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第150回 ・引きこもりシニア 生活訓練の日々@ハルハウス~兄の思い 自立をめざして

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丹: 丹羽 國子 氏(一般社団法人 まちの縁側クニハウス 代表理事)
絹: 絹川 雅則 (公成建設株式会社)
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丹羽 國子 氏

 

絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとのご紹介や、その活動の最新のエピソードをお届けしております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲストは久方ぶりのご登場です。当チョビット推進室、何と3回目のご登場、丹羽國子先生です。よろしくお願いします。
丹: 丹羽でございます。クニさんと呼んでください。お願いします。
絹: この番組のヘビーリスナーの方でしたら、ひょっとしたらご記憶かもしれません。「丹羽先生」と言ったら怒られるんですが、でも僕は佛教大学の教授でいらした時に出会っておりますので、ついつい「先生」と言ってしまいます。社会福祉学科の教授であらせられました。その前は看護婦さん?婦長?脳外科とか新生児病棟にもおられたとかおっしゃっていましたね。
丹: そうです。
絹: そもそも丹羽國子さんとのお出会いは、”まちの縁側 クニハウス””まちの学び舎 ハルハウス”でした。ご自宅を朝の6時から夕方の16時まで年中無休で開いていらっしゃる、とっても珍しい空間を運営していらっしゃるところに、私は入りびたるようになりました。“ハルハウス””クニハウス”検索していただくと、どんなすごいことをなさっているかわかると思います。ということで今日は”まちの学び舎 ハルハウス”の代表であられて、一般社団法人の代表理事である丹羽國子さんです。
それでは本日のタイトル、これ、どういうふうにしようと言っていたんでしたっけ。
丹: 「ひきこもりシニア 生活訓練の日々@ハルハウス~兄のおもいから 自立を目指して」ということでお願いします。
 

■エピソード1  引きこもりシニアとの出会い

●全国の精神科病院を巡り歩いて
絹: リスナーの皆さん、今日はちょっと重たいかもしれませんが聞いてください。さあ、どんなお話になりますやら。クニコ先生、エピソード1からまいりましょう。そもそもプライベートな 、非常に重たい問題ですから気を付けてお話しないといけません。御年58歳になられる男性が色々ご事情があって、30歳頃からご自宅に引きこもっておられました。そのお兄様が60代で、たぶん僕と同じくらいの年ですかね。僕は61ですけれども。
丹: お兄様は62歳です。
絹: そしたらほとんど同じ年ですね。そのお兄様がなんとか弟さんの面倒をずっと見てこられたんですけれども、丹羽先生のところへ、ハルハウスに来られたんですよね。なんで来られたのか、そのあたりから紐解いていただけますか。
丹: はい。今年の8月の下旬にお兄様が来られて相談になりました。「自分たちは先に死ぬ。弟一人になると困るだろう。嫁や息子たちはあてにはならないし、なんとか自分の目の黒いうちに自立してほしい。行きつくところにたどり着いたのが”クニハウス”でした」と。
絹: クニハウスやハルハウスの噂を、そのお兄様はどこかで聞かれたんですね。
丹: そうですね。本当に若い頃から”森田療法”で2回も京都の山科や左京区で入院して、治療も受けられたそうです。それから全国の精神科病院に入院したりして…。
 

●日々の暮らしと将来への不安と

絹: 色んな所にお兄様はお連れになったんですね。この間、教えていただいたところによりますと、お兄様はご自身の会社を経営されていらして、結構ご自宅にスペースがあったので、弟さんが住む離れの一階には、お兄様の息子さん夫婦がお住まいになって二階にその弟さんがお住まいになっていたと。
丹: そうですね。
絹: ただし、ほとんど外出されないし…。
丹: もう昼も夜も寝た切りと言いますか。おなかがすくと甘いものをコンビニに買いに行かれるくらいで。何もしなかったようです。
絹: で、やっぱり加齢臭と言うんでしょうか、匂いもするし…。その弟さんが30歳の頃にお母さまがお亡くなりになって、色々なご事情があって、それ以来引きこもるという状態になられた。当時は統合失調症と診断されていたと教えていただきましたね。
丹: そうですね。でも最近の病名は違って、うつ病という診断を受けているということでした。だから私は「お兄様が先回りしてやるよりもご本人の意思が必要だから、もう一回ご本人といらしてくださいませんか」とお願いしましたら、9月早々、お二人で見えました。
絹: なんかトランクを引きずって来られたということですね。
丹: そうなんですよ。もうこちらで宿泊できると思われたのか、着替えなども入れてお兄様に連れられて来られて、下向いて黙って座られただけですが、「私ではなくて、あなた自身がこれからの人生をどうしたらいいか、そのことをお兄様が心配されてこられたんですけど、そこはいかがですか」というふうに伺いました。
 

