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第121回 ・新しい役割を探して… ~建築researcherの立場から~
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まちづくり“チョビット”推進室<平成28年7月16日放送>
まちづくり“チョビット”推進室で、何度もインタビューしている「京都移住計画」と連携している「RAD」の榊原充大氏にお話を伺いました。
設計図になる前の地域コミュニティに内在する困り事や、誰に相談すれば良いのかわからない課題を拾い集め、解決に導いてゆく地道な行動が、建築という専門領域を超えて進み始めているようです。
榊: | 榊原充大氏(RAD) |
絹: | 絹川雅則(公成建設株式会社) |
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まちづくりチョビット推進室! Give me thirty minutes,I will show you the frontline of “まちづくり” and “まちづくり” people in KYOTO. |
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絹: | 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。 この番組は地元京都の建設屋の目から見た京都の元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最前線をご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室絹川がお送りいたします。 さて、本日ゲストですが、私からしたら非常にお若い方です。「RAD」を率いておられるお二人のうちの二人目、榊原充大さんです。 |
榊: | 榊原です。よろしくお願いします。 |
絹: | はい、よろしくお願いします。榊原さんとはまだ本当に何度かしか会ったことがないのですが、先日私の会社にインタビューに来てくださって、お会いしました。 で、よくわからんけど、なぜか興味があるというか、惹かれるというか、何か匂うぞ(笑)、みたいな感じで、ゲストにお呼びいたしました。 快く引き受けてくださって、ありがとうございます。 |
榊: | とんでもない、ありがとうございます。 |
絹: | 「RAD」の「R」はリサーチの「R」、「RAD」の「A」はアーキテクチャー、「D」はなんでしたっけ? |
榊: | 「D」はドメインです。場所だとか、住所だとかですね。 |
絹: | 「建築の居場所を探る」というキーワードが引っかかりました。「建築に居場所って、当たり前やん」と思うかもしれませんが、どうやら建築の専門家としての新たな社会での居場所を探りたいとの意味があるのかな、と勝手に想像しております。 今日は若き建築家「RAD」の榊原充大さんをゲストに、どんなお話が聞けますか、ご期待ください。 さて、本日のテーマですが、番組タイトルとして、「新しい役割を探して ~建築researcherの立場から~」と題してお送りいたします。さあ、若き建築家集団がどんなことをされているのか、あるいはどんな思いで、京都で、あるいは色んなところで動いていらっしゃるのかを、これからお聞きしていきます。 |
絹: | 建てない建築家として異名をはせた山崎亮さん。何冊かご著書を読ませていただいたことがあります。私の友達の中でも、山崎亮さんを大好きな人と、嫌いな人に分かれるんですが、あの事務所(スタジオLさん)に関わっていた知人がおります。 |
●根底に流れる共通理念 |
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榊: | そういった考え方に、一面では非常に賛同しつつ、でも一方ではまだ建築が必要とされる状況というのは必ずあるとも思っていました。むしろ、「こういう時に建築家の人が役に立つんだ」という状況をどんどん見せていくことをしたほうがいいんじゃないかと話をしていて、それがある種の共通理念として「RAD」の動機になり、またメンバー個人個人の仕事の一番根底に流れている部分でもあるなと思うんです。 そういった時に、建築の設計でもなく、あるいは研究でもない、その間みたいな活動と言うか、役割みたいなものが必要になるのではないかと思い、その考えを「リサーチ」という言葉に込めました。「リサーチャー」あるいは「リサーチ」という言葉は単に調べる(人)という意味にもとられますが、「設計」と「研究」の広がりを仕事の舞台にする、という気持ちを込めて名乗っているという感じです。 |
●地元の空気感や思いをリサーチする |
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絹: | リスナーの皆さん、今のお話、聞かれました?すごく大事なことを、すごくベースのことを語られたと思います。 どうしても我々は、おうちを建てるだとか、建物をつくるだとか、図面をひくだとか、設計をするだとか、美術館を建てるだとか、学校を建てるだとかの建物の図面、それのモデルをつくって、実際に建てられるように設計をして、我々のような施工班に渡すという流れを想像しますけれど、どうも榊原さんたち、リサーチャーという言葉を調査、図面をひくまでにもっと色々図面に現れない、線になる前の空気のような、思いのような、あるいは地元の人やまわりの人が「こうあってほしいな」と思うものが見えてないんじゃないのとおっしゃっているようにも聞こえました。そこをていねいに拾うと…。 |
