公成建設株式会社は、建設業を通じて、豊かな国土づくりに邁進し、広く社会に貢献します。

まちづくりチョビット推進室
TOP > 2019年

月別アーカイブ 2019年5月

第146回 ・こどもとはたらくオトナリラボ~オトナリラボってどんな所?

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<令和元年5月放送分>

芳: 芳野 尚子 氏(オトナリラボ 代表)
絹: 絹川 雅則 (公成建設株式会社)
30727702_194512447830491_5471192653204815872_o
絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室、絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲストのご紹介から入ります。今日はお一方、偶然出会った方です。オトナリラボ代表 芳野尚子さんです。
芳: はい、よろしくお願いいたします。
絹: カタカナでオトナリラボ、ラボですから研究室の代表ということですね。オトナリさんて何や?という話を今日はさせていただきます。タイトルが「こどもとはたらくオトナリラボ~オトナリラボってどんな所?」と題してお送りいたします。これだけでは「何のこっちゃ、わからへん」と、たぶんリスナーの皆さんは思っていらっしゃると思うんです。ちょっと今日はゲストの紹介にも手間取りますが、お付き合いください。
ある日、ある時、某時、たぶん2~3ヶ月前だったと思います。万寿寺通をトコトコと、河原町から烏丸の方に向かって歩いておりました。そうすると「ムム、怪しい、なんか面白そう」というトンネル路地がありました。そこで私はおもむろにスマートフォンのカメラを取り出して、カシャ。そこに書いてあったのが、オトナリラボ。「これ、なんや?」と思って、数カ月忘れておりました。そしたらつい最近の4月25日、知人に誘われて、新大宮広場&SILKオープンデーというところに行った時のことです(ここも面白い所なので、後々紹介します)。京都高度技術研究所(愛称ASTEM)の傘下にあります京都ソーシャルイノベーション研究所(SILK)とオトナリラボの芳野代表も関係があるんですね。
芳: ちょっとおしゃべりをさせてもらったりとか、そこのスタッフの杉原さんが個人的にされている活動のデザインの面でお手伝いをさせてもらったりとかです。
絹: そこで偶然、「あ、オトナリラボはこれやったんや」というので、忘れていた問題意識、「ここはなんかある!」と思ったところの代表が、お隣に立っていらっしゃった。これぞ「共時性」ですね。
芳: たまたま、はい(笑)。
 

■エピソード1 見守り保育付きコワーキングスペースという場

●オトナリラボは、こんなサービスを提供します
絹: では、こどもとはたらくオトナリラボ、そもそもどんなんですか?スタートあたりから紐解いていただけますか。
芳: オトナリラボは、見守り保育付きコワーキングスペースというふうに言っています。ワンフロアの中にキッズスペースがあって、そこでお子さんを見守り保育のスタッフがお世話をしたリ、一緒にあそんだりしている間に、お母さんはワークルームの方でお仕事なり、自分のやりたいこと、デスクワークでできることをする時間をサービスするということになります。
絹: オトナリラボを、まるっと言葉で表現したらそうなると。最初に戻ってリスナーの皆さん、万寿寺通のくだりを思い出して頂けますか。万寿寺通の、あそこは富小路ですよね。
芳: そうです。有隣公園という、ちょっと前にきれいになった公園の、斜め向かいくらいの角をちょっと入った所になります。
 

●万寿寺通富小路東入ル ちょっと覗いてみましょう

絹: 京都の皆さんでしたら、万寿寺通富小路角東入ルというと、なんとなくイメージできる方が多いのではないでしょうか。そこの万寿寺通の北側の三軒長屋の所にトンネル路地があります。そのトンネル路地の入口にオトナリラボのロゴ、これも素敵なロゴですね。
芳: ありがとうございます。お家のマークの中に丸が2つ、くっついているような家にしてるんですけど。
23754784_155177281764008_611472929316879738_n
絹: オレンジ色の大きな丸はお母さん、オレンジ色の小さな丸はお子さんかな。でもそこに表示してあるイメージでは、何なのか僕はその当時、わからなかったんです。でも、「まちの給食室、離乳食教室@オトナリラボ」という表示があったり、「リトミッククラス」というのがあったり、そして「こどもとはたらくコワーキングスペース」という表示があったり、「いったいここは何なんや」という疑問が生じました。で、ご縁を得まして、実は今日のお昼前、現場を見せてくださいと。
実は私の職場は五条西洞院なので、東へ平行移動、10~15分歩いて行けるんです。いきなり電話して「行ってもいいですか?」と(笑)。
芳: たまたま私も連休明けでいたので。
絹: 実際に一階が多目的スペースで、トンネル路地を万寿寺通をトントンと中へ入って行きます、ガラガラッと三軒長屋の真ん中の扉を開けます。上り口があって、きれいにフローリングに改修された、あれは何畳くらいのスペースですかね。
芳: 10畳弱ですね。
絹: そうしたら広大なお屋敷というわけではありません。
芳: 本当に小さなお家なんです。
 

●オトナリラボ、そもそものきっかけ

絹: でもそこで、一階のフロアで色んなイベントが開催されているようです。で、実はその三軒長屋の一軒東側が、芳野代表のお母さまがお住まいの・・・
芳: はい、両親の住んでいる家で、私も生まれ育った実家で、大学生までそこで住んでいました。
絹: それで隣が空いたと。ずっと空き家で、何か寂しいなと。家というのは人が住まないと荒れていきますよね。で、一念発起をされて、お父さまお母さまと相談されて、よっしゃ、買い取ろうと。
芳: そうですね。うちの持ち物にして、2017年頃にこれは改修しようと。それで一階は多目的スペースとして地域や色んな方に使ってもらえるようなオープンスペースにしたいなということで、ワンフロアにしました。そして二階が特に決まってなかったので、私にちょっと考えてみてと言われて、考えてみたという…。
絹: ご両親と相談されて。その当時、御父上の会社に勤めていらっしゃって、「オーバルプラン」というデザイン事務所で、ただのデザイン事務所というよりもちょっと進化しているような、色んなプロジェクトメイキングみたいな、そういうものまでデザインするというお仕事をされているんですよね。そこで父上のお手伝いをされていた中で、社員さんが育児休業に入っちゃった。
芳: 育児休業中の社員と、保育園に入れなかったけれど託児に預けて通ってくれているアルバイトのスタッフがいて、その二人がこれから先、保育園に入れなかったらお休みしないといけないのかなという事や、私自身も子どもが中学生になって、子育てが落ち着いてきたのと、だけど自分の子育てのことも色々思い返すこともあった。仕事も続ける中で問題意識や気づくところがって、こういう見守り保育付きのコワーキングスペースって、京都に今のところ、あんまりたくさんないし、やってみてもいいかもしれないなと思ったわけです。身近な課題、従業員の問題をちょっと試しに…。
絹: お父さまの会社の大切なスタッフの女性たちを、何とか復職しやすいようにどうしたらいいかというところから、こどもとはたらくコワーキングスペース付きのスペースを、ご実家の隣の、そんなに大きなお屋敷ではない三軒長屋の二階のフロアにつくられた。ぞれも10畳くらいの?
芳: それも4畳と6畳くらいの、本当に小さい場所です。
名称未設定_page-0001
絹: 今日、ちょっとだけ見せていただいたら、「1歳くらいの赤ちゃんがもう寝ちゃっているので、今は上がれないけど、起きたら」、ということでした。赤ちゃんが起きたので、二階に上がると扉には赤ちゃんがハイハイして落ちないような防護フェンスも装備してありますし、お母さんがちいさい椅子に座って、赤ちゃんにご飯をあげてらっしゃった。
芳: ちょうどご飯の時間だったんです。
 