●ハルハウスのこと

絹: リスナーの皆さんのためにちょっと追加情報です。千本北大路下がる”ライトハウス”の東側の辺に、それから有名な船岡山の西側に、この”ハルハウス”は位置しております。先ほど申しましたように、非常に不思議な居心地のいい場所でして、朝の6時から16時まで年中無休で、朝雑炊という変わった美味しいお雑炊を提供していらっしゃるのは10時まで。
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丹: いえいえ、ずっと4時までやっております。
絹: 3.11など色んな災害があった時に、東北から避難して来られた方も泊まられたようです。3階のベッド数で言うと3つあるのですかね。
丹: 3つあります。寄宿ですね。
絹: 寄宿舎みたいな形で、例えば佛教大学のスクリーニングの人が止まりに来ることとか、あるいは、私みたいに嫁さんに追い出されたらあそこへ行って泊まればいいやみたいな、セーフハウス的に使う人がいるのかどうかわかりませんが、そういうお部屋もお持ちになっていると。そこへ今、泊まられているんですか。
 

●早寝早起き朝ごはん

丹: そうですね。本人が「お兄さんにいつまでも世話になっているわけにはいかないし、なんとか自分で働いてみたいと思っている」みたいなことをちらっと言われて、「これまでの生活で脳の神経細胞が栄養失調になっていますので、朝は女王様のように、昼は王様のように、夜は乞食のような食事で、生活訓練をやられたらいかがでしょう。90日で神経細胞が変わると言われていますので、100日くらいはかかると思いますけど、それでもあなたはそれをやる決心をされますか」と。「だからそれをきちんと決めたら、いらしてください。トランクは置いておいてもいいですけど」と言って引き揚げてもらいました。
絹: リスナーの皆さん、ここで一つポイントです。今おっしゃったのは丹羽先生の持論であります。「早寝早起き朝ごはん。それから読書」でしたっけ。うつ病などで引きこもりと診断されて薬物投与が始まりますと、脳の構造から言って、神経細胞がどうも痩せていくらしいという研究があるようです。私は門外漢なのでわかりませんが、これは丹羽先生の持論であります。そして生活のサイクルが狂ってしまった人に、早寝早起き朝ごはん、朝ごはんは女王様でしたっけ。
丹: 女王さまのように、昼ごはんは王様のように、夜は乞食のように。
 

●転地療養してみませんか

絹: というような基本的な食生活と、それから人とかかわること。さらに今回クニコ先生が思われたのは転地療養がいいよと。お兄様にそうおっしゃったんですね。
丹: そうです。お住まいの所から別の区域へ行った方がいいと。転地療養の方が本人もシャキッとすると思いますので、よろしかったら京都へお越しくださいということを伝えました。
そしてそれを決心したからということでお電話がありました。「ご本人から電話が欲しい」と言ったら、お兄様から本人と代わるということで、ご本人が「お願いします」と言われました。
絹: 今のは口真似ですね。
丹: そうです。ぼそーっと言われました。
絹: もう一度、追加情報です。なぜ長いこと引きこまれていた方の62歳のお兄様がわざわざ遠くからお越しになったでしょうか。というのは、噂が色々伝染しているわけです。今まで、ハルハウス・クニハウスでこういう転地療養をされて元気になった人がいるらしいというのが人口に膾炙していると解釈できるのですが。
 

●朝日をおでこに当てましょう

丹: そうかもしれません。実は日本人は西洋の方に比べて腸が1mも長いんですね。それは地球の中で住む所によって生活様式が違うし、一人ずつ違うから。それなのに西洋のマネをしても病気をつくるだけじゃないかと思います。それで日本人として本来の生活様式、それに農業とか、林業とか漁業の生活を基にした「早寝早起き朝ごはん」がきちんとありますので。それともう1つ大事なことは、前額部つまりは額に太陽が当たることなんです。特に朝日。
絹: はい、毎朝守っています!
丹: そうです。それが元気の素なんです。セロトニンという物質が出るそうですから、そのために京都は条件がそろっているわけですね。どういうことかと言いますと、朝6時に船岡山公園でラジオ体操クラブが活動しているんです。会員は120名ほどいますけれど、ボランティアで放送設備を整えていただいて、6時半からラジオ体操です。だいたい80人くらい、寒い日でも50人くらいは参加しています。ですからご本人は6時起床して、6時半からラジオ体操をやって、それから7時に朝食をいただきます。
 

