして、フランスではパリのボランティア団体、非営利団体で「パリソリデール」があるんですが、そういった団体などが取り組んでおられます。お年寄りが若者に自宅の一室を低家賃で提供する代わりに、若者はお年寄りの心の支えになるような同居について、マッチングを実施しておられて、国内では、東京や福井でNPO等が取り組みを開始しておられます。
絹: パリのソリデールですけど、この言葉を椋平さんに教えていただく前から、海外のアパートで空き室が出た時もそうですが、高齢者だけのアパートにせずに、異年齢の家族が隣り合うように、公営住宅などはされているということを、だいぶ昔に聞いたことがありますし、昨日たまたまYouTubeか何かで、コナンドイルのシャーロックホームズのドラマを見ていたんです。結構古い時代のドラマですけど、あの時代からイギリスでは下宿人は、結構おいででおられたみたいですね。老婦人で、ダンナが先に亡くなって、メイドさんと一緒に二人で住んでいて、ロッジングハウスと言うか下宿で、男性が屋根裏部屋に住んでいるとか、二階に住んでいるとかという脚本だったので、「あ、ソリデールって、結構古くから似たようなものって、あるんやな」と、昨日の晩、思っていました。
椋: ただ、フランスの方の取組を聞いておりますと、一応14年経過しているのですが、比較的古くからということではなくて、まだ十数年というような状況で、パリでは高齢者と若者のマッチングを年間300組以上、累計3,000組以上されている団体が2団体あり、フランスの地方都市でも5団体が同様の活動をしていらっしゃるとお聞きしています。
●先進事例―日本国内では
絹: こういうマッチングをする、言ってしまえばおせっかいな人たちは必要ですよね。で、日本に振り返ってみますと、いかがでしょうか。
椋: 国内の状況としては、東京の団体がこの取組を開始してから5年が経過しており、現在5団体がこの事業に取り組んでいますが、毎年1組とか2組のマッチングに留まっている状況だということです。
絹: じゃあ、意識してそういうマッチングをしようとなってからは、まだそんなに日が経っていないし、実例も積みあがっているわけではないんだよということですね。
椋: そうですね。マッチングの組数自体は、フランスのようには行っていない状況ですが、昨年度、東京と福井の状況を、現地でお話をお聞きしたんですが、実際に同居しておられる方々は、非常にうまく同居しておられて、交流もしておられる様子が伺えました。

■第二章 京都府ならではのシステムとは?
  ●リフォーム補助を受けることができます!
絹: それからこの仕組みの特徴として、信用のおける、例えば京都府さんのような人が仲立ちになるということと、公の助成を少しつけようということですが、リフォームでしたっけ?
椋: はい、補助です。
絹: それが一つの柱になっているようです。そこのところを少し、ご説明をお願いします。
椋: まず行政のかかわりについてですが、東京と福井の事例では、行政があまり主体的には関わっていない状況でして、京都ではマッチング団体さんと連携して取り組みながら、府のホームページや京都府から高齢者団体、京都府から大学を通じた情報発信というような形で、積極的に関わっていこうと考えております。リフォーム補助につきましては、担当の方からご説明させていただきたいと思います。
石: リフォーム補助の対象となる工事としましては、使われていなかったお部屋を大学生が入居できるように壁や床を張り替えるとか、大学生が使うお風呂やトイレをリフォームするとか、ドアに鍵をつけるなどして、セキュリティを向上させる工事や、高齢者と大学生が交流するリビングのリフォームの工事などが対象となっております。また、補助金は上限90万円となっております。ただし補助率が2分の1ですので、工事費が180万円までは高齢者の方にも同額ご負担いただく必要があります。
絹: こうやって公的な仕組みもちゃんと担保して、一般の方が、高齢者のご夫妻や、あるいはお一方が乗り出しやすい、京都府は背中をチョンと押すよという仕組みをつくってくださっているわけですね。

●こんなふうに取り組んでいます
絹: 次に京都府の中での取り組みの現状について、お話しいただけますか。
小: 今年度の最初の取組として、フランスの「パリソリデール」だったり、東京のNPOみたいに、高齢者と大学生を募集して、同居のマッチングをして、同居後のアフターケアを行っていただけるような事業者を公募し、業務を委託しています。
実際4つの事業者さんに委託しているんですが、まず絹川さんもご存知のシェアハウスの豊富な運営経験を持っておられる京都移住計画に所属しておられる岸本さんの事業所であるアッドスパイスさん。
絹: 岸本千佳さんには注目しているんですよ。若いけど。30歳くらいですものね。
小: そうですね。
もう一社が、毎年約200名の大学生を福井県の河和田という所や、京都府内の美山や与謝野という所に連れて行って、滞在して、地域活性の活動に取り組まれている株式会社応用芸術研究所さん。
絹: この方も興味があります。実はゲスト候補として狙っている方です。
小: それから、ほとんどの組合員さんが高齢者さんで、生活の文化的経済的向上を図るための取組を行っておられる京都高齢者生活協同組合くらしコープさん。
さらに、賃貸受託のトラブル対応として学生の相談やオーナーへの啓発や、オーナーから借り上げて学生へ賃貸する業務を行っているNPO法人フリーダムさん。
これらの個人事業者さん、株式会社さん、生活協同組合さん、NPO法人さんが、それぞれのネットワークやノウハウなどを活かした提案をいただき、京都府と連携して、高齢者や大学生へ事業のお知らせをしています。
絹: 今年度はまずこの4社の人と、モデルケースを、ということですね。あまり最初から欲張らずに、実験的にやろうぜという段階みたいですね。

