公成建設株式会社は、建設業を通じて、豊かな国土づくりに邁進し、広く社会に貢献します。

まちづくりチョビット推進室
TOP > まちづくりチョビット推進室 > 第182回 ・都市計画の見直し(案)を読み解く~わかったようでわからない都市計画の見直し(案)をひらがな化できますか?

第182回 ・都市計画の見直し(案)を読み解く~わかったようでわからない都市計画の見直し(案)をひらがな化できますか?

ラジオを開く

山: 山口 耕平 氏(京都市都市計画局都市企画部都市計画課 特別用途地区・まちづくり条例 担当係長)
絹: 絹川 雅則(公成建設株式会社)
        (山口 耕平 氏)

 

絹: 皆様こんにちは。そしてこんばんは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお伝えしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日のゲストですが、ラジオカフェのご近所さんからお招きしております。京都市都市計画局都市計画課から、担当係長の山口耕平さんをお招きしました。山口耕平さん、よろしくお願いします。
山: よろしくお願いします。
絹: 私と山口さんの出会いは、まだ最近なんです。直接会ったのは2~3度くらいですね。
山: そうですね。年末くらいから。
絹: リスナーの皆さん、結構大きな変化が都市計画と呼ばれる分野で起こっているんです。そのことを勉強したくて、山口さんの上司である平井部長(僕が勝手に京都市のエースかなと思って尊敬もしている方なのですが)のところに行きまして、「今回の都市計画の大きな見直し変更、一般市民の方(私も含め)専門家ではない人たちにとって、ちょっとわかりにくいかもしれません。ラジオカフェで番組つくれませんかね。」とお聞きしたら「いいよ」と言ってくださって、しばらくたって「俺が行くより、うちの若い衆を出すから、頼むわ」とご紹介いただいたのが山口耕平さんです。では山口さん、自己紹介をお願いします。
山: 都市計画課で係長をしています山口と言います。市役所でも十数年働かせて頂いていまして、都市計画課に来ましたのは、去年の4月で、それまでは建築指導部というところで、建物の申請等の業務をしていました。去年の4月に来て、この見直しを引き継いでやっているという形になります。
絹: 今日の番組タイトルをどうしようと、実は打ち合わせをしておりました。タイトルの決定にもちょっと苦労しましたけれども、「都市計画の見直し(案)を読み解く~わかったようでわからない都市計画の見直し(案)をひらがな化できますか?」と題してお送りいたします。冗談めかして言いましたが、すごく分厚い資料が手元にはあります。でも一般の新聞やテレビの報道では本当に一部分切り取ってしか報道されてないような気がしまして、私の希望としては山口さんにその背景、パンチラインを、ひらがな化して解説いただけませんかと、無茶ぶりしました(笑)。リスナーの皆さん、すごく大きな変化が起ころうとしているんだよということをご注目ください。
 

■エピソード1 そもそも京都市は今、何をしようとしているのか

●今回の見直し案、目的は高さの緩和ではありません
山: まず都市計画という言葉について、ご説明したいと思います。色々あるのですが、一番大きいのは道路や鉄道、公園などをどこに配置するかというところや、どこにどんな建物が建てられるかということも決めています。今回その見直しをしようとしているのは、建物の建てられる場所や大きさについて変えようとしているということです。テレビや新聞では高さの緩和がされるということが注目されているのですが、実は目的は高さの緩和ではないということをご説明できればと思っています。
絹: 大事ですね。リスナーの皆さん、気を付けなければならないのは、所謂マスメディアでは本当に一部だけ切り取って伝えることが多いよと。そういうことを山口さんの口から説明していただこうとしています。
 