●いろいろ実験しながら始めました

絹: 2017年の11月にモデル的に2組の親子さん、スタートはお身内だったんですよね。それを皮切りにコワーキングスペースの営業を始められたと。
芳: 18年の1月からプレオープンという形で、社内だけではなく、一般の方に広く使ってもらえるようにスタートしました。
絹: そのプレオープンの前で、最初色々実験しながら、お身内の方と始められた、その日々のエピソードがありましたら、紹介いただけますか。
芳: 当時、1人はもう2歳になる頃で、やっぱり外で遊びたいとか、お母さんがいるんだったら、お母さんと遊びたいとなってしまうところを、保育園だと預けてしまって、泣いていても離れてというふうになるんですけど、ちょこちょこお母さんも関わりながら、場所に慣れながら、保育のスタッフと一緒に、慣れて、時間をかなりゆっくりかけて、子どもさんとの関係性をつくりながら仕事もするという、結構仕事優先で考えるとモタモタした感じにはなるんですけど、スタッフから後で感想を聞いたら、「そういう時間を過ごせたことがすごく楽しかったし、いいものでした」ということでした。
絹: 実際にお身内の女性職員から「もたついたけど、それも大切なプロセスだ」という感想を得た。そこでじゃあ、プレオープンだと。広く一般の方、お身内以外の方も来てちょうだいというのを始められたんですね。それが2018年。
芳: はい、2018年の1月から3か月間がプレオープンで、4月からが正式スタートという形にしました。正式スタートからはやっと1年経ったかなというところです。
絹: その間、何組かたくさんお越しになりましたか。
芳: ちゃんとした数字を持ってきてなかったのですが、登録だけだと100組くらいいただいて、試しに体験で利用していただいたりとか、皆さんが継続というわけではなくて、波はありましたが、冬からこの年度末にかけては、毎週ご利用いただいたりとか、週に何回かご利用いただいたりするレギュラー利用みたいな方にも来ていただいて、自分の生活のリズムの1つにしてもらえるような役割もあったかなと思います。
 

●こどもとはたらく場って、こんな感じです

絹: いただいている資料を少し読ませてくださいね。
見守り保育付きコワーキングスペース オトナリラボは、パパママが子連れでやりたいことに取り組める場所。保育スタッフに子どもを見守ってもらいながら仕事をしたり、ゆっくり読書をしたり、時には子どもと遊んだり。コワーキングスペースとして親子で楽しめる遊び場としてご利用いただけます。キッズスペース=お子様が保育スタッフと遊んで過ごす日当たりのよいキッチンスペースです。おもちゃ、絵本、バウンサー… バウンサーって、何?
芳: 小さいお子さんが座れるような椅子です。
絹: 授乳スペースも備えています。初めてのご利用やお子さんが離れづらい時はデスクも用意できますので、安心して利用してください。
それからもう1つ、ワークスペース。要は仕事場で、6畳、4畳の4畳の方ですね。狭い方で、扉で仕切ったら4席デスクがありますから、ここでパソコンを開いて、Wi-Fiを使って、プリンターもあるし、仕事をやる気ならできるわよと。さあ、こんな場所なんです。
23844954_155988728349530_2768395531089805751_n
 

●経験豊富な見守りスタッフが担当します

絹: 保育スタッフはどこから来られているんですか?
芳: 京都子育てネットワークというNPO法人さんと、こういう活動をフェイスブック等で発信していて、お手伝いしたいと言ってくださったスタッフさんとか、色んな方で回しています。
絹: 保育資格は持っていないけれども、幼稚園や小学校を退職された経験者が、スタッフに手を挙げて下さっていると教えていただきましたよね。
芳: 基本的にはここでは親御さんとお子さんが一緒にいるというのが大前提で、お子さんを完全にお預かりするというわけではないので、保育士の資格が必ず必要というわけではありません。ただ心配もありますので、子育て経験やお子さんに関わるお仕事の経験の豊富な方にお願いしております。
●利用料金と登録料のこと
絹: 利用料金についても少しご説明をお願いします。
芳: 1時間800円、半日は3時間と考えて2000円、一日だと4000円になります。その条件で見守り保育とスペースを使う料金合わせてということになります。
絹: 回数券があります。半日5回分で9500円です。
芳: はい、少しだけお得です。入会金などはいただいてないのですが、使われる月に対して、登録料を一ヶ月500円という形でいただいております。今月使うけど来月は使わないという形にも対応できるよう、ばらして少しずついただいたりしています。
絹: リスナーの皆さん、お聞きになってどうですか?実は私はちょっとびっくりしています。というのは、私の会社にも女性の職員はおります。今、2人、建築の技術屋さんで、1人は入職7年目、8年目だったかな、第2子を出産して、今、育児休業中です。で、その人が復職して下さる時に、保育園がうまく見つかったらいいなとか、今、上のお子さんが行っている保育園にそのまま行けるのかなとか、ちょっと会社側としても不安なんです。もう1人は女性の建築技術者第2号で、今5年目くらいで、結婚されています。よく頑張る人なんですけど、赤ちゃんが生まれた時に、やっぱり産休、育休に入って、でも戻ってきてほしいなと、彼女も周りの人がそう思うような人です。その時に、たまたまうちの近所にオトナリラボがあるやんと。で、保育園にあるいは幼稚園に行く時に、お母さまと子どもさんを離す場面がありますが、僕自身も幼稚園に入った時に、泣いたそうです(笑)。あのプロセスがありますよね。だからそのプロセスを緩やかに、保育園だけじゃなくて、こういうオトナリラボ的な、中間的な施設を利用されているお母さまもおられるんですね。
芳: そうですね。今、現在、来ていただいている方などもそうですね。
 

