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第140回 ・鏡山循環バス復活の軌跡~みんなで乗ろう鏡山循環バス

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まちづくり“チョビット”推進室<平成30年9月放送分>

岩: 岩崎 泰夫氏 (鏡山学区自治連合会 相談役)
中: 中尾 力氏  (鏡山学区自治連合会 副会長)
竹: 竹本 武一郎氏(鏡山学区自治連合会 総務)
人: 人見 早知子氏(山科区役所地域力推進室まちづくり推進課長)
絹: 絹川 雅則  (公成建設株式会社)
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左から 絹川  人見氏  中尾氏  岩崎氏  竹本氏
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絹: 皆様こんにちは。まちづくりチョビット推進室の時間がやってまいりました。
この番組は地元京都の建設屋の目から見た元気なまちづくりびとの紹介や、その活動の最新のエピソードをご紹介しております。いつものように番組のお相手は当まちづくりチョビット推進室 絹川がお送りいたします。
さて、本日ゲスト、先輩方の男性お三方と、行政から紅一点で女性の方がお一人、都合四人のゲストで盛りだくさんでお送りいたします。
では本日の番組タイトル・テーマを申し上げます。「鏡山循環バス復活の軌跡~みんなで乗ろう(大きく育てよう)鏡山循環バス」と題してお送りいたします。
さて、本日のゲストのご紹介ですが、お一方目、鏡山学区自治連合会、ついこの間まで連合会長を務めておられました、岩崎泰大相談役でいらっしゃいます。
岩: どうぞよろしくお願いいたします。
絹: 岩崎相談役、よろしくお願いします。そして同じく中尾力副会長さん。
中: はい、中尾でございます。よろしくお願いいたします。
絹: そして総務の竹本武一郎さん。
竹: 竹本です。よろしくお願いします。
絹: そして紅一点は、山科区役所から。
人: はい、まちづくり推進課長の人見と申します。どうぞよろしくお願い致します。
絹: 実は陰でもう一人、随行役と言いますか、ボディガードが一人おられますが、今日はおしゃべりにならないそうです(笑)。
さて、山科区鏡山学区という場所がございます。相談役、鏡山学区というと、どの辺になるのでしょう。
岩: 山科盆地は、西・北・東と山に囲まれ、南側が開いている京都盆地と同じような地形でございまして、その山科盆地の西北方面にあるのが鏡山学区でして、当学区は12,400人の人口、世帯数は5800軒ほどでございます。
絹: リスナーの皆さん、三条通がありますね。そして山科駅があります。そして外環状線があります。そして山科駅の前からちょっと下がった所に渋谷街道があります。その渋谷街道が鏡山学区のど真ん中をズボーンと背骨のように繋がっている辺りをイメージしていただけたら幸いです。この辺りで何やらすごいことが起こったというのが、今日の番組のメインのテーマであります。鏡山バスを復活されたというお話を、これから承ります。
エピソード1に入るまでに、人見課長に無茶ぶりしますね。今日のメインゲスト、岩崎相談役とはいかなる方ですか。短く述べよ(笑)。
人: はい、ちょっとラジオで皆さんにお姿を見ていただけないのが非常に残念なんですが、本当に昔ながらのダンディな男性と言うのでしょうか。おそばにずっといたいと言うか(笑)、やさしい感じの穏やかな相談役でございます。
絹: でも少しお身体を壊されて、会長さんからお退きになりましたが、鏡山循環系統バスの復活に際して、本当に中心になられた方と承っております。
さて、次は岩崎相談役に無茶ぶりします。中尾副会長とはいかなる方でございますか。
岩: 自治連合会運営に色んな面で携わっていただき、「あれしてや」「これしてや、頼むわ」というと、嫌な顔一つせず、一生懸命黙々とやっていただいております。
絹: ありがとうございます。それでは次は中尾副会長に無茶ぶりで、総務の竹本さんとはいかなる方でしょうか。
中: はい。わが自治連合会の長老でございまして、竹本部長さんなくしては、鏡山自治連合会が回って行かないというような、全ての事を総務として取り仕切って頂いております。非常に優秀な方でございます。
絹: ありがとうございます。京都のすごい所は、こういうことではないかと思います。それぞれの自治連合会にちゃんとこういう先輩方がいてくださるということが、ひょっとしたらまちの力の基本なのかもしれません。