●確実にニーズはある!
絹: では、高齢者の方や大学生の反応はどうですか。
小: 高齢者さんに関しては、事業者のお知り合いの高齢者さんや、京都SKYセンターというところ、あと各大学の同窓会さん、各県人会さんなどにご説明に行かせていただいております。さらに高齢者さんのサークル活動とか、地域でやっておられるような歌声喫茶なんかに、アクティブなシニアさんが集まっておられるので、そういった場でご説明させていただいています。
絹: 実際に、小西さん、行ったりするんですか?
小: 行っている所も、行ってない所もありますけど(笑)。
絹: いやあ、歌声喫茶に目をつけるところなんか、頭柔らかいわあ(笑)。
小: 先月には高齢者さんを対象とした説明会も開催させていただいたんですけど、確実にニーズはあるなというふうには感じています。実際、数名の方が事業者と相談を開始していまして、大学生向けのチラシの準備や、大学生との交流会・お茶会等、「実際にやってみたい」という高齢者さんのおうちで、こういったことをしようかなと進めているところです。
絹: 実際に手を挙げてくれている人がいるんですね。実は岸本さんから電話がかかってきまして、「絹川さん、受け入れのアクティブシニアの人、紹介して!」と。
椋: 直球ですね(笑)。
絹: 知り合いの方、2~3人、うまいこと行かなかったけれども、彼女、実際に視察して、交渉してくれました。でも、色んな方が手を挙げてくださって、良かったですね。
さあ、今年度目標は?
小: 今年度目標は10組です!これを目標に、京都府と事業者が連携して取り組んで、来年度にはさらに多くの方々にこの暮らし方が広がるよう取り組んでいきたいと思っています。

■第三章 ご質問にお答えします
  ●少しでも不安を取り除くために
絹: 事業概要の説明でだいぶ時間を取ってしまいました。いらんツッコミを入れるおっさんがいたせいで(笑)。25分も経ってしまいましたが、深めていきます!
例えば自分が学生を受け入れてもいいよとなった時に、不安に思うことがあるかもしれませんね。そんな時、どういうアドバイスをされているんですか。
椋: 知らない方と、他人と同居するということは、どなたでも不安があるだろうと考えております。その不安を解消するために、実際のマッチングまでの間に、直接お会いいただいたり、同居するルールを話し合っていただいたりということで、面会して、お会いいただいて、お話するという機会を設けて、取り組もうとしています。また、先ほど小西から説明がありましたように、事前にお茶会であるとか、交流会などの取組をしながら進めて行こうかなと。不安を少しでも取り除ければということも、心がけております。
絹: それから時間のすれ違いが起こる時の危険性を少しでも減らすために、部屋割りなどの条件もあげていらっしゃるようですね。
椋: そうです。プライバシーの部分もございますが、実際の大学生の方、高齢者の方では、生活の時間帯が異なりますので、例えば高齢者の方は早く就寝されて、夜遅くに大学生が帰って来られた時も、大学生の部屋に玄関から直接行けるような、そういう間取りが必要かなと考えております。
絹: 費用なんかにつきましては、家賃は無償のケースもあるけれども、一般のワンルームに住むよりもだいぶ安いというのを設定しようとされているんですね。
椋: そうです。この事業の取組として、家賃については無償か通常の家賃よりも安くということで、事業を考えております。

●「京都ソリデール」ぜひ検索してみてください!
絹: 短い時間でしたので、全ての情報を皆さんにお伝えすることは、少し難しいですけれども、ぜひ京都府のホームページ、あるいは京都府次世代下宿「京都ソリデール」事業を検索いただけたら幸いです。
実はこれは本当に応援したい事業です。私事ですが、80過ぎの母が実家に一人で住んでおります。もし私の母の家がこういう風にできれば安心だなと思うけれども、実は今までうちの中が片付かないとか、他人を入れるのが心配だとか、色んなハードルがあって、誰に相談したらいいか、わからなかったんです。皆さん、これをぜひ注目してくださいね。
この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りしました。みなさん、ありがとうございました。
一同: ありがとうございました。
投稿日:2016/10/30
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