■エピソード2 オトナリラボを立ち上げた背景として

●毎日保育園に預けるか、仕事を諦めるかの二者択一はおかしい…
絹: オトナリラボの芳野尚子さんが、なぜこういうことをなさるようになったのかという、尚子さんなりの問題意識を、少し開陳いただけませんでしょうか。
芳: 私自身は子どもがもう大きくなっているんですけど、実際に自分が復職する時は、一時保育を使いながら、実家に預けながら、子育てと仕事を半々みたいな形でスタートできて、それを周りの人たちに言うと、そんな事ができる人はそうそういないという状況で…。
絹: そうですね。親御さんの支援が得られる方というのはラッキーな方ですよね。
芳: そういう近くに実家があるなり、親の力が得られる状況にないと、復職の時に相当な苦労がある。かつ今は保育園が人気なので、一時保育のような預け方が自由にできない状況で、そうなると毎日の保育園に預けるか、仕事をすることを諦めて家で子育てするかという、どちらかしかない2択の状態だなということに気付きまして…。
絹: おかしいやないのと。仕事を辞めて子育てに専念するか、バシッと保育園に預けて復職するか、その間ってないの?というのが、違和感だったんですね。
芳: で、そういうことがそうそう可能じゃない。なんとかすればとか、運がよければでないとできないというのを、もっと色んな選択肢が可能になるような事があればと思って考えたのが、見守り保育付きコワーキングスペースで、こういう場所に預けると、保育園に預けなくても、一時保育が使えるのなら使いながら、お仕事もできるし、完全に仕事から離れる期間が短くて済むと考えたわけです。
絹: どうですか?私はこういう考え方をするひとを、実は不勉強で存じ上げませんでした。私が万寿寺通を歩いていて、「なんかある!」と思った、その感覚は「ああ、これやったんか」というのがちょっとずつわかってまいりました。
あと5分弱になりましたが、最後のこの時間でイベント告知をすることで、さらにリスナーの皆さんに、オトナリラボとは何ぞやみたいなところを話して頂けませんでしょうか。
 

●子育て中のお母さんたちのマルシェです

芳: 今度の5月26日に、先ほど絹川さんにもお話頂いた、新大宮広場という北区に新しい広場ができまして、そちらの方で”my turn’s MARKET”というマルシェのイベントがあります。
絹: “my turn”というのは「私の順番よ」という意味だそうです。
芳: “my turn”というグループがありまして、そのグループはこれまでお仕事をされてきたけれども、子育てで1回仕事から離れている方などが集まって、自分たちがこれから発揮したいものであったり、手作りのものなどを持ち寄って、マルシェにするというイベントになっています。
58113351_936036726566532_8559937316339056640_n
絹: “my turn”さんというのは、20代後半から40代くらいまでの子育て世代の女性ばかりのメンバーで構成されています。元キャビンアテンダントチーム、バックオフィスチームが4~5名おられて、子供服のパタンナーさんとか、介護福祉士、アロマセラピスト、あとはオトナリラボの代表さんのようにデザイン系に強い人とか、色んなタレントを持った人が集まっているグループが関わっておられます。
芳: はい、お母さんたちのチームということで。オトナリラボもちょっと関わらせてもらっていて、デザイナーの中に手作り工作とかが得意な者もいますので、そういうブースを出します。他にもアクセサリーだったり、飲食だったり、色んなブースが出るので、良かったら是非親子で楽しみに来てください。5月26日の日曜日です。
60588129_954941988009339_6753480638646452224_n
絹: 新大宮広場で検索ください。フェイスブックページもあります。
リスナーの皆さん、お聞きになってどうでしたか?私はまちを歩いていて万寿寺通でオトナリラボのこのロゴに出会って、何かあると感じました。それはやっぱり私自身も会社の女性スタッフの復職に関して色々悩んでいたことがあったからです。悩んで探すと、こういう素敵な人たちに巡り合うことがあります。だから問題意識を持ってまちを歩くのは大事だなと思っています。京都には芳野尚子さんのように、ほっといてもこの京都が住みやすくなるような活動を、勝手にやっていらっしゃる方がごまんといらっしゃいます。そういう人たちを探し当てるのも、このまちづくりチョビット推進室の目的かなと思っています。
 

●オトナリラボで、是非検索を!

絹: こういうオトナリラボさんのような活動にもし興味を持たれましたら、フェイスブック等で探して万寿寺富小路東入ルへお運びください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、我らが京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。オトナリラボ代表の芳野尚子さん、今日はいきなりご招待して、よく出演していただきました。ありがとうございました。
芳: ありがとうございました。是非オトナリラボで、親子で有意義な時間を過ごしていただけたらと思います。
絹: 三軒長屋の真ん中です。隣にお母さまがいます。お母さまは手作りバッグを作っておられて、色んな方が集まれて多目的スペースでもあります。離乳食講座もやってまーす!検索をお願いします。
芳: 色んな事をやっていますので、是非!
投稿日:2019/05/09

第145回 ・アートスペースなのになんで探偵社?~寄す処探偵社ってご存知ですか?

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成31年2月放送分>

沼: 沼沢 忠吉 氏(寄す処探偵社 President/Investigator)
絹: 絹川 雅則 (公成建設株式会社)
 53613609_2253361228218400_5516032695890608128_n
右:沼沢 氏 (左:絹川)

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲスト紹介ですが、沼沢忠吉さん。この方は実は当チョビット推進室の二度目の御登壇です。平成26年3月放送の「Art Space 寄す処(よすが)」の回で来ていただきました。では沼沢さん、第二回目もよろしくお願いします。
沼: よろしくお願いします。沼沢です。
絹: 本日のタイトルは「アートスペースなのに、なんで探偵社?~寄す処探偵社ってご存知ですか?」で行きます!
 

■エピソード1 Art Space 寄す処(よすが)、覚えていらっしゃいますか?

●地域に開かれたアートスペース兼カフェ兼バーとして
絹: リスナーの皆さん、5年前の事ですから覚えていらっしゃる方はほとんどおられないと思いますけど、ちょっと振り返りをさせてくださいね。
平成26年3月、この時のタイトルは「人を笑顔にするArt Space 寄す処(よすが)って、ご存知ですか?」と題してお送りしました。で、沼沢忠吉さんと僕の出会いは人を介してでありました。僕は五条西洞院という所に仕事場がございます。近所に山植さんという、自らのことをあの当時「地域男」と称していた…。
沼: 今でもたぶん「地域男」です。
絹: 本当に色んな活動を仕事以外にもされる方で、その方が「絹川さん、五条界隈に住んでるんやったら、面白い人がいはるから、是非会いにいかなあかんで」と言われて会いに行ったのが、Art Space 寄す処の沼沢忠吉さんでありました。
沼沢さんはなんと50歳まで、茨城県警で強行犯係の刑事さんをされていたというご紹介でした。で、3.11の震災を機に、京都に移住をされまして、五条西洞院西入一筋目を下がった…。
沼: そうですね。東中筋五条下ルです。
絹: うちの職場からだと、一本西の筋を下がったところが、まあ素敵な名前じゃないですか。天使突抜三丁目。ここでの木造家屋を改修されて、「アート・イン・レジデンス」という、その当時、僕は初めて勉強した言葉ですけど、今、京都ではゲストハウスだとか、民泊とか、花盛りですけど、そんな風になる前、ゲストハウスだけれども、長期滞在型で芸術家を対象にして、ギャラリーと併設するスペースというふうに説明したらいいでしょうか。
沼: ゲストハウスではないですね。旅館業ではないので。
絹: カフェみたいなこともされていたり、夜は地域に開かれたバーみたいな活動もされていて、ご近所さんが飲みに行ったら、そういう芸術家がごそっと出てきて、滞在していてでっかい作品を作っていたりとか。
沼: そうですね。
絹: 沼沢さん自身も、昔、油絵を描いていたという記録があります。
沼: はいはい。そんな記憶が私にもあります(笑)。
絹: 当時私は「まちの縁側」というんですか、いわゆるサードプレイス、男は職場と家庭以外に居場所がない。でも第三の居場所というのは必要じゃないかという問題意識から、自分の止まり木みたいなところを、一生懸命探していた時期でありました。で、沼沢さんところに、「あ、その匂いがする」とばかりに行ったり来たりしていた時期がありました。そういう出会いです。
で、この度、「Art Space 寄す処」さんが新たに行動を起こされました。ということで、タイトルに「アートスペースなのに、なんで探偵社?」と付けましたが、この辺り、沼沢さんからちょっと説明してください。探偵社をやられるんですって?
 