■エピソード1 お年寄りの足を確保するため、バスを復活させたい!
●バス復活のお話、こんな流れでした
絹: さあ、この先輩方からどんなお話が聞けますか。引き続きまた、岩崎相談役にお伺いしますが、そもそもこのエリアで何が起こったのでしょうか。と言っても事前に新聞記事で、私の予習の記事がありますので、知らないわけではないのですが、リスナーの方々に成り代わりまして、知らんふりをして(笑)、お尋ねいたします。住民要望で、一旦なくなったバスが復活するなんてこと、あり得るんですか。
岩: 私が聞き及ぶところでは、まずないと聞いておりますが、実は私どもの鏡山学区のど真ん中に、先ほどおっしゃられたように、渋谷街道という昔からある古い道路が走っております。これはあまり広くはないです。この道路に平成8年まで山科駅発向日町まで行っている京阪バスが走っておりましたが、この8年に廃止になりました。廃止になったのは、地下鉄ができ、色んな道路がつき、交通網が良くなり、アクセスも良くなったということで、お客さんがなくなってきて、8年の3月廃止になったという流れがございます。
絹: 手元の資料は、2018年(平成30年)8月25日の京都新聞地域版ですけれども、これによりましても、「利用者減少で1996年に一旦廃止。地域の高齢化が進むなか、お年寄りの足を確保しようと、地元の自治連合会が中心になって、4千人以上の署名を集めて要望書を提出し、2013年に復活させた」とあります。
岩: その通りでございます。平成21年からそのような要望書を提出するために、色々と資料を揃え、役所の方へも提出をいたしました。そしてお陰様で平成25年の3月23日に、山科駅発で我々の学区へ、渋谷街道を走ったということが始まりでして、その当時は実証運行でございましたが、最初は本当に苦労をしました。
一便目、人が乗る人が少なく、「どうしようかなあ、どうしたら乗ってもらえるのかな」と、人の集まる所、集まる所へ行き、乗車協力のお願いを兼ねて、案内をしていたというところが、出足でございます。また、27年3月23日から実証運行から本格運行へと切り替わっていきました。
  鏡山新聞junkanbus

●実はうちの学区、高齢化率が高いのです
絹: リスナーの皆さん、今こうやって言葉で聞きますと、非常にスムーズに流れたように聞こえなくもないですが、ただこの要望書、4千筆以上の署名を集めるなんて、想像してみてください。冗談じゃない活動じゃないかなと。そもそも当時、自治連合会の現役の会長でおられた時、バスがなくなった事に対して、「なんとかして!困った」という声が自治連の役員の方に届いたわけですね。
岩: そうですね。京都市、山科区、全市を通じまして、高齢者また後期高齢者がどんどんどんどん増えてきております。当学区におきましても5700世帯で人口は約12500人ですが、その人口の3分の1が高齢者及び後期高齢者ということで30%を超えております。そのような所でどうしてもバスをなんとか復活しなければいけないということで、現在に至っております。
絹: 私は不勉強で、山科は高齢化率が市内の中心部よりも低いのかなと誤解しておりましたけれども、30%というと、結構高いですね。
人: 高いですね。現在、11行政区の中で2番目に高齢化率が進んでおります。
絹: 上、中、下のいわゆる田の字地区も25%以上だったと思います。それよりも進んでいるということですね。そんななか、高齢者の足を確保してほしいという声が寄せられて、4118筆を添えて、京阪バスさんと京都市の交通局に持っていかれたということですね。それは最初は「はい、わかりました」みたいな反応でしたか。
岩: いやあ、なかなか進まなかったですね。そのあたりから苦労の始まりです。
絹: 最初のハードルを越えて、実証実験に持ち込まれるまでが、実は一番しんどかった時期ではないかと勝手に想像するのですが、やはりその中で山科区役所に代表されるような京都市の方というのは、だんだんに寄り添うような、そういう関係が結ばれてきたのでしょうか。
よく署名などを持っていった時に、ありがちな勝手な想像ですけれど、「こんなん持ってきて迷惑や。仕事を増やさんといて」みたいな反応がありがちなように、思わなくもないのですが(笑)。
竹: そうですねえ(笑)。
絹: 今日はでも、山科区役所から「この話(当該バスの話)を聞いてくれ」みたいな話で持って来られてますから、山科区役所の方たちはそういうのはなかったのかもしれませんが、やっぱり地元の要望をきっちり吸い上げて、京阪バスさんも偉いですね。こんなん受けられて。たぶん儲かる路線ではないはずですよね。
竹: そうです。敬老乗車の方が多い路線ですので。
ルート図