●京都市では子育て世帯の流出、オフィスの不足が深刻です

山: その背景なのですが、それも結構報道されているのですが、京都市では人口が減っており、特に子育て世帯が流出しているということ、それから(これはあまり報道されてないかもしれませんが)オフィスが結構不足しているという問題が起こっています。それで住む所働く所が足りないという状態が今起こっているということです。
絹: これを聞いて、1人の京都市民としてちょっと悔しいなと思うんです。私事で恐縮ですが、私の息子も京都市民から亀岡市民になってしまいました。うちの会社の社員さんなども、滋賀県で庭付きの住宅を買いたいという人が多かったりして、何かやっぱり京都市の中心部や京都市内が子どもを育てたりするのに、ちょっとしんどいと思っている人がいるようです。土地の値段が高かったり、マンションの値段が高くなりすぎていたりと、そういう理解でいいですか?
山: そうですね。人口が減っている理由については、京都市は色々あるとは考えているのですが、やはり元々京都と言うのは土地が狭いこともあり、その関係でマンションやオフィスはもっとつくりやすくしていかないといけないよねというのが課題としてあるかなとは考えています。
そういう問題に対応するために、京都に今必要な機能や建物は、これまでよりももっと建てやすくして、それを誘導していこうとしているのが今回の見直しのスタートになっています。
ただ、ここでしっかりとお伝えしておかねばならないのは、これは京都市の中でも京都の景観の守るべき骨格というのがあって、それは絶対に守っていきましょうということを前提に今回の見直しをしているということなのです。
 
      (※京都市HPより 京都市の年代別社会動態グラフ(日本人のみ))
 

●新景観政策は守ったまま、見直しを進めているのです

山: 骨格というと言い方が難しいのですが、京都は盆地の地形になっているので、中心部では御池通などはある程度高い建物を建ててもいいのですが、そこから山に近づくにつれ、だんだん建物の高さを低くしていくという考え方が京都にはあります。それは平成19年の新景観政策で始まったものになるのですが、今回それから15年経って、新景観政策を守ったまま今回の見直しを進めているというのが、しっかりお伝えしておかねばならないことかなと思っております。
絹: 私はご存知のように職業が建設屋でございます。平成19年に始まった新景観政策について、必ずしも大賛成していたわけではない業界の1人です。すごく厳しくなって、仕事がやりにくくなったという印象が強い、特に不動産、建設関係です。でも今回そのことを見直していくというのは、例えば大文字が見えなくなろうが、有名ないい雰囲気の古いお寺の周りに何が建とうが知らんというのではない。京都の景観や都市格はやはり今回の見直しでも守りたい、石にかじりついても守りたいという気持ちは持ちつつ、そうではない部分で大きな見直しがあるということですね。
 

●都市機能と住環境のバランスをしっかり見ながら

山: 少しややこしいのですが、15年前の新景観政策で決めた事自体を変えるものではなくて、あくまでもそれは守ったままで、バランスをとりながら見直していくということなのです。
絹: なにか報道だけ聞いていると、「あ、京都市、方針変えた?」という風に誤解している人たちもいるけれども、元々の方針は「俺たちは間違ったことを言うてへん!」と。だけど今人口の減少だったり、若者、子育て層が流出していたり、オフィスが足りなくなったりするのに、今できる見直しを色々考えた、それをまず見てくれと。
山: そうですね。元々新景観政策自体も、時代と共にちゃんと進化していくものだという言い方をしています。ですので今回の見直しも、景観もあるけれども、先ほど申し上げた建てた方がいいもの、そこにあるべき機能(都市機能という難しい言い方をするのですが)と、それを建てた時の周りの住宅への影響(今お住まいの方の住環境へ影響)という、景観と都市機能と住環境のバランスをしっかり見ながら検討していきました。
 

■エピソード2 例えば外環状線沿道、こんな風になればと考えています

●山科駅から六地蔵駅までの外環状線の沿道、ちょっとイメージしてみてください
絹: 今の流れで、象徴的なエリアで、山科の外環状線沿いのことにそろそろ切り込んでいただけませんでしょうか。
山: 今回の見直しは全市的にということでさせていただいていて、今ご指摘いただいた山科の外環状線沿道、山科だけではなく伏見も含めて東部方面という言い方をしているのですが、山科駅から六地蔵駅までの間の外環状線の沿道について、これまでよりも建物を少し建てやすい形、大きさも少し大きくできるように変えているんです。
絹: リスナーの皆さん、イメージしてくださいね。山科駅から外環状線で椥辻駅、醍醐駅を通って六地蔵駅とずっと南へ行く、この外環状線の線上について、少し考え方を変えていくんだよとのことです。さて、そのこころは。
 