■エピソード2 ちょっと風変わりな探偵社です

●笑顔になってほしいから
沼: そうなんですね。なぜかアートスペースなのに、探偵社を始めようと思い立ってしまって、3月に入って開業させていただきました。
絹: そしてその開業式に私もなぜか参加をさせていただきました。
沼: ありがとうございます。なぜ探偵社を開業したのかについては、元々刑事を長年やっていて、前の放送と被るんですけど、刑事って、人の涙は乾かせても笑顔にできないという宿命を負った職業っていう話を…。
絹: そのコメントがね、5年前ですけど、結構僕、記憶に残ってまして、「なんかすごいなあ」と。当時、「その人を笑顔にするってところに今度、乗り出したい」ということを沼沢さんがおっしゃったなと。それはもう探偵社でも一緒なんですね。
沼: 一緒ですね。基本的に笑顔になってほしいという、一言で言えばそういう思いです。
絹: なんかそれ言っちゃうと結論が出ちゃうみたいな話ですけど(笑)。沼沢さんが目指される探偵社について教えてください。
沼: 京都に来て色んな出会いがあって、色んな勉強をさせていただいた中で、私はスピリチュアル的な活動もしてるんですけど、そんな見方をすると、私自身は闇の人間という…。
53303494_837359943282641_8681613610985717760_n
 

●人の心の闇を引き出して開放してあげるのがお役目だと思っています

絹: 闇の住人なんですか!
沼: そうですね。人の心の中の闇を引き出して、開放してあげるのがお役目という、そんな立ち位置で自分を見ていて、まあ、現実的な闇も請け負うのが僕であるという、ちょっと変な言い方ですけどね(笑)。
絹: リスナーの皆さん、怪しいなと思ったかもしれません。現実に怪しい人なんですけど(笑)、沼沢さんのフェイスブックを時々のぞき見していまして、「あれ?」と思っていたんです。実は。闇の世界の住人だとは知らずに(笑)。
でも去年は特に4月豪雨だとか、台風だとか、すごかったじゃないですか。その後、沼沢さんは京都の色んな所を歩かれて、何かネガティブなエネルギーがある所をずっと訪ねて行って、それを(僕はそういう専門用語を知らないので、あれですけど)お浄めして歩かれた。
沼: そうですね。
絹: そんなもん、誰に頼まれたんやっていう話ですけど、誰に頼まれるわけでもなく、勝手にうろうろして、京都のためにきれいにしたいって、人知れずお掃除ボランティアみたいなもんですよね。
沼: そうですね。お金はもらいませんけど(笑)。
絹: そのへんがスピリチュアルという言葉を使われた、一端のエピソードです。それを見て、「えっ!」って、ただのアート・イン・レジデンスのオヤジさんじゃないのかみたいに思った事が、最近ありました。すみません、補足コメントでした。
 

●ポロポロといつの間にか相談が来るようになって…

沼: ありがとうございました。まあまあ、そんなのが自分のお仕事と考えていて、じゃあ、以前の刑事という仕事を活かして、何かできることがないかなと考えた時に、去年の夏に某探偵社で4ヶ月くらい、見習い研修バイトみたいなことをさせていただいたんです。別にそれを誰に言っていたわけじゃないんだけれど、色々ポロポロと事件がらみの、事件になりそうな、被害にあってそうな相談をちらちらと受け始めていて、だったらもう探偵社をやってしまおうと(笑)。それでまあ、今年の3月、つい先日ですね、開業させていただいたという流れです。
絹: 開所式の時にスピーチで、対談もされてたんですけど、その時の記憶を少しリスナーの皆さん方に開陳いたします。探偵社ですと、興信所みたいなもんですか...と僕が質問したんですよね。「沼沢さん、興信所と探偵社は違うもんですか?一緒ですか?」と、非常にバカな質問をしたんですが、「一緒です。だけど寄す処探偵社は、通常の探偵社に依頼されるような浮気調査はしないつもりです」とおっしゃいました。そのこころは。
 

●探偵社ですが、浮気調査はいたしません

沼: ぶっちゃけ言うと、そういうの、ちょっと苦手なんですね(笑)。ただそれだけです。バイトさせていただいた時に、もちろん浮気調査もやらせていただいたりして、ただ自分が活かせるジャンルって何かと考えた時に、警察時代に数多く経験した捜査というところなので、それを活かせる調査をしたいと思いました。
絹: 茨城県警の強行犯係の刑事さんを二十数年なさった時も、尾行だとか、特殊犯対応の訓練をしたり、実際に捜査に参加されたりして、半年間尾行プロジェクトにおられたけれども、つかまえた犯人は全然沼沢さんの顔を覚えてなかったというか、知らなかったとおっしゃってましたよね。
沼: 尾行されていることすら気が付かれなかったようです。
絹: すごいなあって思って。大変ですよね、尾行って。
沼: いやあ、たぶんね、皆さんやられたらできると思います(笑)。
 

●相談しやすい探偵社でありたい

絹: それでちょっと冗談めかして「浮気調査はしない。ハードボイルドな探偵社ですね」なんて思ったんですけど、事例としてご相談を受けていらっしゃるのは、例えばストーカー被害的なものがあるよと教えていただきました。それから例えば女性の1人暮らしなんかで、「留守の間に誰かが侵入しているような気配がある。すごく気持ちが悪いんですけど、そんな時はどうしたらいいんですか?」というような相談が来るんですか?
沼: そうですねえ、はい。
絹: 自分だったらどうだろうと、僕は娘がいませんけど、もし娘がいて京都に一人暮らしをしていて、そんなことになったら、僕なら誰に相談したらいいんだろうと想像した時に、「あ、僕は知り合いに沼沢さんがいるから、相談できるわ」と思ったんですけど、探偵社として考えていらっしゃるのはそういうことですか?
沼: そうっちゃあ、そうです(笑)。ただ相談しやすいという立ち位置に自分はいつもいたいなと思っているので、初対面の方でも、私の知らない方であっても、来てみたら「あ、変なおっさんがいるけど、大丈夫かな」と思いながら相談していただいたら、「結構頼りになるわ、このおっさん」というね(笑)。
53749578_2253361311551725_2716566041625886720_n
 