■エピソード2 実証運行から本格運行への苦労、色々ありました…
●人が集まる所とあれば、どこにでも出かけて行きました
絹: それで一年間の期限付きで、一日二便の実証運行が決まる所まで持ち込まれました。そこのご苦労も大変だと思いますが、さっき相談役がおっしゃった「実証実験まで持ち込むのも苦労やったけど、持ち込んだらさらに苦労が待ってました」と。最初はあまり乗ってもらえなくて、データが取れない時期があったというのは聞いたんですが、そこからですね。次のご苦労は。
中: はい、そうです。一応、ノルマが掛けられまして、一便あたり20名を超えた人数を確保するというのが、京阪バスさんからの要望でございまして。
絹: そうですね。運行する側にすれば、運転手さんを用意して、バスや機材を用意して、バス停の整備等、色々やることになるけれども、「やったはいいけど、乗ってもらえなければ、せんないわあ」と思われますよね。で、だんだんに利用者さんが増えてきた。そのためにはどこへお出かけになったんですか。
岩: 乗車数を上げるのに、まずは連合会の総会、そして人が集まる所として、社会福祉協議会の「すこやか教室」、また土曜日になれば「公園体操」ということで、午前10時からやっています。そういう所や、ありとあらゆる人が集まる場所には必ず啓発に行きました。

●アンケート調査と啓発活動と
絹: 丁寧ですねえ。地道ですねえ。で、4900世帯を対象にアンケートもとられたと。このアンケートは例えばどんなことをお聞きになりたかったんですか。
岩: まずは、どのようなことを望んでおられるか。時間的に何時ごろがいいかなどですね。最初は山科駅発午前10時22分、午後は3時22分発の2便でした。ところが先ほど中尾さんがおっしゃったように、できたら20人以上乗って下さいということで、20人をオーバーさせるのが大変でした。また、様々な場所へ行き、人の顔を見れば、「乗ってや」「乗ってや」というお願いをしていたということでございます。
絹: お医者さんに行くのに、「できたらこの時間に通ってくれたら、使えるのに」という声が拾えたわけですね。
岩: そうです。お医者さんもそうですが、買い物ですね。やはり生活バスですので、買い物が一番多いですし、お年寄りが多いので、病院に行くという乗客者が多いです。
絹: そして、こういう地道な活動の中には「お試し無料乗車券」付きの広報ビラをおつくりになったそうですね。それからアンケートを取られるということは、それぞれの生活時間帯の中で、この循環バスを使ったら、どんな便利なことが起きるのかいった調査もされた。
その結果、一便あたり約20人の利用者を達成されました。そのために一年間実証運行が延長されることが、26年度に決定されています。すごいなあ。そして本格運行というのが、まだこの先に来るんですね?ということは、さらにハードルが上るんですか。
岩: 27年に本格運行に移行しました。それから現在に至っているのですが、平成29年の10月1日、今9月ですから、もう1年を迎えようとしている時期なんですが、それが1便増えたということで、以前に比べ出かけやすくなりました。その便にもたくさん乗っていただくように、運動をしている最中でございます。

●本格運行とバス停の増設
絹: 実証運行便は一便あたり23から27人の利用者を達成しました。本格運行後の取組としては…。あ、なんか駅が増設されていますね。
岩: はい。当学区を通り、三条通に出て、まもなく地下鉄の乗降口があるのですが…。
絹: 御陵でしたっけ。
岩: そうです。ところが駅がありながら通過をしていたのです。そこで陳情してバス亭をつくっていただいたということです。それまでは地下鉄を乗降しようとすれば、山科駅まで行かなければならなかったのが、当学区を通っている時間から、その御陵駅まで5分前後で行けるという便利なポイントにあるバス停になります。
絹: 地下鉄と連絡して、すごく便利になって喜ばれた方もおられたでしょうね。
岩: 今もずいぶん下りて地下鉄に乗っておられるという事です。
絹: 地道な自治連合会さんの活動として、本格運行になってからも28年の年末、連合会が餅つきをやっておられます。そこにおいて、「鏡山循環バスに乗ろう」とお餅に印刷されたんですか(笑)。
岩: 食紅でね(笑)。
絹: これはインパクトありましたよね。