●もっとここに若い世代が住みやすいまちをつくりたい

山: 「ここにもっと若い世代が住みやすいまちをつくりたい」というのが、そのこころになります。
絹: 先ほどの山口さんの言葉を借りますと、「地下鉄が通っていて、その地下鉄と連携して外環状線沿いに色んな建物があり、あるいは賑わいがあって、安心して子育て世帯や若い人たちが歩きたくなるような建物や施設群が誘導されてくる、そのような都市計画の見直しをやってみたんだと。
山: 今まででしたら、単純に大きく建てたり高く建てたりできるよという変更をすることが多いのですが、今回は高く建てるためにはちゃんと歩道を広げてもらったり、一階にお店を入れてもらったりなど、条件をつけさせて頂いていて、そういうものについては少し大きくつくってもいいよというルールにするんです。ですからそういうお店ができたり、歩道が広がったりといったことを実現していこうと考えています。
絹: 地下鉄との連携ですね。歩いて楽しい、そんな都市。東部方面の外環状線の沿道と書いてありますね。賑わいと潤い溢れる地域コミュニティや文化の創造拠点、言葉にすると難しいかもしれませんが、でも若い子育て世帯の人が、暮らしやすくて、住んでいて楽しいと言えるエリアになるといいよねという願いが込められた都市計画決定の変更であると。
山: そういうことですね。
絹: 条件を満たす場合には、高度地区、無制限に?
山: これも結構「無制限」というのがかなり色々話題にはなっているのですが、元々31mの高さの規制がありました。これがだいたい10階建てくらいになるんです。ただその高さの規制があるなかで、結構ぎゅうぎゅうに建っていると言いますか、外環状線の沿道にせり出して、今、建物が建っている状態なんです。つまり外環状線の歩道があって、そこから建物がすぐあるような状態で、なかなか歩きやすい感じがしない。それを今回高さを31mよりは高く建てられるようにする、無制限とあるのですが、実際は費用的な問題や法規制の問題でいくらでも建てられるというものではないのです。今よりは自由に建てていただけるようにすることで、もう少し下がって建ててもらって、お店を入れてというようなことをすることで、外環状線沿いがもっと楽しい、暮らしやすいエリアにしていくということですね。
 
        (※国土交通省HPより 絵で見る都市計画)
 

●御池通をイメージしてみてください

絹: リスナーの皆さん、イメージして頂きやすい例として、京都市のメインストリートの1つである御池通、何か歩きやすいですよね。あれはなんでかと言いますと、歩くスペースが広いからなんです。
山: そうです。そして御池通も一階にお店を入れないといけないという山科と同じルールが実はあります。それで一階にショールームとか、ハンバーガー屋さんとか、コーヒー屋さんなどが入っているということですね。
絹: 何か御池通をそぞろ歩いている、そこから三条通に下りていく、「三条通がそれ以前よりなんだかすごく良くなったね」みたいなことを感じた時期がありましたよね。ああいう歩いて楽しいという、あの時の感覚を外環状線沿いにも欲しいなと誰かが思ったのかもしれませんね。
本当に今回の、用途地域や容積率、高度地区等の見直し案は盛りだくさんで丁寧に説明しているとすごく大変なので、今無理やり大づかみに無理をお願いして山口さんに解説をしていただきました。次、解説をプラスするとしたら何ができますか。
 

■エピソード3 京都市の都市計画、もっと広く知っていただきたい

●パブリックコメントのご意見からー高さ規制と騒音問題
山: 今回のパブリックコメントでいただいたご意見をご紹介したいと思います。私が直接ご意見を伺いに行った中ですごく印象的だったお話です。五条あたりのマンションに住まれている方なのですが、マンションの天井が非常に低く、以前住んでいた大阪のマンションに比べて、上の階の音が響くということで、たぶん床の構造が高さ規制で薄くなっているせいじゃないかということでした。実際に上階にはお子さん連れのご家族が住まれていて、音が響く旨をお伝えしたことがあるようなのですが、その関係でその方が引っ越されたと。そういう意味で高さ規制ということが(その人は賛成なのですが)、子育て世帯が住みにくくなっている事もあるのかなというお話をされていました。それを聞いてすごく私も難しいなと思いながら、やはりどちらも大切なことだなと印象深かったですね。
絹: 今のお話を補足いたしますと、高さ制限がかかっている所で、共同住宅を設計したり建設したりすると、部屋の内々の高さをある程度犠牲にして、要は天井が低い建物を頑張ってつくることになります。防音対策としては、ボイドスラムという空気の円柱と言いますか、茶筒の親分みたいなものが床の中に入れて、音が響かないようにするわけです。ただその工法を採用すると、床の厚みが厚くなってしまいます。たぶんその方は建築の知識のある方だったんですね。そういう厚い床の工法を取れないから、ひょっとしたら上階の音が大阪のマンションに住んでいた時よりも伝わってきたのかもしれないと想像されたと。
山: そうですね。その人のちょっと感覚的なところがあるのですが。
絹: でも高さ制限があまりなければ、天井の高いおうちに住めるかもしれないなというのは、あるかもしれないですね。
山: そこのバランスですよね。京都の守りたいものと、環境の。
 