●依頼が来ないのがベストだと思っています

絹: リスナーの皆さんにお伝えしたいエピソードがもう1つありましてね。
そもそもアートスペース寄す処のバーは、ワンコインでやってるから、乾きものくらいしかなくて、あてが欲しかったら自分で近所のフレスコで買ってきたらいいよみたいな、持ち込み可のバーなんです。それで色んな人が近所から来るんですけど、その常連さんたちも探偵社の開所式にどっとやってきた。その時の彼らに向けた沼沢さんのスピーチがすごかったんですよ。「依頼が来ない探偵社であったらいいなと願います」と、そう言われたんですよね、確か。
沼: そうですね。間違いないです。
絹: それがたぶん「刑事時代、被害者の涙を止める所まではできたけど、ここから先は人を笑顔にする仕事をしてみたいから、京都に来たんだ」とおっしゃったことと繋がるんだなと思って、聞かせていただいておりました。それで、私の話をしていいですか?
沼: どうぞどうぞ。
 

●ストーカー被害は決して珍しい案件ではありません

絹: 私の会社の社員さんのお嬢さんが、以前ストーカー被害に遭っているようだという相談をうちの総務部長が受けて、「自宅まで追跡されている可能性があるので、社宅の部屋をセーフハウスとして提供してもいいですか」という話をだいぶ前ですけど、許可を求めてきたことがありました。「もちろんいいよ」と。でもそこもあぶりだされる可能性もあるので、第二段階のセーフハウスも用意しようと言って、このチョビット推進室繋がりで、同じゲストに来てくださったまちの縁側ハルハウスの丹羽國子さんは宿泊スペースもお持ちですから、相談したら、そのおばあちゃん先生も「いいよ」と言ってくださって。準備までしたけど、結局は使わずに済んで、その相談はなくなったという経験がありますけれども、自分の周りにもそれに類する事ってゼロじゃないんだということを思い出しました。結構あるんですかね。
沼: 結構あると思いますよ。ただ言わない。このくらいだったら大丈夫とか、この程度で誰かに言ったら神経質って思われるから、ちょっと言えないとか、自分の中で抱え込んでいる人って、結構いると思うんですよ。
絹: 告知みたいで変ですけど、リスナーの皆さんの中で、あるいはお友達とかお身内のなかで、ちょっとでもそういう悩みを抱えていらっしゃるようなことを察知されたら、もちろん警察に行かれるのがいいのでしょうし…。
でも元警察官の沼沢さんに教えていただいたんですけど、警察官でもストーカー被害担当者というのは限られていると言うか、マンパワーとしても限界があると。だからすべてに張り付いてガードというところまではなかなかいかないこともあるやろと。
沼: そうですね。なかなか難しいと思いますね。
絹: そんな時に「プライベートアイ」って、探偵さんのことでしたっけ?寄す処(よすが)探偵社にご相談をされると、ちょっと気持ちが安らぐかもしれませんね。
沼: そうですね。話すことで安心するということもあるので、実際に依頼されなくても相談をする。ちょっとアドバイスしてあげる、それだけで安心してもらえたら。
53646062_837347743283861_1156187788580749312_n
 

●寄す処探偵社はこんな仕事をしています

絹: リスナーの皆さんに寄す処探偵社のフェイスブックページから抜き出して少しだけ読ませていただきます。
寄す処探偵社は、ストーカー被害やDVなど、刑事事件等に関係する事案を専門とした探偵社です。
(ここをさして僕はハードボイルドと言ったんです。ちょっとおちゃらけてごめんなさい)
刑事歴二十有余年の捜査経験を活かして、被害回避の方法やセキュリティなど防犯アドバイスだけでなくて、警察との協力体制・連携を有効にするための適切なアドバイスもさせていただきます。「警察に被害届を出したいけれども、取り合ってくださるか心配です」とか、「被害を受けているかもしれない」とか、「事件に巻き込まれて、身に覚えのない罪を疑われている」など、1人で悩まず、まずは相談してみて下さい。相談は基本的に面接のみお受けします。メッセンジャーや電話では、面接相談の日時を決めるなどのアポのみとさせてもらいます。そして信用調査とか、一般の浮気調査などをご希望の方は、信頼できる他の事務所を紹介いたします。
とこのような文面がフェイスブックページにあるんです。皆さんお聞きになってどうですか?沼沢さんがおっしゃるように、依頼が来なくなることがベストだと思われているような探偵さん、探偵はバーにいなくて、アートスペースにいる(笑)。
沼: まあまあ、夜はバーにいますけど。バーで飲んだくれてます(笑)。
絹: 不思議な出会いです。でも沼沢さんの所には人が寄ってきはるという不思議な吸引力をお持ちのスペースを運営されています。そんな中で、ひょっとしたら少し重たい事例もためらわずに相談をされるケースがあるのかもしれません。沼沢さん、何か補足はありますか?
 

●規格外の探偵ですけど…

沼: 絹川さんからもおっしゃっていただきましたけれど、普段の生活の中でそういう悩みも苦しみもなく楽しく生きられるという、そういうお手伝いがしたいという意味で、調査依頼がなくなることを祈って、やっていきたいなと思っています。
絹: さっき、刑事時代のエピソードとして、半年間尾行して逮捕した犯人は、沼沢さんの顔がわからなかったという、このエピソード一つでも腕利きかなあって、思うじゃないですか。
沼: いやあ、その通りではあるんですが、ただ間抜けな犯人だっただけかもしれない(笑)。
絹: もう1つ、取材メモに沼沢さんの思いとして書いているんですが、「SNSに顔出しして探偵なんてありえないかもしれない。それでもやるんや!」と。
沼: もうバンバン顔を出していますけどね。
絹: 隠密で忍者のように諜報活動をするという意味では、顔なんて出してはいけない。だけどちょっと違う探偵さんなんだと。その辺に寄す処探偵社の覚悟の一端が感じられるのかもしれません。そして刑事時代の行動様式についても、面白い聞き込みがありました。「被害者の心をまずよく知らないと刑事なんてやってられるか」とおっしゃいました。「実は思い入れがなければ刑事なんかできませんよ」と。「刑事が感情で仕事をすると言ったら、言い過ぎかもしれまんせんけど。」って、僕、メモってますけど、でもそういうタイプの刑事さんだったんだなと思いました。
沼: そうですね。感情移入しやすい人間なので。
52889946_841754206176548_3016981751097458688_n
 

●尾行、刑事と探偵ではどう違う?