●クニさんの京雑炊

丹: この朝食は「クニさんの京雑炊」と言って、商標登録も済んでいますし、京都市内164店舗のうちの唯一の「六つ星」を頂いた雑炊です。今日も和歌山県からご夫婦でみえて、「おいしいから持って帰れますか?」と言われるから、「フリーズドライの製法にして、ローリングストック食品として、この間日本災害食学会で発表したものですよ」と言いましたら、「こんな美味しいものなら」と10個買っていかれました。
絹: 追加情報です。ローリングストック食品という形で乾燥したもので、もちろんその場で食べる雑炊が一番旨いのですが、海外に遠征したり日本国内に遠征したりするスポーツ選手が好んで求めて持っていかれるそうですね。
丹: そうですね。毎朝食べていらっしゃいます。遠征時はその数だけ持って行って、そこで食べると。金メダルを一番初めに取られた時は、途中下車して見せてもらいました。今は3つ目を取って、東京オリンピックにリベンジしたいと言っておられます。バトミントンの選手です。
絹: 私もご縁がありまして。栄養指導を受けたり、生活指導、「朝、おでこに太陽を当てる」というのを受けて、100%実は守れていないんですけど、おかげでだいぶ元気になってきました。
さあ、ハルハウスの当該58歳の長らく引きこもっていらっしゃった方が転地療養をして、ハルハウスの寄宿がスタートいたします。そのあたりからお願いします。
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■エピソード2 クニさん式生活指導を体験して

●当たり前の生活を覚えましょう
丹: 一週間は毎朝6時にドアを叩いて、「起きてください」と起こしに行きました。そうすると帰ってきたままの姿でベッドに入って、起きたらベッドをそのまんまにしてラジオ体操という、そういう生活なんですね。ですからおじさん臭がムンムンとしています。お部屋いっぱい。それで窓を開けて、布団を干すという、もう日光が燦燦と当たる部屋ですので、それをやってもらいます。これを全部教えるんです。それで10日目くらいから、毎朝自分で行くようになりました。
絹: 船岡山のラジオ体操クラブへ。
丹: そうです。そしたら向こうの人も信用されたのか、ラジオ体操カードというのに印鑑を押してくださるようになっています。
絹: 始めは食事も早食いで、5分で食べて後はぼーっとしておられるだけだったとおっしゃってましたね。
丹: そうです。そのまんまベッドへ行って寝るんです。
 

●感謝の言葉、謝罪の言葉、出会いの言葉、別れの言葉を、言われた方がいいですよ

絹: それが8日目で出かけるようになられて、フォーベイシックワーズと教えてもらったのでしたね。
丹: 挨拶も何もせずに、黙って行って、黙って帰って来るわけです。「58年もそういう生活をやられたのだから無理かもしれませんが、世界共通のフォーベイシックワーズだけは言われた方がいいと思いますよ」というアドバイスをしました。フォーベイシックワーズというのは感謝の言葉で「ありがとうございます」、それから謝罪の言葉「すみませんでした」、それから出会いの言葉「おはようございます。こんにちは」、さらに「行ってきます」という別れの言葉です。別れというのは、もうその時に最後かもしれませんから。このフォーベイシックワーズというのは世界共通ですので、外国へ行かれるときには、行かれる国のフォーベイシックワーズを持っていかれるとうまくいくと思います。
絹: 本当にこれ、海外に行かれる時はいいですよね。これだけ覚えて行けば、まず溶け込めますよね。
 

●毎日、どこかへ出かけてみませんか

丹: そんなふうで、この方は寝てるということが好きなんだけど、まず睡眠が長いとどんなふうになるかということです。うつ病とか認知症になりやすいんです。それと糖尿病の確率もあがります。ましてや糖尿病のある方ですので、これは寝させておいてはいけないと。だから金閣寺、銀閣寺と毎日行ってもらいました。お金のいらない所で行ける所を探して。そしたら比叡山延暦寺に行かれた時に初めて、帰ってきて「よかった…」と言われたんです。
絹: 確かそれって、ハルハウスに寄宿して25日目あたりですよね。「比叡山行ってらっしゃい」「どうだった?」そしたら「よかったあ…」とおっしゃったわけですね。
 