●今回の見直し案について、市民の方から大変高い関心をいただいています

絹: 今回の都市計画の見直し案について、869通、2445件の意見が寄せられたというので、市民の方から関心が高かったんですね。
山: そうですね。以前、4年くらい前に行った時の意見数のだいたい2~3倍はご意見をいただいていたので、そういう意味ですごく注目していただいたなと思っております。
絹: その分析、解析のため、一回読むのに8時間以上かかったと。それを何回も繰り返して、へとへとになっておられたのが、ここにおられる山口さんです。
山: いえいえ(笑)。
絹: でも京都市の担当の人はそうやって、皆さんどんな意見を持っているのかなというのを丁寧に読み解こうという努力は続けていらっしゃいます。ですので一般の方々には専門的すぎるような用語が使われているホームページの資料などもありますが、なぜこういう見直しがなされようとしているのかを、ひらがな化して読んでいただけると、これに携わった方々はありがたいなと思われるかもしれません。
 

●京都市には元々高さ制限のないエリアもあります

絹: それとあと1個だけ。元々高さ制限がないエリアでも、今回の見直し以前から京都市にはあるのよと。僕、意識してなかったんですけど。
山: そうですね。あまり京都市内の方もご存じないんですけど、京都駅よりもっと南に行った十条通と鴨川と国道1号に囲まれた辺りや、鴨川より南側の京セラのビルのあるあたりのちょっと南側周辺も、京都市では「らくなん進都」と言って、産業を集積する地域として、その辺りは元々高度地区と言って高さの規制がなかったりします。
 
  (※らくなん進都整備推進協議会HPより 「らくなん進都」エリアマップ)
絹: そういう場所だって、ちゃんと京都市は計画しているんですよと。
山: そういうことは京都市外の方はもちろんご存知ないし、京都市内の方も実はあまりご存じない方が多いこともあるので、そのあたりもしっかりわかっていただけるようにしていかねばとも思っています。
絹: ですから広報というのは大切ですね。今回の有識者委員会でも京都市の都市計画が厳しすぎるという印象を持っている人が多いよというところから、実際にいろんなことを考え始めたということも教えていただきました。
山口さん、今日話してみられてどうでした?ご感想など一言。
山: まさに最後にお話させていただいた通り、やはり都市計画って色んな方に知っていただくことが一番大切だと思うので、実際に進めて行くにあたって、今日こういう場をもたせていただいて、非常によかったなと思っています。
絹: ありがとうございます。本当にこれは29分の番組で説明するのは無茶ぶり過ぎる話で、そんな注文を出してすみませんでした。
でも、リスナーの皆さん、とっても大切な変化が起きようとしています。そしてそのこころは、外環状線に代表されるように、賑わいと若年層、子育て世帯の人たちが住みやすくなる建物群に来てほしいということ。そして若い人たち、子育て世帯の人たちが住みやすくなる京都市になんとか変化させようと、都市計画の専門家の人たちが考えていらっしゃること、伝わってまいります。京都市の行政の方々は一生懸命仕事をしても、自らの仕事を喧伝することをしないのが通例です。こうやって一生懸命フラフラになりながら仕事をしている人たちを見付けたら、「ご苦労さん」と一声掛けてあげていただけたら幸いです。
ということで今回は少し硬いお話になりましたが、京都市のホームページなども是非ごらんください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都市景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。それでは皆さん、ありがとうございました。山口さん、ありがとうございました。
山: ありがとうございました。
投稿日:2023/02/02
PAGE TOP