●陸運局から表彰されました!
絹: 山科区役所で聞いたんですが、この取組が「モビリティマネジメント」というカタカナですけど、地域ですごく目立った成果のある活動だとして、国交省の方から表彰されたり、取り上げられたりしたそうですが、それは皆さんも東京へ行かれたり、あるいは近畿地方整備局に行かれたりしたのですか。
岩: この時の受賞は、大阪までおじゃまさせていただきました。陸運局長表彰ということで。
絹: 陸運局の方でしたか。大変でしたね。でもこうやって、京阪バスさんも頑張られて、循環バスをつくられた。そしてたくさんの人が乗られるようになりました。

■エピソード3 鏡山循環バスのこれから
●ちびちゃんたちの乗車も増えてきました
絹: 今後は「利便性の向上を目指して、みんなで乗ろう鏡山循環バス」とありますが、これが色んな所に貼られているわけですか。
岩: そうです。3つある標語のうちの1つですが、一番その部分を重要視しております。また、いずれにしましても、ここまで我々が力を合わせてやってきた流れの中に、山科区役所さんの色々なご指導、また運営を通じての御鞭撻を頂きまして、今日まで運動ができたと、非常に感謝しているところでございます。
絹: この「みんなで乗ろう鏡山循環バス」には小さいお子さんも乗られているらしいですね。
岩: 95%以上は敬老乗車券の利用者ですが、現金を払って乗っているちびちゃんたちもだんだんと増えてきました。
絹: 小学校へ行かれて、特別授業ですか?「乗ろう」という授業をされたように聞いております。小学生にはあまりなじみがなかったバスですが、3年生が地域学習のテーマとして、自治連のメンバーさんを先生として招かれたと記事にありますが、それもいい感じですね。小さい子が乗ってくれたら…。「バス知らんわ」と思ってた子が、「バスって、くるくる回るんや」なんてね。
shiminban kodomonews

●小学校での特別授業を通して
岩: 今年の6月6日に、鏡山小学校の3年生、全員で77名おりますが、その子たちを対象に「鏡山循環バスとは何ぞや」ということで、当方が学校へ寄せてもらって、半日先生をしてきました。これもまだ3年ですから、難しい言葉が通じないので、非常に苦労した部分もありますが、それをきっかけにまた、総合学習の1つとして体験乗車をするということで、全児童が乗ってくれたという非常に喜んでおりました。また、京都新聞にも掲載されておりますが、一般の乗客と子どもたちが「おばちゃん、どこ行くねん?」「おじいちゃん、何しに、どこ行くの?」というような、聞いてたら「どこ行くの?」が多かったですが、「いつも乗っているんですか」とかそういう質問もしていました。
絹: こういう子どもたちの中から、将来の社会学系統の研究者が生まれるかもしれませんし、それどころか自分のおじいちゃん、おばあちゃんと一緒に買い物に行くのなら「バスに乗ろう」というような子が出てくるとうれしいですね。
岩: その通りです。バスに乗っている時も、学校へ寄せてもらった時も、子どもたちに持っていった資料がございますので、それを家に持って帰り、「おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、いっぺんバスに乗ろうな」と言ってくれたら非常にうれしいですし、子どもたちがちょこちょこ乗っていると聞きますと、何か効き目があったのかなというような気持もしております。
絹: リスナーの皆さん、今日のお話はいかがでしたでしょうか。鏡山循環バス復活の軌跡と題してお送りしましたが、「軌跡」は「足跡」という意味と、ひょっとしたら「ミラクル」という意味の両方がかかっているのかもしれません。地域の方々がこうやって丁寧になさることで、この先何が生まれるのか。小さいお子さんたちに、地域のことを考えて、「バスの復活の交渉をしたおじいちゃんたち、おじさんたちがいたな」という記憶こそが、ひょっとしたら大きな財産なのかもしれません。
この番組は心を建てる公成建設の協力と、京都府地域力再生プロジェクト、京都市景観・まちづくりセンターの応援でお送りいたしました。岩崎さん、中尾さん、竹本さん、そして人見さん、今日は貴重なお話、ありがとうございました。
全: ありがとうございました。
投稿日:2018/09/11
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