絹: それと探偵あるあるかな、刑事あるあるかな?「刑事さんの尾行は、探偵さんの尾行とどう違いますか?」という参加者からの質問が出ましたね。あれは何が一番違うんでしたっけ。
沼: 写真を撮るか撮らないかですかね。
絹: 面白いことを言われたんですよ。この頃IOTとかICTとかって、色んな機器がいっぱい出ているじゃないですか。うちらの建設屋の世界でも重機のユンボのオペレーターさんのヘルメットのひさしの所に、アイカメラがつけてあって、オペレーターさんが見ている画像が離れた所でモニターで見られるんです。そんな風なことは刑事さんはなさらないんですか?
沼: 基本やらないですよね。
絹: 「事件は会議室の中で起こってない」みたいな俳優さんの青島さんのコメントを引用されて、「キリないからそんなことしたら」「えらいさんに右向け、左向けって、だから刑事時代は状況を的確に言葉で伝えるという訓練をしこたまやりましたよ」と。そんなところから、ああ刑事さんは写真を撮らないんだと。探偵さんは写真を撮るんだと。
沼: 刑事は捕まえてなんぼなんで、写真を撮ってもしょうがないと言いますか。
 

●京都のまちに笑顔を…

絹: 沼沢さん、こないだの開所式、開かれてどうでした?
沼: 思いのほかたくさんの方に来ていただいて、たぶん皆さん、「沼さんだから、おふざけ探偵社かな、イベントとしてやってんじゃないかな」という感覚で来たんじゃないかと思っていて、でも結構本気で真面目にやるんですよっていうのが伝わってくれたかなという…。
絹: 僕もそれで勢いで、沼沢さん、もう一回ラジオやりませんかと言っちゃいましたけれども。
沼: ありがとうございます。
絹: さあ、皆さん、いかがでしたでしょうか。実はすごく重たい問題に関わろうとしていらっしゃる方がここに一人おられます。二十数年の刑事人生の蓄積を、いかに京都のために使えるか。そういうことなのかもしれません。相談がいかないことを望みますと言う不思議な探偵さんではあります。アートスペースを運営されているということで、アートスペース寄す処、そして寄す処探偵社、皆さまの記憶の片隅に置いて頂けたらと思います。
この番組は心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、そして京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。沼沢忠吉さん、ありがとうございました。
沼: ありがとうございました。
投稿日:2019/03/29

第144回 ・あんじょうやります 三条大橋 ~ ふるさと納税で京都のまちづくりを応援しませんか?

ラジオを開く

まちづくり“チョビット”推進室<平成31年1月放送分>

小: 小林 中 氏(京都市行財政局財政部財政課資金調達財源調整担当課長) 
藤: 藤井 豊 氏(京都市建設局土木管理部橋りょう健全推進課長) 
平: 平野 孝明 氏(京都市建設局土木管理部橋りょう健全推進課橋りょう第一係長)
絹:  絹川 雅則(公成建設株式会社)
DSC_0026
左から 小林氏、平野氏、藤井氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲストのご紹介から入ります。いわゆる御池城、京都市役所からお三方お迎えしております。まず京都市行財政局財政課の小林中課長、中さんです。よろしくお願いいたします。
小: 小林です。よろしくお願いいたします。
絹: はい、そしてお二方目、我らが京都市建設局橋りょう健全推進課より、藤井豊課長、よろしくお願いします。
藤:  こんにちは。藤井です。今日はよろしくお願いします。
絹: そしてお三方目、同じく橋りょう健全推進課、橋りょう第一係長、平野孝明さんです。
平: 平野と申します。よろしくお願いいたします。
絹: ちょっと行政マンには珍しく、口ひげ、あごひげ(笑)、たくわえかけ始めた平野孝明さんです(笑)。
さあ、リスナーの皆さん、今日の番組のタイトル「あんじょうやります三条大橋~ふるさと納税で京都のまちづくりを応援しませんか?」と題してお送りいたします。
ゲストの自己紹介に代えまして、ゲストの平野孝明さん、たぶん上司だと思いますが、藤井豊課長とはいかなる人物ぞ、短く述べよ。お願いします。
平: 頼りがいのある親分肌の上司です。
絹: 見るからにそうですね(笑)。藤井課長は我々の中でも最高峰の資格の1つである「技術士」をお持ちの方です。コンクリート診断士でもあられます。
平: 後ほどお話しますが、この三条大橋の取組みについて、色んなアイデアを出して頂くアイデアマンでもあります。
絹: 頼りがいのあるアイデアマンの親分肌の上司、藤井さんでありました。では藤井課長、平野孝明さん、どんな方ですか?
藤: 係員の話をじっくり聞いて、相談に乗っている姿をよく見ておりまして、係員さんから非常に頼りにされている係長さんやなという印象が強いです。
絹: でも結構若いですよね。
藤: 若いんです。もちろん平野係長よりも年齢が上の方からのお話についても、よく聞いてあげて「こうしたらええんとちゃう?ああしたらええんとちゃう?」とお話されてますねえ。
絹: 平野孝明さんも技術屋の憧れの技術士というのはすごいですね。
平: ありがとうございます。
絹: それからもう一方、財政課からの小林中さん。実は僕、今日会ったのは二度目?三度目?
小: 三度目ですね。
絹: この番組を収録するにあたって、打ち合わせをしたんですけど、企画案というペーパーを綿密にまとめて下さって、すごく番組の進行がしやすいなと感謝しております。
ということで、ゲスト紹介を終わりまして、小林中さん、エピソード1行きましょか。
   

■エピソード1 ふるさと納税を考える

  ●ふるさと納税、普及してきていますが…
絹: ふるさと納税、概略説明をお願いします。
小: かなりニュース等で有名になっていますので、ふるさと納税ってどういう制度かというのは、だいたいお分かりいただいているのではないかと思うのですが…。
絹:  特に我々の奥さん連中が注目しておられる方が多くて、例えば九州のマンゴーとか、米どころのお米とか果物とか、はたまた何とかビーフとか、いっぱい頼んじゃったみたいな…。ちょっとそれ、軽すぎますかね(笑)。
小: いえいえ(笑)。実際そうですよね。そういった形で各自治体の皆さんが地元の特産品などを、いろいろ工夫して準備されまして、最近になってかなり制度が普及してきた状況になっています。 
絹: だいぶ人気らしいですよね。「絹川さんとこ、やってへんの?」と言われて調べたことがありますけど。
小: ここ3年程でふるさと納税されている金額が全国で10倍くらいに膨れ上がって、非常に利用が増えてきている状況です。 
 