●働いて、みませんか ー むつみの家のこと

丹: そうなんです。それで比叡山は先日も行かれまして、最澄の秘宝が展示された時も行ってました。何か気に入ったようですね。それでこれなら昼間、働ける所はないだろうかということで、”むつみの家”という所でB型支援事業というのをやっていらっしゃることを知っていましたので、そこへ行かせていただくようにお願いしました。
絹: “むつみの家”小山初音町、ハルハウスから歩いて30分。横山理事長、布富施設長がおられるところですね。
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丹: ここはお父様の代の時に、ボランティアで一人暮らしの人のために配食サービスをやってらっしゃるところなんです。私も設立の時からずっとボランティアで関わっていて、息子さんの代になってもずっと続けていらっしゃるので、これはいいんじゃないかと思ったわけです。それに昼ご飯が毎日違うということも大事なんですね。王様のようなご飯を食べていただきたいものですから。それで大学の食堂に行きなさいと言っても、なかなか行けないから、そこのほうがいいんじゃないかということで。
絹: “むつみの家”で昼飯にありつこうと。
丹: そうです。それで配食サービスの弁当持ちをやられたら、少しは人と関われるのではないかと。
絹: お手伝いして、まかないで食えるぞと。
 

●就労支援を受けながら、踏み出す一歩

丹: そうです。それで弁当代が580円とか600円とか要るんですけど、是非にとお願いしたら、京都市役所の障害の人の保健センターで許可をもらってほしいと言われたんです。そこで「私が主役じゃないのよ。あなたが主役だから自己紹介とか、書類もあなたが書いていただきたいから、私は同伴するだけですよ」ということを断わって、保健所へ二人で行きました。それで色んな書類とか面談とかありまして、一昨日許可が出まして、これで当分行けるようになりました。
絹: ということは、引きこもっていらっしゃった当該のシニアの方が”むつみの家”でB型支援のお手伝いをするということで、公的な助成が”むつみの家”に入るようになるということですね。じゃあ、サポートが始まったんだ。うわああ、30からずっと引きこもっていた人が実際にそこまで行ったんですね。
丹: 今度の18・19日は実家の方で月に一回のうつ病の受診日なんです。その時は一泊で行くのよと。その朝は天気が良ければシーツを洗いましょう。月に2回はシーツ交換して、全部を洗うのですが、その洗濯をやったことがない。洗濯機の使い方から糊付けから、全部教えて、もう3回か4回になりますけど、今度の18日の時も「あなた一人でできますね」と言ったら、「はい、やります」と言ったから見守りたいと思います。
 

●一つひとつ覚えてもらいました

絹: ワイシャツの糊付けも「やってみる?」と言われたそうですね。その時、笑えるエピソードがありましてね、糊があるじゃないですか。「ひと瓶全部使うんですか?」と(笑)。
丹: 「ひと瓶全部使って、それをまくんですか?」と言うから、「ここに注意書きが書いてあるから、それを読んで薄めて使ってください。それから洗濯機は二槽式だから、終わった後は必ず開けておかなきゃいけないのよ」とか、そういうことまで教えるんですね。生活指導ですから、苦にはなりませんけど(笑)。
絹: リスナーの皆さん、ここまでお聞きになっていかがでしたでしょうか。実ははじめ、このお話を教えていただいて、ラジオの番組で語っていいものか少し逡巡したところも正直ございました。さりながらどうもこのテーマは、この長いこと引きこもっていらっしゃったシニアの方お一人のことではないのではないかと思いあたりました。色々誰にも相談できずに、あるいは色んな病院を回ってもそれらしい改善がなかったという方が、最後にたどり着かれたのが千本北大路下がるのハルハウスでありました。着実に、でも生活訓練からフォーベイシックワーズとご飯を食べること、シーツ交換…、ゴミ屋敷におられた方ですよね。信じられない…。というふうに驚きました。
 

●まずはご本人の意思確認、そして信頼できる人をつくってください

丹: いや、布団干しは天気のいい日は毎日干して、9時にはきちんと出て行かれますし、「行ってきます」という声が大きくなっています。だからひきこもっている方は一日も早く決断されたほうがいい。ただし、ご本人がですよ。お父様お母さまが先回りしてやっちゃうと本人は縮こまりますので、まずはご本人の確認、そして生活訓練の信頼できる人をつくることが一番大事だと思います。
絹: 本人の自発性を引き出すためには、当人との信頼関係がベースにならなければならない。これは丹羽國子先生のお言葉です。確実に本人さんとの信頼関係を築くことを、長年なさってきた方がここにおられます。是非リスナーの皆さん、丹羽國子さん、ハルハウスという名前をご記憶ください。
この番組は心を建てる公成建設の協力と京都府地域力再生プロジェクト、そして景観まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。丹羽先生、ありがとうございました。
丹: どういたしまして。
絹: 皆さん、千本北大路ハルハウス覚えてね!ありがとうございました。
投稿日:2019/11/21
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