榊: | なるほど。ありがとうございます。 まさにおっしゃる通りで、これまで「リサーチ」と言うと、建築の分野では設計するための下調べだとか、設計の根拠をつけるための調べものというイメージが強くあったのですが、そのリサーチだけでもちゃんとアウトプットすることができると、有意義な資料や成果になっていくんじゃないかという思いがあります。ですから設計のためのリサーチだけではなく、別の効果や影響をもたらすためのリサーチということを実践できないかと考えているところです。 |
■第二章 RADって、例えばどんな仕事をやってるの? |
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●奈良県斑鳩の事例―仕事のはじまり | |
絹: | 実はすごく難しいテーマを語っていただいております。このリサーチとはなんぞやというところを、さらに深めるために、エピソード2では、じゃあ具体的にどういう仕事をされているのか、もしお聞きできれば、想像していただきやすいかもしれませんね。 例えば、建築する図面にはつながらないかもしれないけれども、調査結果を明らかにして、蓄積して、公開するというプロセスが、どういうふうに世の中に、地域に、あるエリアに影響したのかという事例があれば教えてください。 |
榊: | はい。個人と組織とで、1つずつご紹介したいと思います。 まず組織としては、僕がメインで進めていて、もう5年くらい続いているプロジェクトがあります。 舞台は、奈良県の斑鳩というエリアなのですが、斑鳩と言うと法隆寺で有名な所なので、皆さん、修学旅行などで行かれたことがある人も多いんじゃないかと思います。 ところが一方で法隆寺があまりにも有名すぎて、斑鳩というまちの魅力自体がなかなか地元の人に共有されず、外の人にも伝わっていないという状況が1つの課題として見えてきました。 プロジェクトの前提として、まず京都大学の研究者の方が、その地域の近代建築、古い建築を、悉皆調査で一軒一軒調査されて、それをアーカイブにされていたんです。そのアーカイブをどういうふうに活用できるかという形で、僕らのところに相談が来たんです。 |
絹: | なんでそういう面白い相談があなたのところに来るの?(笑) |
榊: | そうなんですよ。ありがたいことに研究者の方や、企業、美術館、その他施設、あと行政の方から「誰に頼んだらいいのか」という感じの依頼をいただくことが多くて…。 |
●奈良県斑鳩の事例―まちの再発見、コミュニケーションのツールとして |
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絹: | その5年も続いているということは、箪笥の奥の写真、自分たちにとってはただの古い写真だけれど、それかアーカイブ化されて、外の方に伝われば「わ、すご!」という声が、写真の所有者たちにも聞こえるでしょうし、あるいはその写真を前におばあちゃんが孫に「この写真はね」とかいった語りが生まれたりもしますよね。 「ひょっとしたら斑鳩町って、斑鳩エリアって、すごいとこやったんと違うの」みたいな我がまちへのプライド、斑鳩町のいいところ探しみたいな空気が、すうっと出来上がっていくのかしら。 |
榊: | そういう形になるといいなと思っています。子どもたちにとってはかつてのまちの姿はわかりませんし、一方でおじいちゃんおばあちゃんがその時のエピソードを語ってあげたり、コミュニケーションの1つのきっかけにもなると思いますし、これから先は子どもたちにその姿をどう伝えていくのかということが課題になっているという感じですね。 |
●愛知県のある地域での事例―伝達者、コミュニケーターの役割 |
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絹: | 「例えばどういう仕事をやっているの」というもう一つの例は? |
榊: | 個人で今まさに取り掛かっている、進み始めたプロジェクトに、愛知県のある地域で行われている開発系のまちづくりのプロモーションがあります。そのまちづくりの取組が市民の人にまだなかなか伝わっておらず、断片的な情報で批判をされてしまったりとか、あるいはそのエリアを超えた人たちにまだ全然届いていなかったりという課題があるんです。 |
絹: | よくあるんですよね。僕たちは工事をする立場の建設屋ですから、近隣とのすり合わせと言うか、準備がちゃんとできてないのに、見切り発車をされてしまうと、反対運動の中で、施工する技術者がえらい困った立場に追い込まれることがあるんです。「え、会社に言われてこの仕事をやりにきたのに、なんで動かないの?僕らが悪いんじゃないよね」みたいな困りごとが起きないように、そういう手続きが取れるといいですよね。 |
榊: | そうなんです。まさに土木事業も関わってくる大きなプロジェクトなので、どのようにしてその必要性、あるいは魅力、これからの姿を、まちの人に届けて、一緒に望ましい地域の姿を考えていくのか。そういう伝達者と言うか、コミュニケーターと言うような役割が必要とされている状況があります。そこで形式上はプロモーションのディレクターという形で関わらせてもらいます。 |
絹: | それは行政の方と関わったりするんですか? |
榊: | そうですね。行政の方と関わったりとか、あるいはまちづくりプロジェクトを委託されて推進している方と一緒に進めたりという感じでやっています。 |
絹: | 聞きました?32ですよ。 こういう人たちが出てきてくれたというのは、捨てたもんじゃないなと思います。短い時間でなかなか読み解けない難しい分野でありますが、「RAD」の榊原さんをお迎えして、「新しい役割を探して」と題してお送りいたしました。 この番組は、心を建てる公成建設の協力と、京都市・景観まちづくりセンターの応援でお送りしました。榊原さん、ありがとうございました。 |
榊: | こちらこそ、ありがとうございました。 |
投稿日:2016/07/16
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