●京都市にとっては、ちょっと困った状況です

絹: ところが我らが京都市にとって、特に財政当局にとって、ちょっと辛い現象があるそうですね。
小:  そうなんです。厳しい状況でして、先ほど全国的には非常に利用が伸びているというお話をさせていただいたんですが、実は京都市のほうは、ふるさと納税でいただいている、京都市に入ってくるお金は、毎年1億円台で推移しているんですが、京都市から流出していくお金が、全国的な増加に伴って増えて行っていまして、30年度で言いますと、30億円分が出て行ってしまっていると。
絹: 30億円対1億円ですか。大赤字ですね。
小: そうなんです。もともと京都市は財政が非常に厳しいなかで、さらに30億円が流出していくということで、本当に我々財政当局としましては、非常に頭を悩ましている状況でございます。
絹: それはちょっと困った状況ですね。京都市民としても、ちょっと気をつけておかなければいけないことなのかもしれませんね。
小: そうなんです。ちょっとそういう状況があるということを、是非皆さんにもお知りおき頂きたいと思います。
絹: だからこれを何とかしなければならないというプロジェクトチームが、御池の市役所の中にできて、ひょっとして小林中さんと、平野さんと藤井課長とが、そういうメンバーでいらしゃるんですか。
小: そうです。我々みんなでふるさと納税をがんばろうと。
絹: その中で、いろんなアイデアを出しておられるのが藤井さんであったりするんですね。
藤: いや、もちろん平野君も一緒に考えていまして、平野君にも助けてもらっています。
絹: この京都市の取組み、ふるさと納税について、京都市にとって少し困った悩み事を解決しようとなさっている工夫について、少し口火を切って頂けますか。
 

●税金の使い道をしっかりお示しさせていただきます

小: ふるさと納税、確かに最初お話がありましたように、お礼があるということで考えて頂くというのも、一つの考え方であるとは思いますが、京都市としましてはふるさと納税というのは寄附金でありまして、寄附金というのは使い道があって、それに対して寄付していただくということが大前提だと思っておりますので、我々京都市としましては頂いた寄附金をしっかりこういうことに使わせて頂きますということを、使い道をしっかりお示しさせて頂いて、その上でふるさと納税をお願いしています。
具体的に言いますと、今日来ていただいている橋りょうの関係では、三条大橋を改修しますとか、あるいは京都の景観で思い起こして頂くと、京町家を守っていきますといったことですとか、あるいは駅伝の聖地である西京極総合運動公園を改修しますとか。
 

●三条大橋は駅伝発祥の地、西京極総合運動公園は駅伝の聖地です!

絹: 西京極は駅伝の聖地だったんですか。
小: そうですね。実は三条大橋もかかってくるのですが、三条大橋のたもとに駅伝発祥の地という碑が建っています。これは102年前、日本最初の駅伝競走である「東海道五十三次駅伝」が三条大橋をスタートに東京まで行われたという史実に基づいております。まさに日本の駅伝がこの三条大橋からスタートしたということで、三条大橋が発祥の地でありますし、西京極につきましては全国女子駅伝ですとか、全国高校駅伝といった全国的な駅伝が西京極からスタートしまして、京都の都大路をランナーが走ります。今では京都の冬の風物詩ですよね。駅伝の聖地であるというのは、そういうことです。
ekiden_kinenhi
絹: そうですか。小林中さんに口火を切って頂きましたが、あとお二方、皆さん私の本業を覚えておられますか。建設屋です。そうなるとどう贔屓目に見ても、橋りょう健全推進課、やっぱり一緒に仕事をすることもありますので、応援したいと思います。是非橋りょう健全推進課のお二方から、この三条大橋について、第二弾ロケットを発射してください!
 

■エピソード2 ふるさと納税の使い道 京都の場合

●三条大橋の補修修景にご協力ください!
平: ふるさと納税に関わる分といたしまして、返礼品を京都市から出しているのですが、それとは別に三条大橋の補修修景に応援メニューとしてご協力頂けるという形を取って頂いた方には、追加の特典といたしまして、これから工事を進めていく工事現場見学会への優先招待と三条大橋のニュースレター(手元に持っているんですけど)ということで、これから息の長い事業でございますので、どういった取組みをしているかというのを、定期的に皆さんにお配りさせていただきたいと思っております。
IMG_1609
絹: 三条大橋かわら版創刊号となっております。一万円以上のご寄附の方にはオリジナルの手ぬぐいも用意させていただきますと。
平: この三条大橋をモチーフにしました紫色と緑色の手ぬぐい、二種類あるのですが、いずれか一つをお配りさせて頂こうと考えております。
絹: こうやって工夫されていますけれども、一方、行財政局のペーパーには、ちょっと刺激的な文言が踊っております。吹き出しがありまして、「京都市は返礼品競争には与しません!!」。どこか京都市の気持ち、皆さんの気持ちが現れている言葉だと思うんですけど、「武士は食わねど高楊枝」みたいなのに通じるかもしれません。返礼品よりも、何か参加している、「京都市の何とかが好きやねん」という気持ちを言いたいというのが、このフレーズに溢れていますね。
平: 私どものこの三条大橋の取組み、歴史ある三条大橋なんですけど、古くは室町時代に豊臣秀吉がかけたという歴史もございまして、そこから今に至る橋の事業ということで取り組ませていただいているのですが、私達土木職として、正直申しまして、なかなかラッキーやなと(笑)。こういった事業に参加できるというのもありがたいなと思いながら仕事をしております。できましたら三条大橋の歴史というものに思いを馳せて頂いたなかで、一緒に事業をやっていくんだという形の輪の中に入って頂ければという思いをいつも持ちながら仕事をしています。
絹: ふるさと納税という仕組みを使っての三条大橋プロジェクトへの参加要請でありますから、このコミュニティFM放送京都三条ラジオカフェは一応、京都市内110万人に届く力の電波ではございますが、インターネット放送だとか、「ラジコ」というアプリケーションをお持ちで、ひょっとしたら県外、市外、ひょっとしたらニューヨークまで聴こうと思えば聴ける仕組みを整えております。後で申しますキーワードを検索かけていただきますと、オンエアから二日でインターネット上にデータは上がりますし、テープ起こししてテキストデータには2~3週間頂いて、さらに検索をかけて読んでいただくという仕組みを整えております。普段はお聞きいただけない京都市外の方も是非、駅伝の聖地、それから太閤さんがおつくりになった、「あんじょうやります三条大橋」という京都寄附金を、どこか頭の隅に入れて頂けたらと思います。
藤井さん、補足をお願いします。
 

●返礼品の日本手ぬぐいに込めた思い

藤:  今、返礼品のお話があったのですが、日本手ぬぐいは私ども橋りょう健全推進課のホームページを見て頂いたらわかるのですけど、三条大橋は平野が申しましたように、豊臣秀吉さんが今のような擬宝珠の形をつくられています。でも実は室町時代の書物で『兼宣公記』にも三条大橋は載っておりまして、日本手ぬぐいのデザインには、室町時代から現代までの人が描いておりまして、現代に通じてまたその先、子どもが指差しているんですが、この三条大橋を改修したものは、ずっと未来までこのまま持っていきましょうと言う我々の願いもかなえている、この三条大橋の記念品のためだけに作ったものですので、非常に我々としては価値があると今、推しております。
絹: ラジオですので、残念ながら絵柄は見て頂けませんが、京都市建設局のホームページにふるさと納税三条大橋、「あんじょうやります三条大橋」と検索をかけて頂きますと、面白いですね。
左から右へと時代が移り変わって、橋の上を歩いて渡っている飛脚さんのような人もいるし、駕籠かきさんもいるし、お公家さんも歩いたはる、そんな感じですね。ありがとうございます。
さあ、ここまでお聞きいただいて、ふるさと納税と京都市が何がやろうとしている財政当局とそれから建設局が手を結んでタッグチームを組まれてなさることが少しご想像頂けましたでしょうか。さらに「だいすきっ!京都。寄附金」あるいは「あんじょうやります三条大橋プロジェクト」以外にも目指していらっしゃることがあるそうですね。
PC140144
 

●京町家の保全継承にも、ふるさと納税を使わせていただきます

小: はい。先ほども申しておりましたが、京町家の保全継承につきましても、ふるさと納税で御寄付を募っております。京町家につきましては、年間で平均約800軒、一日当たり2軒ほど滅失してしまっているという現状がございます。京都市におきましては、京町家を守るための色んな取組を、たくさんの予算を投入しまして取り組んでいるところなのですが、やはり京都市だけではなかなか守り切れないという現実がございますので、少しでも皆さまにもご協力いただけたらと思っている次第です。
絹: 私はかつて京都市の景観まちづくりセンターに関係していたことがありまして、その中で京都の町家を守るために東京の篤志家がすごい金額のお金を寄付されて、それが元になって町家の基金のようなものができたと。ここに「京町家関係予算、30年度約3億円?」となっておりますが、その一部は都市計画局系のそういう基金から支出されているのではないかと想像いたしますけれども、当たらずとも遠からずくらいですか?
小: そういったものと、もちろん京都市の税金も使って直接事業をさせていただいておりますし、色んな手法を使いながら町家を守っていきたいと思っています。
絹: もし全国津々浦々に町家のファンがおられるとしたら、ふるさと納税「だいすきっ!京都。寄付金」という仕組みを使ってご参加いただけるということですね。
 

●ご寄付を頂きますと、京町家体験のみならず、京都文化の体験も…

小: はい。京町家の保全継承に寄付を頂きますと、「京町家体験ツアー」というのにご招待をさせていただいております。これも一万円以上とか五万円以上とか、寄付額に応じてあるのですが、単純に京町家を見学していただくだけではなく、京町家で京都文化、例えばお茶や京料理、投扇興という扇を投げて遊んで頂く雅な遊びの体験とか…。
絹: やったことないですけど(笑)。
小: 私もないんですけど(笑)。そういった京都文化も一緒に体験いただけるような特典、返礼も御用意しております。
絹: 今度は橋りょう健全推進課のお二人に、もう一度ボールを投げたいと思うんですけど、このプロジェクトに参加されて、いわゆる市民協働みたいなプロジェクトですけれども、何かお感じになったエピソードがあれば、教えていただけますでしょうか。
 

●三条大橋は京都のみならず全国の皆さんの思いをのせて

平: 今回の「だいすきっ!京都。寄付金」に寄付された方のお声を少し頂戴していまして、その中に昔京都にいらっしゃって、今は遠方にいらっしゃるという方なのですが、チラシやインターネットで見た時に、昔の事を思い出して、「三条大橋を通った時の思い出が蘇った」という思いで寄付いただいたとか…。そういった文面を見させていただきますと、やはりこの三条大橋というのは、京都市にあるんですけど、日本全国の方の思いもいっぱい伝わってくるような、大事な物件だなというのをつくづく感じました。この工事に携わる重責と言いますか、プレッシャーも感じながら、そして楽しみも感じながら、いつも仕事をしています。
絹: ありがとうございます。三条大橋を通った時の思い出、ひょっとしたら鴨川アベック等距離の法則とか(笑)、そういうのを橋の上から見ておられたのかもしれませんね。
藤井課長は何かお感じになったことはありますか?
藤: こういった取組をするということをお話しましたところ、三条小橋商店街さんのほうが先に色々ビラを作って頂いたり、商店街の前に立てる旗なども作って頂いたり、全力で応援していただきまして、やはり地域に根付いている橋だなというのを、今回改めて感じているというところです。
絹: リスナーの皆さん、いかがでしたか。行政の方のお顔というのは普段なかなか見えないし、感じる事はできません。けれどもこうやって実際にそれぞれの御担当で、一般の方々と繋がって、やりがいを持ってという方の生の声をお聞きしますと「あ、すごいな」と正直に思いますし、何よりもうれしいのは、我々建設産業に携わる者として、三条大橋への応援をよく募ろうぜと。
 

●三条大橋の「擬宝珠(ぎぼし)」、よくご覧になってみてください

絹: あ、うっかり忘れていましたが、先ほど擬宝珠という言葉が出ましたが、ひょっとして専門用語に近いところで、一般のリスナーの方にはイメージできないかもしれませんので、擬宝珠についてちょこっと説明をお願いできますか。
藤: 三条大橋で言いますと、欄干にたっている柱、48㎝の直径の大きな柱があるんですが、その上に被さっている青銅製の帽子みたいなものですね。
絹: 擬態の「擬」に「宝珠」と書いて擬宝珠(ぎぼし)と読ませます。橋の高欄の上の部分の青銅製のものであると。幕末の刀傷が残っていると言われています。結構、この高欄の部分や擬宝珠の部分がなくなっているような橋もあったりするんですよね。だから風情のある昔のものに戻したいねというようなお声もあるけれども、やっぱりお金もかかることでもあるしということです。
buzukari
 

●税金の使い道を私たちが決められるということ

絹: 土木遺産とか、インフラ構造物、それからこうやって行財政局、建設局の方々がタッチされている仕事というのは、普段我々市民の目には届きません。あるいは足元にあって、生活のインフラとか、目に見えない大切な血液の流れとして仕事をされています。でもあって当たり前のエネルギー、ライフラインが止まった時、あるいは水道・電気・ガス、それからバスが来ない、橋が通れない、あって当たり前の事がプツンと途切れた時に、我々一般市民は「わあ、困った。どうしよう。いったいどうなってんねん!」と文句を言ったり、「ワシら税金払てんのに、どうしてくれんねん」と言うような人もいるかもしれません。さりながらこの「だいすきっ!京都。寄付金」「あんじょうやります三条大橋」というようなプロジェクトは、我々が市民として義務の、あるいは権利かもしれません。税のお金の使い道を、自分が応援したいことに振り向けられるという画期的な仕組みかもしれません。返礼品に目が行くのは当然なんですが、そういう参加意識、自分の税の使い道のようなものにも目を向けていただけたらと思います。ちょっとかっこいいこと言い過ぎましたか。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、我らが京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。ありがとうございました。
全: ありがとうございました。

 

投稿日:2019/02/14
PAGE TOP